はぐれ艦娘と孤立小隊   作:小椋屋/りょくちゃ

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第13話

「文月!三日月!最大戦速!電に合流しろ!!!」

雷跡を発見し、二人にそう叫ぶ。比較的小柄で快速な私たちにとって、めったに脅威とはならないが、それでも不意を突かれたことは事実だった。射線から退避し連続して第二撃がないことを確認する。

対潜装備を持たない二人を離脱させ、私が敵潜水艦に対峙する。対潜戦闘の基本は爆雷しかない。インカムの接続された水中聴音機に意識を集中させ、敵潜水艦を捜索する。逃げ場の少ない湾内かつ、潜航中の潜水艦は高速航行することはできない。

「そこかっ!」

艤装のアシストを使って正確に反応があった個所に投射する。

その瞬間、左舷側に雷跡を発見する。反応があった場所とは正反対だ。

「くそっ!」

高速で迫る雷撃を回避しつつ、発射地点と思われるところに爆雷を投擲する。しかし反応はない。

「これだから対潜水艦は嫌いなんだよ!」

回避しては投射し、投射しては回避する。精度がよくない聴音機だけとはいえここまで当てられないのは初めてのことだった。

「簡易爆雷だけじゃ足りない!」

対潜、対空、対水上戦とこなす必要のある今は予備の爆雷などもほとんど持ってきていなかった。優速であることを生かして離脱してもいいのだが、追跡されたり、連絡されて待ち伏せされても困る。連絡云々は、もうすでに希望的観測かもしれないが...。

「っ!!そこっ!!!」

大きな水柱が上がる。やっと一体だ。不意を突かれたことも相まって、翻弄され続け、ようやく反撃が入った。それでも、狼のような連携プレーで雷撃を撃ち込んでくる。

「鬱陶しいなぁ……!」

爆雷を投げ込み、飛んで跳ねて駆けて雷撃を避ける。

「当たらねぇ!!探信儀が欲しいっ!!!」

敵潜水艦の「位置」を補足できる探信儀が何より欲しかったが、今の長波は持っていなかった。

「っ…!そろそろ爆雷が切れるぞ…!!」

駆け回り主砲も駆使して沈めようとするが、相手の練度が無駄に高く、避け続けられる。爆雷の残りも少ない。その事が意識を焦らせ不注意に陥らせる。

「なっ!?しまっ…」

気づいた時には、回避不可能な所にまで迫っていた。

 

どぉぉーんという轟音が鳴り響く。が、痛みや衝撃は感じない。目を開けると、何事も無かったかのように航行している自分がいた。

「遅れてごめんなさいなのです!」

電が駆けつけ、魚雷を撃ち抜いていたのだった。

「わりぃ!助かった!!」

一気に増速し第2射を避け、合流する。

「文月と三日月は?」

事務的に、しかし重要なことを聞く。

「陸上に1時退避してもらったのです。」

そう答えた時にはもう、電は対潜水艦に集中していく。

電は探信儀を装備しているため、私より格段に対潜能力が高い。

「長波ちゃん、10時の方向、深度30なのです。」

次の瞬間には指示が飛んでくる。

「あいよぉっ!」

指示された通りに爆雷を投げ込むと、爆音とともに水柱が上がる。

正直、聴音機だけでも戦えなかった完全に私の落ち度だった。

瞬く間にこの場で襲撃を仕掛けてきた潜水艦達を殲滅していく。

とはいえ深海棲艦の「戦術」が格段に向上していた事も紛れもない事実だった。

 

「わりぃ。文月、三日月、迷惑かけちまったな。」

速やかに2人と合流し、夜の海を駆けていく。

「大丈夫だよ〜。長波ちゃんが無事で良かったよぉ〜。」

にこやかに文月が返してくれる。三日月も同じ意見だった。

敵潜水艦の襲撃を受けたことで、より警戒を怠らないようにしつつ、先を急ぐ。

深海棲艦にもピケット艦や、通報のシステムはあるのだから、もしかしたら私たちの存在がより上位の深海棲艦に伝わっているかもしれなかった。夜間戦闘であれば、私たち駆逐艦が、艦種の壁を打ち破ることが出来る。

とはいえ、ほぼ非武装の2人と、簡易武装の2人では相手できる量にも限りがある。だから、なるべく遭遇したくなかった。

が、悪い予感は当たると言うもの。電探に、重巡洋艦率いる有力な部隊が引っかかる。

「2時の方向、巡洋艦隊。こちらを発見してはいない模様。念の為11方向に変針。取舵。」

幸いにして敵艦隊はこちらを発見していなかったため、変針して接近を回避する。交戦することが目的でなく、今は撤退することが目的だからだ。

 

幸か不幸か、その後は特に敵と遭遇することも無く無事母港であるポートモレスビーに帰投することが出来た。

第1段輸送作戦としては、成功だったが、敵に捕捉されたこと、追い散らすことに失敗したことなど、私たちとしては苦い勝利であった。私個人としても、対潜水艦戦の練度不足を思いっきり痛感させられる事態となった。

それ以上に、深海棲艦が「戦術行動」を取っていることも異常事態と言えば異常事態であった。

帰投後、すぐに提督には報告したが、ここは通信途絶中の最前線。大本営に報告が届く訳でも無い。

私たちに出来ることは限られているのだ。

そのできることを増やすため、前進基地を作るために物資輸送を行う。自分たちのやれることをする。ただそれだけのことであって、それ以上でも以下でもない。私たちは「艦娘」であり、「軍人」なのだから。

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