お久しぶりです!(もはやいつもの挨拶)
短編三つって感じです。
バニーイベント…えぇ、何がとは言いませんが。流石は「お尻の形には自信がある」アレクシア王女だと思いました。
そしてベータ、お前お色気担当多すぎるぞ。ベアトリクスおば…お姉さん辺りと変われ。
①騎士団発足
大規模テロにディアボロス教団の露見。謎の怪物に剣術指南役の本性と動乱続きの一夜は、天に昇る一筋の光柱を最後に終結した。
光の下に妹がいると直感で確信したアイリスが急行すると、そこに居たのは妹のアレクシア王女のみであり。彼女の証言と、現場の調査。
そして数時間後魔剣騎士団と合流したアガレス・ヴェルネンシスが持っていたゼノン・グリフィの直剣という証拠によって数々の疑惑が真実となっていった。
――かくしてアレクシア王女誘拐事件は幕を閉じ、現在は復興作業……といっても教団の地下施設はその大部分が無事であり(ぶち抜いた天井を除いて)。
地下施設の崩壊による地盤の落下などのアガレスが予測したような災害もなかったため彼の知るものよりかは大分マシになってはいた。
「……はい。報告書はこちらで確認しました」
そんな動乱の翌日、魔剣士協会ミドガル王国王都支部の受付にて。
「報告書はこちらから魔剣騎士団へ提出します。特別報酬は後日受け取りとなりますのでご了承ください」
「お疲れさまでしたー……」
受付からの言葉に間延びした口調で返したアガレスは思わずといった風にあくびをする。
(いくら若返ったとはいっても、徹夜作業は堪えるな……)
心中で呟いた通り、アガレスは睡眠時間を犠牲として昨夜の事件の後処理と報告書作りに従事していた。
先の事件で大立ち回りをしていたこともありその場ではいサヨナラとは行かなかった故の悲劇といえるだろう。
……ちなみに協力者のローランは裏方かつ闇夜に紛れることが出来る装備だったためそもそもあの場にいると認識されておらず、何の責務も発生していないことは内緒である。
「――そういえば、アイリス王女からお呼びだしがかかってたな」
ふとアガレスは、報告書を作り始める直前に魔剣騎士団の伝令から伝えられた内容を思い出す。
伝令からは「お暇な時で構わないとの事です」と伝えられてはいるが……とまで考えたところで、彼は頭をふる。
「目上の人物を待たせるのも良くないよな。ちとダルいが……」
頬をピシャリと打って眠気を追い出した彼は魔剣騎士団の本部へと歩きだした。
「……成る程。では時期が来たということですな」
「えぇ。ゼノン……王家の誇る剣術指南役が、ディアボロス教団の信徒だった」
椅子に座り手を卓上で組んだアイリスは、ギュッと目を瞑りため息をつく。
「自分は、今でも信じられません……」
「マルコよ。気を病むには速いぞ」
部家にいる三人の内の一人、如何にも"好青年"といった雰囲気の青年騎士マルコは、頭に手をやり呻く。
しかしその様子を彼のとなりに立つ剛毅な雰囲気の、顎全体を覆うような立派な顎髭がトレードマークのベテラン騎士のグレンが諌めた。
「……グレンの言う通りよ。教団の信徒が彼たった一人とは考えにくい――寧ろ国の武力の要たるこの騎士団内部にこそ、内通者が潜伏している可能性が高いわ」
「ッ……!」
不安を煽る言葉に触発されたマルコは、思わずバッと執務部屋に繋がる扉へ視線を向けた。
今この瞬間にも、騎士団の裏切り者が自分達の話を傍聴しているかもしれない――そう思ったら止められず。彼は扉へと近づく。
確認のため扉を開けようと手を伸ばし――
ガチャリ
「ウワッヒャアアア!?」
「ッ!なになになに!?」
突然開いた扉により顔面強打し奇声をあげる彼につられ、扉を開けた人物も動揺した声をあげた。
