俺と勇者と英雄 作:英雄譚に魅入られた者
「えっ!?レイさんもデジタルさんもスカウト断っているんですか!?」
「まぁ色々と思うところがあってね。
一緒のチームに入りたいって言うのは嬉しいけど、しばらく決まらないと思うから、それまではトレーニングは教官の元でになると思うよ。
それに、もしかしたらデジタルとは別のトレーナーになるかもしれないし」
校庭の桜並木を見ながらロブロイと歩く。
やはりと言うべきなのか昨日、ロブロイの元にもスカウトが集中したらしい。
しかし、俺かデジタルがいるチームに入りたいと断ったとの事。
だが俺らはスカウトを受けておらず、専属どころかチームすら入っていない。
どうやらロブロイは、俺らはすぐにスカウトされて一緒のチームに入っているはずと踏んでいたようだ。
確かに俺とデジタルは同い年で、小学校ではほぼ一緒にいたけど。
実際にレースを走ることになるトゥインクルシリーズでは、お互いにあったトレーナーを見つけて走ると思わない?
まぁ、実際のところはデジタルがトレーナーを見つけたらついでにお願いしようかなぁとしている俺である。ロブロイ、正解。
とは言っても、そのトレーナーに面倒見切れないとか言われたらどうしようもないのである。
そうなったら、なんか出会いがあったら契約するんじゃない?知らんけど。
なおデジタルはアプリよろしく、芝の子かダートの子か選べるわけがないじゃないですか!という事でスカウトを断り、選抜レースも出ていない。
さらにアプリ準拠で行くなら、デジタルは新人トレーナーに出逢い、芝もダートも走ればいいんじゃね?オールラウンダーで行こうぜ、と丸め込まれるはず。
そう、新人トレーナーに。おそらく、そうなるとチームではなく専属になる可能性が高いのだ。
「まぁ、俺としてもデジタルがトレーナー見つけたら、ついでにお願いしてみようかなぁとは思ってるケド。
それ以前にいいトレーナーが居たらスカウト受けるかもしれないけどね?」
「その時は私にも教えてくださいね。また、私だけ置いていかれたくないので」
「ふっ……未来の英雄様はずいぶん寂しがり屋だなぁ。
ま、置いていかねぇよ。
ロブロイは可愛い妹分なんだ、しっかりと面倒みてやるさ」
昨日のレクリエーション後に聞いた話では、やはり俺らが一年先にトレセンに行ってしまって寂しかったんだと。
ちょっと潤んだ目で見上げてくるロブロイの頭の上にぽんと手を置いて、気持ち優しめに撫でる。
長い耳がピンと伸びたと思えばぴこぴこと左右に揺れる。表情も嬉しそうに笑っている。
いやぁ、可愛すぎるな、我が妹分は。
「あっ、レイちゃんだ!やっほー!!」
「おっ……?ウララか、あまいぞ!そぉい!!」
「えっ、えええっ!?れ、レイさん!?」
「あははははっ、たっかーい!」
桜並木の反対側から呼ばれて見れば、桜に負けないピンク色の元気娘がこちらに向かって走ってきていた。
止まるつもりはないようで、腹に突っ込んでくる弾頭と化していた為、とりあえず横に避けてからウララの脇に手を入れ、真上にぶん投げた。
ダイナミック☆高い高い、である。
桜とウララが舞う花見、うーん、春だなぁ。
「っと。元気だな、ウララ」
「えっへへ!今日のお昼ご飯がにんじんハンバーグだったからね!元気いっぱいなんだ!」
「え、えっと……?」
「あぁ、この子はハルウララ。俺らの一つ上の先輩。よくこうして遊んでるんだわ」
「レイちゃんの高い高いは、ほんとに高くて空飛んでるみたいで楽しいんだよ!えっと、確かライスちゃんと同じ部屋の…善のロブロイさん!だっけ?」
「なんかイントネーションが違う気がするし、それだと悪のロブロイもいそうだな」
「そ、そうですね???はじめまして、ゼンノロブロイと言います」
「わたしハルウララ、よろしくね!」
落ちてきたウララを抱き止めると、腕の中で花が咲いた。
一つ上の先輩なのだが、どうしても年下の子にしか見えん言動をするため、そう言う扱いをする事にしている。
まぁ、ウララもそれで喜んでるしいいでしょ。
威厳?ウララにあるのは天然の愛嬌だ。これはファンも爆増しますわ。
そんな中、戸惑っていたのは善のロブロイ。
突然ウララが突っ込んできたかと思えば、投げられて、腕の中に収まったのだから。
それに2人は初対面だろうからと、先輩だと紹介したところで少し目が開いたので、先輩だとは思っていなかったようだ。
ところで、何で俺の手を見て、桜を見て、腕の中に収まったウララをみて、ちょっと物欲しそうな目で俺をみる?高い高いされたいのか???
