新年──
「ミナセ!!!」
ガラガラ!! 新年1番に部室に飛び込んできたのはスイープトウショウ。珍しくご機嫌だ。
「スイープ。あけおめ」
「うん、あけおめ! ……じゃなくって! ミナセ、ミナセ! 早く来て!」
「忙しいな……」
正直廊下は寒いので、石油ストーブくんが働いてくれている部室で温まっていたいのだが、残念ながら『使い魔』は『ご主人様』に逆らえない。
連れて行かれた先は本校舎の廊下。そこにはウマ娘たちの新年の『書き初め』が展示されていた。
「じゃっじゃーん!」
スイープが笑顔で示す先には『レースの魔法を見つける』という『書き初め』。ちゃんと名前も入っている、スイープの書き初めだ。
「達筆だ……」
水瀬の2億倍は字が上手だ。多分間違いなく習字とかやってたタイプの字だと思うのだが、きっとこの天才少女は3秒くらいで習得してしまったのだろう。
「でしょ、でしょ? すごいでしょ!」
自慢げだ。かわいい……。
「ああ、すごい。さすがスイープだ」
「そうでしょそうでしょ! ふふん! 特別にもっと褒めてもいいわよ!」
かわいい……。
ウマ娘たちの書き初めは個性豊かでフリースタイルだ。にんじん畑とか書いてあるのもある。自由形が過ぎる。
(後でやろうかな、書き初め……)
そう思っていると──
「ふふ、みんな素敵な目標ですね。私は……──」
「あっ、ロブロイ!」
友達を見つけて駆けて行ったスイープを見守ることにした。
「アンタも書いたの? ホウフ!」
「え、いえ、私は……飾るものの抱負は……」
『ゼンノロブロイ』。スイープの友人の1人で、今年から『シニア級』に突入したウマ娘である。
「え〜〜っ! アンタの『夢』は『英雄』って、ちゃんとしたものがあったじゃない!」
声でか。
「……っ!? スイープさんっ、しーっ、しーっ!!」
「……? なんで?」
「な、なんでって……去年の私の『戦績』を考えてみてくださいよ。『クラシック三冠』に挑んだものの、どれも取れなくて……」
まあ、それに挑戦できる資格があるだけでかなりの上澄みなのだが、どのステージにいるウマ娘にも劣等感はついて回る問題なのだ。
「そんな私の『夢』が『英雄』だなんて……誰かに聞かれたら笑われちゃいます」
「はあ? 他人に笑われたからって、自分の夢が変わるわけじゃないでしょ?」
当然でしょみたいに言うスイープの言葉はちょっと芯が強すぎて、ゼンノロブロイには眩しかった。そこへ歩いてくる1人のウマ娘。
「なんだ、お前たちか」
「! エアグルーヴ」
「……先日はすまなかった、スイープ」
普段のキリッとした表情を崩して、エアグルーヴは静かに頭を下げて謝罪した。
「お前が不要だと言っていたのにも関わらず、私はエゴを押し付けてしまった。本当にすまなかった」
「…………」
「それと……水瀬トレーナー。先日の失礼をお詫びします。あなたはどうやら、スイープに必要なトレーナーだったようです」
「気にしないでくれ」
「ありがとうございます。……それで、スイープ。お詫びというわけではないが、お前が好いていた花が種をつけた。花壇に寄った際には種をやろう」
「ほんとうっ!?」
「ああ。だが、贈り物をするのはその時までだ。『レース』の場では同じ扱いはせん。お前はもう『GⅠウマ娘』だ」
エアグルーヴは真っ直ぐにスイープを見て言う。
「その意味の重みは、今はまだ分からないかもしれない。だが、もしも相対することがあるのなら──私は、1人の『ウマ娘』としての全力を持って、叩き潰すことを誓おう」
「……!」
「ではな。それと、廊下であまりはしゃぐなよ」
それを言いに来たのだろう。エアグルーヴは踵を返して去って行った……。
それを見送ると、スイープはポツリと言う。