その反応に驚いたのか、室内にいたアイリスとグレンも同様に驚く中――扉を開いた張本人であるアガレスは中を覗き込み、額を赤くさせたマルコを見ると申し訳なさそうな顔をしながら入室する。
「魔剣士アガレス。召集に応じ参上しました」
そのまま後ろ手にドアノブを掴むと、静かに閉めて振り返ると。アガレスは深々と頭を下げた。
「良く来てくれましたアガレス。協会への報告などで疲れてるとは思いますが……」
「それはお互い様でしょう?しかしこれは……情報共有って訳じゃ無さそうだ」
額を擦りながら立ち上がるマルコと、それを笑いながら助け起こすグレンの様子からそう感じ取ったアガレスは僅かに立ち姿を崩した。
「……これから話すことは、内密にしていただけますか?」
表情を引き締めたアイリスが口を開く。
「ゼノンが裏切り、"ディアボロス教団"の信徒へとなっていた。それは実際に遭遇した貴方がよく分かっていると思う」
「……えぇ。親愛なる隣人でもあった彼が、微笑みの裏にナイフを隠していたというのは――衝撃でした」
「今回の件で、私は王国……というより騎士団に猜疑心を抱いています。お父様が穏便に事を進めるのなら、私は多少の強硬派となってでも調査を進めたい」
「…………。」
強い意思を秘めた強固な……少々意固地そうな目を見たアガレスは、何も言わずに次の言葉を待つ。
「よって、私はここに新たな騎士団の設立を宣言します」
「名は"紅の騎士団"、設立理由は有事の際の補強戦力の確保と言うことで通しましたが……実際は私の私設部隊となります」
『堂々と"設立理由の詐称"と"立場を利用したゴリ押し"という二重の不正行為を自白されたがそれ含めて内密にと言うことだろうか』とアガレスは腹芸の苦手な王女に内心苦笑した。
「人員は全てが私が信を置くに足ると考えた人物のみで構成していきたいと考えています。そして――」
そこで言葉を切ったアイリスは席から立ち上がり、アガレスへ右手を差し出した。
「――貴方にも、紅の騎士団へ入団してもらいたい」
「なっ」
「ほう?」
アイリスの突然の発言に驚きの声をあげようとするマルコを片手で制したグレンは、面白げな顔でアイリスから視線をアガレスへと移し、状況の静観を選択した。
「うぅん……喜んで、と言いたいのですが――」
しかしアガレスはあっさりと言葉を返し、差し出された手を握ることなくやんわりと断りを入れた。
「そ、そうですか……理由を聞いても?」
アイリスは断られることを予想していなかったのか、僅かに目を見開きながらも気丈な態度を装いながら問うた。
「まずアイリス王女に信頼され、騎士団にお誘いいただいたことは非常に光栄です。ありがとうございます」
最初にそう前置きしたアガレスは言葉を続ける。
「それと同時に、アイリス王女が抱える危機感や不信感は大変に理解できます」
「なら……」
「教団やガーデンを不審がる気持ちは確かに同じです。ですが同じ道を歩むとなると……」
アガレスはそこでアイリスから視線を外し、チラリと騎士達へと視線を向ける。王女同様ポカンとしているマルコと……どこか納得したような顔のグレンへと声をかける。
「"獅子髭"の騎士グレン。少しよろしいでしょうか?」
「グレンで構わん。貴君の武勇は騎士団内部にも届いている……いずれ一度剣を交えたいものだな」
「では「敬語も不要だ」……じゃあグレン。例え話に付き合ってもらっても?」
「いいぞ」
どこか通じあった雰囲気の二人に、アイリスとマルコの二人は揃って首をかしげる。ある意味息があってるのかもしれない
「王国にとっては目から鱗が落ちるような話だったとはいえ、王女の強権によって新設された新たな騎士団。それが今の紅の騎士団の現状……相違は?」
