ゲーミングヒムラーと逝く!よう実世界の旅   作:産廃

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高度育成高等学校で生徒たちがクラスに割り振られたとき、その様子がクラスによって大きく異なることがすぐに明らかになった。「クラスのリーダー」が何を意味するのかは、これまで完全に明らかにされて来なかった。

しかし、正統派のクラスのリーダーがいるとすれば、それは間違いなくBクラスの一之瀬帆波だ。彼女の指導の下、このクラスは平穏で温情的なつながりを以て団結している。クラスメイトは互いを助け合い、受け入れ合い、クラスのリーダーを敬愛している。一之瀬帆波はそれら全ての上に立ち、彼女のクラスの仲を保つことに腐心したり彼女が犯した過ちについて熟考したりしている。

他のクラスがますます堕落し、Bクラスの支配を拡大しようとする一之瀬帆波の計画が実を結ぶ中、 Bクラスの人々はその結果を歓迎し、不平もなく重い負担を背負っていた。一之瀬帆波の念願であったクラスの平穏は、ほぼ手の届くところにあるように思われたが、この学園に潜む狂信者たちは、彼女の想像以上に大きな敵であることが判明するかもしれない。

彼女のBクラスのユートピアは、そのクラスメイトの熱意と綿密さで測ると、おそらく全クラスの中で最も成功したものだ。

しかし、一之瀬帆波の善性の王座は長く安定していることができるだろうか?
それとも、湧き上がる不信感は、一之瀬帆波の意志の悲劇的敗北を齎すのだろうか?




Bクラスの守護者

 

 

「・・・でよ!どうなんだよ、かわいい奴いんのかよ?!」

 

「しつけーな須藤・・・お前急に色気付いてどうしたんだよ?」

 

体育館の壁際で休んでいた、1年Bクラス所属の男子生徒、東阿 弗利加*1は、新入部員仲間の須藤による詰問に辟易としていた。

確かに彼は色気のある話は嫌いではなかったが、須藤のあまりに前のめりな姿勢に引いていたのだ。

 

「そんなにがっついてると女子から嫌われるぞ?」

 

「大丈夫だって、女子の前じゃセーブすっからw」

 

彼は善意半分、打算半分で須藤に忠告するも、この有り様である。彼は愈々須藤の相手をするのが面倒になってきた。

そんな心中を察することなく、須藤は続けた。

 

「なあなあ、頼むよ~?教えてくれたらそれで良いからさ、なあ?」

 

「あー分かった分かった、言えば良いんだろこのエロ猿め?」

 

「マジ感謝!そんじゃあ紹介オネシャッス!」

 

遂に東阿は根負けしてしまった。須藤に易々と屈服した自分に惨めさを感じるのであった。

話を切り上げるためにも、東阿は感傷に浸るのも早々に話し始めた。

 

「そうだな、一番はやっぱ一之瀬さんだな。」

 

「一之瀬?」

 

「ああ、一之瀬帆波。うちのクラスのリーダー。顔よし頭よし性格よし。あと・・・」

 

「・・・なんだよ?」

 

先程まで乗り気でなかった東阿が、ふと話を中断してにやついている。流石の須藤も不可解に思った次の瞬間・・・

 

東阿は転がっていたバスケットボール二つを、長い腕を使って見事に拾うと、それを胸の前に持ってくる。

 

「デカい。」

 

 

 

 

東阿に集中する部員全員の視線。

 

ポン、ポン、ポン・・・と置き去りにされたボールが虚しく跳ねる音。

 

 

 

 

「「「「「「・・・うおおおおおお!!」」」」」」

 

これには須藤は勿論、周囲で見ていた部員仲間からも雄叫びが漏れる。いつの間にか、練習中だった上級生たちまでボールを放って駆けつけ、揃って須藤達をぐるりと囲んで正座して耳を傾ける。

 

「お、おい、流石にサイズ通りじゃねえよな??」

 

と、上級生からの疑問の声。男は答えた。

 

「あっ、はい、先輩。」

 

まあそんなフィクションみたいなことはないか、とヴォルテージが下がった次の瞬間だった。

 

「この1.5ば・・・」

 

「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

まさに会場の熱気は最高潮に達し、漢達の熱き質疑応答が続くこととなったのであった。

 

