にじよん 〜さいどえむ〜   作:希望光

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どうもおはこんばんにちわ。希望光です。
最新話放送前に3話に追いつけてよかった……と、いらん前書きはこの辺に、本編どうぞ!




前回のラブ↓ライブ!↑
後輩の安否確認しに行ったら、羞恥心爆発させられて推しに勉強見てもらうように頼まれて爆発した。


ミアと歩夢とホラー

 ——夏。長期休暇を携え、海や山、プールにお祭りなど様々なイベントを引き連れてくる。さてさて、そんなところに食い込んでくるのが肝試しなどのホラー要素。

 あの井戸から出てくる女の人とか、チェンソー持って追っかけてくる仮面男とかいっぱいあるよね。その辺全部見たからいけるけども。

 さてまだ夏でもないのに何故そんな話題を振ったかと言えば、本日もやってきてしまったスクールアイドル同好会の部室にその原因がある。

 

「ホラー映画の鑑賞……ですか」

「はい。さっきまでも見てたのですが、2周目か別の見ようって話になりまして」

「さっきまで鑑賞してたんですか」

 

 桜坂さんの説明に若干の驚きを見せながら返答する。ホラーの鑑賞って、結構ダメな人多そうだけどなこの同好会。具体的には高咲さんとかね。

 

「ええ。A・ZU・NAで表現の幅を広げる名目で見ましょうってことになって」

「なるほど。自分は構いませんけど……逆に聞きますけども、居て迷惑じゃないですか?」

 

 自分は高咲さんに借りてたものを返しにこの部室に足を運んだわけであって、もう用事そもそもは済んでるから早々にお暇しようとは思ってたんですよね。そしたらこの流れ。これいかに? 

 

「その辺は全然大丈夫だよ」

「あ、さいですか……」

 

 逃れられなさそうなことを悟った自分は、僅かに肩を落とす。すると優木さんがそれを見逃さなかったのかこんなことを投げかけてくる。

 

「玲さん、もしかして怖いの苦手でした?」

「怖いのは苦手、ではないですね」

 

 先にも述べたようにホラー映画自体は苦手ではない。寧ろ見過ぎて耐性ついてるまである。だから今回の問題点はそこじゃなくて、この部屋に残ることなんだよなぁ。

 

「なら見ましょう!」

「……そうさせてもらいます」

 

 元気よく促してくる優木さんの姿に負けた自分は、苦い笑みと共に承諾する。さてさて映画鑑賞する羽目になってきました本日なんですが……あ、部員全員で見るんですね。

 

「また見るのー?」

「今度はさっきとは違う作品ですから、楽しめると思いますよ」

「怖い話で楽しめるわけないじゃないですかー!」

 

 キャンキャンと嘆く中須さんと優木さんのやり取りを他所に、椅子を借りてしまった自分は漠然と画面を眺めていた。

 自分は……どうして、この位置に座っているのだろう。だって、端っこ借りたとはいえ、真っ隣が上原さんだよ? 死ぬが? 

 で、上原さんの隣が高咲さんで、その隣がミアさん。しかもその2人、既に怯え切ってるのですが。で、自分の真後ろが中須さんと優木さん。後の配置は忘れた。背後見てないから。

 

「じゃあ始めますよ」

 

 優木さんの台詞を皮切りに映像が流れ始める。表題を見るに和製ホラーではなく邦画。それも有名なタイトル。このシリーズは多分初めてみるね。さあ、どんな感じなのだろうか。柄にもなくワクワクしてきちゃった。

 そうして始まった映画は、主人公がまずポルターガイストに出会う導入で展開されて行く。

 ポルターガイストなんて随分とまあメジャーな現象を持ってくるじゃないですか。けれども演出としては結構凝っているので、評価は高め。良いと思います。

 

「も、ものが勝手に……!」

 

 後ろから三船さんの叫びみたいなのが聞こえてきた。あー、怖いのダメなんですね。非現実味がある話だから余計そうだよね……うん。

 さてさてさーて、ポルターガイストに襲われた主人公達はそれを皮切りに様々な超常現象に襲われ始めましたね。正味、ここまではテンプレ感あるけども、多分ここからの展開はだいぶ変わってくるはず。

 一抹の期待を胸に、より一層深く作品の世界にのめり込んでいく。お、ヒロインが怪異に襲われて連れ去られた……クォレハ……助からない流れか? 

 

「つつつつつつ、つれ、連れてかれたよ……!」

 

 高咲さんがわなわなと震え上原さんにしがみつく。ありゃ重症ですわね。怖さが臨界点を突破してらっしゃいますよ。とかなんとか思ってたら、ヒロインが怪異……というよりも悪霊に憑依されて主人公の前に出てきた? 

 

「あれ、これってホラーというより……?」

 

 ふと感じた違和感を無意識の内に言葉にした直後、自身の予想を大きく裏切る方向へ話が進んでいく。バトルものかと思ったらそんなこと無かった。普通にホラー。

 

「あああああ!」

「怖い、怖いよー!」

 

 後ろの方とか横の方から阿鼻叫喚が飛んでくる。このシーン普通に怖いわな。ちょっとゾクゾク来ちゃったよ。お、今度はなんだ。主人公を取り殺そうとしてるぞ? 

