渦の魔神オセルの件も一段落した後、僕は北国銀行に用事があってやってきた。
用事は勿論タルタリヤ君を盛大にからかうためだよ!
「やっほータルタリヤ君!からかいに……やっぱ用事思い出したわ〜。」
「あ!お前は!えっと…。」
「終?だっけ?」
「やあ旅人、それとも英雄殿と呼んであげようかな?」
入り口で止まっている僕は内心冷や汗かきまくっていた。
どうしても会いたくなかった人物がいるからだ。
「お前……!」
「あ、あはは…お久しぶりですね帝君。」
「今まで何をしていた…。」
「それは帝君が1番知ってるんじゃないですか?」
無言で衝撃波を放ってくるあたり随分お怒りのようですね。
「ちょっお!?」
「許さん…。」
「ですよね!」
「前から思っていたけど終、本当に何者?」
取り敢えず殺されないとは思うけど怖いので避けながら話した。
「言わないとダメ?」
「こいつは俺の知人の魔神に仕えていた仙人だ。」
「あ、言われた。どうも元仙人です〜。」
帝君にめっちゃ睨まれてる。これはめっちゃやばいかもしれなーい!
「ちょ、お、怒らないでくださいよ!説明はちゃんとしますから!」
「今すぐしてもらいたいんだがな」
今にも元素爆発撃たれそうでめっちゃ怖い!本当に怖いんだけど!
「まあその話はあとにして…あ、久しぶり淑女。」
「あら、挨拶する順番がおかしくないかしら?」
「それは申し訳ない『淑女』ショニーラ様?」
「あんたにそれ言われると気持ち悪いわね。」
「あ?巫山戯んなよ炎女。」
「うるさいわね性別詐欺ジジイ!」
久々に会ったのに苛つくような事言うな〜生意気な女!
てか若い衆がついていけてないけど知るか!
「それで、あんたはなんでここに来たの?」
「タルタリヤ君を盛大にからかうため!ついでに少し確認したいことがあったんだ。」
「確認…?」
僕は旅人に近づいて顔をかなり近づけた。よくよく見るとあの子の服と似てるし。髪色も目の色もそっくりだな。
本当に懐かしく思えてくる。
「旅人、君に姉か妹とかいない?」
「!!妹、蛍のこと知ってるんですか!?」
「うぉ、どうどう。一旦落ち着け。」
急にぐいっと来られたら僕驚いちゃうよ。てか美少年だね。
「まあここからの話、ファデュイには関係ないし帰ってもろて〜。」
「そうさせてもらうわ、次会うときはもう少し成長した姿を見たいものね。」
「残念、僕はもう成長できないんだ。じゃあ気をつけろよ。」
「俺は淑女を送ってくるよ」
僕はシニョーラとタルタリヤ君に別れを告げて旅人と向き合った。
こう向かい合うと本当に懐かしい気分になるな。
「君の妹の蛍ちゃんとは良き隣人だったよ。もう500年前くらいの話だよ。」
「500年前…。」
「ある事件以降は僕も別のところに身を寄せていたから会ってはいないね。」
蛍ちゃんは今アビス教団にいると言ったほうがいいのか…。
いや、面白いことになるからやめておこう!
次、会えたら話してあげよう!
「まあ旅をしていけばすぐに会えるよ。」
「そうか…ありがとう終。」
「いいよ、じゃあ僕はこれから予定が…。」
「逃すわけ無いだろう。」
「あ、ですよねー。」
帝君、いや鍾離様に抱えられ僕らは北国銀行から出た。
わーたっかーい。
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ああああああああああああああああああああああああ!
めっちゃ怖い!怖すぎ!なんか目の前にいる元岩王帝君と美少年仙人がなんか凄いオーラを放ってるんだよぉぉぉ!
さっきまでめっちゃ呑気にしてたけど往生堂に入って椅子に拘束されてからめっちゃ怖いんだけど!てか魈いつからいたの!?
