俺と勇者と英雄 作:英雄譚に魅入られた者
チーム『オーサー』が結成され、ちょっとだけ日常が騒がしくなった。
まぁ、この時期に新たなチームが結成される事は珍しくなく『オーサー』というチームができました、だけならなんら問題はなかったのだろう。
しかしその実態が新人トレーナーの作ったチームで、かつエースが未勝利戦にしか勝利がないクラシック級のウマ娘と聞けば良くチーム作ろうと思ったなと思う子が多いわけで。
興味本位でオーサーのメンバーを調べてマジ?とざわついていたのだ。
『灰の神』スレイプニルの娘たる俺と教え子2人がそこにいるわけだからね。
自分で言うのもアレだが俺らは結構いい所、それこそ皇帝シンボリルドルフのトレーナーが率いるチームにもスカウトされていたし。断ってたけど。
「ぁ、あの〜」
その為、普段話すこともなかったクラスメイトからも声をかけられており、デジタルが毎放課あたふたしてて中々に愉快だったり。
時々逃げようとしたみたいだが、ステルス率が0%のため発見されて詰め寄られていた為とりあえずデジタルが入れる大きさの段ボールを用意しておいた。
それが功を制したのか俺の席の後ろ、教室の片隅に置いてある不自然な段ボールの中に隠れていても見つからなかったし。
やっぱりダンボールってすげぇな。伝説の傭兵が使うだけあるわ。
ただ、心配なのはこのステルス性のブツを変態に与えてしまった事である。
ペンライトの様に虚空から段ボールを取り出して、何処でもステルスしてウマ娘をストーキングしないか心配だ。
というか、気が付かないウマ娘さんサイドも心配なのだが。
「も、もしも〜し?」
まぁそれでも、先週行われたクラシック三冠路線最初の皐月賞をテイエムオペラオーが勝利した事で既に話題は逸れていったが。
向こうでは年間無敗かつ史上初の秋シニア三冠馬の印象が強かったため忘れていたのだが、そういえばクラシック級G1では皐月賞を勝っていたな。
確かこの世代だとダービーをアヤベさんことアドマイヤベガが、菊花賞をNTRことナリタトップロードが勝つんだっけな。
オペラオーはアプリで初めて追加されたキャラだった関係で、めちゃくちゃ引いたんだよなぁ。懐かしい。
まぁ、だからと言って今は何の関係もないんだけども。学年一つ上だし接点がないし。
「はぁっ、ふぅっ、すうっ」
俺もレースに出てG1に行けば、いずれ相対するだろうが。
年間無敗という史実バフを受けた世紀末覇王に挑むのも楽しそうではあるが、今のところ予定は無いけど。
クラシック級でジャパンカップにも有馬記念にも出る気はないし、早くて春シニアの何処かだろう。
まぁ、それ以前にデジタル関係で会いそうではあるけど。
デジタルがクラシック級の時に宝塚記念でイベントあったし。
そういや、あの時ってたしか誰かの応援だったっけな?あ、そうだドト
「すいませぇぇぇぇぇん!!!」
「うぉっ!!?うるさっ!?デッカ!!?」
噂をしたらなんとやらと言うべきか。
あまりのうるささに振り返れば、ぐるぐるお目目の鋭利な鎌のようなアホ毛が特徴的な世紀末覇王のライバルたる名将がそこに。
あ、いや、まだ名将になってないんだっけな。
確かシニア級上がる前ぐらいに本格化するんだったような気がするが…。
あとはまぁデカイ。そこの主張が強すぎて無意識に視線を取られるレベルで。
「はわわわわ……すいませんすいません!」
「いや…あの、何か用です?」
「あのぉ……ハンカチ、落としてたのでぇ…」
「ん、あ、ホントだ。こりゃどうも」
赤べこ人形よろしく頭を下げるメイショウドトウ。揺れる胸部も怒涛。
そんなドトウから差し出されたのは確かに俺のハンカチ。
トレーニングコースで手を洗った時だろうか?ここまで結構距離あるけど、わざわざ追ってきたのかね。気づかなくてごめん。
「お礼になるかわかりませんけど、ポッキー食べます?」
「あ、はぃ…!いただきますぅ!」
「ん、なら箱ごとあげますよ。
転んで粉砕しても最後までチョコたっぷりです」
「…あのぉ、もしかして私のこと知ってますぅ?」
「はい、メイショウドトウ先輩ですよね?
