魔法のない世界で生きるということ   作:にゃんこぱん

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第六話 『魔法』をかけるということ⑤

 

 

 

 

 

「うぅん、かちょぉ〜、暇ですー……」

 

「何言ってんだい。そんなに暇なら校内パトロールでも行ってきな!」

 

 ──『事務室』。

 

 もちろんトレセンの『事務室』はここだけではない、というかここは俗にいう窓際部門と言ってもいい。何せ現在2人しか所属していないわけで。

 

「? 課長、何見てるんですかー?」

 

「スイープちゃんのレースに決まってるだろう?」

 

「あっ、私も見ます!」

 

 それでいいのか社会。つくづく2人はスイープのファンであり、今月末に行われる『宝塚記念』も特等席を予約してあった。

 

「スイープちゃん、ほんとに強くなっちゃって……嫌だねぇ、この歳になると涙脆くなっちゃってさァ……」

 

 来客の少ない事務室の扉が開いたのはその時だ。

 

 ガララ……。

 

「……あっ、スイープちゃん! いらっしゃい! 今ちょうど君のレースを見てたとこなんだよ、あっ、お菓子食べる?」

 

「何言ってんだい。減量中だろ? あたしらも心を鬼にしなきゃダメじゃないか。けど、せっかく来てくれたんだ、ゆっくりしていきなよスイープちゃん!」

 

「……」

 

「スイープちゃん?」

 

 何も言わず、ただ暗い顔で俯くスイープが、小さな声を絞り出すように言った。

 

「ミナセが……」

 

「! 水瀬くんにいじめられたの!? よーし任せなさい、お姉さん張り切ってしばいちゃうぞー!」

 

「ミナセが……ぐずっ、ミナセが……」

 

「な、泣いてるのかい……! 水瀬のヤツ、ついに本性を表したようだねぇ。こんな小さな女の子についに手を出したって訳かい! だいたいあたしは前から怪しいと思ってたよ! スイープちゃんとずっと一緒にいて平気な訳がないってねぇ!」

 

「ミナセが……っ、ミナセが……──」

 

「あたしたちに任せときな! あのヤロウを締め上げてやるからね、安心して待ってな!」

 

「大丈夫だよスイープちゃん! スイープちゃんは私たちが守るッ!」

 

 スイープの瞳からボロボロと流れる涙が頬を伝って落ちていった。

 

「ミナセが……さらわれちゃったぁぁ……っ!!」

 

「うんうん分かってる、大丈夫だから……ええええええええええええええええ!!!!」

 

 

 

 

「ちょ、ちょちょちょちょ──っと待って!」

 

「さッ、攫われたって、ホントなのかいスイープちゃんッ!? 水瀬のヤロウが!?」

 

「ひっく……みっ、ミナセっ、レース終わっても……っ、ひっ……どこにも……っ、居なくって……ひぐっ、それで……っ、でんわ、かかってきて……えぐっ……!」

 

 ギャン泣きしながらスイープが続けた言葉に事務員2人が視線を交わして、表情がどんどん硬くなっていく。

 

「ミナセは……っ、あずかった、って……かえして欲しければ、『宝塚記念』に出るなって……ひぅっ……!」

 

「……! 『宝塚記念』に出るな……って──課長ッ!! 私ちょっと出てきますッ!」

 

「落ち着きなバカヤロウ! 焦って行動したってどうにもなりゃしないよッ! それで、スイープちゃん! 電話は誰から掛かってきたんだい!」

 

「ぐずっ……ミナセから、かかってきて……っ、でも、声……知らないひとで、アタシ……ひっく、こわくなって、ミナセに二度とあえないって言われて、ぐずっ……!」

 

 ──『脅迫』。

 

 『宝塚記念』に出なければ水瀬を返してやる、ということだ。この『目的』から分かることは、犯人は『レース関係者』であるということ。

 

「ミナセ、どこにもいなくて……ひっ、アタシ、ずっとさがしたのに、いなくて……っ」

 

「なんてことだい……! こんな、ふざけた真似したのは、一体どこのどいつだ……!」

 

 スイープの泣き声がずっと止まらない。不安を押し抱えて、ずっと水瀬を探していたのだろう。

 

「警察に──」

 

「バカ! 分かるだろ、意味ないよそんなことしてもッ! それにこいつが『表沙汰』になってみろ、スイープちゃんは『魔法』どころじゃなくなっちまう!」

 

大場(おおば)さんッ! 水瀬くんの『安全』が最優先ですよ! 『魔法』なんて言ってる場合じゃないですッ!」

 

「よく考えな! ホシはスイープちゃんの邪魔をしようとしてんだ! ドコのドイツか知らないがね、スイープちゃんの『魔法』をぶち壊しにしようとしてくれてんだッ! そいつをあたしらが騒ぎにしちゃ、連中の思う壺じゃあないのかいッ!?」

 

「それは……で、でも……じゃあ、どうすれば……」

 

 スイープは──ずっと泣いている。不安にずっと襲われているのだ。

 

「アンタ、自分が『どこの部署』に所属してるか忘れたのかい。あたしらでなんとかするんだよ」

 

「それって、私たちで水瀬くんを助け出す……ってことですよね」

 

「分かってんじゃないかい。っと、その前に……スイープちゃん、鼻かみな。かわいい顔が台無しだよ」

 

「ほら、チーンってして。チーンって!」

 

 チーン!!!