「そ,それで、なんで僕は拘束されてるんですかね?」
「質問に答えてもらおう。」
「拒否権なんて存在しないようですね。」
「なぜこの地から去った。」
本当に説明しなきゃいけないようなので僕は大人しく説明を始めた。
「僕がいなくても璃月は成り立つだろうなって思ったし心から仕えた主君はもうこの世にはいないから。あと、ここに残っていても業障で精神が狂いそうになって、それでこの地を去りました。それにちゃんと置き手紙も置いていったし…。」
「「は?」」
なんか二人して間抜けな顔してるな。
確か順序はこうだ
主君亡くなった。仙衆夜叉いるし僕がいなくてもいい?
あと業障で気が狂いそう
↓
よし、他の国も見てみよう
↓
勝手にいなくなっても心配されるか。
↓
置き手紙書いておこう。
「置き手紙なんてなかったぞ…。」
「えー絶対書いたんだけど僕。風で飛ばされたのかな…。」
「まあそのことはもういい。だがなぜ、お前はあの場にいた。」
「………あー、そのことですか。ある人に誘われてなんとなくついていったらそういう立場にまでなってしまったんです。今のこの体だって色々いじられて人間としても仙人でもない、フォンテーヌで言うキメラのような存在です。」
「それでか、お前に近づと体が疼くのは。」
「正直、璃月から出た後は楽しかったことも多くて気持ちは多少楽になりました。」
歩いて旅するだけでも狂いそうになった気はいつしか落ち着いていったし、璃月にいても多分…壊れていただろうな
「それで、お前はこれからどうする?」
「あー…このまま璃月にいてもいいんですけど八重堂の編集者に呼び出しを食らってるので一旦稲妻に行くつもりです…。」
「稲妻?今は鎖国中だったはずだろう?」
「鍾離様、白牢は大体の場所には移動できます」
「そうだったな…すっかり忘れていた」
魈の説明に感謝する。ようやく意識が俺から外れた。
「じゃあ帰ります!」
俺の足元に裂け目を作って落ちるようにしてその場を後にした。
「魈、次アイツを見つけたら連れてきてくれ。凡人になってもあいつとは友人関係だと思っているしな。しっかり話さないといけないだろう。」
「分かりました鍾離様。」
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現在、鬼ごっこ中です。
勿論僕は逃げてるよ★
「待て!」
「ギャー来ないでー!!」
「鍾離様からの命令だ!」
「もう仙人じゃないよ僕〜!」
鬼は魈くんですね。俺、負ける自信しかないよ。
用があって立ち寄った望舒旅館から鬼ごっこが始まり璃月港まで続いている。途中で戦闘にも入ったけど埒が明かずにそのまま鬼ごっこをしている。
てかオセルの件で元素溜まってないから移動距離が短くなってて逃げれないんだよ!
「あーもう!誰か助けて〜!」
「あ、終ってわぁ!?」
目の前から歩いてきたタルタリヤ君を反射で拉致った。走る速さは保ったままだ。
あ、こいつ水の神の目持ちだ。
「タルタリヤ君、元素爆発使って!!」
「え!?この状況で!?」
「いいから早く!」
「え、し、止水の矢!!」
「ちょっと力借りるよ?」
どこからか出てきた棺にタルタリヤ君の元素爆発をぶつけて裂け目を起動してそのまま突っ込む。そしてそれと同時に裂け目を閉じた。
ー
「あっぶね〜!!殺されるかと思ったぁ〜!」
「俺拉致られたうえに元素爆発使わされたんだけど…。てかここどこ?」
「………モンドにある風魔廃墟ってところだよ。僕ここ好きなんだよね〜。」
僕は風神バルバトスの形をした像により掛かる。
あのときはどうしても我慢しないといけないときはここで一人で我慢していたな。
懐かしい…。
「終?」
「あ、ごめんごめん。少しだけ昔のことを思い出してね。」
「ここにも来たんだ。」
「うん、ここは僕にとっては一人で苦しみを耐える場所でもあったし休める場所でもあったんだ。」
真ん中にある風の壁に手を触れるとバチンと弾かれる。少し触れただけでもボロボロで血だらけだ。
1歩、風の壁に近づいてみると強い力に引っ張られて後ろに下がった。
どうしちゃったんだろうね、こんな事する人はこの場に一人しかいない。
「タルタリヤ君、どうしたんだい?僕は女ではないぞ?」
「なんか、消えそうだったから…。」