「………客観的に見れば、な」
あまりにも明け透けな意見にグレンは苦い顔をしつつも同意した。
「王女お抱えの騎士団、つまり誤解を恐れなければこれはアイリス王女親衛隊と同義だ。事情を知らない人間からすれば……ここは報奨と名誉が保証されたヌルい道楽部隊と思われている可能性がある」
「ッ!そんな意図は――!」
自身が設立した騎士団を貶めるような想定にアイリスは声をあげる。
「分かっています。ただ、可能性の一つというだけです」
対してアガレスは特に感情を動かさず、淡々と告げる。
彼の言う通り、あくまでこれは仮定の話であり、真実ではない。しかしそも想定とは空想を語るもので、今回たまたまそれが結果的に騎士団を貶す発言になっただけである。
「そんな中、若造どころか騎士団の人間ですらない外部の人間がこの部隊に入るのは……グレン?」
「対外的に、余り良い印象を持たれないのは確かだろう。王女が自身の私兵として囲っているように見えなくもない」
グレンが肯定したことにより、アイリスとマルコはハッとした顔となる。
仮に今の話が現実となりそのような悪評が騎士団内部に広がってしまう場合、紅の騎士団の名誉は地に堕ちる事となってしまう。
それは新設ホヤホヤの騎士団にとっては致命的であり――ディアボロス教団の調査どころではなくなるだろう。
「……理由は、分かりました。グレンも泥を被らせるようなことをさせてしまい申し訳ありません」
「その謝罪は受け取れません。このグレン、王国のためなら如何なる泥も被る所存です」
「まぁ、とりあえずそれを加味させてもらって――」
アガレスはその後紅の騎士団への入団は拒否するにしても、せめて外部からの協力者という立場にして欲しいと頼んだ。
その提案をアイリスは快く了承し、相互の情報の共有と必要に応じての協力を提案。アガレスもこれで了承した。
話し合いが終わったことで退室しようとしたアガレスだったが、「騎士団の設立を見届けてほしい」というアイリスからの言葉を受け。
アイリス、グレン、マルコという初期人員にしても少ない三名からスタートという紅の騎士団の発足を見届けた。
②黒影
アガレスが騎士団の設立を見守っていた頃――
「ゼノン・グリフィ公爵。幼い頃から剣技と魔力の扱いに優れ、幼少期から頭角を現す……」
王都の路地裏にあるボロ屋の一角。僅かなランタンが照らす薄暗い部家の中で、ローランは手に取った書類に書かれた内容を読み上げていた。
彼からすればとるに足らない、既に入手した情報だが。念には念をということで再度確認を行っていた。
「ミドガル魔剣士学園を主席で卒業。その後は騎士団に入団し、次代のホープとして数々の作戦・戦闘に参加していた。ブシン祭でも好成績を納めそこから王家のスカウトを受け剣術指南役を拝命」
ゼノンの経歴に関する資料を読み込んだローランはため息をつき、資料を机の上へ投げ捨てる。
「仕事、プライベートともに充実してるな。挫折を知らない――エリート様だ」
だからこそ解せない、とローランは疑問に思う。
――これではわざわざディアボロス教団に入る必要性は感じれない。
無論人間の欲望に際限がないことは、情報戦を得意とするローランはよく知っている。もっと力を、権力を、名誉を富をと求めてしまうのは人のサガだ。
しかし、公私ともに充実していると言っていいその生活が破綻する危険性を無視してでもすることか?とも感じた。
野心からくる目的のために動けるのが人間だが、また安寧や現状維持のために誘惑を耐えることが出きるのもまた人間だと、家を預かる大黒柱でもあるローランは信じていた。
