俺と勇者と英雄   作:英雄譚に魅入られた者

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今回はだいぶ感情重め。
かつ、オリ主視点ではないため注意。


3 今はまだ平凡なウマ娘の葛藤

私はアグネスデジタル。どこにでもいる平凡なウマ娘です。

 

幼なじみに神様と呼ばれるウマ娘から走りの才能を受け継いだ娘と、神様からも一目置かれているおそらく大器晩成型の天才がいて。

幼なじみでついでだからと、その神様に幼い頃から走りを見てもらっていたが為に注目されてしまっていますが、私は平凡なウマ娘なのです。

その証拠に先生から頂いたトレーニングメニューをこなしていても、幼なじみの2人の才能の前にはそれが普通のライン。

日々自主トレも考えてこなしていますが、あの2人の走りを見ると私はまだ追いつけないみたいで。

レイさんに追いつきたいがためにトレーニングを積み重ね、芝もダートも走れるようになりましたが、言ってしまえば養殖の適性。

1番近くで見てきたレイさんには未だ追い付かず、この前に見たロブロイさんの走りをみて、去年の自分があそこまで走れていたかと問われればと素直にいいえと答えます。

お二人があまり得意としてないマイルでは私に分配がありますが、全員が走れる中距離では、きっといつかロブロイさんにも追いつけなくなるのでしょう。

つくづく生まれ持った才能が違うのだと実感させられます。

 

「えっウソ…待って今度は併走!?さっきムカつくって言ってたのに!?」

 

けれどその様な胸の中に渦巻くような想いは、日々の努力と推活で塗り固めましょう。

たしかに走るのは好きで競うなら勝ちたいですが、その分彼女たちの努力もその時の煌めきも私は知っています。言わば一目惚れでした。

そしてその様な輝きを他のウマ娘ちゃんも持っているではありませんか。

幼い頃からそんな輝かしいものを魅せられ続けたら誰だってウマ娘ちゃんオタクになると思うんです。

それで変態扱いされても、元を辿っていけば、私をこうしたのはあの2人ですので。ええ、私は悪くないですとも。

 

「じゃあ、あれは本音の裏返し…!?ヒエェェ〜〜ッ!!これぞ禁断の果実、甘美と辛苦のマリアージュ!!」

 

「ちょっといいかな?」

 

「アッハイ!って、ウララさんのトレーナーさんでしたか。どうもどうも〜」

 

芝の上を走りつつも、先日から推しているダイワスカーレットさんの様子を見ていると、ライバル関係であるウオッカさんの事を思いながら走っており、なんと『ムカつく』と言いつつも併走に誘いに行くではありませんか。

 

はぁー!尊い!ただでさえ幻影相手に闘争心を燃やして走っているのに、今度は本物のライバルに対して並走に行くのはもう想いが溢れて止まらないからですよね!?

かかりぎみ?今はレースではないのでOKでしょう!

 

と1人休みを挟みながら萌えを感じていると、トレーニングコースに降りてくる足音とお声が。

トリップから帰ってきて振り返ってみれば、先日お会いしたウララさんのトレーナーさんでした。

 

彼はハルウララさんの専属トレーナーさんで穏やかな近所のお兄さんというような風評ですが、トレセン勤務2年目という若手トレーナーでもあり、時々その若手トレーナーだなぁと思わせるような熱意に溢れた姿を見かけられまして。

基本的にトレーナーさんはスーツ姿でバインダーやストップウォッチを持って見ているのですが、このトレーナーさんがジャージ姿でターフ上に降りて来ると、大体ウララさんと一緒に走っていたりします。

ただでさえ楽しそうに走るウララさんが、トレーナーさんと走ると満開の笑顔になるのですよねぇ……。

先日お話しした際はスーツ姿でしたが、本日はジャージ姿なのでこの後ウララさんと走るのでしょう。

 

むむっ、これは砂上に満開の桜が咲く予感が!

今日の自主トレの芝メニューは終わりましたし、見るもの全てを癒し悪しき不純な魂を浄化するあの笑顔を近くで見れるチャンスなのでは!?