 

 

 

 

 

 少し落ち着いたスイープが暗い顔で座っていた。

 

「それで、スイープちゃん。最近何か水瀬のことで変わったこととか、気がついたこととかはないかい」

 

「……いっこだけ」

 

「!」

 

「ミナセはね、アタシに誤魔化しとか、そういうのなんにもしないの。けど……『ファン感謝祭』の日……ひとつだけあった」

 

「それは、どんなこと?」

 

「アタシが『トラック引き大会』で優勝したの、アイツ見てなかったの。だから、そのとき何をしてたのって聞いたら……えっと、たしか……『ニカイドウ』と話してた、って」

 

 課長の表情が一瞬で険しくなった。スイープはそれに気が付かずに続ける。

 

「なに話してたのって聞いたら、『言えない』って……そんなこと、今まで一度もなかったのに……たしかに、あの時のミナセ、ちょっとヘンだった」

 

「『二階堂』って……あの『二階堂トレーナー』だよね。でも、そいつがやったのかなぁ。直接聞いてきますか?」

 

「やめな。勘づかれちゃマズい」

 

 迷いなく言い切る課長。

 

「それで、スイープちゃん。他にはないの?」

 

「えっと……昨日の『安田記念』のレースの前も、ヘンだったようなような気はするけど……」

 

「何かあったの?」

 

「ミナセがね、やけに改まって頼んできた。えっと──」

 

 『約束』してくれ。『どんなことがあっても』、走るのを止めるな。君は君の『夢』を叶えろ。『必ず』だ──と。

 

「『どんなことがあっても』……って、なんか……水瀬くん、こうなることを分かってたって感じがするね。水瀬くんがいなくなったのはいつから?」

 

「『安田記念』が終わったあとから……ずっと」

 

 ──明らかに『怪しい』。

 

 『宝塚記念』までそう時間はない。残り『2週間』といったところか。

 

「……『約束』、したのに……アタシ、ミナセと……いっぱい『約束』したのに……っ!」

 

 じわりと涙が滲むスイープ。

 

「アタシ……レースの手続きなんて、知らないけど……出走するの、『取り消す』ときって、どうすればいいの……?」

 

「……! スイープちゃん、ダメだよ! 君はずっと『レースの魔法』のために頑張ってきたんでしょ!?」

 

「けど……ミナセに、二度と会えないって……そんなの、イヤ……っ!」

 

 二つに一つ。『水瀬』か『宝塚記念』。どちらかしか選べない──

 

「大丈夫だ、スイープちゃん。安心しな」

 

「え……?」

 

「アンタの『夢』を邪魔するヤツらはね、あたしが全部とっ捕まえて懲らしめてあげるからね」

 

 そう言うと、課長はゆっくりと立ち上がった。

 

朝日(あさひ)。分かってるね」

 

「……はい! よーっし、お姉さん腕が疼いちゃうぞ〜!」

 

 ポカンとした顔でスイープは2人を眺めていた。

 

「スイープちゃん、水瀬くんは私たちに任せて。君は安心して『宝塚記念』へ出て──『魔法』を使うの」

 

「え……でも、ミナセが……もし、ミナセが、危ない目に遭ってたら……アタシ……っ」

 

「水瀬のヤツは、スイープちゃんに何を頼んだんだい」

 

「え?」

 

「『どんなことがあっても』、走るのを止めるな……そう『約束』したんだろう?」

 

「っ……!」

 

「大丈夫さ。あのボウズは、あたしがきっちり助け出す。そんでもって、アホな真似をしてくれた二階堂のおぼっちゃまには、きっちり『お灸』を据えてやらないとねぇ……!」

 

 今までとは違う『困難』がやってきた。これは『魔法』を使うための最後の試練。

 

 

 

 

 

 

( ;∀;)

 

 

 

 

 

 

 

 『宝塚記念』。

 

 その何よりの特徴は、『ファン投票』で出走ウマ娘を決めるという点にある。今年の『上半期』で最も輝いたウマ娘は誰だったのか? 一人一人のファンがそれに回答し、そしてそれに選ばれたウマ娘のみが出走できる、いわゆる『グランプリ』だ。

 

 言う人に言わせると、曰く──東の『有馬記念』、西の『宝塚記念』。日本のレースシーンで最も格式高く、盛り上がるレースの一つだ。何せオールスターバトルである。

 