「消えそうだった、ね。大丈夫だよ、今はまだ消えない。」
僕はいつもより少しだけ気を使ってその場を踏みとどまった。
正直タルタリヤ君に消えそうと言われた時はドキッとしてしまった。
まだやることが残ってるから消えることはできないんだよ。
「僕はここにいるよ。」
「うん…。」
「だから泣かないでよね?」
「な、泣くわけないじゃん!」
「強がっちゃって〜。」
僕はよしよしとタルタリヤ君の頭を撫でるとすぐに離れた。猫みたいだね、僕あんま猫のこと好きじゃないけど。なんかめっちゃ嫌われてるしディオナちゃんにも威嚇されるから。
「さてと、これからどうしよっかなぁ〜。帝君に会ったら岩喰いの刑になっちゃうかもなぁ。」
「呑気すぎるでしょ!?もっと焦らない?」
「ま、死ねないし!それに契約違反で本当の名前はもう無くなってるから。」
「名前、と引き換え?」
あ、そういや言ってなかったな。
「僕、終じゃないんだよ。僕の本名はもうこの世で誰一人知らないんだ。いるかもしれないけど自分ですら覚えてないんだ。」
僕が笑うと君が苦しそうになる。意味がわからないな〜。
なんで他人の僕のことでそんな悲しそうな顔しているんだろう。
「終、は本名を呼ばれたくないの?」
「呼ばれたいよ、あの人が呼んでくれた名前だし。鈴を転がしたような声で夜叉の名じゃなくて、僕の本当の名を唯一呼んでくれたんだ。でも誰も知らないし覚えてないからどうしようも出来ないよ。契約の神との契約だから仕方ないけどね。」
だからさ…。
「今はなんもすんなよ。」
僕は笑いながらタルタリヤ君に強めの雷で気絶させてもらった。これくらいなら少ない元素力でもできるから。
タルタリヤ君は立派な武人だ。それに勘もいい。だからこそ悟られるわけにはいかない。
あの計画だけは…。
僕はタルタリヤ君をそっと石畳の上に寝かせたあと僕はむせた。
咳をするたびに肺から空気が押し出されて体が刺されるように、ズタズタど切り裂かれるように痛い。
「うっ…あ”、くそ!」
いつしか慣れたと思っていたこの痛みもいつも以上に痛くて苦しい。
「お願い、まだっ…、やらないと…。」
大きく呼吸をしながら胸を押さえていると体からすっと痛みが引いた。
ヒューヒューと喉から音が漏れる。冷や汗が気持ち悪い。
「業障よりたちが悪い…。」
頭の中でふとある姿が浮かんだ。
「まだ、大人しくしてろ…」
ギリっと口を噛み締めると唇からは黒くドロっとした液体がボタリと石畳を黒く染めた。
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僕は再び往生堂に来ていた。今回は自分で出向いて元岩王帝君の元へやってきたのだ。
「自分から来るなんて夜叉の時からなかったのにな。」
「乗務連絡しか用がなかったんで。」
「それで、どうしてやってきた?」
「謝罪ですよ。置き手紙だけ残して勝手に仙人、夜叉としての契約を破棄してしまって申し訳ありませんでした。」
手は膝の上において机に頭がつきそうになるくらい頭を下げた。
しばらく僕はそのまま動かないでいると帝君がもうよいと言った。
「お前から謝罪の言葉を口にされるとは意外だったな。」
「僕だって謝ることくらいしますよ。」
「そうだな…。契約は契約だから執行しないといけないんだが。」
「あーそれに関しては大丈夫ですよ。名前だってもう覚えてませんから。」
僕はどうぞという意味で手を広げたらノータイムで岩喰いの刑が執行された。
まあ室内なんで規模は小さかった。
「帝君、めっちゃ早かったですね?恨んでますよね?」
「いや、全く。それよりもう帝君ではないから鍾離と呼んでくれ。」
「じゃあ僕も今は白牢ではないんで終と呼んでくださいね鍾離様?」
「分かった。終、このあと用事がなければ飯でも食いにいかないか?」
「いいですよ〜。じゃあどこ行きます〜?」
僕らは往生堂を出て二人でご飯を食べに行った。
余談だが噂で聞いていたモラを持っていないのは本当だった。流石の僕も財布を服に縫い付けることをおすすめした。流石にいい年なんだからさ…。
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さて、今度は何に巻き込まれたのかな〜っと思ったそこの君!