 

「こんにちは、今日も元気そうだね。今日も芝とダートを走るのかい?」

 

「はい!トレーナーさんは今日もウララさんと併走ですね?いやぁ、あの笑顔を特等席で見せてもらえて羨ましいですなぁ」

 

「ははっ、ウララがやる気になってくれるし、僕も勝ちたいって言うウマ娘たちの気持ちに少しでも共感できる様になりたいからね。

まぁ、ウララに負けっぱなしで悔しいって言う気持ちの方が強いんだけど」

 

「あはは。あの純粋無垢で天真爛漫なウララさんとは言えウマ娘ですから。

それで、私に何か御用でしょうか?ウララさんのあの笑顔のためなら、お手伝いも喜んでいたしますが!」

 

「ありがとう。その気持ちは嬉しいけど、単に併走の誘いだよ。

昨日、君と別れた後に君の幼なじみの2人が来て、ウララと併走してくれる事になったから、君もどうかな?と思って」

 

「あー…レイさんとロブロイさんが居るのですか……ドウシマショウ」

 

普段なら両手を上げて喜んでお受けする話なのですが、レイさんとロブロイさんが居るとなると少し変わってきます。

嫌では無いですし、別に喧嘩をしている訳ではないのですが……気まずいんですよね。

 

「……何か悩みでもありそうだね?よければ聴くけど、吐き出してみる気はあるかい?」

 

「あはは……。なら、少しだけ話をさせてもらいますね。

自分、有難いことにスカウトを良くされるのですが、現状で芝かダートかどうしても選べないんですよね。

そもそもトレセンには、推しを間近で感じたいと言う不純極まりない理由から来ておりまして。

どちらかを選ぶともう片方は疎かになってしまうと思うと、ソレがどーーッしても嫌でして。

ウマ娘ちゃんへの愛は芝もダートも関係ありませんから。

ですが、それ以前に。この脚は。レイさんと走るために作り上げたもので、あの背に追いつくためのものだったんです。

去年までは推しを追いかけるのに夢中になってて何も考えていなかったんですが、今年に入ってスカウトされ始めて色々と考えてしまうのですよね。

夢に向かってしっかりと努力しているウマ娘ちゃんを見ていながら、私はいったい何をしていたのだろうと。

たしかに日々トレーニングを行い、研鑽は怠ってはいません。

しかし、当初の目的であったレイさんの背はいまだ遠く、それどころか離されている気すらします。

後輩のロブロイさんも走りに磨きがかかってて、嬉しい反面焦りを感じる自分がいます。

そんなお2人からみて、私は遊んでいるように見えるのではないでしょうか?

正直、トレーニング中には会いたくないのではないでしょうか…?

そう思うと、気まずくて気まずくて」

 

少しだけ話すつもりが、日頃からの不安を口に出した途端、塗り固めていたものが剥がれ落ちてしまったようで、止まらなくなった。

自分で思っている以上にどうも不安は大きかったようで、あの2人に拒絶されたらと思うと視界が潤んでくるのを感じる。

 

あぁ、これは気まずいのではなく、恐れているんだ、怖いんだ。

自分の非才さを突きつけられ、あの2人に見限られるのを。

 

零れてしまいそうな涙を隠すように無理に笑顔を作りましたが、決壊するまでに時間はかからないでしょう。

だからどうか今は、私を見ないでください。

 

「そう言うわけなんで、すいませんが今日の併走の話はお断りさせていただきます。

話を聞いていただきありがとうございました、お陰で少しだけスッキリしました。

では、今日はこの辺で失礼しますね」

 

深くお辞儀をし、逃げるように駆け出す。

後ろから呼び止める声が聞こえますが、脚が止まらないんです。

あはは、持ち堪えていましたがダメですね、もう止まりません。

なんだか寒くなってきましたし、この後に予定していたダートのトレーニングは中止ですね。

今日は大事を取って、部屋に帰って暖かくして寝ることにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして部屋に戻りベッドに潜るも身体中の震えや寒気が治らずなかなか眠りにつくことが出来なかった為、同室のタキオンさんが無理矢理眠る為に作成したと言っていた睡眠薬を一錠拝借し眠りについたのだった。




どうしてこうなった…?
曇らせは好きじゃないから、すぐに救済してやるからな……!


あ、短距離チャンミ用にロブロイ(短距離G)とデジたん(短距離F)を育成していたら、時間がかかった事をここに。
なお勝つのは、追い込みキングヘイロー。うーん無常。
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