 阪神レース場、芝2200m──『中距離戦』。

 

 投票で選ばれたウマ娘は当然誰もが百戦錬磨。この戦場に弱者など存在しない。強者たちによる『祭宴』──この中で一歩突き抜けるのは容易ではない。

 

 努力、才能、作戦、運。持ち合わせる全てを使って──さあ、『魔法』をかけて。

 

 

 

 

 

 ( ´Д`)

 

 

 

 

 

 ──窓のない、暗い部屋だった。

 

「……フン。結局ヤツは出てきたな、お前のことなど惜しくないらしい」

 

 無骨な椅子に縛り付けられた水瀬の頬は青く腫れており、額からも血が流れている。

 

「『裏切られた』気分はどうだ。ックク、惨めだな。水瀬光一」

 

 唯一の光が差し込んでくるのはただ一つだけある扉。壁に持たれかかっているのは二階堂──薄く嘲笑している。

 

「……ハハ。本当に『裏切られた』気分ってのは、こんな清々しいもんじゃない」

 

 水瀬は全身の痛みなどないかのように笑っていた──それを見て、二階堂が表情を歪めて歩き出す。部屋の中に無数に存在する『廃材』のような棒切れを掴み、それで水瀬の頭へフルスイング。

 

 バキッ!

 

「……は、ハハ。そうか……出たんだな、スイープ。そうだ、それでいい……」

 

 水瀬の表情にはずっと笑みが張り付いている。どれだけ痛めつけようとも、それが剥がれない。

 

「どこまでも……薄気味悪い」

 

「テレビを見せてくれよ、二階堂。あの子の走りが見たい」

 

「……」

 

 二階堂は水瀬を睨んでいたが──

 

「おい。適当なテレビでも持ってこい」

 

 部屋の外へそう呼びかけると、廊下にいた数人の男がその声に従って動き出した。『二階堂家』に従っている者たちのうちの一部だ。しばらくしないうちに、一台のテレビがケーブルと共に運び込まれてきた。

 

「……なんでも頼んでみるもんだ」

 

「ハッ……その目で見ていろ。貴様の信じている『魔法』が、公衆の面前で壊れ落ちるところをな」

 

 テレビの向こうでは事前特番が終わろうとしているところだ。

 

「この世界に『魔法』など存在しない。絶対に──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 とてつもない人の流れが途絶えることはない、ここは『阪神レース場』──

 

 メインレースを前にしての入場客は恐ろしい。このために前日から並んでいるファンもいるほどで、入場規制がかかるギリギリのところ。

 

「──『ヒシアマ』! お前も来ていたのか」

 

「『エアグルーヴ』! ああ、この前テレビでスイープのインタビューをやっててさ。ちょいと思い出したんだよ──アンタと一緒にあの子を『デビュー戦』に送り出したときのことをさ」

 

「ふ……もう、随分前の話だな」

 

 月日が巡るのは早いものだ。あの頃のスイープはどこか危なっかしくて、ついあれこれと世話を焼いた。

 

「だが不思議な巡り合わせだな。スイープの『宝塚記念』をお前の隣で見ることになろうとは。……思えば私たちは2人とも、グランプリで人々に押され、臨み……1着に届かなかったもの同士か」

 

「おう、だからさ。『歴史』が変わる瞬間が来るなら、この目でバッチリ見てやろうと思ってね」

 

「奇遇だな……私もだ」

 

 スイープの様子がおかしいことなど、2人とも知っている。しかし──『信じて』ここへ来た。もう今更ガタガタ抜かすのもやめた。

 

 ただ、『魔法』を見に来た。そして……

 

 コツ、コツとゆったりと歩く1人の老婦人──

 

「さあ……見せてごらん、かわいいスイーピー。この日をずっとずっと待っていたよ……っ、おっと、いけない」

 

 スイープをずっと導いてきた賢者が、『魔法』が起きる場所へと歩いていく。

 

「まばたきさえも惜しいっていうのに──視界を滲ませてなんかいたら、もったいなさすぎるからねぇ……」

 

 ファン投票1位の座に輝いたのは『ゼンノロブロイ』。そして4位に『スイープトウショウ』──それでいい。ひっくり返してこその『魔法』だ。

 

 『夢』を見よう。

 

 

 

 

 

 

@@-

 

 

 

 

 

 

 

 控え室──……。

 

 明るいはずなのに、どこか仄暗い雰囲気が漂っていた。それもそのはず──

 

「……ミナセ……」

 

 何を隠そう、水瀬はまだ見つかっていない。幸い手続きの類はどうにかなったものの、問題は気持ちの方だ。

 

 『出走』した。もしもあの事務室の2人が上手くいかなかった場合のことなど、もう想像もしたくないのに、ずっとそればかりが頭を回っている。

 

