時間軸としてはスメールの魔神任務後の話なので色々な人が出てきます。
あと、のちの本編にも入ることになる話も書いています。
海灯祭のネタバレあり。
めっちゃネタバレ。
〜海灯祭〜
新年を迎えてから初めて訪れる満月の夜、璃月では「海灯祭」が開催される。
僕はその祭りがあまり好きではなかった。
今僕は削月と理水と共に食事を食べていた。
「相変わらず港の人はよくやるもんだよ。」
『お前の方こそ好きな催しだと思うのだが。』
「残念、僕は海灯祭が好きじゃないんだ。毎年海灯祭の時期は他の国に行ったり山にこもってたりするよ。」
『白牢、お前はなぜそう嫌っているんだ?』
理水に問われて食事をしていた口を閉じる。
なぜと問われても…1番悔しかったことを思い出すからだろうな。
「どうしても好きになれないんだ。霄灯が空に飛んでいく様子が。」
見ているとあの人を思い出すから。
もう会えない、僕が唯一心の奥底から慕っていたあの人のことを。
「……あーダメだ、少し頭冷やしてくる。」
『お前の少しは日をまたぐ。』
「3日後には顔を出す。」
僕は理水と削月にそう告げて棺の裂け目を通った。
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裂け目を通った先には崩れた建物と草原が広がっていた。
「またここに戻ってきちゃったなぁ…。」
僕は散歩をしながら遠い昔のことを思い出していた。
「最初、僕は救われた。初めて認めてもらったと思えたよ。だから君のために尽くそうと考えた。」
段差に腰を掛けて足をブラブラとゆらした。
「いつも留雲とからくりに関して話し合っていたり、歌塵とは音楽のことで言い争ったりしてさ。あれを止めるの僕じゃ出来なかったからいつも鍾離様に迷惑かけてたよね。」
「それに君はからくりに関してのことになると寝る間を惜しんで没頭するから僕が休ませてたよね。懐かしいね。」
「マルコシアスの料理のときはいっつも静かにするのになんで僕のときは静かにしてくれなかったんだい?」
「まあ、それが君の良いところだったんだけどね。」
僕は再び歩き始める。
「あ、ここは君等の居場所じゃないでしょ?」
途中で宝盗団に襲われたけど消し炭にしてやったよ。ここは僕にとって大切な場所なんだからよそ者には消えてもらわないとだね。
「あ、聞いてよ。鍾離様、いつもご飯誘うのに毎回モラ忘れるんだよ?おっかしいよね?自分で作り出したモラを忘れるんだよ?僕も流石にあれは引いたよ。」
「旅人はね、スメールの英雄にもなったんだって。7国のうち4国で英雄になるって中々の逸材だいよね〜。」
「最近、弟…義理の弟と再会できたんだ。僕が悪かったかもしれないけどあんな素直だった子がツンデレになっててびっくりしちゃったよ。誰に似たんだろうね?」
「タルタリヤ君って子がいるんだけど最近僕の顔を見るたびに顔しかめるんだよ〜?」
僕はここ1年のうちにあったことを全て話した。
話しているうちに日は暮れて夜になっていた。長い時間話を続けていたんだと感じられる。
「……ここで何をしている?」
「魈…別に、あの人に今年1年のことを話しただけだよ?」
「あの人…もしや…。」
魈は気づいたようで気まずそうに俯いた。
まあ魈は知っているもんね。
「帰終、塵の魔神『ハーゲントゥス』。僕の最初で最後の主君。」
「お前は仙人をやめて尚未だに思い続けているのか。」
「そりゃあ恩人だし。」
それに、…いややめておこう。
「さてまだ僕は言いたいことが山ほどあるし君に聞かれるのは恥ずかしいから早く行ってよ。ここらへんにいる妖魔は僕も退治出来るからさ。」
「……いいだろう。やるからには残すなよ。」
「はいはい。」
魈は目を細めて確実にやらないと殺すって目をして一瞬で目の前から消えた。
あ、真面目にやらないと怒られるやつっすね。鬼ごっこルート再来しちゃう!地味にあれ疲れるからやめて欲しい。
「えーとどこまで話したっけ?あ、そうだ。この前草神ブエルがね〜。」
僕は話し続けた。日が暮れても、日が昇っても、妖魔も全部殺して。
僕は全てを話し終えた後、これからのことについて言った。
「ねえ帰終、僕は君みたいに優しい性格なんかしてないんだ。君は絶対に僕のことを許さないと思う。でも、僕はもう時間が残ってない。だから、だからさ、もしそっちに行ったら僕のこといっぱい怒って欲しいんだ。」
