俺と勇者と英雄 作:英雄譚に魅入られた者
交換チケットはもちろん購入したんですけど、誰にしようか悩みますね。
アヤベさんにシャカールにスイープにブライトにイナリに…
あ、もちろんシービーは引きました。
感謝を込めて天井まで、当たり前だよなぁ!?
5月後半。
ダービーはアドマイヤベガが勝利し、オークスは梅野さんの勝利で終わった。
梅野さんイズ誰。
正直知らない子だから、へー、ふーん程度であるのは否めない。
全校生徒2000人を超えるこのマンモス校たる中央トレセン内を探してみてもいいのだが、ちょっとばかりイベントが控えているから自重している。
端的に言えば来月にデビュー戦がある。
もちろんデジタルもだ。
俺は芝2000メートルの中距離、デジタルはダートの1600のマイル。
とは言っても心配や緊張といった精神的な負担は特に無かったり。
アプリと同じような成長をしている俺らが負ける訳がないのである。
いや、アプリでもデビュー戦で時々負ける事はあるけどさ。
ステータス的な意味では足りてるし、そこら辺はゲームという事で運だったと割り切って本番では慢心しなければ大丈夫だろう。
梅野さんはまぁ…機会があれば出会えるだろうし。
と言うかデジタルに聞けば1発だと思う。謎の安心感。
2000人超えのウマ娘の動向を把握してるって、花屋さんも驚きのスペックだと思うんだけど。
黒沼トレーナーにもそこんところどう思うのか聴いてみたいところだ。
「どーじょーやぶり、だよ!」
トレーニングコースの一角にて。
何やら盛り上がっていたので何があったのかと見てみれば、ウララが手当たり次第に声を掛けて模擬レースを行っていた。
なお、結果はお察しの通り。
まぁ、そもそもここ芝だし。
息も絶え絶えになってゴールして倒れ込んでも、笑顔で相手を称えてまた次の相手だーと意気込んで行こうとしたので声を掛けたのだ。
「道場破り…?見てた感じ手当たり次第で、どっかのチームを狙ってるように見えなかったんだがそういう意味合いじゃないのか?」
「うん!昨日ね、漫画で見たんだけど、『たのもー!』って戦いを挑んで、強い人をばったばったと倒していくの!
『それが強くなるための道だ』って漫画で言ってたから、わたしもやってみることにしたんだ」
「あー、なるほど?目と目が合ったらバトルの合図的な方か。
で、やってみてどうよ。逆に倒されてるようにしか見えなかったけど」
「でも次は勝てると思うよ!なんかそんな気がするんだよね!」
「なんでだろうな、手持ちの金額がどんどん減ってるのに賭け事をしようとするヒトの姿が浮かんだのは。
けどまぁ、別に止めはしないぜ?どちらにせよ絶対はないからな」
俺はやった事ないからわからんけど。
それに、もしかしたらウララが勝つかもしれないし。
まぁその場合、相手となる子もダート専門でステイヤー寄りの脚質だと思われるが。
残念ながらダートに長距離はないけど。
ダート主体のアメリカだとあるのか?どちらにせよそんな所を走る子が今、ここに居る事はないだろう。
「あ!スペちゃんだ!スーペちゃーん!」
「あ、ウララちゃん。ウララちゃんもトレーニング?」
「うん!新しいトレーニング思いついたんだ!スペちゃん、たのもーっ!」
「え、頼もう?えっと……?」
少し目を話した隙にウララが次なる相手を決めたようで、名を呼びながら手を振るう。
ウララの視線の先を見てみれば、おそらくトレーニング中のスペシャルウィークの姿。
向こうも呼ばれたことに気づいて走ってきてくれるあたり優しいね。
というかこれ、ウララのストーリーであったなぁ。
ま、俺というイレギュラーが介入させてもらうんですけどネ。
「模擬レースの申し込みってところですわ、スペシャルウィーク先輩。
ちょっとばかり漫画に影響されて真似してるだけなんで、そこんところは流してもらえれば」
「あっ、えっと…貴女はレギンレイヴさんでしたっけ?」
「おっと。はじめまして、でしたね。
オーサー所属のレギンレイヴと申します。
先月の天皇賞・春の活躍はテレビで観させてもらいました。
月並みの言葉ですけど、おめでとうございました」
「ありがとうございます!