「アタシが……イチバン、『魔法』を見せたかったのは……っ」

 

 カチ、カチ、カチ。備え付けの時計の秒針が──今も動いている。決して止まることなく、ずっと動き続けている。

 

プルル。プルル……着信のボタンを黙って押した。

 

「……」

 

『もう一度だけ警告する。水瀬光一の『命』は──こちらが握っていることを忘れるな。負けることは簡単だぞ?』

 

「……アタシが負ければ、ミナセはどうなるの」

 

『少なくとも『命』は助かる。よく考えることだな』

 

 ピロリン。

 

 そして再び携帯が震え出して──スイープは叫んだ。

 

「なによ……! まだ何かあるっていうのっ!?」

 

『うわっ、スイープちゃん!? ごめんよ、でも今──最後の候補地に今走ってるとこだからねぇ!』

 

 今度は事務員のおばちゃんだった。電話の向こうからは唸るようなエンジン音が途絶えない。

 

『水瀬のボウズを助け出したらすぐに伝えるから、そうしたら思いっきり走っていいんだよ』

 

「……レースまであと、10分もない。ほんとうに、大丈夫なの? ミナセに何かあったら、アタシ……」

 

『──待たせてすまないね。不甲斐ないばかりさ、でも……『信じ』な。大丈夫さ、全部上手くいく。そろそろ時間だろう? 行きな』

 

 時計を見て通話を切った。

 

「……アタシは……──」

 

 かつて待ち焦がれていた『その場所』へ、彼女は足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、スイープさん……浮かない表情ですね」

 

「……ロブロイ。来たのね」

 

 心中の『迷い』は蔦のように絡みついている。それでも時間は止まらない。『出走時刻』は刻一刻と迫っていた。

 

「参りました。……『約束』通り、『英雄』となって」

 

 『迷い』は──『脚』を鈍らせ、『心』を冷やす。誰がどう見たって、スイープトウショウからは『気迫』のようなものが感じ取れない。

 

「──何かあったんですか、なんて聞きません。私」

 

「……!」

 

「『英雄』は『迷い』ません。今日までずぅっと……ただ、あなたに勝つことだけを考えていました」

 

 『剣』を突きつけて。いざ──

 

「勝負です、スイープさん。負けて泣いても、慰めてなんかあげませんからっ!!」

 

「……アタシは……──」

 

 レースが始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 @

 

 

 

 

 

 

 

 ゲートが開いて、スイープは当たり前のように出遅れた。そしていつも通りの後方待機で先頭争いを眺めながら追走──

 

 ──ワアアアアアアアアアアア!!!

 

「ゼンノロブロイーっ!! 『英雄』の姿を見せてくれーっ!!」

 

「頑張れタップダンスシチー!! 若いのに負けるなーっ!!」

 

 スタンド前の歓声が上がった。通過していくウマ娘たちへの応援の声が無数に飛び交っている。

 

「スイープトウショウ、調子悪そうだな……流石に緊張してるのか?」

 

「緊張なんてするの? あの子」

 

 先行争いが続いている。そのまま1コーナーへ──

 

 

 

 

 

 同時刻、ある暗い密室。

 

(スイープの出遅れ癖マジで直らないな……)

 

 スイープの動きは硬い。しかし水瀬の表情に焦りはない。『信じて』いるのだ。

 

 閉ざされた扉の中で、水瀬は椅子に縛り付けられていることを忘れているかのように観戦している。その横に立った二階堂も同様に──テレビから視線を外していない。

 

 

 

 

 

 

(スイープさんに『何か』あったことなんて、ひと目見れば分かります……だけど、私は『迷わない』って決めた──けど)

 

 中団の内で脚を溜めつつ隙を窺う。まだ勝負の時ではないにしても、一瞬も気の抜けないレース。

 

(……心配なものは心配なんですっ! ああもう、ライバルの心配をしてる場合じゃないというのに……!)

 

 互いに窺い合い、牽制が飛び交う──プレッシャーを掛けるもの、我関せずで自分の走り方を貫くもの。

 

 2コーナーを回る。

 

 

 

 

 

 

 カツン。カツン。カツン。カツン。

 

 

 

 

 

 

 先頭に立っているウマ娘が徐々にリードを広げていく。

 

 その手には乗らない。最後に差せば問題ない。

 

 ──本当に?

 

(……ダメ。どうしても『迷い』が晴れない……)

 

 後方を追走するスイープトウショウの表情は『痛み』を感じさせる。もちろん疲労などではない。

 

(『必ず間に合わせる』なんて言って、結局レース始まっちゃったじゃない……っ! 嘘つき、嘘つき……っ!)

 

 どうすればいいのか必死に考えている。

 

 どうすれば上手くいくのか必死に考えている。

 

(『どんなことがあっても』って……ミナセのヤツ、ぜったいぜったい許さないっ! 『もう危ないことはしない』って『約束』したのに……っ!)

