俺と勇者と英雄 作:英雄譚に魅入られた者
そしたら無料分から普通におはようございますされました。
ちくせう。
6月前半。
マイルG1の安田記念が行われエアジハードなる子が勝利した。
アプリにいないと知らない定期。
でもデジタルが走りで一目置いてるから、多分なんかまた勝ちそうである。
にしてもエアか。
エアシャカール、ホント見ないんだけど存在してるんだろうか…?
というかエアグルーヴやエアシャカールと同じエアであるが、おそらく何の関係もないんだろうな。
ナリタタイシンとナリタブライアンのナリタが被っているが血の繋がりがあるわけじゃないように。
メジロとかシンボリのように分かりやすいと良いんだけどね。
なおアプリ版でモブウマ娘として出てきていたリボンやステップといった冠詞をもつウマ娘は大体名家であるからわかりやすくて助かる。
付き合いはまるでないけど。悲しき友好関係。
「あ、いや居るわ。
メジロマックイーンとかの様な名家のお嬢様感がまるでないから忘れてたわ」
ふと、チーム練習に参加するようになったウマ娘を思い出す。
春先に不審者から助けた事で縁ができたアイボリーシュシュである。
彼女は名門シュシュ家のウマ娘であるが、出会いがアレだった事もあり俺の前では普通に年頃の女の子として振る舞うから忘れていた。
それにアイボリーシュシュとは同じ追込脚質でスタミナが自慢という事で意気投合しており、トレーニングを共にしているからでもある。
というか他の名家のウマ娘たちも普通に年頃の女の子のようであり、マックイーンやダイイチルビーの様なお嬢様オーラ全開の方が珍しいのだが。
ターフ上で紅茶キメるお嬢様はやっぱちげぇわ。
「にしても……今からレースだって言うのにこの雰囲気はねぇ…。
いや、俺のせいだって言われりゃその通りなんだが…」
控室から地下バ道に出てきたわけだが、雰囲気がお通夜状態である。
先に出てきていたウマ娘も見るからにテンションが落ち込んでいた。
まるで最初の街から出た途端にラスボスと戦うハメになって逃げるを選べない負けイベントを背負った村人のように。
大事なレースなのに勝ち目がない相手を引いてしまったかと言うように。
レースに絶対はない、とは気休めだと言わんばかりだ。
まぁ、あえて言おう。
勝ちたいとか、なんとか勝つぞと思う子がいない時点でここに相手になるような子は居ないと。
つまらんから全員ぶっちぎって差を見せつける事にしよう。
最初から勝てないと下を向いて挑まれるのは無性に腹が立つし、この怒りは当然だろう。
だから八つ当たりをかねて、共に走る、いやただレースを走りに来たウマ娘には絶望を与えよう。
たとえ勝てないと分かっていても立ち向かう事をやめたらどうなるのか、身をもって知るといい。
勇者や英雄と言った主役になる資格もないただの村人に救いはないのだと。
……なんか、俺、魔王っぽいな?
ーーー
『ゆったりと流れる美しい雲、青空広がる中山レース場。
前日に降った雨のため絶好とは言えない稍重発表になりました』
『このぐらいのバ場の方が合っている子もいますからね』
ゲートに入り実況を聞けばどうやらバ場は稍重らしい。
俺としては芝は良バ場以外は滑る可能性があって好きではないのだが、こればかりは天候次第だし仕方ない。
『3番人気はこの娘です、2番ブリーズプレーン。
2番人気を紹介しましょう、5番アンチェンジング。
さぁ!今日の主役はこのウマ娘をおいて他にいない、1番人気はレギンレイヴ!』
『私も1番期待しているウマ娘、気合入れて頑張って欲しいですね!』
『ゲートイン完了、出走の準備が整いました』
そうは言うが俺以外が気合い入ってないレースとか、ちょっとばかりやる気は下がる。
2000メートルは中距離であるもののやはりまだちょっと短いため、スタミナ的には余裕が出そうである。
いかにスタミナを使いきれるかは課題なのだが…そこら辺はまぁ、普段のトレーニングで頑張るとしよう。
とりあえずこのレースに関しては、逆噴射しない程度に使い切る事を考えてぶっちぎってやろう。
ーーガコンッ
『スタートです。
各ウマ娘、きれいなスタートを切りました』
『これは位置取りが熾烈になりそうですね』
『先行争いは2番ブリーズプレーン、3番ドロッピングリンク、1番フンアープ』
ゲートが開き各ウマ娘たちが飛び出していくのを見送るように後ろに下がって様子を見る。
どうやら見た感じ、逃げが4人、先行が2人、差しが2人、追込は俺1人といったようで、逃げの4人のハナの奪い合いで序盤にしては少し縦長の展開になっている。
『先行集団を見ていきましょう。
さぁ、激しい先行争いで前に出たのは3番ドロッピングリンク
1番フンアープ続いている、はやくも激しい競り合いだ!』
逃げの4人、ハナの奪い合いでペースが上がっているのに気づいてないのか?