その様子を呆れた調子で眺める長髪の女と、「やはり劣等人種は・・・」と一人アーリア哲学の宇宙へと旅立っている眼鏡の小男と、相も変わらず自分の美しさに陶酔する巨漢がいたとか、いなかったとか・・・。

 

 

 

 

 

練習(いや、後半は殆んど練習なんてしていなかったが)が終わり、須藤は荷物を取りに教室へと戻る最中であった。

あの後、恐らくどこの議会よりも熱い討論を交わした漢達は、気付けば体育館の閉館時間を迎えていた。大急ぎでコートの片付けを済ませると、部員達は足早に寮を目指した。

・・・が、そこは須藤である。教室に荷物を置きっぱなしにしていたことに気付いたのだ。今だ喧々諤々の激論を続ける他の部員と泣く泣く別れ、須藤は校舎の暗闇へと入り、教室を目指した。

廊下の一番奥にある1-Dに向かって、忍び足をしていた時であった。

 

 

ガリッ、ガリッ・・・

 

 

何かを力ずくで回そうとする音が微かに須藤の耳に入ってきた。音源はどうやら手前から2番目の、1-Bの教室のようだった。

よく耳を澄ませば、ふーっ、ふーっ、と歯を食い縛るかのような、怨嗟の如き女の吐息が聞こえる。

 

「うううう・・・ううううう・・・」

 

聞けば聞くほど、恐ろしい声が発せられているのが明らかになる。

忽ち、須藤は恐怖で足が竦んでしまった。心臓がバクバクと鳴り響き、今日は後半は練習していなかったのに滝のような冷たい汗が背中を伝う。喉はべっとりと濡れた綿が詰まったかのような感じがする。須藤の体は、小刻みに震え始めた。

 

須藤は、どこぞの養鶏家とは異なり、オカルト趣味はない。

だが、今まさに自分の目の前で起こっている出来事を、これまたどこぞの性格のキツい大和民族の女のように、「心霊現象?バカじゃないの?」と切り捨てられるほど、彼は合理的ではなかった。

 

 

そう、須藤はバカである。

だが、バカは明らかに危険なものを耳目にしたとき、そこから回避しよう、とは考えないことがある。

濁流のように襲いかかる「怖いもの見たさ」を抑えきれずに、脅威に自ら近づいてしまうのだ。

 

しかしながら、こうすることで逆説的に脅威に対し積極的に対処し、果てにはそこからチャンスを掴むことが出来てしまうのも事実だ。

 

 

果たして、須藤の足は知らずの内に音源の方へと導かれた。1-Bの空きっぱなしの扉から、そろりと中を伺う。

 

そこにいたのは、一人の女子生徒だった。

 

須藤からは丁度背を向けた方向を向いて、机の上に逆さまに椅子を乗せ、棒状の何かを椅子に向かって突き立てている。

 

やがてその棒状のものはドライバーだと分かる。何故なら、彼女はそれを軸のように、何度も何度も回しているからである。

 

 

 

つまり、彼女は、椅子のネジを締めていたのだ。

 

 

相当力を込めているのか、幾度となくガリッ、と音がして、ドライバーが一瞬椅子を離れる。

それじゃあネジ頭が舐めるんじゃないのか、と須藤は内心心配になりながらも観察を続ける。

 

 

はーっ、はーっ、はーっ、はーっ。

 

彼女はひとしきりねじを回すと、曲げていた腰を伸ばして肩で息をしていた。だがその狂気的な目は確実に椅子の方に向けられている。暫く椅子を睨みつけてから、彼女はおもむろに椅子を元に戻し、震える手で背もたれを引き、そして腰掛け・・・・・・

 

きしぃっ、と小さな音がした次の瞬間。

 

 

 

「ンニャアああああああああぁあっ・・・!!!」

 

 

彼女は絶叫し、そして机に突っ伏した。

 

長い、綺麗なピンクブロンドの髪が宙を乱れ、やがて重力に従って持ち主の所へ戻っていく。

 

間もなく、ずっ、ずっ・・・・・・と鼻を啜る音とともに、息を殺したようなさざめきが聞こえてくる。

 

 

須藤は、今更ながら覗き見をするという選択をしたことを強烈に後悔した。

幽霊なんか屁でもない。そこに居たのは、ドライバー片手に、狂気に絶叫し、挙句の果てにさざめ泣く、気の触れた女だったのだから。

 

(今見つかったらゼッテー殺される・・・!)