「……考えるだけ無駄だな」
そこでローランはきっぱりと思考を絶つ。分かりやすく豹変する時があればその時点の人間関係から教団関係者を洗い出せるが、現時点ではあまりにも情報が少なすぎる……『実動ばかり追っていたツケか』とローランは疲労の溜まった目頭を揉む。
「にしても、不滅……“不滅”か」
それは、アガレスが救出したアレクシアから聞き出したゼノンがラウンズへの野望を口にした時に出た言葉。
それは常人が聞けば、「きっと象徴や権威的な意味なのだろう」と思考するだろう。事実過去に栄華を極めた国を、その栄光を指して“太陽の沈まぬ国”という不滅性のある言葉で讃えられることは少なくない。
「……まさかあるのか?」
だが、ローランは“裏”にも精通した人間であった。
教団の行う。倫理や、また現行の魔法科学から極めて逸脱した実験の光景を見ている。そんな異常な経験が彼の脳裏に「まさか」という発想の飛躍を齎した。
「不老不死……ってヤツが」
ゴソッ
「ッ?しくったか!」
その言葉を呟いた時、微かな物音が彼の耳朶を叩く。
それを自身と同じ同業者だと断定した彼は、即座に懐に隠し持っていた仮面を着けると同時にもう片方の腕で机の上に置いてあった大型のナイフ――剛性と切断力に優れた特注のもの――を音の方角へと投擲した。
「危ない」
人の限界を超えた魔剣士の膂力とナイフ自体の重量。そしてローランの卓越した技術によって音速に迫ろうかという速度のナイフだったが、固い音と共に見当違いの方向へと弾かれる。
「おいおい、おじさんの内職は覗くもんじゃないぞ」
「内職?そうには見えないけど」
ナイフはザクリという効果音が似合いそうな深さでボロ屋の壁に突き刺さったが、ローランと……彼に存在を悟られた侵入者とも呼ぶべき人物はそれぞれ視線を相手へ向けたまま硬直していた。
ローランは己の愛剣である黒塗りの直剣《デュランダル》を構える。戦闘の衝撃によって揺れた仄かな照明が下手人の手元を照らす。
「
「へぇ、知ってるんだ」
その声に反応したのか、下手人の女性――プラチナのような白金の短く切り揃えられた短髪が特徴的な獣人の少女は驚いたように呟いた。
「武器には一家言あってな。使うの見るのは始めてだ」
「……誘ってる?」
両手にそれぞれ二つ。得物を構えた少女は僅かに腰を落とし構え、ローランもまたデュランダルを腰だめに構えた――僅かに周囲に変化が起きた時、それが開戦の合図となる。
そう確信した両者は、その瞬間を決して逃さんと感覚を研ぎ澄ませ――
「……なにをやってるのかしら」
「「ッ!」」
しかし、僅かに開いたドアの音と共に動き出そうとした二人は。直後その耳朶を叩く女性の声に硬直した。
それは少女のみならず、ローランにも聞き覚えのある声の主は隠密の心得からか。僅かに開いたドアの隙間に音もなく体を滑り込ませスマートに部屋へと入ってきた。
「あ〜……お久しぶり?」
現れたのな金髪碧眼の、絵に描いたような美人のエルフ――つまるところアルファ――であり。アガレスからの話を聞いていたとは言え追う追われるの関係であったローランは気まずさから曖昧に笑う。
「えぇ。案外早い再会だったわね、それで……ゼータ?」
「ウッ」
対してアルファはそんなローランに対してほんとうに気にしていない風に冷静に挨拶を返し、そこから一転して少し冷めた声音で獣人の少女……シャドウガーデン幹部『七陰』が一人、“天賦”のゼータへと声をかけ。かけられたゼータはバツの悪そうにうめいた。
(へぇ、アガレスの予測は当たってたのか)
そのゼータという名前にローランは僅かに驚く。
