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崇高なるアーリア人諸君、ご機嫌よう。親衛隊全国指導者のハインリヒ・ヒムラーだ。
早速だが、今私は
それもこれも全ては退廃的なユダヤの糞共の仕業なのだよ、分かるかね?
私の真のアーリア人の理想郷を地上に顕現させる神聖なる計画は身の毛もよだつほど頽廃的なユダヤのシンパの裏切りによって破綻してしまった。私は堕落したエセアーリア人のハイドリヒによって銃弾を撃ち込まれ、惜しくもノルトパリで死んでしまったわけだが・・・
その後、気付いたら『死後の世界』とでも言おうか、神を名乗る不潔な男の前に引き出されていたのだ。私としたことが、最初は彼は主神オーディンであり、私のアーリア人への献身に応えて
奴はオーディンなどではなかったのだ!奴は東の果ての野蛮な神様気取りの悪魔だったのだ!私としたことが、どうして見破れなかったのだろう!
いや!劣等人種は何時もそうだった!アーリア人に紛れ、まるで我々を嘲笑うかのように我々の目を欺くのが彼らの遺伝的習性だったではないか!
・・・少し語りすぎたな。話を戻そう。
その悪魔はこう言った。「お前を改心させるために大和民族の学校で学生生活を送らせる」とな。
聡明なアーリア人の諸君ならもう分かっただろう。奴は国際ユダヤの邪神たるエホバと結託し!私の民族的純潔性を穢すために!売女と奴隷以外にする能がない、大和民族などという地獄に私を堕としたのだ!
このような神聖なるアーリア人への卑劣な冒涜は決して許されてはならない!そうは思わないかね、親愛なる優等民族の同志諸君?そうだろうそうだろう、君たちはまさに今怒りに震え涙が止まらなくなっているはずだ。その崇高なる感受性さえあれば君たちが劣等人種のシンパに身を堕とすことはないだろう。私としても一安心だ。
さて、バスの前方では劣等人種の若い女が喚いていた。豪奢な金髪に碧眼の優秀なアーリア人の男に対して、あろうことか席を譲れだのどうのと言っている。
何と傲慢なことだ!ただでさえ私が劣等人種に揉みくちゃにされているのを余所に、劣等人種はなに食わぬ顔で席にふんぞり返るに飽き足らず、主神オーディンが与えた僥倖に預かり何とか正当な座席を確保したアーリア人から、その権利を奪おうというではないか!これは正しく大和民族が強欲なユダヤ人と類を同じとするカインの末裔であることを如実に示している!
このようなことが許されて良いのだろうか?否!必ずや大和民族はアーリア人を侮辱した罪を血の制裁によって償わなければならない!
今こそ我々は少数派も良いところだ・・・数だけは無駄に多い大和民族に対して劣勢と雌伏を強いられ、歯痒いことに大和民族に対する最終解決どころか、一矢報いることさえ儘ならない。だが、我々は奴等が眠りこけ、耽美に溺れている間に必ずや力を手にし、手ずから民族的精算を下すことだろう!
さて、例のアーリア人の青年と言えば、喚く劣等人種の女を余所に毅然と座席を保持している。素晴らしい!彼こそがアーリア人のあるべき姿を体現しているのではなかろうか?劣等人種の流布する戯言に一切耳を貸すことなく、自らのアーリア性を護ること―これこそが、世界で唯一の高潔なる民族文化が他の頽廃的人種の劣悪な文化に脅かされないために、我々が取らねばならない態度である!
バスはようやく目的地へと到着し、出口から劣等人種まみれの人ゴミが吐き出される。その穢らわしい濁流に呑まれるようにして、私はやっと外の地面を踏むことができた。
人混みが途切れた後、アーリア人に相応しい優雅な所作で先程の青年がバスを降りた。
やはり優秀なる遺伝的特性は洗練された所作となって表れるものだな!頽廃主義者の中には「見た目や人種でその為人は分からない」などという甘えた考えを流布する輩がいるが、彼と周りに蔓延る大和民族どもを見比べて見よ!どちらかが優秀なアーリア的品性を持っているかなど、立ち居振る舞いから一目瞭然ではないか!下劣な島国根性の蛮族は必ずや我々アーリア人によって浄化されなければならない!