 

須藤は生命の危機に立たされているように感じたが、先にもまして怖気づいた肉体は鍛えられた筋肉の一切を硬直させ、その場からの逃走を許さない。

須藤はもはや女子生徒の様子を見ていることしかできなかった。

 

 

だが、須藤は須藤である。部員仲間お墨付きのエロ猿である。

こんな緊急事態においても、彼の中の本能は目ざとく、そして素直であった。

 

何を隠そう、肩が揺れるたびに、丁度彼女の体と机の間で柔らかそうな球体が上下するのに気付いてしまったのだ。それもかなり凶暴なサイズである。下手をすれば、彼がいつも慣れ親しんでいるボールよりもずっと大きいかもしれない。

 

そこで須藤は今日の練習()を思い出した。

 

(そういえば、一之瀬帆波っていうアレのデカイ女子生徒がいるって・・・大きさは確か・・・)

 

 

 

視線の先の女子生徒を見て確信する。

 

(アレは・・・確かに1.5倍、いやパイだ・・・!!!)

 

獣欲で拡張された須藤の類稀なる知性に最早敵はいなかった。彼はすぐに一つの結論に辿り着く。

 

(アイツが・・・アイツこそが、Bクラスリーダー・・・!)

 

 

 

 

そう。

 

狂気的に椅子のネジを締める、その女こそが。

 

 

一之瀬帆波その人であった。

 

 

 

 

 

Bクラスの守護者

 

春の夕陽の中、エメラルド色の深い庭園に太陽が黄金色の光を放っている。 白い石畳の小道に長い影が差し込み、時折、庭師が影の中をふらふらしているのが垣間見えた。今は生徒たちが疲れ果て、一日の終わりを告げる夕方の涼しさを待つ午後の時間だった。

 

学園街をうろつく粗暴な生徒たちとは対照的に、私は、私を囲む打ちっ放しのコンクリートの柱のように背筋をまっすぐ伸ばし、注意を払って立っていた。 校舎の窓から、私は生徒たちを見下ろし、不愉快な気分になっていた。重いウールの制服にじっとりと染み込んだ冷や汗を無視して、私はマグカップを唇に上げ、アフタヌーンコーヒーの苦味を味わいながら一口飲んだ。純粋さを保つことにこだわる私の、数少ない贅沢。

 

コーヒーを飲み終えると、私は教室に戻った。回転する防犯カメラの一団は私の背筋を冷やし、その冷たいまなざしをめいいっぱい私に叩きつけていた。新学期の高揚感と倦怠感の入り混じったのどかな雰囲気とは対照的に、それらは中学時代の不快な出来事を思い起こさせた。そのような無意味な考えを効率よく頭から拭い去り、私は自分の席に座り、事務処理を再開した。

 

生徒会宛ての入部希望届を書きながら、私は浜口と神崎が午後の時間をどのように過ごしているのだろうかと考えていた。浜口が早速「男性を感じない」なんて下らない理由で同級生も上級生もお構いなしに墜としている姿や、神崎の机が人付き合いに目もくれず、図書館から借りてきた本の重さで倒れている姿を思い浮かべた。怠惰な愚か者たちのどちらも、Bクラスのリーダーの称号を得るにはふさわしくなかったんだ!私が、私だけがBクラスの利益を前進させる意志と強さと民族的純粋さを持っていた。私はニヤリと笑みを浮かべて、入部希望届にサインをして、それを封筒に入れ、教室を後にした。

 

 

 

「今日は来てくれてありがとう、一之瀬さん。じゃあ、これ渡しておくね。あっ、ここで見ちゃダメだよっ。後でじっくり見てね。」

 

一時間後、私は1通の手紙を渡されて生徒会室を後にした。

教室に帰り、私は自分の席でおもむろに封筒を開け、手紙を取り出した。

 

私は読みながら顔をしかめた。それは私の堀北生徒会長との面談の評価結果をまとめた書類だった。私の生徒会メンバーとしての不適格さを指摘していた。

 

突然の不快さに、私はそれを丸めてゴミ箱に放り込んだ。後ろにもたれると、椅子が軋み音を上げて私を責め立てた。いつも、私は誰かに見られているような気がする。誰が私が犯した罪を知っているか分からないんだ!