留雲借風真君に呼び出されました!
正直に言うとなんで呼び出されているのだろうかなって不思議でしか無い。嫌われてると思ってたし。来てくれと言われた場所は天衡山の山頂、ここまで登るの結構キツイのに…。
「留雲、来たけど何か用?」
『来たか、白牢夜叉。』
「もう俺は夜叉じゃないよ。仙力は多少なりとも使えるけど昔みたいには上手く使えないから。」
『そうか。少しお主に頼みたいことがあってな。』
「頼み?僕のこと昔から嫌いなくせに珍しいこともあるんだね。」
『好いてないだけで嫌ってはいない。それで頼みなのだが…』
俺は留雲借風真君の話を聞いた。留雲借風真君が育てた人間の子が人里に降りる決意したけどいちよ元仙人である俺が何かと手助けをしてくれるとありがたいという話だ。
「まあ別にいいよ。仙人が人間を育てるなんて面白そうだし、どれくらい世間知らずか気になるね。」
『あまりからかうな。』
「分かってるよ、それじゃ特徴と一致している人探してみるわ。」
僕は裂け目を使って天衡山から離れて港へ戻った。さてと
「申鶴ちゃんとやらを探してみようか。」
おい、3分で見つかったぞ。
普通の人とは違った気配がする。それにとっても魅力的だ。
まあそれは置いといて、話しかけるか。
「ね、そこの白髪のお嬢さん。僕とデートしない?」
「……我に言ってるのか?」
「そうそう、君に言ってるんだよ申鶴ちゃん。」
「!?」
僕が名前を知っていることに驚いて申鶴ちゃんが槍を構える。
「そう警戒しないでくれよ、僕は留雲借風真君に頼まれて君のもとに来たんだから。」
「師匠から…?」
「ま、僕は君に多少の常識を教えに来ただけだから。それにしても申鶴ちゃん、そんなイイモノを縛ってるなんてもったいないなぁ〜。」
僕は槍の柄を強く掴んで引き寄せると申鶴ちゃんの顔が目と鼻の先まで近づいた。
その忌々しい赤い紐を解いたらどれほどの力があるのだろうか。どれほど僕の好奇心を埋めてくれるだろうか。想像しただけで楽しくなってくる。
嗚呼、囲いたい、愛でたい、染めたい。
そんな欲望がドロドロと俺の中で渦巻いた。
「ね、申鶴ちゃん。俺の眷属にならないか?」
「え…。」
「君の抑えている殺気、僕にとっては最高の蜜なんだ。君を苦しめるなら俺がそれを引き受けてもいい。もっと生きのしやすい生活を保証するよ?」
堕ちて欲しい。
なんとしても手に入れたい。
「我は……。」
「なんて、そんなことしたら今度こそ留雲借風真君に嫌われるだろうしやめておこう。」
「………。」
「じゃあ改めて、僕は終。
僕は手を差し出す。申鶴ちゃんもゆっくりだが握り返してくれた。
危ない危ない、衝動的にナンパしてしまった。
あんな人間が抱えきれる殺気ではなかっった、けど僕にとっては最高に素晴らしい物を持っている人間と巡り合わせたのはもはや運命だと思ってしまった。
手に入れたい気持ちもあるけど僕はもう違う。
「じゃあ終先生の常識マナーレッスンでも始めようか。」
僕は申鶴ちゃんの手を引いて璃月港を歩き出す。今日はまだ始まったばかりだから。
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………冥