えっと…模擬レース……」
「そうそう!レースだよ、レース!走ろうよスペちゃん!」
「あー…スペちゃん先輩、ウララの適性とかはこの際気にしないでもらえれば。
レースという名のトレーニングですし、楽しんでやれるのが1番なんで」
「えーっと…それじゃあ、走ろうかな。よぉし、けっぱるべー!」
「んじゃ、合図は俺が出されて貰いますわ。準備はいいか、ウララ?」
「ん?レイちゃんも走らないの?」
いや、そんな不思議そうな顔されても。
どーじょーやぶりは別門のウマ娘相手だろうに。
「レギンレイヴさんもぜひぜひ!」
「いや、でも…」
「レイちゃんも走ろうよ!みんなと走れば楽しいよ?」
「…どーじょーやぶりじゃなくて、こりゃ辻バトラーだぜ。
ったく仕方ない、参戦させてもらいますわ。
合図は…まぁ、ウララに任せるわ。というか距離はコース一周?」
「うん!じゃあ、位置についてぇー、よーい、どん!!」
ーーー
「いやぁ…負けた、負けた!
やっぱりG1獲ってるウマ娘はつえぇや」
模擬レースの結果、スペシャルウィークに一歩及ばず。
まぁ、一歩どころか2〜3秒ぐらいの差はつけられたけど。
現役のシニア級のウマ娘にここまで追いつけているだけでも、だいぶ善戦した方だろう。
にしても、スペシャルウィークの最終コーナーからの末脚の凄さは知っているつもりであったがコレはなかなか凄い。
これが末脚から金スキルに昇格した全身全霊というものか。
デジタルじゃないが、特等席で見れて勉強になった。
あれ、勉強になるなら賢さトレーニング要らないのでは。これは賢さG。
「ありがとうございました、スペシャルウィーク先輩。
最終コーナーからの末脚は非常に勉強になりそうです」
「はぁ…はぁっ…ふぅ…。
息を切らしてないように見えますけど…」
「…ちょっと、距離的に短かったので。
あっ、息切れしてないのは決して手を抜いてるとかじゃないですからね。
マイルはどうしても全力を出しきれないか、スタミナが足りないかなんです。
脚質的に絶望的に合ってないというだけなので」
コースはウララに合わせている為、一周1600メートルのマイルだった事もあって俺は全力を出せず仕舞いであった。
決して手を抜いた訳じゃないのだが、現状だけ見ると格上の先輩相手に手を抜いて楽している生意気な後輩に見えるのである。
違うからね、違うからねスペちゃん!
ん?というか、ウララ……あっ。
「ぜぇ……ぜぇ……ごおるうぅ〜……。
も、もうダメぇ〜……」
「ああっ!?ウララちゃん!?」
「ふんっ…!お疲れ、ウララ。良く頑張ったな」
どうやら俺らがゴールした後も最後まで全力で走っていたようで、ゴールを抜けた途端崩れるように倒れ込んだ。
ウララが居ない事に気づいて探していた事もあっていち早く飛び出せた結果、スライディングキャッチに成功し腕の中にウララを収めれた。
胸部装甲がロブロイほどは無いが、そこそこあるから衝撃は吸収できてると思いたい。
何処ぞの最速の機能美や漆黒の追跡者、万能オタク娘の様に絶壁ではないのだよ。
だからといって、えへへーと頬を擦り付けるのはやめて欲しいが。
実は余裕あるなウララ?頑張りに免じて甘やかすけど。
「ふぅ〜、倒れる寸前だったよ!」
「いや、寸前じゃなくて倒れてるが。
俺の華麗なるスライディングキャッチはファインプレーだぞ」
「ですよね…。ウララちゃん大丈夫?」
「うん!ヘロヘロだったけど、もう大丈夫だよ!
