黒髪駆逐隊の大冒険   作:秋月雪風

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5.旅立ち

潮「・・・ふふ、初めまして」

 

初霜「し、静流さん、これって・・・」

 

静流「っ、ゲホゲホ!(バタッ」

 

三日月「っ!静流さん!」

 

朝潮「大丈夫・・・って、これ、血?」

 

静流「・・・はあはあ・・・、私は、もう、長くは、ないのよ・・・」

 

潮「お母さん・・・」

 

初霜「・・・もう、帰った方が・・・」

 

静流「・・・そうだね。続きは車の中で・・・」

 

静流は潮と朝潮に両肩を支えられながら梯子前まで行き、梯子は前と後ろから介護されながら登った。

 

そして、なんとか地上に上がると車に乗った。

 

静流「・・・車、出すよ」

 

潮「無理、しないでね」

 

静流「・・・ありがとう」

 

車を走らせると来た道を通り家へ向かった。

 

朝潮「それで静流さん。さっきの・・・」

 

静流「・・・病気でね」

 

三日月「結核、ですか?」

 

静流「・・・よく分かったね。正解・・・」

 

初霜「・・・そうなんですか・・・」

 

潮「・・・まあ、この話はここまでにして」

 

朝潮「潮のことを話してもらっていい?」

 

潮「・・・はい」

 

潮はいろいろ話し始めた。

 

3年前、トラック諸島が深海棲艦により陥落した際、命からがら、潮は基地を脱出した。

 

潮はまず、軍令部がある東京、そして横須賀に向かった。

 

しかし、軍令部や司令官はこぞって、「指揮官を見捨てた反逆艦」、として処刑しようとしたためそこからも脱出した。

 

そして、それから1年間、各地を転々としたが、どこでも反逆艦と言われ、石を投げつけられた。

 

そして、2年前、疲労と空腹で漂流し、対馬に流れ着いた。

 

そこで静流に助けてもらった。

 

潮「・・・と言うことです」

 

朝潮「そんなことが・・・」

 

潮「おそらくは、まともな思考を持った子は、ここにしかいないかも・・・」

 

三日月「どういうこと?」

 

潮「・・・洗脳。皆を洗脳して死ぬまでこき使われる。私はそれを目の前で見ました・・・」

 

三日月「・・・」

 

初霜「確かに・・・、若葉も、他の姉妹も、目に光がなかった・・・。あれは、深海棲艦の目だ・・・」

 

朝潮「だから皆、傷ついても、腕が失くなっても、痛がったり、泣いたりしなかったんだ・・・」

 

潮「それ以外にも、提督等の人間には何でも従うので、暴力的なことや、性的なこともしてた・・・」

 

朝潮「・・・つまり、その洗脳を解けば・・・」

 

潮「うん、そう・・・」

 

初霜「私達は・・・」

 

三日月「基地に帰れる!」

 

静流「・・・旅の目標ができたね。帰ったら準備しないと」

 

静流は車の速度を上げ、家に向かった。

 

時刻は夕方になり、夕日が沈む頃に家に着いた。

 

しかし、家の前には複数の人影があった。

 

静流「・・・っ、なんだろう・・・」

 

駐車場の前で車を止め、静流と潮と朝潮は車を降りた。

 

初霜と三日月は眠っていた。

 

静流「あの・・・」

 

村人「おっと、静流先生、お出掛け中でしたか。こんな大勢で押し掛けて申し訳ない」

 

静流「いえ。それで・・・なにかご用でしょうか?」

 

村長「ここにいるもの、皆、静流先生に命を助けてられたもの達だ。静流先生には返しきれない恩がある」

 

ホームレス「そうです。我々のような金のない者達にも無償で治療してくれました」

 

女性「子供が病気の時、隣の街の病院は相手にしてくれなかったけど、静流先生は治してくれました」

 

村長「それで、少ないが、お礼を受け取って欲しい」

 

そう言うと2人の子供が静流の元に駆け寄り花束を差し出した。

 

この2人も静流が助けた子達だった。

 

子供達「しずる先生、ありがとう!」

 

静流「・・・、ありがとう(グスン」

 

あまりの嬉しさに涙をこぼした。

 

そして、2人の子供を抱き締めた。

 

しかし、抱き締めてから、静流は動かなかった。

 

潮「・・・おかあ、さん・・・?」

 

潮は静流の肩を叩いた。

 

しかし、その肩は、冷たくなっていた。

 

そう、死んでいたのだ。

 

潮「えっ・・・、お、かあ、さん・・・」

 

周りの人達も動揺しだした。

 

抱き締められていた子供達は泣き出した。

 

それから数分間、蘇生作業を行ったが、動くことはなかった。

 

そして、午後6時36分、静流の死亡が確認された。

 

その後の解剖の結果、静流の体内には血がたまっており、また、心臓は破裂していた。

 

彼女は数年間、心臓なしで生きていたのだ。

 

・・・それから一週間後、静流の葬儀があった。

 

葬儀の喪主は潮が行い、村長他、村人達も葬儀に参列、隣の街や村からも多くの人が静流の葬儀にやって来た。

 

そして、静流の墓は、地下射撃場があった山の麓に作られ、山の名前も彼女の功績を称え静流山に改名した。

 

・・・静流の葬儀から2ヶ月後・・・

 

49日が終わり、家の片付けをした四人は、早朝、浜辺に集まった。

 

初霜「・・・久しぶりにつけたなー、艤装・・・」

 

朝潮「そうだね」

 

三日月「・・・うん・・・」

 

潮「みんな、準備できた?」

 

初霜「・・・うん、武器弾薬もちゃんとある」

 

朝潮「食料も充分」

 

三日月「忘れ物はないです!」

 

潮「・・・じゃ、いこ」

 

村長「待たれよ」

 

潮「・・・そん、ちょうさん?」

 

出発しようとしたところを村長が止めた。

 

村長「・・・いくのじゃな?旅に」

 

潮「・・・はい、村長、そして、村の皆さんにはお世話になりました」

 

村長「・・・ここで余生を過ごすという選択肢はないかの?」

 

潮「気持ちは嬉しいです。しかし、これが最後だと思うんです。海に出れるのが・・・、だから・・・」

 

村長「・・・いつでも、帰ってきなさい。例え、人外でも、よそ者でも、我々は仲間だ」

 

潮「・・・はい!(グスン」

 

村長「お三方、潮をよろしく」

 

朝潮「はい!」

 

村長「君達ももう仲間だ、なにかあれば帰ってきなさい。いつでも歓迎しよう」

 

朝潮、初霜、三日月「ありがとうございます!」

 

村長「・・・気をつけて。武運を」

 

朝潮、初霜、三日月、潮「いってきます!」

 

四人は海に入り、最後の確認をしてから沖に向かった。

 

村長は、四人の背中が、水平線に消えるまで見届け続けた。

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