 

確かにみんなは私を頼りにしてくれるし、私もみんなが大好き。

でも私の心の中の誰かが、気付かれたくないからリーダー役を買って出たのではないかと尋ねるんだ!

ひょっとして、生徒会のやつらも知っているのかな?私が生徒会に入って風聞をかき消そうとしていると勘繰っているに違いないよ!

なぜ漏れた?クラスのやつらの誰かが知っているのかな?それとも意味ありげな視線を向けてきたAクラスのあの女子生徒?

やっぱり奴らは・・・いや全員だ!全員、誰もかれも信用できない、信用できない、信用できない・・・・・・

 

・・・ダメだよ私、落ち着かなきゃ・・・みんなを守るんでしょ?リーダーがこんな風じゃ、誰も守れないよ。

しばらくの間、私は何もせずに、ただ放課後の静寂に耳を傾けていた。ばくばくと波打つ私の鼓動と、校舎の外の喧騒の区別がつかなくなるまで。ふう、と一つため息をついて、私は前かがみになって、ゴミ箱から丸めた書類をとりだした。

 

目立ちたくないのに、なぜか逃げられなかった。

 

 

 

 

炎の輪

 

時計が午前0時を告げたとき、私は椅子から転げ落ちそうになりながらびっくりして目を覚ました。まだ今日の授業の復習のためにつけてあった白熱灯の光で目が痛くなった。体がぐったりとしてるのを感じながら立ち上がるとぼんやりしたまま電気を消すためにスイッチに向かって歩き出した。学校が始まったばかりで疲れちゃったのかな・・・だから机で居眠りをしてしまったんだ、と自分に言い聞かせる。明らかに机の上に散乱する市販薬の錠剤とは関係ない。こめかみがズキズキ痛む中、机の上を見渡して居眠りする前にしていたことを思い出そうとした。

 

その時、突然怒りがこみ上げてきた。

生徒会から、私の入会は認められないとの通知が来たんだ。豪華な生徒会室の退廃的似非野郎たちが、「君はまだその器じゃない」と私の要求を退けたんだ。

私は怒りで手を震わせながら、単に神経を鎮めるために水をグラスになみなみと注いだ。よくもそんなことを言えたものだよね。水と錠剤を飲み干してその味を味わいながら、私はおなかの中で疑念の炎が大きくなるのを感じた。もう私は生徒会を信用できないし、背中にナイフを突き刺そうと待ち構えている敵に大勢囲まれていた。

 

横暴なCクラスのクソどもに、何かを知っていそうな顔のAクラスの生徒に、生徒会の危険な先輩たち。まるで炎の輪に囲まれているようであり、私の骨から肉が焼き切られる日が来るまで炎は常に迫ってきているんだ。私は堕落者と裏切り者が勝利することを許すことはできなかった。

 

・・・って、何を考えているんだろう私。誰も私の罪を糾弾したりなんてしないよ・・・。

多分、だけど。

 

まあ少し落ち着こう。はい深呼吸だよ、私!

 

「んんっ・・・・・・・」

 

私は伸びをしながら、わずかに身を後ろに倒した。

新鮮な夜の空気が肺に充満する。

ほっ、と一息ついて、気持ちが落ち着いてくるのを感じた。

 

 

ぎしっ

 

 

すぐにあの恐ろしい骨が折れるような椅子のきしみが、百万本のヘアピンの針のように私の脳に突き刺さった。

血が頭に上り、私の中の何かがついに折れた。ゆっくりと立ち上がって椅子を掴んで、爽やかな夜の空気のバルコニーまで引きずり出した。欄干の上に椅子を持ち上げると、私は残りの力を振り絞ってその粗末な椅子を向こうへ押しやった。

青々とした中庭の暗闇を見つめながら、私は椅子が下のコンクリートの上で砕ける音を聞いた。私は左右によろめきながら中へ戻り、部屋の床の上で気を失った。

 

 

彼女の魂は狂ってしまった。

荒野で一人、自分の罪を見つめ続けて気が狂ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

*1
完全オリキャラ。オストアフリカを日本語訳しただけ。今後一切登場しない

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