GOGOチェンソー   作:<3ナニ″

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芦原さんはお礼として塔矢名人の指導碁とか受けられることになってる。


運命の出会い

修行場見学の日がやって来た。

朝からアキくんとお揃いの服を着せてもらい迎えに来た芦原さんと手を繋いで、明子さんと先生に見送られながら出発し、初めに着いたのは駅だった。

そう、オレは今世初めて電車に乗るのである。もしかしたら両親が生きていた頃乗ったことがあるかもしれないが、オレがオレになってからは初めてだ。正直ワクワクする。前世の時代にはICカードが当たり前になっていたから、きっぷなんて買うの久しぶりだ。

年甲斐もなくオレにやらせてとお願いして、身長が足りなかったので背の高い芦原さん抱き上げてもらい大人1枚子供2枚を購入する。アキくんが抱っこされたそうにこちらを見上げていたが、すまんなアキくん、この芦原さんは1人乗りなんだ。

ホームに向かうと丁度やってきた車両の先頭から血塗れのお兄さん悪魔が手を振っていたので振り返す。早くホームドアを設置した方がいいよなと思いながら、内装にはあまり変化を感じない電車にしばらく乗り、改札をぬけて少し歩くと目的地である棋院に辿り着いた。

芦原さんが受付で色々やってくれている間にアキくんと周りを観察する。置かれている本を捲ってみたが、全部アキくんの家にあるものと同じ囲碁雑誌だったので、バーチャルアクアリウムでお茶を濁す。この魚はどこから来たんだろうね〜とのんびり話していると、そんなオレたちをいつの間にか芦原さんとおそらく職員のおじさんがオレたちをニコニコしながら見ていた。な、なんだよ!見世物じゃねーぞ!!!!!

おじさんから、院生には休憩時間になってから話しかけることと、対局中の今は静かに覗くだけと注意を聞く。オレは大人だし、アキくんも大人しいので問題ないだろうとふんふん頷く。

しかし、ではこちらに……と連れられた和室の襖の奥を覗いた瞬間、そんな注意など綺麗さっぱり忘れてオレは叫び声を上げた。

なんでかって、あ、あの、あの黒髪の、少し気だるそうな顔立ちの美形男!!

 

あれはインターネットで散々騒がれていた女を殴ってそうな顔だ!!!

あの、2部でも大活躍だという女を殴りそうな顔の男だ!!

 

つまり、最終回まで確実に生き残る強キャラ!!

 

アキくん生存ルートのためには確実に必要な人材だ。オレは絶対にこいつを離さない!!!

お子様ボディを最大限活かして美形男にしがみついた。アキくん、オレ碁が弱すぎて成長しても1人じゃ君を守りきれないかもしれないけど、代わりに最強の味方を見つけたよ!

……マズイ、感激で涙が止まらない。というかコイツに殴られないか心配になってきた。いや、流石に女を殴る男も小さい子供をこの大勢の前では殴らないだろう。もっとくっついとこ。

というか、静かに覗くだけって約束破っちゃったな…………と反省していると、泣き疲れたのかだんだん意識が遠くなってきた。駄目だ、今寝たらせっかく捕まえた……最強……キャ……ラ……が………………

残念ながら俺が意識を保っていられたのはここまでだったようだ。

どうか起きても離れてませんように!!

 

 

——————

 

 

 

晴れて院生になり1ヶ月、毎日努力を重ね順調に2組中位に上がってきた伊角慎一郎は今、人生で1番の混乱を見せていた。

対局中に突然現れた見知らぬ幼児に叫ばれ泣かれしがみつかれ、ついには腹を抱きしめたまま膝の上で寝られたからである。

確かに朝、小さい子が見学に来ると聞いてはいたが、こんなことになるとは聞いていない。周りの院生たちも突然のことに手を止め伊角の周りに集まったはいいものの、どう対処したら良いのか分からず見ていることしかできなかった。

とりあえず眠ってしまった子供を腹から離してしっかり抱き上げると、周囲から拍手があがった。いや、誰か助けてくれよ。そう思い辺りを見渡すと入り口付近で別の子供と呆然とした様子でこちらを見ていた芦原と目が合った。

ハッと意識を取り戻した芦原はこちらへ駆け寄ると、眠ってしまった子供を伊角の腕から引きとった。

 

「芦原さん、その子一体……」

「悪い伊角君、皆!この子ちょっと訳アリでさ……普段は物静かだし、院生に興味あるみたいだから気分転換にって連れて来たんだけど……」

子供を抱き上げながら可能な限り頭を下げる芦原の姿に、皆我に返ったようで慌てて問題ない、それよりもその子をどこか寝かせられる場所へと次々騒ぎ始めた。

そうしていつの間にか部屋には未だに混乱している伊角と、休憩室に向かって行った院生たちをただ突っ立って見ていたもう1人の子供——塔矢アキラだけが残っていた。

先に少し落ち着きを取り戻した伊角が部屋に残ったアキラに気が付き視線を向けると、彼は廊下へ向けたその瞳からはらりと雫を零し初め、すぐにそれは大粒の涙へと変わった。

 

「ど、どうしたの?どこか痛い?それとも——」

「——ハルくんが……」

「ハルくんが泣くところ、初めて見た……」

「お父さんとお母さんが死んじゃった時も、その後もずっと泣かなかったのに」

「え」

「どうしてお兄さんを見て泣いたの?お兄さんは何かを……ハルくんの秘密を知ってるの?」

 

その言葉に伊角は答えることが出来なかった。この子供のこともあの幼児のことも伊角は何も知らないし、戻ってきた芦原が、泣いているアキラのことを見つけるとギョッとした顔でそのまま休憩室に連れて行ったからだった。

そのまま1人取り残された伊角は、ハルという名前らしい子供に心当たりがないか考えて——戻ってきた院生たちにあれはお前の隠し子かと問い詰められ、腹が痛くなって早退した。

なお翌日棋院に行くと、あの子供達の大きい方が塔矢名人の一人息子らしい。ではあの小さい方は隠し子ではないかと院生たちが噂をしていてそれを聞いた芦原が必死に否定していたが、同じくそれを聞いてしまった伊角はその日、院生になって初めて全ての対局に惨敗した。




全国の伊角ファンの人はすいません。
ヒカ碁世界でもっと女殴ってそうな人とも後で会わせたい。
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