もう少し欲望に忠実になって悪のロブロイになってくれてもいいんだよ?俺も役得だし。
「そういや。ウララ、今日はトレーニングないの?トレーナーは?」
「んーとね、トレーナーはねトレーニングコースで走ってる子を見てくるって言ってた。ウララはおやすみなんだ!」
「なるほどね?……ウララのとこ、チームできるの?」
「え、チーム?なんで??」
「だって、ウララ専属のトレーナーさんが他の子を見に行くって、担当を増やすってことだろ?」
「そうなの!?やったやった!チームってみんなで走れるって事だよね!」
「まぁ……なんだ、わからんけどな?そればかりはトレーナーに聞かないと」
話しながらも脳裏によぎってしまったのは、ウララ専属の契約を打ち切って、新たな子のスカウトをしている可能性があると言うこと。
ウララのトレーナーは去年入ってきた新人トレーナーであり、それなりに結果を出せている新人トレーナーなら担当がもう1人増えてもおかしくはないのだが。
ウララはなんといっても足が遅い。いまだに勝ち星はなく、よくて掲示板入りがやっとなのだ。
ウララのトレーナーは、若くて歳の近いお兄さん的な雰囲気をしていて、とてもウララを大事にしているからそうであってほしくないという気持ちはある。
けど、トレーナーとしてのキャリアを考えると、ウララ専属で上を目指せるかと言われると……誰が聞いても無理だと言うと思うわけで。
「…トレーナーのところに行って、聞いてみない?」
「うん!チームを作るんだったらウキウキするね!」
「んじゃ、ウララはトレーナーの元に案内するオペレーターさんね、っと!」
「おぉ!高い!!肩車だ!」
「……ん?あー……せっかく桜が綺麗に咲いてるし、ゆっくり見ながら行こうか」
腕の中のウララを肩に乗せて、トレーニングコースの方へ数歩進んだところで左袖を引っ張られる感じがした。
ちらっと見ればロブロイにつままれており、ちょっとだけウララに嫉妬しているらしい。可愛いかよ。
でも、ロブロイにお姫様抱っこや肩車したら恥ずかしがるでしょ……?
