ゲーミングヒムラーと逝く!よう実世界の旅   作:産廃

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遂にラグナロクに向けて動き出す術を手にした、聡明なる全国指導者にしてアーリア民族唯一の希望、ハインリヒ・ヒムラー閣下。
ハインリヒ1世の御霊に愛された閣下は、遂に計画を実行段階へとお進めになるのだった。劣等人種共が浄化され、アーリア人の理想郷が地上に顕現される日は、そう遠くない未来に待ち受けているのだ。


STRENG GEHEIM

 

全く以て締まりのない入学式が終わり、イニシエーションの式典を終えた後とは思えないほど弛緩しきった雰囲気の中、私は劣等人種と共に教室へと戻って来た。

それにしても酷い式典であった。新入生も式典に参加した教職員も、揃いも揃って粗末なパイプ椅子に身を委ねて安楽に身を任せているのだ!後は関係者が壇上に上がってはアーリア性の欠片もないような空疎な式辞を述べることをただ繰り返すのみで、指導者や全体への忠誠と奉仕の宣言など何処にもないのである!

終盤には出席者の中から惰眠を貪るものすらいる始末だ。尤も、このような無味乾燥な式典では眠くなるのも無理はないだろうが。

この入学式とやらもきっと正されなければならないだろう。嘗ての私の国でそうしたように、アーリア人の若者は松明の煌々たる影と「親衛隊は敵地を進む」の調べの中で右手を高く掲げて誓わねばなるまい―全国指導者への忠誠とアーリア人の理想郷の建設を!

 

「ねえねえヒムラー君、ヒムラー君って、あの高円寺と仲良いの?」

 

そんな私の高尚なるアーリア哲学の禅問答を遮って、劣等人種が話しかけてくる。

私はアーリア哲学の逍遥を邪魔した劣等人種に激昂しそうになりながらも、相も変わらず必死に憤怒を抑えつつ聞いた。

そう、先程の劣等人種の発言の中に、聞捨てならぬ言葉があったのだ。

 

「『あの』高円寺?彼がどうかしたのかね?」

 

「ああ、そういえばヒムラー君自己紹介の時に何か考え事してたみたいだから・・・」

 

「そっか、じゃあ覚えてないかもしれないね・・・」

 

「自己紹介の時に何かあったのか?」

 

私は自分の胸がいやにざわつくのを感じた。この感覚は久しぶりだ。あれはそう、ハイドリヒから僅かな不忠の気配を感じ取った時、いや、もっと前、西ロシア戦争の時に感じた、あの薄気味悪い失望・・・

 

「高円寺ったら、『私は寛大だが、優秀な私の邪魔をする者には容赦しない。ハーッハッハッハッハッハ!』とか言っちゃって・・・正直ちょっとムカついたなぁ」

 

「ちょっと、それ似すぎwww」

 

何・・・だと・・・?

奴は、奴はとんでもないことをしてくれたな!アーリア人だと思って見ていればこのザマだ!私の真の国家社会主義を体現する大いなる計画を、奴は木端微塵に破綻してくれた!

奴は自らの傲慢な根性を満たすためだけに、アーリア民族の未来を犠牲にして大自慢大会を開催してのけたのだ!我々は未だに、強行を避けなければならない、非常に繊細な段階にあるにも関わらずだ!

これで悪目立ちでもしてみよ、影から暗躍して劣等人種を思うが儘に操り、アーリア人の理想郷の建設に向けた準備を進めるという大戦略が台無しになってしまうではないか!

まただ!またもやアーリア人の中の欠点は私の邪魔をしてくれた!欠点は容赦せずに排除すると、あれほど誓ったのに、どうして私はまた要らぬ慈悲をかけたというのだろう!

どうやらアーリア人の腐敗は私の想像を遥かに超えていたようだな!不忠と傲慢がアーリア民族の骨の髄まで侵食してしまっているではないか!ライヒの問題は決して潰えた訳ではなかったのだ!

 

急いで奴のいるはずの席の方を見る。

だが、奴はきれいさっぱり姿を消していた。あの裏切り者のアーリア人を探さなければ!