「いつか、本当に終わった時、僕は笑えるのかな?帰終と行っと一緒にいられたあの時みたいに、笑えるのかな?僕は、帰終がいなきゃ自分のことすらわからないんだ。」
「もし、聞いてるなら、また会えた時はお疲れ様って言ってよ。」
返事は来ない。そりゃあそうだよね、もう何千年も前に帰終は死んでる。僕が守れなかったせいで。
ずっと助けられ続けていたのに僕はなにも返せなかった。
「こんな僕でもずっと帰終のこと愛してるから、だから、また会えたら今度こそ伝えさせてね。」
僕は棺を召喚する。棺が開くと僕は中をくぐって帰璃原を後にした。
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「相変わらず賑やかだね。」
「白牢、来ていたのかい?」
「やあ歌塵、帰終のことを思い出したら君に会わなくてはいけないと思ってね。」
璃月の玉京台に裂け目を開くとそこには三眼五顕仙人の一人であるピンばあやと呼ばれている歌塵浪市真君だ。
お茶を淹れてくれたのでありがたく飲む。最近は稲妻の茶ばかり飲んでいたから璃月の茶が久しく感じる。飲んだの1ヶ月前くらいだけど。
「帰終を思い出して私に会いに来るなんて、貴方も変わらないわね。」
「変わらないか…周りが変わっているけど僕はあのときのままだ。それは、良くないことなのかな?」
「無理に変わらなくてもいいものだよ。でも人間は変わり続ける。それは神も仙人も一緒だ。」
「……それなら、いいかな。歌塵、君は仙人の中でも変わっていると言われないか?」
「ふふ、貴方ほど変わり者じゃないけど?」
「おっと、その返しは予想外だったよ。」
久々にふたりきりで歌塵と話していたけど僕に対しての話し方はそう変わっていなかった。
「白牢、もう横笛は吹かないのかい?」
談笑に花を咲かせていると突然、横笛に関して聞かれた。
僕は元々横笛を吹くのが得意であった。特に帰終が生きていた頃、夜になると毎日のように横笛を吹いていた。だけど帰終が死んでからはその回数は格段に減った。
「特別なことがない限り僕はもう笛を吹かないよ。海灯祭、もしかしたら今年は吹くかもだね。」
「そうか、久々に聞けると思うと楽しみだね。」
「まだ決まったわけじゃないんだけどな〜?」
僕は底に残ったお茶を一気に飲み干してゆっくり机の上において立ち上がった。
「もう行くのかい?」
「うん、お茶ありがとう。美味しかったよ。」
「鍾離様もだけどたまには来てくれよ。」
「はいはい、暇があればいつでも行くよ。」
棺が開くと僕はその中をくぐって次の場所に向かった。
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港に着くと、そこには色とりどりな飾り付けをされていたり花火が設置されていたりした。
「賑やかだね〜…本当に。」
「あ、終先生!!」
遠くから僕の名前を呼んでいる声がして声の下方向を見ると僕の方に近づく行秋、重雲、香菱がいた。
「お久しぶりです終先生!」
「久しぶりだね行秋、重雲くんと香菱ちゃんも。」
「久しぶり終先生!最近万民堂に来てくれないってグゥオパァーが寂しがってたんだよ。」
「そうだったのか〜会ったら会ったで怒られそうだな。」
「お久しぶりです終先生、最近見なかったですけどどこか出かけていたんですか?」
「稲妻とスメールにね、あとスネージナヤにも少しだけ立ち寄ったよ。」
3人は幼馴染だけどこの3人揃ってみるのは久しぶりな気がするな〜。
海灯祭もこうして3人で一緒に過ごしてるし少し羨ましいな。
「あ、終先生はこのあとは?」
「んー、このあとは適当だよ。しばらくは港をぶらついてしばらくしたら琥牢山に行こうかなーってとこ。」
「今日の夜、辛炎と胡桃がイリデッセンスツアーでライブがあるのですけど終先生も一緒に見ませんか?」
「あ、あ、ああー辛炎ちゃんと胡桃ちゃんが、そ、そうなんだ〜…。」
あの二人か〜、見たい気持ちはあるんだけど辛炎ちゃんと胡桃ちゃんはめっちゃ話してくるからなぁ…見つかるとめんどくさい。
個人的には仲良くしたい気持ちもあるけど苦手意識が勝ってしまう!本当に申し訳ないけど!
