はぐれ艦娘と孤立小隊   作:小椋屋/りょくちゃ

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第0話

今から少し昔。あるいは少し先の未来。激しい海の戦いがありました。そんな世界によく似たまた別の世界。歴史上にも残らない小さな小さな部隊のお話。

 

 

深海から突如現れた「深海棲艦」と人類海軍の戦争は、対抗手段を持たず外海の制海権を喪失した第一次侵攻、「第一次小笠原決戦」

近海まで接近を許し沖縄本島で陸上戦闘が行われ、後の第一次反攻まで地獄の戦闘が続いた第二次侵攻。「沖縄諸島の戦い」

「艦娘」の登場により人類が対抗手段を獲得し、沖縄本島、東シナ海の制海権を奪った第一次反攻、「東シナ沖海戦」

「東洋のジブラルタル」シンガポール、及び東南アジア最大の油田地帯、ボルネオ島近海の制海権を奪還した第二次反攻、「リアウ沖海戦」

西太平洋の帰趨を決すべく仮称「深海棲艦西太平洋方面艦隊」との決戦に望み、見事小笠原諸島、マリアナ諸島までの奪還に成功した第三次反攻、「第二次小笠原決戦」

米国政府との連絡に成功し、米海軍と共に北太平洋の打通、及び中北太平洋の敵艦隊撃滅に成功した、「AL作戦/ハワイ航空打撃作戦」

などが行われてきた。

 

深海棲艦が現れて早数年が経過し北太平洋海域の安定化に成功した現在、南方に兵を進め、オーストラリアの解放を目指した「南方進出作戦」が発令された。

航空戦力を基軸とし、水上打撃打撃部隊との混成連合艦隊が進出。緒戦航空戦は優位に進めていたが敵増援空母艦隊の来襲により制空権を喪失。艦娘側は対抗し得ず、順次後退を開始するもここで深海棲艦による追撃が開始され艦隊はほぼ壊滅してしまったのであった。

 

 

〜ソロモン諸島沖南方400㎞〜

各部の武装がボロボロになりながら、暴風雨の中必死に通信機に声を投げる黒髪の少女が1人。新鋭の「夕雲型駆逐艦」の1人として海軍の南方進出作戦に参加した駆逐艦「長波」であった。

「こちら第31駆逐隊所属長波!艦隊司令部応答願う!!」

無情にも聞こえるのは全身に叩きつける雨粒の音だけ。

「クソッ!通信機もコンパスもイカレてやがるっ!」

激しい戦闘に参加した彼女の艤装は節々が煙を上げ羅針儀は敵の爆撃の影響で狂ってしまい正しい方角も分からなくなっている。敵の攻撃に晒され続けた前線部隊の彼女は、日没とともにやってきた嵐の中敵水雷戦隊の強襲を受け本隊とバラバラにはぐれてしまい、進む方向も現在位置も分からないまま航行を続けているのであった。

 

 

灯り一つ無い嵐の海上は時間の感覚を失わせる程の闇の帳が覆い尽くし、少しでも身軽にするため通信機とインカムを捨てようとしたその瞬間、長波の耳に無線通信のノイズ音が聞こえた。気のせいかと思ったが、確かにノイズ音が聞こえる。微かに繋がった希望を頼りに、少しでも多く情報を得るため、通信周波数を少しづつ変え呼びかけを開始する。

 

 

通信機の向こうから「人の声」が入ることは無かったが、長時間動き続けるうち僅かに聞こえるのみだった無線強度が上がって来たことを確信する。すなわち「発信源」に近づいているのだ。まる一晩以上嵐の中単独航行を続けた彼女の体は悲鳴を上げていたが、燃料切れで漂流するしか無くなる。「発信源」が艦娘(ヒト)か深海棲艦か調べる術はないが進み続けるしか彼女に残された道は無い。

 

 

進み続けることさらに1日。太陽や月、星を目安に「ラバウル前進基地」を目指すことも考えたが、現在位置がほとんど分からない以上、ノイズを頼りに進むことを選んだ。しかし、時間が経つほど気力と体力は摩耗し、「発信源」に辿り着いたところで同じような末路を辿った艦娘の、無線機がノイズを発信し続けているだけで、隣にもう一つ同じような屍が増えるだけではないか、そんな想像が頭に張り付いて離れない。

 

艦娘として訓練を積み、一般人より精神的な強さが上とはいえ、彼女はまだまだ駆逐艦娘(子ども)であり、諦めかけたその時

「……ち……い…………………す…………」

と彼女の耳は確かに「ヒト」の声を聞いた。




初投稿からもう既に3年が経ち、断念してきた長編作品へのリベンジを込めた作品。

果たして今度は完走できるのでしょうか。
応援よろしくお願いいたします。
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