クズな自分を愛してくれたあなたへ   作:サラメンス

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2 友達

 教室から聞こえる静かな喧噪をどこか他人事に思う。本来であれば走らない程度の小走りで教室にいかなければいけないのだが。

 

「いやーもう遅刻だね。これは。サボっちゃう?」

 

横で寝言を吐くこの女子は相変わらず可愛い。いや違う。

 

「水野さんは普段から遅刻するタイプなんですね」

 

「あっ、酷い。私だってそんなにいっぱい遅刻する訳じゃないから。今回はたまたま」

 

意外だ。勝手なイメージでそう思ってしまっていたようだ。反省反省。

 

「すみません。勝手に不良だと思ってました」

 

「まぁいいよ、うん。この髪を見てそう思ったのなら私にも落ち度があるからね」

 

「ところで優等生くんはお家では何してるの?やっぱり学校の休み時間とかみたいに勉強?」

 

優等生と言われたが本当にやりたいことも無くて仕方なくやっているだけでそんないいやつでもない。なんてこと初対面でいきなりを言う訳には行かないので無難に返すしかないだろう。

 

「うん、まぁそんなところですよ」

 

「やっぱりそういう所で変わるもんなんだね。」

 

俺の見立てが間違っていなければ、この女は楽しそうだ。俺と喋っているのに何故。いやいやいや、こっちの勘違いだろ。俺のようなやつがそんなことあるはずがない、うんうん。

 

そんなことを思っていたら我らが教室に着いた。実時間としては短いはずなのにかなりの時間に感じられた。人と話すの疲れるし、もうちょい静かな娘とかなら好みなんだけど。

 

「ん?どうしたの。一緒に入ろうよ」

 

「僕みたいなのと一緒に入るとあれだからちょっと時間差で行こうかなと。どうぞお先に」

 

「なんで?別に私はそんなこと全く思っていないんだけど?もしかしてそんなことで私に迷惑がかかるとも」

 

不満げな顔でこちらに話しかけてくる。あちらのただの気まぐれであろうからその優しさにあだで返すわけには行かないのに。

 

「いーからほら行こ。優等生くん」

 

緊張してきた。俺は知らんからな。もうどうにでもなれ。

 

「皆川。」

 

「え?」

 

「僕の名前は皆川 悟。だから、ええっと」

 

「ふっふーん。これからもよろしくね。悟くん」

 

ニヤニヤと笑いながらこちらの腕を掴んできた。距離近い。なんかいい匂いするしあーもう。人からどう見られてるかを何となく考えたけどすぐにそうするのをやめた。いいだろう、今日ぐらいは。

 

建付けの悪い扉を開けた。普段は特になんとも思わないけど今日は何となく、楽しかった。

 

「おい、遅刻だぞ。水野と皆川か。皆川は意外だな。どうした?体調でも悪かったか?」

 

「せんせーひっどい。私には何も言わないの」

 

「すみません。ちょっと出るのが遅れてしまって。次から気を付けますので」

 

一瞬驚いたような顔を見せたがすぐ素の表情に戻す。

 

「皆川が珍しいと思っただけだ。他意はない。とりあえず席につけ。今ホームルーム中だから」

 

「じゃあね。悟くん。また喋ろーね」

 

「あ、ええっと」

 

動揺して返事を返せなかった。そして感じる周りからの視線。俺は居心地が悪くなって足早に自分の席に着いた。またってことはつまりはええっと。期待しても良いんだよね?

 

自分では諦めぶってたが普通に友達は欲しかったし、めっちゃ嬉しいわ。何かを話す教師の声をどこか他人事の様に聞いていた。

 

 

今日も今日とて1日は過ぎていく。あっという間に昼休みになった。すっかり浮かれて連絡を聞き流していたから移動教室間違いそうになったのは反省反省。

 

教室も騒がしくなってきた。この中で一人で飯を食うのはメンタルに少なくないダメージを日々負っているので改善したいところだ。便所飯は俺のなけなしプライドが許さないので最終手段として取っておく。

 

飯でも食おうかとリュックを開けた。最悪だ。コンビニで飯を買ってくるのを忘れてきた。なーにやってるんだ俺。あんまり行った事が無い購買にでも行ってみるか。

 

昼休みに席を立つと席に誰かが座っていたりするのも辛い。辛い事ばっかだな。学校。そろそろ昼休みにはどっか時間つぶしを考えなきゃなと席を立つと近くに何やら人影が。あーはいはい、今どきますよー。

 

「あ、ども。悟くん。あのさぁ。良かったらご飯一緒に食べたりしない?」

 

弁当箱を持った水野がそこに立っていた。なんで?