「お話のところ申し訳ない、少し急用が出来た。私はこれにて失礼するよ。」

 

「うん、じゃあねヒムラー君~」

 

先程まで話していた劣等人種共を背に、私は教室を飛び出した。

奴はまだそう遠くへは行っていないはずだ。奴に追いついて、必ず尋問しなくては、真の国家社会主義の根幹が揺らぎかねない!

校内を探すこと数分余。コンビニの前に見えたぞ、あの無駄に大きな背中と後ろに流した不相応な金髪が!

「やあ、高円寺。君は自分が何をしでかしたか分かって・・・」

 

「やあやあ、君たち。手荒な真似はよしたまえ。私は野蛮な者は嫌いだからねえ。何せ私は、誰よりも美しいのだから!私の美しい世界を汚す奴には容赦はしないぞ!ハーッハッハッハッハ!やはり私は優秀だ!」

 

「テメェ舐めてんのかコラァ!」

「上級生に向かってどういう口利いてんだオラ!」

 

そこにいたのは、高円寺その人と、下品な所作が腹立たしい劣等人種の一団であった。制服の着方は想像を絶する程汚く、操る言葉はドブ以外の何物でもなかった。

やはり亜人共の品の無さは計り知れないな!もはやアーリア人の優美さの引き立て役にもなっていないではないか!優秀なるアーリア人のある壮大な名画のような風景を、糞便にも等しい存在が穢しているのはとてもではないが耐えがたいものがある。

 

「君たちは本当に口が汚いねぇ。私の秀麗な耳に入れるにはあまりにも恥ずかしい発言だとは思わんのかね?」

 

「何だとゴルルァ?!」

 

劣等人種の罵詈雑言を前にしてもなお、高円寺はアーリア的品性を一切崩すことなく、まるで赤子をあやすかのように蛮族共をあしらう。それに対して紋切り型な罵声でしか対抗できない劣等人種の哀れなことよ!劣等人種は知性に劣る犬畜生以外の何物でもないのだ!

 

「テメエに上級生を敬うってことを教えてやるよオルルァ!・・・・・・?!」

 

やがて劣等人種の一人がそう叫んでは高円寺に殴り掛かる素振りを見せる。

当然、その試みは虚しいものに終わる。仲間が振り上げた拳を掴んで止めたのだ。

 

「オイ、お前それはやめとけ・・・流石にそれをやるとアレが・・・な・・・」

 

そう言って、劣等人種は頭上を見上げる。どうやら劣等人種は高円寺の神々に恵まれた美しい巨躯に畏れをなしたようだ。何、物わかりのいい劣等人種もいるものではないか。至高のアーリア性は、劣等人種をしてアーリア人の奴隷としての在り方を自覚させるものだな!

 

アーリア人の優秀さに畏れをなした劣等人種共は、蜘蛛の子を散らすように去っていった。

この手にルガーがないことがこの上なく悔やまれるな!逃げる劣等人種の背は撃つものと、エッダの昔から決まっているのだから!今に奴らは奴ら自身が掘った谷に突き落とされて埋められるべきだ!

 

「それにしても見事な手際だったぞ、高円寺。君は私に真のアーリア性とは何かを見せてくれた。私は実は先ほどまで君の不忠を疑っていたが、そのようなことを考える私が愚かだったな。すまない。」

 

「ん?何だボーイ、君じゃないか。君も私の優美さに惹かれて付いてきたのか?ハーッハッハッハ!私と言うもの、何と罪な男だ!」

 

「お・・・おう・・・」

 

見直したと思ったらこれだ。やはり何とかならんものかね。

高円寺は内心呆れ返る私を差し置いて続けた。

 

「何、私はただ、上級生に狙われた哀れなモンキーボーイを助けただけさ。ハーッハッハッハ!」

 

「おいテメェ、その呼び方はやめろと言っただろうか!」

 

脇から出てきたのは、何とあの赤い髪をした劣等人種の猿ではないか!

自己紹介を拒否し、周囲から孤立した、我々の手先候補の一人である。高円寺は早速、彼に恩を売ることに成功したのだ!何という歴史的大偉業だ!きっと彼もまた、ハインリヒ一世に祝福されているのだ!

