僕は迎仙儀式のために特等席で迎仙儀式を見ていた。
つまりは屋根の上。
高いから下も丸見えだよ。
「クレー、落ちたら危ないからお兄ちゃんの手、しっかり掴んどくんだよ。」
「うん!でも人いっぱいだね、そんなにすごいの?」
「ここ、璃月の民にとっては商売のために欠かせない行事だからね。」
クレーは下にいる人を見ながら楽しそうに見ていた。
すると一人だけ、いや正確には二人だがこの場とは似ても似つかない格好をした人間が前の方に向かっていた。
「あ、えいよきしのお兄ちゃん!」
「栄誉騎士?クレー、それは誰かな?」
「あそこの金髪のお兄ちゃん!モンドをすくってくれたえいゆーさんなの!」
「へえ…後で詳しくその話を教えてくれないかな?」
「うん!それにしてもまだかな〜?」
「もうすぐだよ。」
僕らは屋根の上に座ってそのまま迎仙儀式を見た。
刹那、事件は起きた。
「岩王帝君が暗殺された!!」
「不味いことになったな…。」
「お兄ちゃん?見えないよ〜!」
「ごめん、事件が起きたから少しここから移動するよ。」
僕は儀式が始まってすぐにクレーの目を隠した。
岩王帝君が暗殺された。
すぐに天権、凝光が千岩軍に指示を出す。
僕らは見つからないように屋根と壁の上を移動して少し離れたところで止まった。
「しゅうお兄ちゃん…?」
「クレー、一旦ここで休もっか。」
「うん…。」
クレーには悪いけどこんな幼い子に死体…神の死体を見せるわけには行かないんだ。ごめんねと言いながらクレーの頭を撫でてあげる。
すると少し後ろの方で面白いことが起きていた。
「はは…面白いじゃん…。」
それは千岩軍に追われている先程の栄誉騎士、そしてそれを助けているファデュイの執行官、『公子』タルタリヤ。
これは良いネタにもなるし面白くもなるだろう。
どうにかして観ていたい、関わりたい!
「あ、しゅうお兄ちゃん笑ってる!!」
「!?…そうか…ようやっとスイッチが入ったみたいだね…。」
「クレー、初めてしゅうお兄ちゃんの笑ってる顔見た!もしかして嬉しいことあった?」
「ふふ、そうだね。面白いことがあった!でもこれはクレーには危険な目に合わせるかも知れない。だから1度騎士団に戻ろう。」
「え…。」
クレー、その顔はやめて!流石にくるものがある!
僕だってクレーに色々見せてあげたかったのにこんな面白いことが始まってしまって申し訳ない。
「クレー。僕はクレーを守らなくちゃいけないんだ。だから怪我させたらジンちゃんとアリスママに怒られちゃうんだ。」
「しゅうお兄ちゃんが怒られるの…?」
「うん、だから1度怖いことがなくなったら今度は璃月じゃなくてスメールにでも行ってみよう!」
「やくそくだよ?」
「うん、約束破ったらお兄ちゃんのことどっかーんしていいからね?」
僕はクレーを抱えて裂け目に入る。裂け目に入ると団長室へと繋がった。そこにはジンちゃんとリサちゃん、あと一人は知らない赤リボンの女の子がいた。
「終さん!それにクレーもどうしたんですか?」
「ちょっとした事件があったから長期休暇を切り上げてきたんだ。ジンちゃんとリサちゃんだけ残ってくれないかね?」
「分かったわ。アンバー、クレーを連れて部屋から出てくれないかしら?」
「分かりました、おいでクレー。」
「うん…またねしゅうお兄ちゃん。」
「じゃあなクレー。」
クレーとアンバーと呼ばれた女の子が出ていったので僕は早速二人と向き合った。
「今から話すことは他言無用だから。」
俺は二人にことの顛末を話した。信じられない話だろうけど二人は真剣に聞いてくれた。
「僕は少し知りたいことがあるからもう行くよ。突然こんな事になってごめんな。事が終わったらまた別に行ってもいいかな?」
「もちろん、数日でしたけどクレーのことありがとうございました。」
「僕の方こそごめん!クレーにも謝っといてね。」
僕は裂け目に入って再び璃月へ戻った。
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帝君暗殺から二日後。僕は旅人の動向を高いところから眺めた。屋根の上だったり壁の上だったり階段の上からだったり。とにかく見つからないようにしながら見ていた。
面白い…。
隣にいるパイモンとやらも面白いけど旅人自身が特に興味深かった。それに誰かに似ている気がするし。
一言で言えば己のことを軽んじている。
実に滑稽で愉快。
成長したらどれくらい強くなるだろう、どれくらい多くの友人を作るのだろう、どれくらいの悲しみを味わうのだろうか。
僕は旅人と話し終えたタルタリヤ君にこっそり近づいた。
「なにカッコつけて俺が払うよ、って?」
「!?しゅ、終!?」
「やあやあ、みんな大好き終先生だよ。岩王帝君が暗殺されるなんて面白いことになってるけどお陰でクレーをモンドに返す羽目になってしまった。」
「……性格変わってない?」
「ああ、本来はこっちの性格が本当の僕だよ。」
僕は笑顔でタルタリヤ君の背中を叩いた。僕がこんな性格だとは思わなかっただろうね!