スタミナに自信があるならいいが、ないなら冷静になってハナを譲って下がったほうがいいと思うが。
最後までこのペースを保てるなら見事なものだが、無理だろうな。
『さあ1コーナーから2コーナーへ向かっていくウマ娘たち。
先頭を行ったのは1番フンアープ、2番ブリーズプレーン並びかけてきた。
外3番ドロッピングリンク、さらに外をまわります7番リボンミンネ。
ここまでが先頭集団、2番ブリーズプレーン快調に飛ばしていきます』
『2番ブリーズプレーン、先頭を進みますがこれは正解でしょうか?』
『2番ブリーズプレーン、彼女の脚質にはあっていますね』
2番以外が垂れて先行のラインまで落ちてきたか。
残り半分ぐらい、そろそろ仕掛け所だな。
逃げ4人の足はもう残ってない、先行2人もペースに呑まれて絶望的、前2人は足は残っているからこの2人がどれだけ伸びてくるか、か。
『2コーナー回って向正面、おおっとここでシンガリ9番レギンレイヴが上がってきた』
『意気揚々と先頭を行きます2番ブリーズプレーン!どうでしょうか、この展開?』
『掛かってしまっているかもしれません。
息を入れるタイミングがあればいいですが』
アクセルを回すように徐々に加速していき、1人また1人と抜いていく。
第4コーナーから最終直線にかけて、我が母上から継承された固有たるあの加速の発動条件を満たす為内ラチ側ではなく大外へと向かっていく。
『第4コーナーを進んで直線に向かう!』
『ここからスパート!一気にレースが動きます!』
『さぁ、いよいよ直線だ!どのタイミングで誰が仕掛けるのか!?
中山の直線は短いぞ!うしろの娘たちは間に合うか?』
先頭を走っていた2番の娘が視界の横に映る。
やる気が無かったにしては良く走ったな。
だがしかし、俺の怒りを鎮める程ではなかった。
さぁ、共に走っただけのお前達に絶望を与えよう。
母上から受け継いだ加速の条件は揃えた。
ここに俺の固有たる加速も乗せよう。
とは言ってもただ全身全霊で駆け抜けるだけなんだけど。
『最後のコーナー、最初に駆け抜けてきたのは9番レギンレイヴ!
レギンレイヴ抜け出した、レギンレイヴここから一気にちぎるか!脚色は衰えない!!』
軸脚で力一杯に踏み込みながら膝を曲げ、力任せに90度足を捻りながら蹴り出して前に跳ぶように駆けるように1歩。
飛び出した勢いを殺さぬよう、頭を下げて体勢を低くした上で地面と平行に飛ぶかのように2歩。
前傾姿勢になりすぎて地面に墜落するかのようになった体勢を戻すための3歩。
体勢が安定したら残りは力任せに足を振り抜いて駆け抜けるのみ。
音も歓声も怒りもここに置いていく。
『残り200!速い速すぎる!!先頭はレギンレイヴ、変わらない!
レギンレイヴ!強いとしか言えない走り!次のレースが今から楽しみです!
レギンレイヴ!デビュー戦にて勝利を飾った!
2着4番サンドコマンド、3着6番メカニカルベイパー』
風と共にゴール板を駆け抜ける。
ゆっくりと速度を落としていきながら後ろを一瞥してみれば、後続の娘がゴールする所であり、やはり続いてゴール板を抜けたのは差しの2人であった。
走り切ったばかりだからか疲労が見えるが、それ以上に顔色が悪いのはやはり掲示板に書かれた大差の文字のせいか。
完全に速度を落として止まり、大きく息を吸い込んで一息に吐いて整える。
あぁ、やっぱりスタミナを使い切る事はなかったか。
そしてそのまま後ろを振り返る事なく勝利の余韻に浸ることなくただ前に向かって歩く。
歓声には応えるように手を挙げるが、やはりこの胸に感じるのは怒りに身を任せて八つ当たりをした後の虚しさと寂しさ。
わかっていたさ。
こんな恵まれた丈夫な身体に機械仕掛けの馬を魂に取り込んでいて、才能という言葉だけじゃ足りない能力を持っていれば圧勝する事ぐらい。
でもさ、やっぱり勝負はして欲しかったなと。
マルゼンスキーもこんな感情を抱いていたのかなぁ。
「あぁ、やっぱりレースは好きじゃないな」
呟いた独り言は歓声にまぎれて消えていった。
蹄鉄交換で夢の輝きが10個交換できてウハウハでしたわ。
いやぁ!育成が捗るなぁ!!
女神システムむっず。