 

「えっと、友達と昼はご飯食べてるよね。確か」

 

「私のこと普段から見てるんだ。ちょっと恥ずかしいかな。あはは。それでどうかな」

 

見てるっていうわけじゃないけど水野は結構目立つし。クラスの中である程度目立つ女子達といるし。食べるのはこっちとしては嬉しいんだけど大丈夫なのだろうか。

 

「僕は約束してる相手とかも特にいないし水野さんが良いのならこっちも大丈夫ですが」

 

「全然もうこっちはウェルカムというか、オッケー。ていうか固いよね。私は敵じゃないよー」

 

そんなことを言いながら向かいの机をくっつけて座る彼女。俺の素を出せというがそれは中々難しい話だ。猫被ってたのに急にイキっているように見られたら恥ずかしい。そういえば言い忘れてた。

 

「ごめん。今日弁当忘れてきてさ。購買に行こうと思ってるんだけど先食べてるか今日はあっちの方と食べてきたら」

 

「あ、そっか。それは災難だったね。じゃあ私もついていこうかな。ほらいこいこ」

 

え、貴方ついて来るんですか。心なしか彼女が微笑んだ気がした。

 

 

「私もあんまり行かないからどんなのが売ってるかわかんないんだよね。多分何かしら売ってるでしょ」

 

「あーそうですね。ていうかちょっと離れません?僕といるとやっぱ迷惑だと思うんで」

 

今朝の廊下は遅刻してて人通り少なかったしそこは全然問題ないと思う。教室も本当は良くないんだがそれに関しても気が付いたら来ていたので仕方が無い。

 

男女だと傍から見たらどうしてもカップルに見られてしまうだろう。彼女は可愛いからモテるだろうし俺みたいなのがいると不都合だと思う。

 

「だから言ったと思うけど私は何も嫌なことなんて無いんだって。なんで?」

 

「僕の方も全然良いんですけど。その、周りから変な目で見られたりしたら迷惑に思わないかなと」

 

そこまで俺が言うと彼女の方から立ち止まる。どうしたのだろう。

 

「もしかしてさ、体よく言ってるけど本当は私と関わりたくないってこと、かなぁ。だったら、すごく悲しいんだけど。迷惑だった?勘違いしてた?」

 

揺れる大きな瞳がこちらに注がれる。俺しか写されていない。目から読み取れる感情は、激情。

 

「全然そういうわけじゃなくて。俺的には全然あれなんだけどええっと」

 

「じゃあいいじゃん。関係ないよ。周りの目なんて。あとそんな風なのが普段の素でしょ。いいよ。それで」

 

「あ、はい」

 

何か彼女の地雷を踏んでしまっただろうか。何となく気まずくて再び歩みを進める。それからほどなくして購買にたどり着く、のだが。

 

参った。文房具や学校用品、飲み物類しか売っていない。ダメ元で店員に聞いてみるか。

 

「すみません。食べ物とかってここに置いてないんですかね。パンとかでも」

 

「あー君1年か。ごめんね。大体昼休みの最初の方にすぐ売り切れちゃうんだよね。或いは予約されていたり。来るならすぐ来た方がいいよ」

 

「わかりました。ありがとうございました」

 

返ってきた言葉は概ね予想通りの一言。困った。腹が減った。放課後まで俺は耐えられるのだろうか。そんなことを考えていると、先ほどから普段と打って変わって静かになった彼女が口を開いた。

 

「食べ物がないねぇ。どうするの?腹ペコで一日過ごすの?私は大変だと思うなぁ」

 

「正直苦しいけど我慢するしかないですかね。ごめん。やっぱり一緒にご飯は食べれそうにないや。誘ってくれて悪いけどまたその内食べよう」

 

「弁当半分こしよ?私はいいよ。友達じゃん。あ、確認はしなくていいよ。苦しいんでしょ。食べられないのは」

 

唐突に貰った言葉は俺の予想にもしていなかったものだった。え、いいんすか。彼女だって食べる分は減るだろうし友達っていいな。

 

「ありがとう。本当にいいのかじゃなくてええっと助かりました」

 

「いいよ。それじゃあ教室戻ろうか。その代わり、さっきみたいな話。次したら私何するかわからないから。それだけ」

 

俺はなんとなく選択を間違えた気がした。彼女は普段通りの笑みを浮かべていたが、目は全く笑っていなかった。

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