「ハルカくん、何か思い出せないかな?」
そう言ってオレの目を覗き込んできた警察官を見て思い出した。自分は一度死んで生まれ変わったこと、そして生まれ変わったこの世界は————
「チェンソーマンだ……」
今世の両親は死んだらしい。
らしい。というのは両親はかわいそうなことにオレのいない間に家に押し入って来た何者かに顔をグッチャグッチャにして殺された後、検死され、燃やされ、全てが灰になるまで、その姿を見せることがなかった。挙句、前世なんてものを思い出してしまったらこの短い今世の思い出など綺麗さっぱり忘れてしまったのだ。これでは悲しむに悲しめない。なんという親不孝。
幸い、周囲の人々は両親を凄惨な殺人事件で失ったショックで涙の一粒も出なくなってしまったかわいそうな子と思ってくれたようで、必要最低限の聴取と世話をするのみ。一人静かな病室で改めて現状を確認する。
前世を思い出す前から、全てに既視感と違和感を覚えていた。古いと思った建物が新築のように綺麗だったり、駅前でもらったティッシュや家のテレビが分厚いと感じたり、おやつにと渡されたお菓子をとても大きく感じたり。指摘しても子供によくある妄想や虚言だと流されていたようだが間違いではなかった。オレはかつて生きていた時より少し前の時代に生まれ変わったのだ。そして両親の惨たらしい死によって思い出した様々な記憶。
自分で読んだことはないが、アニメが放送されるということで友人やSNSから自然に話が入って来ていた。1990年代の日本が舞台で、とにかく人が死にまくり、最後は主人公とその先生であるめっちゃ強いおっさんと、コベニとかいう猿と、女を殴りそうな顔した男だけが生き残る。
——そう。オレはかの有名なマンガ、チェンソーマンの世界に生まれ変わったのだ。
……どうやって生き残ろう。転生したとはいえモブはモブ。このままでは両親のようにいつ殺されるかわからない。1日でも早く体を鍛えるとか……?なんてつらつら考えていると、静かにドアを開けて威厳を感じる着物姿のおっさんが入って来た。
「——ハルカ、今日からキミは私の家族だ」
えぇ??なんか勝手に決められてるんですけど〜〜〜〜〜オレの意思は?
いかついおっさんにビビって思わず嫌ですと言いそうになったオレだが、家まで車でつれてこられた今では是非ともお願いしますと土下座したいくらいだ。
なんとこのおっさん、とんでもない金持ちだったのである。有名人が住んでいるような豪邸の日本家屋。ついでに美しく優しそうな奥さん。とんでもない優良物件ではないか。もしかしてこの人が最後まで生き残るというおっさんなのでは???そうに違いない!ならば、いくら心の中でもおっさんと呼び続けるのは失礼だ。
「これからお世話になります。先生」
「先生と呼ばなくて構わない。以前のようにおじさんや……気が向いたらお父さんと呼びなさい。今日からキミも——————塔矢ハルカになるのだから」
こうしてオレの新しい人生が始まったのだ。
「後で新しくお兄さんになる、アキラさんが帰って来ますからね」
…………兄ぃ〜〜〜〜〜〜????そんなの聞いてないんですけど〜〜〜〜〜〜〜〜〜?
伊勢海さんとは無関係です。