……事件が終わった後、互いの安否確認と情報共有のため集まった際に。天へと昇る光の正体やゼノンの動機、アレクシアの安否を報告したアガレスに対して。ローランは王都の人的・物的被害の予測や魔剣騎士団の被害状況の全容――そして街を飛び交うシャドウガーデンの連絡員を追跡・盗聴し得られた断片的なシャドウガーデンの内容を教えた。
『トップのシャドウの下に直属の幹部“七陰”が存在する』
『先日痛い目見せられたアルファもこの中、というか中核』
『他にもデルタやガンマと呼ばれる幹部がいるらしい』
『中でもデルタは脳筋』
「幾人かの幹部の名前が知れただけでも収穫だな」と思ったより成果が上がらず――指揮系統の把握やシャドウガーデン全体の規模も探ろうとしていたから――落胆した様子を見せたローランに対して、少し考え込むような様子だったアガレスは口をひらく
『
『?……いや、ないな』
困惑が多大に含まれる表情をしながらそう問いかけてきたアガレスに対して、ローランは脳内の記憶の蓋をひっくり返して“ギリシャ”なる単語に心当たりがないかと探るが該当するものはなく。首を横に振る。
『偶然の一致……?だが発音も同じで、三つも?……いやまさかな』
『どうした。なにか心当たりが?』
唸りながらもそう呟くアガレスに対して問いかけるが、一旦考えることはやめにしたらしい。
『ローラン。幹部の名称って“七陰”なんだよな?』
『あぁ、七って名前からして。三人名前が割れてるから……あと四人か』
『根拠も弱いから聞き流してくれていい。……多分分かってない四人の幹部の名前は――』
(……どっから仕入れてきたんだか。面目丸潰れだな)
「流れで協力者に喧嘩売るなら、貴女はデルタと同じくらいよ?」
「いや、ちょ!?あのワンちゃんと同格はさすがに勘弁してくれ!」
アガレスの予想の中にあった名前と完全に一致していた名前の少女ゼータはその戦意を霧散させ、いっそ縋り付くように評価の撤回をアルファに求めていた。
しかしアルファは妙なところで頑固になってしまったようで、中々ゼータの評価を覆そうとはしない。
ローランは暫くその愉快な光景を見ていたいと感じたが。余り時間は使っていられないという頭の冷静な部分からの声に従い、割って入ってやることにした。
「まぁまぁ、名前も知らない他人だったとは言え煽っちゃった俺にも責任の一端はあるんだ。顔を立てるって意味で許してやらないかな」
「……本人が言うなら、私としては何も言えないわね」
「やった!ローランだっけか?助かったよ」
割と本当に感謝している。と言った様子で手を差し出すゼータ。……だがローランはそらに応じずに曖昧に笑った。
「いやぁ俺の奥さん、結構やきもちでな?そこがかわいいんだけど……」
「あぁ〜成る程。まぁこっちは助けてもらった方だから、その意向に従うよ」
ゼータが腕を引っ込め、「ここから先は二人の話だからと」言うように小屋の隅へと移動したのを見計らってか、アルファがその小さな口を開いた。
「一応アナタの雇い主とは先日話をつけたわ」
「聞いてる。『互いに情報を共有』するが『シャドウガーデンが街への被害を齎すようなことがあれば遠慮無くぶん殴る』だろ?随分と無茶な要求。そしてよく通したな」
「元より私達の敵はディアボロス教団ただ一点。相互の理解不足で無意味に刃を交えるのは避けたいのよ」
「ふぅん?でもいざとなったら妨害してもいい――いや問題ないからか」
「その通りよ」
破格の条件。本来ならすぐにでも頷いておくのが吉だろうが、ローランは顎に手を当てながら思い付いた疑問を口に出した。
そんな疑問をに対してアルファはさも当然とばかりに答えた。
(……これ、下手したら教団よりよっぽど"教団"じゃないのか?)