それにしてもスペちゃんもレイちゃんもやるね〜!さすがわたしが見込んだ相手なだけあるよ!」
「ぉ、おう…」
「ありがとうございます…?」
よっこいしょと声に出しながら立ち上がるウララは屈託のない笑顔であり、もう大丈夫と言うだけあって呼吸も整っており脚に異常等は見当たらない。
回復速度だけ見れば俺らよりステイヤー。大丈夫、長距離走る?有馬行く?
そして見込まれた相手たる俺らは互いに苦笑いを浮かべていた。
互いにウララの存在を忘れて模擬レースしていたなぁと。こればかりは反省。
「でも今度はきっと負けないよ!
ダダダーって、走る2人を見て私もできる気がしたんだ!
だからまた一緒に走ろうね、スペちゃん!レイちゃん!今度はどーじょーやぶるよ!」
「はい!また走りましょう!」
「おーう、今度はチーム練習の時にでもやるか」
「えっへへ!約束ね!よーし、次は誰にどーじょーやぶりしようかなぁ〜。
あっ!キングちゃんだ!キングちゃーん!たのもー!!」
「あっ…行っちゃった。
…やっぱりウララちゃんはすごいなぁ。
どんな時でも元気いっぱいで明るくて」
どーじょーやぶりは動詞。動詞かな、うん。
そんな事考えていれば、何処からか上品な高笑いとその高笑いの主を称えるコールが聞こえてきてウララはそちらに走って行ってしまった。
まぁ同室だし、面倒見のいい王様の事だからきっと引き受けた上でしっかりと返り討ちにするだろう。
そして変なトレーニングを思いついたウララを笑うことなく、おバカさんと言いつつも努力してる姿を励ましてくれそうだ。
やっぱりキングはカッケェよな。
顔も性格も出自も良くて、諦めだけが悪い女と言われるだけはある。
どこかの世紀末覇王よろしく、他人のシナリオでも株を上げるのは何故なのか。
軽率に推すからな俺もデジタルも。覚悟の準備をしておいてくれよな。
「ま、いつも前向きって感じですよね、ウララは」
「そうなんです!私なんてレースで負けるとダメだな〜って落ち込んじゃったりするんですけど…。
ウララちゃんを見てると、私も頑張らなきゃって元気をもらえるんですよね」
「ははっ、俺はまだレースに出てないんですけど…負けは人並みに経験してますからよくわかります。
けどウララの走る事が楽しいって言う気持ちが、忘れちゃいけないものなんだなぁって常々思うようになりましたわ」
偉大なる母上は常に大差をつけて前を駆けている。
横に並ぶどころか影を踏むことすらできず。
速さで敵うことの無い存在がいるとわかってても走り続けられるのは、やはり楽しいという気持ちがあるからだ。
初心忘れべからずと言うけれど、ヒトからウマ娘になって走りという部分が初心になると常々思わされる。
まぁ、知ってるウマ娘と出逢えてテンションが上がるからというオタク的性もあるにはあるけど。
「ってことで。
ウララを見習ってこの後のトレーニングも楽しく頑張りましょう、スペシャルウィーク先輩」
「はい!…あっ、そういえば来月デビュー戦でしたよね?応援してます!」
それでは、と駆け出していくスペシャルウィーク。
サラッとデビュー戦の予定を知られている感じ、何気にシニア級にも目をつけられてると思うと恐ろしいね。
ただ今は。
清々しいこの気持ちのままトレーニングをこなそうと思う。
風と共にターフを駆ける、今日この頃。
進化スキルにもヒントレベルにも夢の輝きを使うので大変ですね。
周回たのちい。
ボックスがロブロイでいっぱい夢いっぱい。
なおオタク娘が勇者にジョブチェンジしてシナリオレコード(UF2)で草はえました。流石ダァ