「……やっぱり、レースは『特別』なのね」
「え?」
「だってあんな『顔』初めて見たわ。なんていうか──」
『ゾクゾクした』。
そう呟くスイープの口元は──笑っていた。
「やっぱりグランマの言った通りね。『レースの世界』には、特別なパワーがあるんだわっ! そこでしか使えない『魔法』があるくらい、とぉ〜ってもすごいものがあるはずっ!」
「……やっぱり、スイープさんは…………」
「? ロブロイ?」
「ふふっ、私よりスイープさんの方が『英雄』みたいだなぁって」
「あ〜っ! それはアンタの『夢』でしょ!? アタシの『夢』は、『レースの使える大魔女』なんだから! もう、ず〜っとウジウジしてる子には『魔法』を掛けちゃうんだから! ええっと……ミナセ!」
なんか飛んできた。水瀬は一瞬の後答える。
「おすすめは『勇気の出る魔法』だ。よく効く」
「そんなに気に入ったの? まあいいわ、行くわよ〜! アストラル・フィーラジア! 『勇気』が出るようにな〜れっ!」
「わ、わわ……っ!? な、なんだか……体の底から、『力』が湧いてきます……!? い、今なら……わ、私ちょっと走ってきます!」
「ええっ!? ちょ、ちょっとロブロイ!? ロブロイ〜!?」
走って行ってしまった……。
第四話 『誓い』を立てるということ
「はぁっ、はぁっ……終わった……っ! ミナセ、次は……!?」
「その状態でコース3周。今の状態の『全力』で走ってくれ」
「……っし、行くわよ〜……っ!」
『フォーム』からは疲労度合いが分かる。かなりの強度のトレーニングだが、スイープトウショウはよくやっている。
「『ゼンノロブロイ』、頼む」
「はいっ!」
スイープが2周を終えたタイミングでゼンノロブロイが走り出し、スイープの横に並んだ。2人にはそれぞれ『条件』を課している。
ゼンノロブロイは『スイープに追い抜かれないこと』。ただし、スイープから『1バ身以上離れないこと』。スイープは『瞬発力』を活かし、『ゼンノロブロイ』を『追い抜く』こと──。
ラスト『3
「……はぁっ……はぁっ! やった……やったっ! はぁっ……やったわよ、やっとアタシの勝ち!」
「うぅ、すごい『末脚』でした……それに、少しスピードを落としてからの『緩急』……追い抜かれない自信、あったのに……」
基礎的な身体能力は重要だ。しかし『追い込み』というスタイルはそれだけでは測れない。『逃げ』や『先行』は『持久力』が重要だ。しかし『追い込み』の強さは『瞬発力』と『末脚』──。
「ミナセ! アタシやったわよ!」
「よく頑張った。ついにやったな」
荒い息のスイープとハイタッチ。担当が『1人』というのは、トレーナーの全ての能力を1人に注ぎ込めるため、丁寧な指導が可能だが、『孤独感』が問題だ。
走るという行為は根本からして『孤独』な行為。スイープは1人でコツコツとやれないわけではないが、誰かと走ると伸びがいい。
「ゼンノロブロイもお疲れ様。協力ありがとう」
「いえ、私もいいトレーニングになりました。……ついに追い抜かれちゃいましたね、えへへ」
年が明けてから何度かこのトレーニングをしてきたが、今日やっとスイープはゼンノロブロイを追い抜くことが出来た。スイープの成長は目覚ましい。
これ『桜花賞』行けるんじゃね? 手元のストップウォッチを見て思う。
「よしっ! ミナセ、次は何っ!? ガンガン行くわよ!」
「今日はここまで」
「え〜っ! 今すっごく調子がいいのよ! もっと走りたいの!」
まさかスイープからそんな言葉が聞けるとは……。
「『桜花賞』は近い。少しずつ疲労を抜いていこう。休むこともトレーニングだ」
「……むぅ。仕方ないわね」
聞き分けがいい……本当に本物のスイープか?