私は感激のあまり高円寺の手を握って言った。

 

「でかしたぞ高円寺!君はやはり最も優秀で忠誠なアーリア人の一人だ!君のこの民族的偉業はアーリア人の理想郷が建設された暁には未来永劫語りづがれるだろう!」

 

「まあそう褒めるな、ボーイ。私はこれから優雅なランチなのでね。仕上げは頼んだぞ?」

 

「お、おう・・・任せたまえ。」

 

折角見直したと思ったそばから・・・やはり鼻につくのだけはどうにかして貰えないものかね。

ま、まあ頼まれた以上は仕方あるまいな。アーリア人の救世主の使命を果たそうではないか。

先ずは紳士的に話を切り出すこととしよう。

 

「怪我はないかね、君。」

 

「あ、ああ、何もされてねえからな。あの金髪野郎が邪魔しやがったからなあ?舐めんなっての。」

 

「そうか、気に障ったらなら彼に代わってお詫びする。ええと・・・君の名前をお伺いしても良いかね?」

 

「おう・・・須藤だけど・・・」

 

「そうか、私はハインリヒ・ヒムラーだ。ひとつ宜しく頼むよ。」

 

「おうよ・・・こちらこそよろしく・・・」

 

さて、ご挨拶の時間はここまでだ。本題に入るとしよう。

ここからが正念場だ・・・

 

「時に・・・そういえば君は何故自己紹介を拒んだのかい?」

 

私は、須藤の警戒心を解くべく、さも純然たる興味からの問いであるかのように、そう須藤に問う。

周囲の劣等人種から孤立している須藤は、当然私からのアプローチに対する抵抗も強いと考えられるからな。

大体、この種の手合いは仲間意識を持つことに消極的なのは、親衛隊の採用をしていた時から分かっていたことだ。

 

「何故って・・・あんな仲良しごっこに付き合ってられっかっつーの。糞下らねぇ。」

 

まさにお手本のような退廃的孤立主義者の回答を返す須藤。これでは周りの劣等人種からは微塵も理解されまい。

おまけに同じ穴の狢であるはずの劣等人種を見下していることが丸わかりだ。

・・・これはかなり、仕事がやりやすくなりそうだ。

 

「フム、そうだな。正直・・・実は私もあまり良い気はしなかったのだよ。」

 

私は早速須藤の先程の発言に同調する。これで、少なくとも形の上では私は須藤の唯一の理解者だ・・・

 

「そうなのか?お前、あのとき教室に留まっただろ?」

 

「如何にも。少し我慢して見ていようと思ってな。だがやはり酷いものだ。あんなことで一体何の足しになるというのか、皆目見当もつかないね。」

 

「やっぱりそうか、俺もずっとそう思っていたんだ!何馬鹿なことやってんだって、言ってやりてーよ!」

 

須藤は始めは疑う素振りを見せたものの、少し補足を入れればたちどころに、さも得心の友を得たかのように興奮してそう叫んだ。

こんな簡単な甘言に踊らされるとは、如何にも劣等人種らしい、なんとも滑稽なことだ。

だが、これこそが我々アーリア民族の偉大なる勝利の道筋への第一歩だ。

これで須藤の人種哲学に対する感受性も大いに高揚したことだろう。

 

さあ、啓蒙の時間だ。

 

「ああ、あんなことを提案する奴も、それに易々と便乗する奴等も、きっと本当に愚かで劣った存在なのだろうな。意味もなく群れて満足している人種だよ。」

 

「そうだよな!やっぱあいつらちょっとおかしいぜ!」

 

「どうだね?君と私でこの腐った世界を変えないかね?君のような優秀なアーリア人が、白い目で見られることなく栄光の中に過ごすことの出来る理想郷を作ろうとは思わんかね?」

 

「いいなそれ!やってやろうじゃねえか!宜しくな、ヒムラー!」

 

「ああ、改めて宜しく頼むよ須藤君。共に勝利を。」

 

こうして、私の須藤に対する傀儡化工作はまさにアーリア人史上に残る大勝利を挙げたのであった。

 

 

アーリア人は右腕を得た。

 

 




第三話:第二段階の開始


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