だが一方で、我々は劣勢も劣勢だ。数だけは多い大和民族に対抗するためには、アーリア人同士の固い紐帯が必要だ。これから劣等人種に脅かされた環境を生き抜くにあたっても、かの青年への挨拶は欠かせまい。
人込みから解放されたばかりでよろめいている私を彼が追い抜かそうとするのと同時に、私は彼に話しかけた。
「やあ、そこの君。君は随分と立派な出で立ちをしているな。純粋なるアーリア人とお見受けするが、如何かな?」
アーリア人の男は半歩後ろの私を振り返って曰く、
「ん?何だねボーイ。私のことを『アーリア人』・・・即ち『高貴な人』とは、見る目があるじゃないかボーイ。正に完璧なこの私に相応しい称賛だ、誉めて遣わそう・・・ハーッハッハッハッハッハッハ!!」
・・・少し鼻につく奴だが、まあいいだろう。何と言っても優秀なアーリア人なのだ、その誇りを誇示するのは至極当然の権利だ。軽蔑心をユダヤの鼠のようにコソコソと隠していたハイドリヒなんかよりは、よっぽどたちが良い。
そんなことより、今は彼とアーリア的連携を約すことの方が重要だ。
「気に入っていただけて何よりだ、所でだがね君・・・君もアーリア人として、
「む?そうだな、ボーイ・・・確かに、私に敵わぬ、つまらない人間に囲まれて生きるというのは、どうも気を遣うから窮屈で仕方ないねえ。なんせ、優秀な私は凡百の人間には眩しすぎて目に毒だからな!ハーッハッハッハッハッハ!この完璧な私というもの、罪な男よ!」
やはり鼻につく。ものすごく鼻につく、傲慢な自信家のハイドリヒでもさすがにここまでひどくなかったぞ。
・・・・・・ま、まあいい。アーリア人にはアーリア人として自らを誇る権利があるとさっきも思ったからな。私はアーリア人に対しては一貫性を以て公明正大に接するからな。英国のような二枚舌三枚舌は、愚かな非アーリアの糞共に対して弄するものだ。
「そ・・・そうか、やはり君も劣等人種の問題を体感していたか、ならば話が早い。どうだね、私と君、アーリア人同士協力しようじゃないか、偉大なるアーリア人の理想郷の建設のために!」
「フム・・・理想郷、か。成程、良いことを考えるじゃないか、ボーイ!この完璧な私には、やはり完璧な世界こそが相応しい!気に入ったぞボーイ、私からも協力してやろうじゃないか、その理想郷の建設とやらに!」
「協力感謝するぞ君、共に劣等人種の薄汚れた世界を生き抜こうじゃないか。私はハインリヒ・ヒムラーだ。今後とも宜しく。」
「勿論だ、ボーイ。私の輝かしきその名は聞いて驚け咽び泣け、高円寺六助だ。宜しく頼んだぞ。ハーッハッハッハッハッハ!」
そうして、私とアーリア人の青年こと高円寺六助は同盟締結の握手を交わしたのであった。
・・・・・・次に会うアーリア人はもう少しまともなのを頼みたい。
さて、私と高円寺青年はクラス掲示を見て、自分の教室へと向かう。
どうやら私と高円寺青年は同じDクラスであった。これなら日々の連携に困ることはないだろう。今の我々は一個分隊にも満たない小勢力だ、分断される危険はないに越したことはないだろう。
それにクラスが
我々は必ずや、ラグナロクを齎し、劣等人種を根絶やしにし、劣等人種に気圧され、圧迫されるアーリア人を救済するだろう。今しばらくは耐え忍ぶ日々が続くだろうが、その間我々は着々と準備を進めることとしよう・・・
全てはアーリア人のために!
第一話:黒い陽の下で