 

 それでも走っているのは何のためだ。『負けるため』か? それとも『約束』したからか?

 

(アタシ……どうすれば……っ)

 

 『初夏』の青空の下、スイープだけが『霧の中』を走っている。

 

 

 

 

 

 

 カツン。カツン、カツン。

 

 

 

 

 

「うぅ〜! 課長ぉ〜、まだですかぁ〜……!」

 

 『先輩』が引き攣った顔で眺めている先ではレースが進行中。向こう正面を半分通過したところだ。ウマ娘によってはここから仕掛けが始まる……。

 

「ヤバいよぉ〜……! ひえぇ〜、間に合わなかったら、どうやってスイープちゃんに言い訳したらいいのぉ〜……!」

 

 スタンドの最前列でここまで青い顔をしている人物は他にいない──

 

 

 

 

 

「そろそろ3コーナーを回る! ついに『勝負の時』が来るぞ……!」

 

 観客たちにも緊張が走り始めた。これから訪れる約『35秒』が──泣いても笑っても、祝っても憎んでも恨んでも呪っても妬んでも──全てを決める。

 

 

 

 

 

 カツン。カツン、カツン。

 

 

 

 

 

「ッハハ、どうした水瀬光一! 随分焦っているな!?」

 

(……動きにキレが無さすぎる! いや大丈夫だ、スイープなら絶対に届く。『信じろ』……!)

 

「──あのガキは、随分貴様に懐いている。いわば貴様は『支柱』──まさに将を射るにはなんとやら、だ! ッククク、ハハハハハ!」

 

 『魔法』が存在することを水瀬は知っている。だが……イメージが湧かない。どうしても、『今の』スイープからは『勝てるという確信』が伝わってこない。

 

 傲慢なほど自信に溢れたスイープの悪戯っぽい笑顔が──失われていることに気がついたのは、今になってからだ。だが水瀬にはもう何も出来ることはない。

 

「無様に眺めているがいい! 貴様の『信じたもの』など『幻想』だッ!!」

 

「……くそったれ……!」

 

 

 

 

 

 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン──

 

 

 

 

 

 ──ワアアアアアアアアアアアアア!!!

 

「がんばれー!! 行けーーーっ!! 逃げ切れーーーっ!!!」

 

 ──ワアアアアアアアアアアアアア!!!

 

「見せてくれーーーっ! 『夢』が──『現実』に変わるところを見せてくれーーーっ!!」

 

 ──ワアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 『残り600』。

 

(まだ……アタシは、アタシは……! 『魔法使い』になるって、決めたのに、ミナセと『約束』したのに……!)

 

 一斉に加速が始まる──長い長い最終直線が始まってしまう。タイムリミットだ、『答え』を出さなくてはならない。

 

(どうして、『脚』が動かないの……!!)

 

 広がる『ライバル』たち。彼方に見える『ゴール』。

 

 僅かに見えた、『ゼンノロブロイ』の遠い背中──

 

 

 

 

 

 

 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン──バキッ!! ドガ、ボゴ、ドカン!!

 

 

 

 

 

「……何の音だ?」

 

 何か『衝突』するような鈍い音が聞こえて水瀬は顔を上げた。二階堂の視線の先には閉ざされた『扉』がある。その向こうから聞こえてくる。

 

『ぎゃああああああああ!!!』

 

 ──何だ。この、『悲鳴』は。

 

 二階堂が異変の元へと向かおうとしたその時──固く閉ざされた『扉』がひしゃげて、部屋の中に『倒れてきた』。

 

「──手間ァ掛けさせやがったねェ。見つけたよ……ッ!」

 

 『誰か』が倒れた『扉』を踏んづけて歩いてきた。

 

「『朝日』ィッ! 見つけたよ、『伝えな』ッ!!」

 

 

 

 

 ──『残り500』。スタンドに立った1人の『事務員』が、インカムから聞こえてきた声を聞いて、ぐっとガッツポーズを作る。

 

「ガッテムっ! すぅーーーーー……」

 

 大きく──大きく息を吸い込んで。

 

 ──ワアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 つんざくほどの『歓声』に負けないほど大きく、叫んだ。

 

「スイープちゃぁーーーーんっ!!」

 

 彼女が聞こえるように。

 

「水瀬くん見つかったよーーーーーーーーーー!!!」

 

 横で応援していた観客たちも驚くほどの声量で──そして。

 

 

 

 

 

「……もうっ、遅すぎるのよ、バカっ!!」

 

 ──ぐ、っと。踏み込んで、身体の全てを使って『加速』していく。

 

「トゥインクル・トゥインクル……っ、見せてあげる──アタシの『魔法』っ!!」

 

 スイープトウショウを縛っていた『迷い』が今──全て晴れた。今日の天気は快晴。

 