まだ本格化してないのにデビューしてて、重賞も勝ってるんでしたっけ?
ちょっとだけツキが悪いのも知ってます。
レースに出る以上みんな頑張ってるけど、ドトウ先輩は本格化してない中で戦ってて素直にすごいなぁと思ってますよ」
アプリ版だと通常ドトウが引けなくて、ハロウィンドトウしか引けなかった思い出。
メイショウドトウは、ヤギの王だったり、タヌキと同居してたり、ネコに遊ばれてたりと動物とほのぼのしているイメージが強い。
そのためハロウィン固有のタヌキにはほっこりしたものだ。
まぁ、実馬の映像が良く流れてきてたのもあってなおの事、動物たちの王のイメージが強い。
「そ、そうでしょうかぁ…?オペラオーさんは皐月賞を勝ってますし、私なんてデビューからトレーナーさんにたくさんたくさん迷惑かけちゃったから、そろそろ見捨てられる頃でしょうし…」
「…ん?見捨てられる??」
「私、もういらない子だから。
これからは…1人で頑張っていかなきゃって、こっそりとさようならを…」
ドトウの背中には大きめのリュックサックがあり、中身はわからないがおそらくトレーナー室に置いていた私物なのだろう。
えと、どこからコレは突っ込めばいいんだ?
とりあえずトレーナーとの契約についてか?
1人で頑張るって荷物まとめてどっか行こうとしてることか?
トレーナー室からの家出になるのか…?何にせよ止められると思うが。
「えっと何があったか知らないですけど、こっそりと逃げ出すような事するとトレーナーさんが理事長に呼び出しされると思いますけど大丈夫です…?」
「でもぉ……」
「とりあえずトレーナーさんとは一度しっかり話をした方が良いかと。
1人で行くのが怖いならついて行きますけど、どうします?」
「うぅ……おねがいしますぅ」
ーーー
「ってことがあってな」
『いやぁ、本格化前で悩んでるドトウさんのことは知っていましたが、声をおかけしていいものかと思ってましたので。
グッジョブですよ、レイさん!』
あの後、ドトウのトレーナー室に向かったら慌てふためくトレーナーの姿があり、ドトウはしっかりと怒られた。
俺が見捨てるわけないだろうとトレーナーに説得され、落ち着いたドトウは荷物を戻しそのままトレーニングに。
俺は休みのためそこで別れ、なんとなく購買で即席ラーメンを買って中庭で食べている。
ついでにネタ提供としてデジタルに電話もしている。
器もなければ具材もなく、袋にお湯を入れて作る即席ラーメンはどうしてこうも美味いのか。
匂いにつられたのか何処ぞのロイヤリティあふれるウマ娘が顔を見せたので、コレが本格庶民派インスタントラーメンだと知らしめておいた。
なお今現在、反対側のベンチで食している。いいセンスだ。
『…醤油の匂いに麺を啜る音。時間的にも小腹が空いてきますね
デジたんは袋のままの即席ラーメンを食べた事ないんですけど、美味しいので?』
「ん、美味いが?そんなに気になるなら食ってみるか?
そういやデジタル、今何してるの?」
『今ですか?…ウマ娘ちゃん観察中です』
「あ、いつもの。例の装備は役に立ってるか?」
『ええ、それはもう!最初こそすぐにバレると思ってましたが、こうもバレないとは思いませんでしたよ』
「ま、中庭にいるからキリがついたら来いよ。作ってやる」
『いえそこまでしてもらわなくても、一口貰えれば』
「……ん?」
今、会話おかしくなかったか?
なんかもう居るかのような口振りに聞こえたが……。
……あれ、ベンチの横にダンボールなんてあったっけ?
「お待たせしました。一口もらっても?」
「ぉ、おう……。使いこなしてるようで、何よりだ…?」
ガバッとダンボールが持ち上がって、中からマイ箸を持ったデジタルが。
変態にダンボールを与えてはいけない。
今日1番の学びであった。
何故かYouTubeでスネークのス○ブラx参戦のムービーが流れたので。
いや、なんで…?