と思いつつも、とりあえずロブロイの手を取ってゆっくり歩いて行くことにした。
ーーーーー
「あ、トレーナーだ!おーい、トレーナー!!」
「ん?あれ、デジタル……?あぁ、ダイワスカーレットを見に来てたのか」
「ダイワスカーレットさんを、ですか?」
「そ。昨日見つけた推しだから仕方ない。推活はデジタルの原動力だし」
昨日ぶりに訪れたトレーニングコースには、当たり前だがいろいろなウマ娘たちがトレーニングに励んでいる。
行っているトレーニングもそれはバラバラで、ゲートだったり、普通に走ったり、瓦を積んで粉砕したり、ターフのど真ん中に将棋盤を置いてひとりで将棋打ってたりと。
あの白い奇行種はほんと自由にやってんな、流石はUMA娘。
そんな様子を一望できるのは上のテラスか、観客席だろう。
そして、ウララのトレーナーは観客席にいた。
どうやらデジタルと話していたようだが、俺らが声をかける前に走っていってしまった。
おそらく、ダイワスカーレットの追いかけに行ってしまったようだ。
昨日はロブロイとウオッカだけ見て、テラスから降りちゃったから見れてなかったもんね。
「っと、ウララどうしたの?」
「トレーナーに聞きたいことがあってきたの!」
「ん?何か伝え忘れたっけな?なんだい?」
ウララを肩から下ろしてやると、タタタタとトレーナーに突撃していった。
ウララが声をあげて呼んでいた事もあってこっちに気づいており、ウララの突撃を受け止めながら優しく微笑みを見せている。
いくら足が遅いとはいえ、ウマ娘の突撃なんだけどな?押し倒されてもおかしくないんだけどな?お兄さん、ウララの為に体張り過ぎでしょ。
「トレーナー、チーム作るの!?」
「え?そのつもりはないけど……?」
「あれ?担当を増やすんじゃないの?」
「ん、どうしてそう思ったんだい?」
「それは俺が言ったからだな。で、ちがうのか?」
「あぁ、君からか。うん、違うね。まぁ、増やしてもいいとは言われてるし、気になってる子はいるけど、好んで僕のところに来る子はいないと思うよ?専属のウララを勝たせてあげれてないし、実績もない上に、扱いとしては新人だからね」
「じゃぁ、ここへは何しに?スカウトだと思ってたんだが?」
「とりあえず、ダートを走る子でウララと並走を頼めそうな子がいるのかというリスト作り。あとはウララに良さそうなトレーニングをしてそうな子がいるかなぁって言う視察だね」
「……たしかに、普通にそう言うこともするよな、トレーナーなら」
スカウトばかりに考えがとられていて、トレーナーの業務を忘れていた。
そりゃ、他のウマ娘を見て、そのトレーニング方法とかを知るとか思いつくとかあるよね、アプリでもあったし。
ウララとの関係性を疑って、罪悪感に苛まれそうなんだが。
「あー…すまん、色々と勘繰って疑ってたわ。お詫びと言っちゃなんだけど、そのウララとの並走相手に立候補させてくれないか?」
「ありがたい申し出だけど、君って確か芝とダート共々走れるけど、距離は中距離と長距離じゃなかったっけ?
ウララはダートかつ短距離、良くてマイルまでしか走れないんだよ」
「大丈夫だ、俺、短距離ならいけるし。マイルはスタミナがまだ足りないけどね」
これは本当である。俺の適性は、短距離、中距離、長距離であり、マイルだけは全力で走りきれない。
そもそも中、長距離だったのだが、最初からロングスパートで行けばイケるとの母上指導の元でなんとか短距離適性を手に入れている。
脳筋思考のスプリンターです。ゲートから固有出してぶっ飛びます。
「そうなのかい?なら時間がある時にお願いしようかな」
「えっ!レイちゃんとトレーニング!?やったぁ!!」
「おう。まぁ、俺トレーナーまだ居ないし、いつでも良いぞ。なんなら明日でも良いけど」
「君に、トレーナーがついていないのかい?
……まぁ、何か考えがあるんだろうから、いい縁がある事を祈っておくよ。
そうだね、なら並走は早速明日にでもお願いしようかな」
「あ、あの!私も参加していいでしょうか!」
「ん、君は…?」
「ゼンノロブロイと申します。レイさんとは幼なじみで、よく一緒にトレーニングさせてもらってました。今年から入った新入生なので、トレーナーの指導というのを見学させて貰いたく存じます」
「丁寧にどうも。かまわないよ、授業が終わったらおいで」
「んじゃ、今日はこの辺で。また明日な、ウララ」
「またね!えっへへ、明日が楽しみだね、トレーナー!」
振り返り、歩いてきた道を戻る。
明日が楽しみだ。
「なんか、口数少なかったけど、どうした?」
「いえ……あの、普通にタイミングを逃してました……」
「あー……。明日は喋れるといいな?」
ロブロイよりウララ回になってしまった感。ユルシテユルシテ……