「お誘いは嬉しいけど僕はやめておくよ。遠くから見るだけでいいし、もし二人に会えたら楽しみにしてるって伝えてくれるかな?」
「勿論!!」
「ありがとう、じゃあまたね。行秋はまた小説について機会があったら話そう。」
「はい!」
僕は手を降ってからまた一人歩き出した。
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どこもお祭り一色。
霄市が町中で並び本祭の夜には霄灯が空を埋め尽くす。
みんながみんなして同じ言葉を言う。
「海灯祭を祝して」
僕はこの言葉が嫌いだ。
英雄を祀る?くだらない。
まず誰が英雄なんだ?岩王帝君?仙衆夜叉?誰が英雄かなんてわからないのに祝う意味がわからなかった。
だから、僕は言うのも言われるのも嫌いだ。
それを知っているから誰も僕に対してその言葉を言わない。
まあ知らない人もいるだろうけど。
「終!海灯祭を祝して!」
「海灯祭を祝して。」
「……やあ旅人。今日はいい日だね。」
この二人は知らないくて当然か。僕はただいつものように会話するだけだ。
「終、横笛吹ける?」
「ん?吹けるけど…。」
「やっぱり!ピンばあやが言っていたことは終のことだったのか!」
「え、何の話?」
二人から詳しく話を聞くとどうやらイリデッセンスツアーを主催しているドヴォルザークの先祖がフォンテーヌにいた頃にとてもキレイな笛の音を聞いたそうだ。それが横笛で、似たような旋律を何百年もたったあとも先祖が聞いたから神か仙人が吹いていたのじゃないかという話になったそうだ。
それと同時に琴の話もあったそうだがそれは歌塵だったらしい。
「それで横笛の主が終なのか確認しに来た。」
「なるほど、間違いなく横笛の主は僕だろうね。」
「やっぱり!でもピンばあやから終は笛を吹かないって聞いたんだけど。」
「嗚呼、人に聞かせるためには吹かないよ。それに特別なことがない限りもう吹くつもりはないんだ。」
「そっか、少し楽しみにしてたんだけど…。」
う、やめてくれ。それはまじで僕に効くからさ!
「まあそんな感じで僕は本当に吹かないといけないなと思ったときだけしか吹かない。どう言われても吹く気は今はないからね。」
「そんな〜!せっかく久々に会えたから親切にしてくれると思ったのに〜!」
「あっはっは!僕はそこまで優しくないからね。」
俺は笑みを浮かべながら旅人の耳元でそっと呟いた。
「僕は少なからずカーンルイアと繋がっていること忘れちゃダメだよ?いつ僕が敵に回るかわからないんだからね?」
「っ!!」
「安心して、今あそこに行くと僕の目的を達成できないからね。それじゃあ、良い日にしなよ。」
そう言って僕は旅人から離れた。
しばらくは会いたくないかもな。
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「行っちゃった…。」
「仕方ないんだぞ!終はふらっと現れていつの間にか消えてるからな。」
残された空とパイモンは先程別れた終の事を話していた。
「そういえば旅人、終は海灯祭を祝してって言ってなかったぞ!」
「そうだ、今日の終いつもと雰囲気が違った…。」
「なんかあったのか…?」
二人が終について考えた。
「(終はいつも気前がいいし優しい。だけど今日は切羽詰まってるしいつもより無表情だった気がする。あ、俺等が海灯祭を祝してって言った時が特に冷たい雰囲気だったかもな。)」
「旅人、終についてなにか気づいたか?」
「ああ、終は俺らが海灯祭を祝してと言った時いつも以上に冷たい雰囲気があった。」
「あの言葉で?なにか問題でもあったのか?」
「終は海灯祭が嫌いだからその言葉を言われるのも嫌いなんだ。」
「その声は!」
「鍾離先生、どういうこと?」
後ろから声をかけられ振り返るとそこには往生堂の客卿で岩神の鍾離がいた。
「言葉の通りアイツは海灯祭が嫌いなんだ。昔仕えていた主君のことを思い出し、誰に対して感謝してるのかわからないからだそうだ」
「それって、帰終のことか?」
「知っていたのか?」
「うん、留雲借風真君とピンばあやから聞いた。」
「そうか、なら話は早いな。終は帰終のことを宝箱そのものだと思っていた。」
