【9級フィクサー必見!】特色式トレーニング!教えちゃいます! 作:道を失った乗客
薄暗く、濁った空に空元気な街頭が明るく外を照らす。ここはそんな都市の巣の何処か。
建物と建物の間の狭い路地の奥にその人物は住んでいた。
某掲示板で自称特色と言われることになるフィクサーであり、E.G.Oを開花させた者。
掃除屋が裏路地を掃除する深い夜でも彼女は薄暗い部屋の中で眩しく光るモニターを眺めていた。
パソコンには絶え間なく薄紫に明滅する近未来的なコードが本来接続端子が存在しない場所に接続されており、それは彼女の腕から伸びており、それがE.G.Oであることは一目瞭然であった。
画面には都市のあらゆる情報が目まぐるしく表示され、彼女のE.G.Oが作り出した解析不可能な特殊サイトに魚拓されていく。
W社、K社、R社、失われた特異点、そして概念焼却され、復元が不可能であるはずの知識。
その全てを彼女はE.G.Oを使用さえすればリスク無く収集することができてしまう。
都市の歪んだ秘匿構造をいとも容易く突破してしまうこのE.G.Oとの出会いは唐突なものであった。自称特色は思い返す。
両親の変死と、姉の失踪。いろんなことがあった。
なにせ路地裏の話だ。よくあることして片付けるのが懸命だったのかもしれない。それでも彼女はその原因を見つけたくなった。調べれば調べるほどこの都市は皆が思っていた以上に嘘にまみれ、知りたくもないことを知ってしまった。
ただそれでも彼女は調べる手を緩めることはできなかった。
最初の目的はとうに解決したが、それでも止まれない。
この嘘だらけの世界で『真相』にたどり着くという行動は飽くなき知識欲を刺激するには十分すぎた。
『この世界の全てを明かしたい』
その心は肥大化し続け、視野は徐々に狭くなり、そこに善も悪もなく、獣と言い表すのが最も適切な存在がいた。
その日々の途中、彼女は声を聞いた。
温かくも深い声であった。何を言われたかは詳しくは覚えていなかったが、今の自分を肯定するような話し始めだったと認識している。
しかし温かく優しくあるその声に彼女は『なんだか腹が立つ』と思った。彼女は人に指図されるのが心底嫌いだったことを思い出したのだ。この状況も自分を肯定しているようで人様が自分の方向性を決めつけようとしていてならなかった。
そしてもうひとつ思い出した。なんで『都市の全てを明かす』ことに執着していたのか。
両親の変死と姉の失踪を調べた時もそうだった。どうせ足が付かないと踏み原因が簿かされていたのに憤りを感じ、そして調べ一泡ふかせてやろうと思っていたことを。
こと都市で腕を組みながら情報をあれこれ好き勝手監視し、都合よく覆う奴らが慌てる様子をみてやりたかったことを。
何処までも利己的で、だからこそ明確な自分の方向性を思い出した彼女は暖かい声を怒りを籠めて殴った。
気に入らない。結局全てを分かっている風を装って後方で理解者面しているだけではないか。カルメンだとかカリメンだかた知らないが私を勝手に定義するのはクッソ腹立つ。
そう思いもう一度殴った。
・・・
椅子にもたれ掛かり伸びをする。
濁った朝日が窓から漏れ出ている。どうやら夜通しで作業をし過ぎたようだ。
自称特色はメールボックスをチラ見し、依頼が入っていないことを確認し、ゆっくりと立ち上がる。
「相変わらずだねぇ?」
一人しかいないはずの部屋に、もう一人の声。
「そんなに睨まれると困るじゃないか。緋色の衣って今は言われてるんだってねぇ?ヘリア」
次元を渡り歩く者。紫の涙。
それが今ここにいる。
「なんの用?次元を渡り歩くのに疲れでもした?」
彼女はゆっくりと紫の涙を向く。
威圧をしても全く無意味であったためか呆れた顔をする。
「なんの用って死んでないか確認しにきただけじゃないか?どっかで死にそうな顔してたからねぇ...」
彼女は紫の涙が心底苦手であった。
なんでも知っているような口振りでいつもニヤニヤしてるのがどうも好きになれない。
「...」
「今とんでもないこと計画してるみたいじゃないか?」
「止めにでもきた?」
そんなのするわけないじゃないかと言わんばかりに紫の涙は笑った。
「ただ、そうだねぇ...」
何かを言おうとして紫の涙は言い淀む。
少し考えたのち「流れが変わったのを見にきた...そういうことさね」
そう言うと自称特色が彼女を止めるよりも早くから、紫の涙は次元を渡っていった。
自称特色/緋色の衣
E.G.Oは間接的にしか関わっておらず、E.G.Oで特色に至ったワケではないためE.G.Oとは無関係な特色ネーム。詳細は不明