潮「・・・ふふ、初めまして」
初霜「し、静流さん、これって・・・」
静流「っ、ゲホゲホ!(バタッ」
三日月「っ!静流さん!」
朝潮「大丈夫・・・って、これ、血?」
静流「・・・はあはあ・・・、私は、もう、長くは、ないのよ・・・」
潮「お母さん・・・」
初霜「・・・もう、帰った方が・・・」
静流「・・・そうだね。続きは車の中で・・・」
静流は潮と朝潮に両肩を支えられながら梯子前まで行き、梯子は前と後ろから介護されながら登った。
そして、なんとか地上に上がると車に乗った。
静流「・・・車、出すよ」
潮「無理、しないでね」
静流「・・・ありがとう」
車を走らせると来た道を通り家へ向かった。
朝潮「それで静流さん。さっきの・・・」
静流「・・・病気でね」
三日月「結核、ですか?」
静流「・・・よく分かったね。正解・・・」
初霜「・・・そうなんですか・・・」
潮「・・・まあ、この話はここまでにして」
朝潮「潮のことを話してもらっていい?」
潮「・・・はい」
潮はいろいろ話し始めた。
3年前、トラック諸島が深海棲艦により陥落した際、命からがら、潮は基地を脱出した。
潮はまず、軍令部がある東京、そして横須賀に向かった。
しかし、軍令部や司令官はこぞって、「指揮官を見捨てた反逆艦」、として処刑しようとしたためそこからも脱出した。
そして、それから1年間、各地を転々としたが、どこでも反逆艦と言われ、石を投げつけられた。
そして、2年前、疲労と空腹で漂流し、対馬に流れ着いた。
そこで静流に助けてもらった。
潮「・・・と言うことです」
朝潮「そんなことが・・・」
潮「おそらくは、まともな思考を持った子は、ここにしかいないかも・・・」
三日月「どういうこと?」
潮「・・・洗脳。皆を洗脳して死ぬまでこき使われる。私はそれを目の前で見ました・・・」
三日月「・・・」
初霜「確かに・・・、若葉も、他の姉妹も、目に光がなかった・・・。あれは、深海棲艦の目だ・・・」
朝潮「だから皆、傷ついても、腕が失くなっても、痛がったり、泣いたりしなかったんだ・・・」
潮「それ以外にも、提督等の人間には何でも従うので、暴力的なことや、性的なこともしてた・・・」
朝潮「・・・つまり、その洗脳を解けば・・・」
潮「うん、そう・・・」
初霜「私達は・・・」
三日月「基地に帰れる!」
静流「・・・旅の目標ができたね。帰ったら準備しないと」
静流は車の速度を上げ、家に向かった。
時刻は夕方になり、夕日が沈む頃に家に着いた。
しかし、家の前には複数の人影があった。
静流「・・・っ、なんだろう・・・」
駐車場の前で車を止め、静流と潮と朝潮は車を降りた。
初霜と三日月は眠っていた。
静流「あの・・・」
村人「おっと、静流先生、お出掛け中でしたか。こんな大勢で押し掛けて申し訳ない」
静流「いえ。それで・・・なにかご用でしょうか?」
村長「ここにいるもの、皆、静流先生に命を助けてられたもの達だ。静流先生には返しきれない恩がある」
ホームレス「そうです。我々のような金のない者達にも無償で治療してくれました」
女性「子供が病気の時、隣の街の病院は相手にしてくれなかったけど、静流先生は治してくれました」
村長「それで、少ないが、お礼を受け取って欲しい」
そう言うと2人の子供が静流の元に駆け寄り花束を差し出した。
この2人も静流が助けた子達だった。
子供達「しずる先生、ありがとう!」
静流「・・・、ありがとう(グスン」
あまりの嬉しさに涙をこぼした。
そして、2人の子供を抱き締めた。
しかし、抱き締めてから、静流は動かなかった。
潮「・・・おかあ、さん・・・?」
潮は静流の肩を叩いた。
しかし、その肩は、冷たくなっていた。
そう、死んでいたのだ。
潮「えっ・・・、お、かあ、さん・・・」
周りの人達も動揺しだした。
抱き締められていた子供達は泣き出した。
それから数分間、蘇生作業を行ったが、動くことはなかった。
そして、午後6時36分、静流の死亡が確認された。
その後の解剖の結果、静流の体内には血がたまっており、また、心臓は破裂していた。
彼女は数年間、心臓なしで生きていたのだ。
・・・それから一週間後、静流の葬儀があった。
葬儀の喪主は潮が行い、村長他、村人達も葬儀に参列、隣の街や村からも多くの人が静流の葬儀にやって来た。
そして、静流の墓は、地下射撃場があった山の麓に作られ、山の名前も彼女の功績を称え静流山に改名した。
・・・静流の葬儀から2ヶ月後・・・
49日が終わり、家の片付けをした四人は、早朝、浜辺に集まった。
初霜「・・・久しぶりにつけたなー、艤装・・・」
朝潮「そうだね」
三日月「・・・うん・・・」
潮「みんな、準備できた?」
初霜「・・・うん、武器弾薬もちゃんとある」
朝潮「食料も充分」
三日月「忘れ物はないです!」
潮「・・・じゃ、いこ」
村長「待たれよ」
潮「・・・そん、ちょうさん?」
出発しようとしたところを村長が止めた。
村長「・・・いくのじゃな?旅に」
潮「・・・はい、村長、そして、村の皆さんにはお世話になりました」
村長「・・・ここで余生を過ごすという選択肢はないかの?」
潮「気持ちは嬉しいです。しかし、これが最後だと思うんです。海に出れるのが・・・、だから・・・」
村長「・・・いつでも、帰ってきなさい。例え、人外でも、よそ者でも、我々は仲間だ」
潮「・・・はい!(グスン」
村長「お三方、潮をよろしく」
朝潮「はい!」
村長「君達ももう仲間だ、なにかあれば帰ってきなさい。いつでも歓迎しよう」
朝潮、初霜、三日月「ありがとうございます!」
村長「・・・気をつけて。武運を」
朝潮、初霜、三日月、潮「いってきます!」
四人は海に入り、最後の確認をしてから沖に向かった。
村長は、四人の背中が、水平線に消えるまで見届け続けた。