 

『俺の声が聞こえるか? 答えてくれ!』

 

 迫るヒロインを前に必死に呼びかける主人公。その姿に夢中になっていると、不意に強烈な眠気が襲ってくる。

 

「……?」

 

 あまりの強さに、一度瞼を閉じた自分が目を開くといつの間にやら部屋の中は薄暗く、同時に赤暗い色に染まっていた。なんだこの状況? 

 不思議に思いながらも辺りを見渡すと、自分以外の姿が見当たらない。置き去りにされた……わけないか。この一瞬で全員が揃って消えるなんて有り得ない、わけですしお寿司。

 

「……部屋を出るしかないか」

 

 ため息を吐いた自分はそのまま部室の外へ出る。その際、背後から視線を感じる。間髪入れずに振り向くが、そこには何もなくただ壁があるだけであった。

 

「……見られてた?」

 

 首を傾げながらも真っ暗な廊下を1人歩いて行く。すると突然、カツン、カツンと足音が聞こえてくる。こんな場所に、自分以外にも人がいるのか? 

 なんてことを思っていると、目の前の曲がり角から足音の持ち主が姿を表した。

 

「……レイ!」

「ミアさん?」

 

 何故だか現れたミアさんに驚いていると、彼女がこちらへと駆け寄ってくる……って、勢いそのままに抱きついてきた? 何でやねん。

 

「ミアさん……?」

「よ、良かった……I'm so afraid……」

 

 怯えた様子でこちらにしがみつくミアさん。呟きとか聞く感じ、怖かったことがよく伝わってくる。……冷静になるとこの校舎変だし、怖くなるわな。

 

「皆さんは?」

「I don't know……気が付いたら1人で」

「そうでしたか……」

 

 ミアさんの言葉を聞いた自分は思考を張り巡らせていく。ふむ、聞いた感じだとミアさんも自分も同じ状況だったみたいだ。けど、スタート地点が1人だったってことは、別々にここに入って、偶然出会ったってことだもんな。

 

「うーん……とりあえず校舎から出ましょうか」

「う、うん……」

 

 ミアさんが頷いたのを確認し、出口目指して歩いていく。見慣れてる校舎だからすぐに出口に着くと思ってた。けれども現実はそんなに優しくなかった。

 

「……」

「レイ? どうかしたの?」

「ここ、さっきも通りました」

 

 5分前に揃って歩いたところを何故かもう一度歩いている。まるで同じところをぐるぐると回っているみたいに。

 

「え、けど道は真っ直ぐだったはず」

「そうです。どこも、曲がってはいないんですよ」

 

 今自分が首を傾げていたその理由は、ミアさんが言ったようにどこも曲がってはいないということにある。曲がってないのに同じところに戻される。はてさてこれいかに? 

 

「どうも出口から遠ざけられている気がする……」

「じゃ、じゃあ! これからどうするんだよ!」

 

 自分の両肩を掴み必死な形相で問いかけてくるミアさん。その瞳に僅かながら涙が浮かんでいるのを見るに、相当なものだと思う。

 

「……逆に考えるんだ。奥に行っちゃっても良いさ、と」

「……What do you mean?」

「ちゃんとした出口()()から出るってことです」

「ちゃんとした出口以外?」

 

 自分の返答に再度首を傾げるミアさん。彼女の反応は普通に生活してる人間なら当然の反応だ。なんせ、学校を出る際には昇降口を通るのが基本だからね。けども、校舎から出るだけであれば手段はいくらでもある。

 加えて今回は、昇降口に辿り着けないということもあるので、他の手段に頼らざるおえないというわけなのだ。Q.E.D(証明完了)

 

「窓とかから出るって思ってもらえれば」

「I'm understand」

 

 納得してくれたらしく、感嘆の意を持った言葉を口にするミアさん。いや、この発言が本当に感嘆の意かは分からないんだけども。

 ……はい、というわけで昇降口に向かうのはやめてとりあえず窓から出ようということで1階まで降りてきたのですが、ここでもう一つの問題が起こる。

 

「開かない……!」

 

 どこの教室も施錠されているのか、扉がビクともしない。各部室の鍵が閉められているのならまだわかる。だが、教務室やら共用倉庫などが施錠されている事態には、流石の自分も驚きを隠せないでいた。

 

「こりゃ振り出しか……」

 

 困り果てて溜息を吐いていると、何やらミアさんが怯えた様子である一点を凝視していた。

 

「ミアさん?」

「あ、あ、あ……」

 

 全身を小刻みに振るわせながら、ある一点を指差すミアさん。それに釣られて示された箇所を見れば見知った後ろ姿が。

 

「……上原さん?」

 

 何故こんなところに彼女の姿があるのか、それが分からなかった自分は恥を忍んで彼女の元へと歩み寄っていく。

 

「どうか、されたんですか?」

 

 背後から声をかけても反応はない。そのことを不思議がっていると、突然彼女が床に倒れ伏し、何故か彼女のお団子が外れ転がっていく。

 

「上原さん……?!」

 

 予想の範疇を超えた出来事に声を荒げた自分は急いで身を屈める。そして無意識の内に手首を取ると、自身の親指を手首へと当てる。え……? 