「あっ、今失礼なこと考えたでしょ」
スイープの気持ちはわからないではない。このまま続けていけば更なる成長は望めるかもしれないが、ウマ娘の『疲労』というものは人間のそれと違って1日寝れば抜けるものではない。
「あ、では私はこれで失礼しますね。スイープさん、ミナセさん、それでは」
「ありがとうゼンノロブロイ。また頼む」
まだ日は高い。水瀬はここから部室に戻り、『桜花賞』の対策を練る予定だったが……。
「じゃ、出かけるわよ。着替えてくるから準備してなさい」
「なるほど」(思考停止)
姫の言うことには逆らえない。
(´∀`=)
と、いうことでやって参りました。こちら都内の美術館です。
えー、本日はですね、こちらの美術館で……えーっと、『ティアラを彩る可憐な走り』展を見てね、心の豊かさを深めていきたいと思います。
「何変なこと考えてるの? さ、勉強するわよ!」
「勉強?」
「グランマが言ってたの。レースの魔法が使えるのは、レースのことをよく分かってる子だけなんだから!」
(なんと……)
「? 何よ、驚いた顔しちゃって」
「いや……なんか、嬉しくなった」
「! まったくもう、なぁに? アタシにお出かけに誘われたのそんなに嬉しかった? ほんっと仕方ないわね〜!」
かわいい……。
「でも遊びだと思っちゃダメよ! これはお勉強なんだから!」
かわいい(語彙力喪失)。
「ほら、行くわよミナセ!」
そんな風に引っ張られていった。
(……意外と人がいるな)
思いっきり平日なのだが、レースのメモリアルを思い出したい人は多いみたいだ。『トゥインクルシリーズ』の人気が伺える。
「2名様のご来場ですね。チケットはお持ちですか?」
「……。ミナセ!」
「大人1人、中学生1人。お願いします」
「何よ中学生って!」
(事実だろ)
そして入場。中はずらっと写真が並んでいて、その下に解説的なものが載ってある。全部読んでると一日中かかりそうだ。
「え〜っと、『桜花賞』、『桜花賞』は〜……ここね! それで、『グレイトグランマ』の出た年は〜っと……」
スイープはお目当てのものを探しにスタスタと歩いていく。水瀬はぼんやりと歴代の展示を眺めつつそれに続いて行くと──
「あら、エアグルーヴさんの『オークス』! 彼女の走り、すごく好きなのよね〜」
「こっちは『ヒシアマゾン』の……あー、懐かしい。この時の彼女ほんと強かったなぁ……」
横で見てる人たちの会話が聞こえてきた。それに釣られて写真を見てみると、なるほど確かにすっごい迫力。
「ふ〜ん……。ヒシアマたちも結構有名なのね」
「強いんだな、彼女たち」
「はぁっ!? アタシの方が強いから!」
(対抗意識……)
スイープってそんなに負けず嫌いだったのか。
スイープを宥めながら展示を見ていると、横の人たちの会話が変わらず耳に入ってくる。
「──けど、ヒシアマゾンも結局は届かなかったよな。『有馬記念』じゃ、『ナリタブライアン』にはさ」
「それはしょうがないってものでしょう。だって相手は『クラシック三冠ウマ娘』よ?」
ううむ。これから『ティアラ路線』に挑もうとしている水瀬たちにとっては悔しい言葉だが、やはり『そういうもの』なのか……。
「……は?」
小さな声は横の小さな少女から。
「ちょっと、おばさま! 今の話、どういうこと!?」
(始まってしまった)
姫の辞書に躊躇という言葉はない。止めるのは逆効果だ。
「何が『しょうがない』わけ? ヒシアマたちだって強かったんでしょ?」
「え? ま、まあね? だけど『そういうもの』っていうか……これまでもずっとそうだったじゃない? 『ティアラ路線』を進んだ子たちは、どうしたって『クラシック路線』の子たちに比べて、地力の部分で敵わないところがあるというか……」
「……はぁ?」
「だよな。『クラシック三冠路線』を進んだウマ娘って、『死線』を超えてきたみたいな迫力あるもんな。この前の『有馬記念』の『シンボリクリスエス』の走りは、なんていうか『感動』したな〜。あの走りがもう見られないなんて残念だよ〜」
言っていることは──まあ、分からないでもない。いつだってレースの『主役』は『クラシック路線』を進んだウマ娘たちだった。
「何年か前の『有馬記念』じゃ『ファインモーション』を応援してたけど、流石に『シンボリクリスエス』は強すぎたものね。勝てなくて『当然』っていうか」
「『当然』……? それって、ファインが『トリプルティアラ路線』の子で、クリスエスが『クラシック三冠路線』の子だから?」
おっと、姫の様子が……?