いやー久々にスイッチ入ってめっちゃ気分がいいんだ!
「それにしても君も参加しているなら微力ながら僕も情報提供をしようじゃないか。」
「へー、なにがあるんだい?」
「まあ僕は旅人、特に鍾離様がいないときのみ教えよう。さて、情報だけど今回の件で鍾離様のことはあんまり信用しないほうが良いよ。」
「鍾離先生を信用しない?なんでだい?」
「ふふ…それはことが終わった後、本人から聞けると思うよ。それと君等はある人の手のひらで踊らされているってのも忘れないでおくことだね。」
「終、君は何を知っているんだ?」
「まあ二日考えた結果の話だよ。さて、そろそろ彼らが戻ってくる頃だろうね。僕の名前は鍾離様に伝えないでくれよ。僕は彼に、まぁこの話よそう。」
手をひらひら振った後タルタリヤの元から去った。
「さて、また情報を集めて考察しなければならないね。」
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僕はまた数日経った日、面白そうな気配を感じたのでタルタリヤ君のもとを訪れた。
どうやらこれから行くところがあるらしい。
「やあタルタリヤ君、これから黄金屋に行くのかな?」
「……なんでそのことを?」
「僕は文字書きだよ?こんな面白い話、逃すなんて以ての外。」
「本当にどこから情報を得てるのやら。」
「そりゃ君さ、外で堂々と銀行の受付ちゃんと話してたらバレるけど。」
「あ。」
いや、君「壁に耳あり」ってことわざ使ってたけどそれ君にも言えることだからね?タルタリヤ君はやってしまったという表情をしている。
どんまいとしか言えないぜ。
「ま、もし君がやられたら回収しに行って盛大にからかったげるよ。」
「それは嫌だね。」
「じゃあ頑張ってよ。」
横を通り過ぎていくタルタリヤ君を見てから僕も裂け目で移動した。
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「神を失った国は上古の悪意に再び飲み込まれるのか楽しみだ。もちろん、璃月の人と一緒に溺死するつもりなら俺は止めないけど。」
タルタリヤ君は水に包まれて黄金屋から出ていった。
折角迎えに来てあげたのに勝手に行かれてしまったな。
「ふむ、どうやら渦の魔神オセルが復活したようだね。」
「だ、誰だお前!?」
「嗚呼、そんなに身構えないでくれよ。僕はファデュイの味方ではないから。それに君等は旅人、空とパイモンだよね?」
「そうだけど。君は?」
「僕のことかい?僕は終、しがない文字書きだよ。それよりも早く行ったほうが良いだろう。」
「そうだった!行くぞ旅人!」
「待ってくれ、それなら送ってあげるよ。」
俺は手から黒いキューブ、棺を召喚して裂け目を作ってあげた。
その裂け目に二人を押し込んで笑顔で手をふる。
「あ、ちょっと!」
「また近いうちに会おう、異世界からの来訪者。」
裂け目が閉じてこの空間には僕しかいなくなった。
渦の魔神か…。それだけの月日が経ってしまったということか。
「オセル…久々に見に行ってやろうか…。」
裂け目を作ると、僕はそれをくぐって黄金屋から立ち去った。
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裂け目で孤雲閣に移動したけどこれはこれで面白い。
でも久々に見てけどオセル暴走してるなぁ〜。
ま、どうでもいいか。
さて、少しだけ手助けしてあげますか。
再び裂け目が作り出すと、俺はそれをくぐった。
行き着いた先は群玉閣だ。
「またファデュイか!?」
「残念、僕はファデュイじゃないよ。」
『お前は…!』
「そんなに睨まないでよ、削月築陽真君。少しだけ手助けに来ただけだよ。」
僕はにこりと笑うけど仙人たちの警戒が解けない。当たりまえだよな。
「オセルね〜、久しぶりに見たけどこれじゃあ話すことも出来ないよ。」
「お前、渦の魔神と友達だったのか?」
「ん?そんなわけないじゃん!僕、アイツのこと嫌いだったし!」
『貴様、帝君の作ったこの国にいたのか…。』
「今回は手助けに来ただけだよ」
僕は槍を手に持つとそれを地面に突き刺して雷元素を放出する。
「『虎壊雷斬』」
その瞬間、白い雷の獣がオセルに襲いかかった。
「凄い…。」
「はーやっぱダメかぁ」
結構火力出したはずなのに全く倒れないオセルを見てため息をついた。
僕の力が封印されてるのは分かってるけど目覚めたばかりの魔神にも劣るようじゃなぁ…。
「…昔のお前にそこまでに力はなかっただろう。」
「やあ魈。あれから俺も色々あったんだよ。それじゃ、後はよろしくね栄誉騎士様?」
「は!?お前勝手に!」
手元に残ったキューブから裂け目が生まれると僕は群玉閣から立ち去った。
次に出会うときが完璧な修羅場になるとは知らずに…。
会話文ばかりで申し訳ないです。