 

「脈を……感じない……?」

 

 最悪の事態を目の前にしてしまった自分はどう対処して良いのか分からず、戸惑うことしかできない。すると突然、この場にいる誰のものでもない声が自分の耳に届く。

 

「ア……アソボ……?」

 

 それが聞こえた途端自身の中にあった焦りは消え、返って冷静になってしまう。予想外に予想外を重ねると、異常なまでに冷静になれる……ヒトの悪いところだね。

 本能とも呼べる部分に嫌気を覚えながらも、後ろを振り向くがそこには何もなく、いまだに震えるミアさんを遠方に捉えるだけであった。するとミアさんが何かを伝えようと、口を動かしているのが目に留まる。

 

「れ、レイ……your front……!」

 

 ミアさんの必死な訴えを聞いた自分は即座に前を向く。そこには何と、宙に浮いた上原さんのお団子が。……お団子? 

 

「アソ……ボ? ミカゲクン……アソボ?」

 

 幼い子供のように、誘ってくる()()は中心部が徐々に徐々に開いて、口のようになったかと思えばこちらへ勢いよく襲いかかってくる。

 

「レイ!」

 

 ミアさんの叫びが空間いっぱいに響く中、自分はソレを反射的に()()()()()()

 

「キミは……ちゃんとここにいないと。上原さん(推し)のチャームポイントなんだからさ」

 

 優しく語りかけた後、自分は掴んでいたそれをゆっくりと上原さんの元へ返す。するとソレは、何事もなかったかのように上原さんの髪へと戻った。……ん? 自分冷静になると推しの御髪に触れた? 

 

「ほあああああっ!」

 

 とんでも無い事実を前にした自分は、激しい光と謎の叫び声を伴って大爆発を起こすのであった——

 

 

 

 

 

 

 落っこちるかのような感覚——ジャーキング現象、のようなものに襲われ自分は飛び起きた。最悪の気分だわ。というかあれ、知らない天井なんだが。

 

「あ、御影君おはよう?」

「え、あ、おはようございます?」

 

 目の前には何故か上原さんと高咲さん、後ミアさんの姿が。どーいうじょーきょーだってばよ。なんなのだ……。

 

「御影君、映画見てる途中で寝ちゃってたよ?」

「あー、やっぱりそうでしたか……」

「映画、退屈だった?」

 

 申し訳なさそうに問いかけてくる上原さん。対する自分は首を大きく横に振りオーバーリアクション気味に反応する。だって映画面白かったからさ。

 

「そんなことないですよ。昨日夜遅くまで勉強してて……」

「そっか。お疲れ様」

「ありがとうございます」

 

 労いの言葉をかけてくれる上原さんに謝意を述べた自分は、寝かされていたソファから立ち上がる。所々軋む体に不快感を覚えながらも伸びをする。

 

「……あの、変なこと聞くんですけど……映画の中で爆発するようなシーンってありした?」

「爆発? そんなシーンあった?」

 

 ふと湧き上がった疑問をその場にいた3人へ投げかけると、高咲さんが不思議そうな反応を見せる。あれ、もしかしてそんなシーンはなかったか? 

 

「主人公がghostからヒロインを助けるときに、爆発に近しい演出はあったよ」

「なるほど」

 

 ミアさんから貰った補足に色々と合点がいく。恐らくさっきまで見ていたであろうものは、映画のシーンに大きく影響を受けたもの。具体的には覚えてはいないが、爆発じみたオチで目が覚めたのだろうと。

 1人納得していると、壁にかけられた時計が目に止まる。ありゃ、こんな時間だ。

 

「……っと、自分はそろそろお暇させて貰いますね」

「良い時間だもんね。気をつけて」

 

 一同の見送りを貰った自分はそのまま部室を後にする。そして、荷物を取りに教室へと向かう途中、徐に制服の袖に目がいく。そこには何故か、艶やかな朱色の糸のような物が引っ付いている。

 

「これは……髪?」

「……アソボ?」

 

 怪訝な表情でそれを観察していると、自身の耳元で囁くような声が聞こえてくる。その声が聞こえた途端、先程まで朧げであった夢の記憶が鮮明に蘇る。あれ……自分は上原さんの髪に触れて……え、これって上原さんの髪? 

 全ての事象が繋がった途端、恐怖やら申し訳なさやらが同時に襲いかかってきて、自身の脳の処理限界を超えてしまう。

 

「ほあああああっ!!」

 

 夢の中と同じ断末魔を上た自分はその場に倒れ伏し、そこで意識が途切れてしまうのであった。因みにこの後、偶然通りかかった宮下さんに保健室に運び込まれることになった。

 そしてこの日、改めて学んだことは推しは偉大であるということであった。




閲覧ありがとうございました。今回はここまで。それではまた次回お会いいたしましょう。バイバイ!

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