 なんて絶好の『魔法日和』。

 

 

 

 

 

「さぁって──あら。アンタたちいいもん見てるねェ。おばちゃんにも見せてちょうだい」

 

 テレビから聞こえる『実況』の声で何を見ているのか理解したおばちゃん(フル装備)が一歩一歩歩くごとに足音がする。カツン、カツン、カツン……

 

「な……なんだ、何者だ、貴様は!? どうやってここを見つけたッ!」

 

 カツン。カツン……

 

「く──来るなァッ!!」

 

「まァずいっぱァッツ!!!」

 

 なんと鮮やかな『体術』だろう。荒々しく、そして研ぎ澄まされた『一撃』が二階堂の顔面に突き刺さった。

 

「か──『課長』ッ!? な、なん──ええええええええええええ!?」

 

「黙りな! こんの野郎──オラァッ!!」

 

「へぶっ!! 何するんですか課長!?」

 

 ついでとばかりに殴られた水瀬は驚きでいっぱいだ。というか本当に何で殴られたの!?

 

「こンのロリコン野郎ッ……今のはスイープちゃんを泣かせた分の一発だよ。甘んじて受け入れな」

 

「う……いや、あの……何でここに? その『装備』は一体……?」

 

「質問は後だよ。それより大事なモンがあるじゃないか」

 

 おばちゃんが目を向ける先は──当然、今終わりを迎えようとしている『宝塚記念』の中継。その中では今、スイープトウショウがものすごい追い上げを見せていた。

 

 

 

 

 

 『迫る影』を──後方から襲ってくるプレッシャーの正体を知っている。

 

(……来たんですね、スイープさん。それでも)

 

 レースの『疲労』というのは『痛み』と同じだ。苦しいと感覚が訴える。勝ちたいと心が訴える。

 

「『英雄』は──負けないんだからぁぁぁあああああッ!!!」

 

 もう少し。

 

 もう少しだ。もう少しで追いつける──違う、追いつかれそうなのは私。

 

 もう少しだ。もう少しで追いつかれる──違う、追いつきたいのは私。

 

 

 

 

 二つの『影』が重なって、そして少しずつ──ほんの少しずつ、離れていく。

 

 

 

 

 『世界』が止まっている──『歴史』を変えてゆく。今──とびっきりの『魔法』をかけて。

 

 

 

 

 

 

 

@

 

 

 

 

 

「……あ」

 

 誰かの声が漏れ出して、誰かが我に帰った。

 

「……やった」

 

 誰かが呟いて、そして誰かが言った。

 

「スイープトウショウが──差し切った」

 

 静かな言葉が積み重なって、やがてそれは爆発的に大きな『声』になった。

 

「やった──やったんだ、やったんだ、やったんだ!! スイープトウショウが──!」

 

「すげえ──すげえよ、『魔法』だ! これが『魔法』じゃなかったら、一体なんだって言うんだよ!!」

 

 トリプルティアラ路線のウマ娘が宝塚記念を制したのは『39年』ぶりとなった。そんな『事実』だけでは収まらない『熱狂』が人々の中に渦巻いた。

 

「はぁっ……はぁー……っ! ちゃんと……見てた? アタシ──」

 

 全てを出し切って使った『魔法』が今、実を結んで形になった。

 

 

 

 ──ワアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

 

「『魔法使い』だ……本物の『魔法使い』だよ!! スイープトウショウは!!」

 

「……本物の『魔法使い』……! すごいなぁ、まだ『夢』の中にいるみたい……!」

 

 観客たちに混ざってそれを見ていたエアグルーヴたちは、ただ無言でそれを称えた。

 

 言葉では言い表せなかったから、『拍手』という手段でそれを称えた。

 

 『歓声』が響いている──

 

 

 

「あはっ……もう。あーあ、うるさいったら……」

 

 それをただ一身に浴びていたスイープの元へ、1人のウマ娘が歩いていく。

 

「……スイープさん。お見事、でした」

 

「あら、ロブロイ。なによ、本好きのクセにシンプルな言葉ね。もーっと、ほめてくれてもいいんじゃない? アタシ今、最強の『英雄』と戦って、勝ったところなんだから」

 

 すっかり調子を取り戻したスイープが挑発的に言うと……

 

「スイープさん……ふふっ、そう、ですね。でも……ごめんなさい。幾百幾千の書を読んでいようとも、今はあなたにこれ以上の『賛辞』は贈れません」

 

 ゼンノロブロイの瞳に僅かな『涙』が滲んでいるのが分かった。

 

「なぜなら……っ、『悔しい』から!!」

 

「!」

 

「悔しくて、っ……悔しくて、たまりません。ここは譲りたくなかった。私こそが、勝ちたかった……!!」

 

「ロブロイ、アンタ──」

 

