ぼくには友達が少ない。
昔から同性の女の子とは気が合わなかった。
縫いぐるみなどのかわいいものがぼくはあまり好きではなかったし、砂場遊びやおままごとにも興味はなかった。
戦隊ヒーローには憧れを抱いていた時期があったように思う。
今も嫌いではないが、やはり一番は刑事や探偵を題材にしたテレビドラマだ。
同じ趣味を持つ数少ない友達は大抵、異性の子だった。
ある日、好きです、付き合ってください、という告白を友達だと思っていた男の子から受けたことがある。
結局、ぼくはその子のことを特別な相手として見ることができず断る形にはなったが、素直に凄いと思った。
緊張に声を震わせ、怖くないはずもないのに。
心の底からの気持ちをぶつけられて。
彼のようにすることがぼくにはできない、と強く感じたのだ。
「ミカコ……ちゃん」
ぼくの胸元にまわされている彼女の腕にそっと触れる。
同性愛の噂を真実だと言い切ると、あからさまにぼくの周りに近づく人たちの数は減っていった。男女問わず、陰口のたぐいを耳にしたこともある。
ぼくの方から触って、もしも嫌がられたら、といった不安はあったが、むしろミカコちゃんは嬉し気な笑みを零しながら抱きしめる力を強めるくらいだった。
「なぁに、アマネ」
耳元で名前を囁かれるとくすぐったくてぞくぞくする。
生理的な反応なのか、涙が滲んできた。密かにぼくが自分の部屋のベッドの下に隠してある、エッチな本のヒロインになったみたいだった。
「ママってば、久しぶりにアマネが遊びに来て喜んでたから、頼めば晩ご飯くらい用意してくれると思うの。お風呂も一緒に入ってさ。楽しいよ、きっと」
「お風呂って」
ついミカコちゃんの裸を想像してしまって、脳が沸騰しそうになる。
「着替えならわたしのを貸してあげる。ちょっと大きいかもしれないけど」
ミカコちゃんの服。決して変態的な意味ではなく、興味がそそられた。よくわからないが学術的なやつだ。
「じゃ、じゃあ、泊まっていこうかな。たぶん電話をすれば、ぼくのママはいいって言うし。明日は学校ちょうど休みだし。ミカコちゃんのママにも挨拶しなきゃだし。ドラマの続きも気になるし。お風呂も……入りたいし」
「よし、決まりね」
ママー、と大きめの声を発しながら、ミカコちゃんが階段を下に降りていく。
自由を取り戻した体を起こして、ぼくは意味もなく膝を抱えて小さく丸くなった。
ドラマの中のストーリーは佳境を迎えていて、いよいよ銃撃戦が始まろうとしているが、こっちもそれどころではない。
「湿ってる」
念のためジャージの下に手を突っ込んで確認してみると、どことはいわないがうっすらと濡れていた。
自己嫌悪にため息が出る。すぐにでもミカコちゃんに謝りたくなった。