ローランは情報屋としての観察眼で二人を観察し、アルファからは強い信頼と少しの呆れ。そしてゼータからは――狂信に近いものを僅かに感じられた。
その事にヒヤリとしたものを感じたローランだったがそれをおくびに出すとはせずに会話を続ける。
「取り敢えずこっちから出来るのは情報提供ぐらいだが……それでいいのか?」
「勿論、寧ろ大助かりよ。特に教団に対して偵察や推論は出来ても内部の情報は手に入りにくいから」
「ディアボロス教団は男の園だからな……魔神ディアボロスを倒した三英雄が全員女性だったことに対してアンチテーゼかね」
「……恐らくは、悪魔憑きの存在ね。基本的には女性が発症するから、そうなる可能性がある女性をメンバーにはさせなれないでしょう?」
「なるほど確かに」
その後は定期的な会合による情報交換を行うこととし、三人はそれぞれの場所へと戻っていった。
「ローラン。遅かったですね」
「仕事で少しな、その……――はどうだ?」
「寝ています。最初はローランを待とうとしていたみたいですが、我慢の限界だったみたいで」
「そっか……」
「それじゃあ、今日も模擬戦しましょうか」
「えっ」
「……避けられたわね」
「うん。魔力を纏わせた極小のスライムを侵入させて、魔力探知を用いて対象を追跡する……飽き性の私が役に立つだろうと思って頑張って習得したのになぁ」
「付けられたらいい、程度のものだったから支障はないわ。そもそも思いっきり背信行為だから寧ろつけられなくて良かったのかも」
こうして(例によってシャドウだけ知らない)アガレス一派とシャドウガーデンは協定を結ぶこととなった。
③憧憬の発露
「ふっ!」
目の前に剣が迫る。
実直な、しかしアレクシアと比べれば数段劣る平々凡々な――だが目の前のオレを超えようとする貪欲な剣を。軌道を逸らすようにいなす。
「ま――だぁ!!」
オレの背後へと流れていった彼は、強く一歩を踏み締め進もうとする勢いを殺し踏んだ脚でスピンターンし横薙ぎの一撃を放つ。
それを今度はいなすのではなく防御し拮抗する。
「いいな!二撃目を考える余裕と、それを実行する胆力。身についたじゃないか!」
「んな簡単に受け止められても……イヤミにしかァ!!」
聞こえない。という言葉の代わりなのか魔力を高めて強引に剣を振り抜きオレの体を弾き突きの体勢へと移行する。
突きはいい、コンパクトな動作の割にはかなりの威力を内包してるし。生半可な防御は逆に弾き返す事が出来る。
……まぁ唯一の欠点は剣でやるとどうしても攻撃の面積が小さいから、少し体ずらせば避けられることかな。
「あいて!?」
「ひとまず休憩。ただ間違いなく向上してるぞ」
彼自身かなり疲弊しているようなので、木刀を軽く当て終了を宣言する。
「ありがとう……ございます……ッ!」
上がった息を整えながらも律儀に礼を言う彼――スズーキくんに軽く手を振り、オレも軽く息を吐く。
ホープ家の分家……確かクリスティーナという子の遠い親戚、らしい。
今は亡きゼノンと学園で戦った直ぐ後に頼み込まれ。彼とは放課後や休日、オレの用事が合えばという条件付きだがこうして模擬戦や軽い指導を行っている。
魔力・身体機能共に平凡。寧ろ魔力の総量なら平均より少し低いとさえ言える。
だけど、さっきも言った通り彼が持つ強さへの渇望や貪欲さは本物であり。一つのことを教えたら次の機会には確実にその一つを身につけて来てくれる。
正直言ってなかなか楽しい。
「魔力操作についてはどう?」
「ええと、もらった魔力回路パズルっていうのをやってみてはいるんですけど……」
額の汗を拭ったスズーキがオレの言葉に対して返答すると同時に学生鞄からルービックキューブ……を更に複雑にしたような物を取り出す。
ルービックキューブと違うのはその表面には色と形の違う6対12個の鍵穴があり、隙間から垣間見える中にも12種類の。それも膨大な量の鍵穴があることだろうか。
「中々、難しくて……」
「やってるうちに馴れる。それにそれを楽勝に解けるようになれば、より少ない魔力でより強力な身体強化や武器強化が出来るぞ」
入り口と出口で
入り口側の鍵穴から魔力を流すと中で魔力の糸が構築され、関連した鍵穴に正しい順番で糸を通せば出口側の鍵穴が開放され最後にそこに糸を通せば晴れてクリア。
やってることはルービックキューブと言うよりかはあみだくじとイライラ棒の複合だろうか?