「あなたが『不調』なのは分かっていました。それでも私は届かなかった。こんなにもあなたは『遠かった』──……」

 

 悔しさに身を震わせるゼンノロブロイの姿は小さく、だけど不思議と誇らしかった。

 

「……本当はずっと気になってました。何があったのか……って。でも……」

 

「あら、心配してたの? でももう大丈夫よ。解決したし」

 

「解決……?」

 

「水瀬がちょっとユーカイされちゃってたのよ。でももう助かったみたいだから」

 

「そう、ですか。水瀬トレーナーが、ユーカイ、誘拐……えええええええええええええええ!!!」

 

 そんな『叫び声』と、未だ鳴り止まぬ『歓声』を聞いてつくづく思う。

 

 やれやれ。『魔法』をかけるのも楽じゃないな──なんて、そんな水瀬の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 ✌︎('ω'✌︎ )

 

 

 

 

 

 

 

「ま、あたしらみたいなのはずっと『暇』な方が良かったんだけどねェ。新入りだったアンタには当然『秘密』にしてたんだけどさ。『特殊事態対処部(S.S.R.D)』っつって、まあ色々『事情』があんのよ」

 

「……ええ」(困惑)

 

 なんでトレセンにそんなのがあるんだよ。それが1番の謎だよ。

 

「それで、課長は一体?」

 

「かつて特殊急襲部隊(S.A.T)で恐れられていた『鬼の大場』とはあたしのことさ。久しぶりに暴れてスッキリしたよ」

 

「ええ」(困惑)

 

 ようやく監禁生活から解放され、廊下を少し覗いてみると死屍累々だった。コテコテの黒スーツの男たちが廊下に無残な姿で転がっている。

 

 床に転がっていた水瀬の携帯に着信が入った──

 

『あっ、もしもし水瀬くん?』

 

「……で、先輩は」

 

『軍人上がりの『ホワイトハッカー』朝日先輩でーす! いやぁー、間に合ってよかったぁ〜。軍のコンピューター使えたら30分もかからずに助けられたんだけどねー、いやぁやっぱり学園の安物じゃダメだね〜!』

 

 もうツッコまない。絶対にツッコまない……。

 

『ちなみにだけど、トレーナーにならなかったら水瀬くんはウチの『営業』担当になってたからね』

 

(何のだよ)

 

 それはいいとして──いや全然よくないが──どうしたものか。床で伸びてる『二階堂』のこととか……と、考えていると──

 

 こつ、こつ、こつ。

 

「ほっほ。まったく、派手にやらかしてくれたの」

 

 厳しい和服に身を包んだ『老人』が現れた。

 

「『噂』には聞いとったが、まさか『実在』するとはのぅ」

 

「ケッ。あんたらみたいなアホがいるから、あたしも『暇』じゃなくなっちまうんだ。落とし前はきっちり付けてもらうよ」

 

「ほっほ、それはこちらの台詞じゃな」

 

 深いシワが刻まれた、絵に描いたみたいな古い人間──それが『二階堂正毅(まさたけ)』という人物の外見。

 

「水瀬君。今回の一件は、ウチの阿呆が先走ったことが原因じゃった。まったく申し訳ないわい」

 

(よくもぬけぬけと……)

 

「が、しかし……ワシもロブロイちゃんの『ファン』じゃったからのう。あの子の夢が壊れるところは見たくなかったんじゃよ。ほっほ!」

 

「なぁにが『ファン』だい。アホな真似してくれちゃってさ」

 

「ワシとしても本意ではなかったんじゃよ。しかし……水瀬君。君には伸び伸びとトレーナーをしてほしいと願ってはおるが、いささか『自由』が過ぎる。『過去』を忘れた訳ではなかろう」

 

「……!」

 

「もう『恩』に報いるつもりはない、と受け取って構わんのか?」

 

 老人の眼光が水瀬を捉えた──

 

「ガタガタ抜かすんじゃないよ。『恩』だかなんだか知らないが、そいつを先に裏切ったのはあんたらの方だ。『筋』ってモンを知らないらしいね──あたしはジジィ相手でも容赦しないよ」

 

「ほっほ。ワシは水瀬君に聞いておる」

 

 少し考えて水瀬は答えた。

 

「……二階堂さん。俺にはどうやらトレーナーとして多少は『才能』があるらしい。だから、今後スイープに手出しをしないと『約束』するなら、俺はあんたの言いなりになってトレーナーをします。もちろん、スイープが『引退』した後の話ですが」

 

「水瀬! アンタ……」

 

「それで手を打ってくれませんか?」

 

 その言葉を値踏みしていた老人が少しして明快に答えた。

 

「結構! 『約束』しようではないか。その言葉、忘れるでないぞ?」

 

 

 

 

 帰り道。おばちゃんが軽快にかっ飛ばす車にて。

 

「よかったのかい。落とし前つけなくてさ」

 

「あのじいさんには本当に感謝しているんですよ。今回の一件を差し引いても余るぐらいには……それに、結果的にスイープの『魔法』は実現した。生で見れなかったのは、マジで残念ですけど」

 

「そうかい」

 

 まったく、酷い目に遭った──なんて呟く水瀬を乗せて、『目的地』へと走るためにエンジンが唸った。

 

 

 

 

 

 

「──ミナセっ!!!」

 

 ロケットのようにスイープが突っ込んできた。うぐっ!