「だから、『当然』……?」
「まぁ、ね〜……」
言いにくそうにするマダム。スイープの不穏な気配を感じ取ったのか、慌ててフォローを入れる。
「あっ、でも『エアグルーヴ』さんは十分に通用する力があったじゃない? 『天皇賞・秋』で勝ったし!」
「え〜? でも結局その後の『有馬記念』じゃ、クラシック三冠で1つも取れなかった子に1着を譲っちゃったじゃん」
が、それが結果的に火に油を注ぐことになるなど……。
「あの秋の『1戦』は確かに『特別』だったよ? だけど『シニア期』で取れたのはあの『1つ』だけで……やっぱり『そういうもの』なんだよ」
(もう少し言い方を選んで……いや、同じことだな)
「これは歴史が証明してきた『事実』なんだって! 『最強』の称号は『クラシック三冠路線』を勝ち抜いてきたウマ娘にこそ相応しい!」
『ティアラ路線』は『クラシック路線』に比べて全体的に『距離が短い』。より『格式高い』レースは、確かに『ティアラ路線』のウマ娘にとっては距離が長く、厳しいレースになりがちなのは『事実』ではある。
しかし、それはあくまで『距離適性』の話。『最強』という言葉がどこまでを指すかは人によるだろうが、一概に『どちらが上』などと言い切れるものではないのだが……。
しかし、より『古く』から存在している『クラシック三冠』は、『トリプルティアラ』より『重み』がある……らしい。水瀬はここ最近で学んだのでいまいちピンと来てない。
姫の様子を伺うと……。
「……は?」
おうおう怒ってる怒ってる。
「はぁ?」
あっこれガチのヤツか?
「はぁぁぁぁぁ?」
あっこれガチのヤツだ。そろそろ来るぞ……。
「なぁに!? その『つっっっっっまんない』話!」
そう言うや否やスイープは美術館を飛び出して行ったのだった……。
ガララ!
部室では──スイープが水瀬の机に座ってなんか読んでる。
「おッそいわよミナセ! 何してたの!?」
「はぁっ、はぁっ……げほっげほっ、君が……走っていくから……ふぅ、追いかけていたんだよ……はぁ、はぁっ、きっつぅ……」
電車とか使わずスイープは普通に走って行ったのである。水瀬はその行き先もよく分からないまま、気づけば汗だくでトレセンに辿り着いていた。1時間くらいかかった。
「ふん、情けないわね。アンタも明日から走ったほうがいいわよ」
「げほっ……検討する。それで、一体何を……?」
ガラガラ!