魔力量は才能で魔力操作は努力。これは後者の魔力操作技術の向上を助けるアシストツールだな。
「確かにやってることは針に糸を通すようなことなので、徒に身体強化や武器強化をするより効果……というか、一応貴族の僕でも見たことないんですけど……」
「いや故郷では普通にあったんだぞ?王都になくて驚いたよ」
……実はこれ市販品ではない。
故郷。もといオレが過ごしていた時代にあったのは本当。アーティファクトの類いでもない。
なんならルービックキューブのようにさまざまなバリエーションがあった程度には量産の利くものだった筈だ。
効果としてはオレや仲間達、そして目の前のスズーキが証明しているのだが……なぜ消えたのか。
取り敢えず当時の記憶と頼りに図面を引き、ローランの顔が利く工房の職人さんに特注で作ってもらったものが今スズーキに貸しているこの世でたった一つの物となる。
現在ローランを経由してミツゴシ商会に売り込み中。
是非大量生産されて皆の手に行き渡ってほしい。
っと、話がずれた。
「魔力操作についてはそれで修行していくとして……本件に入ろう。一応魔力操作の向上をさせてた理由でもある」
「は、はい」
物思いに耽り多少弛緩していた気分を張り直し、スズーキに向き合う。
そんなオレの雰囲気の変化に気付いたのかスズーキも緊張した面持ちでオレと目を合わせる。
「スズーキ、ここはどこだ?」
「え?」
「……事実確認、それと君に言い渡すことへの前準備だ。難しくて考えずに答えてくれ」
「あはい。ミドガル魔剣士学園、修練室③です」
そこまではいらないかな……
「その通り。ではミドガル魔剣士学園の目的は?」
「所属する学生へ教育機関として学習を施し……学校名通り、有力な魔剣士を輩出させることです」
「魔剣士とは?」
「ち、抽象的ですね…魔力を用いた肉体強化も武器強化を用いて行動する。従来の剣士とは一線を画す戦闘力を持った存在。でしょうか」
部分点と言わず満点をあげられるような、そんな模範的な回答をしたスズーキに対して大きく頷く。
「そうだ。
何を当たり前のことを…?とでも言いたげな表情のスズーキ。
言った通り前段階…というか心の準備なのだが、だがそれを考慮しても冗長に過ぎただろうか……
しかし言ったことを取り消すことは出来ない。中途半端にやって中途半端な成果を得るよりも、恥を忍んで突っ走った方がいいと考え言葉を続ける。
「だからオレ達魔剣士は三つの要素の三位一体で日々戦っているんだが……スズーキにはこれからこれらの内の一つを捨て置いてもらう」
「そ、その捨てるものとは……?」
「スズーキ…キミ、一旦剣を置け」
感想、批評よろしくお願いします。
【アガレスの資金】
協会所属の魔剣士としてのお給料とプラスして、現在は魔剣士学園の講師としての給料(結構な高給取り)もありそこそこ小金持ち。
プラスして前世の記憶を利用して昔の大国のアーティファクト保管庫を(勝手に)掘り起こし売り捌いている。アーティファクト専門の発掘屋として界隈ではそれなりに有名。
【協力体制】
アガレス一派→シャドウガーデン
教団の内部情報の提供。
一部の研究への協力。
シャドウガーデン→アガレス一派
活動内容の開示。
大体こんな感じ(何も考えてない)