 

「みっ、ミナセのクセに……ご主人様を心配させるなんてサイテーよっ!! 覚悟しなさい、この、ばか……っ!」

 

「そうだよ水瀬くんサイテーだよー!! ホンットサイテーだよねー!」

 

 外野がうるさいんだけど。

 

「心配したんだからっ!! アタシ、心配してたんだから……っ!! アンタが、どこにも居なくて……探したんだからっ!! ずっと……っ!!」

 

「私も探してたんだよー! ほんっと、大変だったんだからね!」

 

 外野が本当にうるさい。今いいところだから黙っててくれ。

 

「もう、アンタのことなんて知らないっ! 知らない、もうぜったい許してなんてあげないんだからっ!! 帰ったら、『ひどい目に合わせる魔法』をかけてやるんだからっ!!」

 

 マジで勘弁してくれ。

 

「っ……ひぐっ、うぇぇ……っ、ミナセの、ばか……っ、ひっ……ばか、バカバカバカ……っ! ぐずっ……よかった……っ!」

 

「頑張ったな、スイープ。それと──やっと見つけたな、『レースの魔法』!」

 

「ぐずっ……ひぅっ、ぅ……あぁぁぁぁぁぁぁっ! わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! うわぁぁぁぁぁぁ……っ!」

 

 『夕日』が沈んでいく。空が染め上げられて、美しい茜色のグラデーションを描いた。巡る季節の中で──『魔法』を使った。

 

 それが『約束』の証──スイープの泣き声がいつまでも響いて、そして空へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

  ( ˙-˙ )

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──調査は難航した。

 

 閉鎖したということは、当時の資料なども全て破棄されるということで、当然連絡先も存在しない。当時の職員やトレーナー、ウマ娘たちの足取りを追うのは容易ではなかった。

 

 北海道で閉鎖したトレセン、そして時期から考えれば候補は『岩見沢トレセン』ただ一つに絞られる。関係者を探して歩き回り、そして見つけ出した。

 

「はぁ。当時の資料ですか。まぁ、ありますがね」

 

 物好きな記者さんだなぁ、なんて呟いて。億劫そうに段ボールを運んできた中年の男性。

 

「ま、消えちまうモンが惜しかったなんてワケでもないんですがね、一応取っといたんですわ」

 

 中には当時の資料が残されている。

 

「それで、ウチにいたトレーナーを探してるとか。中央なんかじゃぁそうは行かないんでしょうけども。ま、狭い世界でしたからね、トレーナーも職員も全員顔見知りですわ。誰をお探しなんですかね、記者さん」

 

 ──名前を伝えた。ようやく辿り着いた、過去を知ることができる。

 

「……はぁ。えーっと、確かアレでしたよな。今、中央で大活躍されてるトレーナーさんでしたか。その方が、ウチにいた……と」

 

 ……何だろう、この妙な反応は。

 

 ──つけっぱなしにしていたテレビではレースの中継。

 

『スイープトウショウだ!! スイープトウショウ、スイープトウショウやりました!! このウマ娘は強いっ!!』

 

 そういえば……今日だったか。このレースは絶対に生で見ると決めていたのだが、長引く調査に力を入れて忘れてしまっていた。

 

 ──勝ったのだ、彼女は。

 

 どこか予想通りで、しかし……その『事実』が胸の中に感動を呼び起こした。これは語り継がれていく『伝説』になるだろうし、そしてそうしなければならないと思った。それが『記者』としての使命──

 

 地方からやってきたトレーナーが『魔法使い』と共に『奇跡』を起こした。そのことを思うと、つい胸が熱くなる。語りたくなる、誰かに伝えたくなる。そう思う性質だから『記者』になったのか、『記者』だからそう思うのか。どっちでも同じことだ。

 

「記者さん。あのなあ、『水瀬光一』なんて方は、ウチにはおりませんでしたよ」

 

 ──……。

 

「間違い無いですわ、そんな優秀な方なら忘れませんて。それにウチに若いモンは少なかったし……そもそも、どうしてそんなすごい方がウチにおったっちゅー話でしょう。いちおう当時の名簿もありますが、見てみますかい」

 

 『前提』が崩れていく。

 

 少しずつ、『それ』は進んでいく。引き返すことのできない『魔法』の未来──『その場所』へ。

 

 

 

 

第六話 『魔法』をかけるということ 終わり




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