「宝箱?その帰終が?」
「終は帰終に救われたんだ。そこから恩を感じて俺の立ち会いのもと契約をした。名前を璃月を守ることを誓うために、命を帰終に尽くすという内容だった。だが帰終の死後、終は契約を破りこの地を出ていった。そしてその代償で誰も終の名前を覚えていない。」
「そんな…。」
「終は帰終のために生きていると言っても過言ではないくらい忠実だった。だがそれも帰らぬ人となってからは性格を歪めるくらい歪な形となって今も残っている。誰も帰終が帰璃集を、璃月の民を愛していたのか知らずに、この日を感謝せずに生きていることが許せないから海灯祭が嫌いだと思う。」
「そんな…。」
「終…、どうにかならない?」
「あそこまでこじらせていると逆に怒らせかねない。そっとするしかないんだ。」
「そんなの悲しいんだぞ!本当にオイラたちには何も出来ないのか!?」
「………。」
鍾離は何も言えなかった。本当に何も出来ないから無責任なことを言って旅人たちを危険な目にあわせるかもしれないから。
「話はここまでだ。分かったなら海灯祭の期間中は変に刺激しないほうが良い。」
「分かった。」
「今回は仕方がないんだぞ。」
空とパイモンも大人しく従うことにした。
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終は群玉閣に上り、上から璃月港を眺めた。
高さもあるので風が強く、寒さを感じる。
「はは、こっからでも音楽が聞こえるなんてどれだけ賑わってんだろうね〜。」
ケラケラ笑いながらまたその景色を見ている終の表情はいつもと違って真面目な顔をしていた。
「人の世は変わる、か…確かにそうだな…。帰終、僕の計画は人の世では間違っているんだろうね。」
一人で話す終の背中はとても小さく見えた。それくらい、終の今の様子は弱々しい。
「僕は君みたいに優しくはなれない。帰終がもし、生きていたら絶対に止めているだろうね。でも、時間がないから急がないといけない。」
「僕は本気なんだ、これで死ねるんだったら悪くない最後かもね。」
聞こえるのは下からする海灯祭の音だけ。その様子を静かに見ていた終は立ち上がると袖から竹の入れ物を取り出して中身を開けた。
その瞬間、花火が空高くに咲き誇り、霄灯が夜空を埋め尽くした。
「今日はこれで終いにしようか。」
終は手に持っている横笛に口をつけ、慣れた手付きで吹き始めた。
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「!笛の音聞こえる…。」
「これってもしかして、終じゃないか!?」
「凄い、綺麗な音…。」
「本当ですね旅人さん。」
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「………変わらないな。」
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「ふふ、やっぱり吹いたのか。」
「ばあやはこの笛の音を知っているのか?」
「すっごい綺麗な音だね。」
「勿論さ、私が旧友と音楽や人間について議論や言い争っているときにいつも聞かせてくれた曲だからね…。『音は求めれば答えてくれる。それがからくりや心でも同じことだ』とな。争いを収めるとき、彼はよく横笛を吹いてくれた。」
「へえその人って仙人なのか?」
「昔はね、だが彼はもう笛を吹かないだろうね。」
「なんでなの?」
「彼にとって、この曲は亡き主君を思い出させてしまうから。」
「ピン、もしかして…。」
「でも、これだけはずっと同じだよ。誰かに聞かせるために吹いてることだけはね。」
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僕は裂け目から琥牢山に戻ってきた。
「あ、鍾離様も来てたんですか。」
「嗚呼、それにしても相変わらずお前の笛は綺麗だな。」
「お褒めに預かり光栄です、帝君。」
『始めるから座れ、白牢。』
「はいはい、食事会だったねー。」
僕は用意されている椅子に座って淹れられている茶を飲んだ。
書いている途中で魈引きました。
夜蘭を絶対引かなきゃ後悔する!