「す、スイープさん! えっと、頼まれてたトリプルティアラ路線に関する資料、持ってきました!」
「ありがと、ロブロイ! ミナセ、アンタもぼさっとしてないで、さっさとやんなさい!」
「何を」
「資料よ資料っ、取ってきなさい!」
(ほんとこの子行動力すごいな)
部室においてあったレースの歴史大全みたいな分厚い本を読み漁っているようだ。それほぼ鈍器みたいなもんなんだけどな。
「しかし、一体どうしたんだ?」
「だって『つまんない』じゃない、あんなの! アンタはそう思わなかったワケ!?」
ドンッ! スイープが机をぶっ叩いた。壊れそうなのでやめてほしい。
「これも……あとこの記事もそう! 見なさいよこれ!」
どれどれ。ゼンノロブロイと一緒に記事を覗き込むと──『秋天で快挙 トリプルティアラ路線出身のウマ娘、17年ぶりの快挙』と書かれている。
「おかしいって思わないの!? なによ快挙って、なによ偉業って!!」
「え、えっと……? エアグルーヴさんが、歴史的に見ても非常に珍しく、そして素晴らしいことを成し遂げられた、という──」
「だからそんなにほめるのがヘンなのよっ! 快挙って、偉業って、それってつまり、『普通なら負けてたはずだけど』って言ってるようなモノじゃない!?」
「あ……」
なるほど、姫の言いたいことがなんとなく分かってきた。姫は本来『平等』であるはずの両者──『クラシック三冠』と『トリプルティアラ』の扱いが『不平等』であることに憤っておられる。
「ああああああっ、もぉぉぉーっ!! なんなのよこれ!? 『つまんない』『つまんない』っ、『つまんなぁぁぁぁぁぁい』っ!!!」
それは本来対等であるべきじゃないのか、と。それを『つまんない』という言葉で表現するあたりに姫のニュアンスが分かるような気がする。
水瀬の知る限り、スイープトウショウはくだらない大人たちが作り上げた『既成概念』というものが大っ嫌いなのだ。
「『クラシック三冠出身』だからなに!? 『トリプルティアラ出身』だからなに!? それってカンケーないことじゃない! なのにみんな『クラシック三冠』の方のウマ娘たちのほうが強くて当たり前って! 『そういうもの』って!」
「どうしてそう思うんだ?」
「だって『強いウマ娘』は『強い』ってだけだもの! たったそれだけのことじゃない!! アタシが想像していた『レースの世界』っていうのはもっと『自由』で、『面白くて』! 『ワクワクする』ようなものなの!! 『歴史』だとか『事実』だとか、そんな『つまんない』ものに縛られたものじゃないのよ!!」
ついでに『大人の小言』に縛られるような世界でもないはず。
「こんなのつまんない、つまんない、つまんなぁぁぁぁぁぁぁ────いっ!!」
スイープはその鬱憤を全て吐き出したのだった……。
ゼンノロブロイと並んでそれを目を丸くしながら見ていると、スイープはポツリと呟いた。
「……決めた」
──ようやく、スイープは『レース』を走るということへの『決意』を固めた。『GⅠ』勝っといて今更かよ。
「ミナセ。『レースの魔法』、使うわよ」
「見つけたのか?」
「まだ。でも絶対そこに『ある』の。『それ』で全部変えるの!! ぶっこわして、目ぇ覚まさせてやるのよ!」
見つけたみたいだ。『レースの魔法』、それがある『場所』。
「三冠だティアラだなんてカンケーない! 『強い』ウマ娘が『強い』だけだってことを、みんなに分からせてやるのよ! アタシの──アタシだけの『レースの魔法』で、『必ず』! だって……『魔法』は、『魔法』は──っ」
スイープははっきりと言い放った。
「──つまんないことぜんぶ、ひっくり返せる。ぜんぶ変えられる!」
「……──」
「そういう『力』を、絶対絶対、持ってるんだから!」
『現実』を変える『力』を『魔法』と呼ぶならば、この世界に『魔法』はない。
『魔法』のない世界で生きるということは、どれだけ努力したって変わらない『現実』を生きるということ。『夢』を見られるのはベッドの中だけで、『現実』の重さに『夢』は勝てない。
「いいわねミナセ! イヤだなんて言わせないんだから!!」
「……いいな、それ」
「え?」
「君の『魔法』で『世界』が変わる」
水瀬は『大人』だ。もう現実を知っている、だからこそ。
「そんな『魔法』の未来。面白そうだ」
「! でしょ、でしょ!? そっちの方がずぅーっと面白そうでしょ!? だったらやるわよ! 『魔法』を見つけて、『魔法使い』になって!」
──高らかに。
「『レースの魔法』で!! アタシは『世界』を変えてやるっ!!」
そう唄う。『英雄』のように──
「『特別』にアンタも手伝わせてあげる。いいわね?」
「ああ。やろう」
すごい、と。小さくゼンノロブロイが呟いた。水瀬はようやく自分が『ここ』に居る意味を見つけられたような気がした。
スイープトウショウの『物語』は今、この瞬間に始まる。そして踏み出す。引き返すことのできない『魔法』の未来。それに向かって──『今』。