はぐれ艦娘と孤立小隊   作:小椋屋/りょくちゃ

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第15話

「さてと、それじゃあ行きますか。」

いつものように艤装を背負い、いつものように出撃の準備を済ませる。

深海の戦艦を中核とすると推測される部隊がこちらに接近していることはほぼ確実だが、すでに当初の計画から輸送ペースの遅延をきたしており、これ以上の遅延は許容できない状況へと近づいていたからだ。

基地航空隊による水上部隊撃滅の用意や、念の為に私と電は輸送物資を持たず、完全武装をする羽目になったが、背に腹は変えられない状況だ。既に、私たちの存在は深海棲艦にはバレて居るだろうし、そうなると、鎮守府が強襲されるリスクも時間が経てば経つほど上がる。

そうなってしまえば、包囲下にあると言ってもいい私たちはジリ貧になる。そのための前進基地であり、航空戦力の増強移設である。

 

「仮設第一ポートモレスビー攻略支援小隊、第2段輸送作戦開始!」

定刻通りに進発。昨夜の時点から行われた偵察の結果、今日中に進む予定の航路上に部隊は発見できなかった。さらに、陸上偵察機部隊がより確実な偵察を現在進行形で行っている。

問題は、味方飛行隊の哨戒域から外れる今夜以降の航路だった。

件の移動部隊との接敵可能性があるのが明日以降だ。もしも傍受した内容通り、戦艦を中核とした戦闘部隊なら、接触するのは確実に避けたい。そのために傍受装備や逆探も装備している。私たちが水偵を装備出来れば話は変わるのだが、適性がない装備は運用ができない。

「ふぁぁ〜…暖かいから眠くなるねぇ〜…。」

大きなあくびをする文月。艤装の影響で、暑さ寒さに対する抵抗があるため、南方の強い日差しも、ジトっと纏まり着くような潮風も、艤装さえ装備していれば気にならない。なぜなら艤装を着けているあいだの私たちは「艦」なのだから。

「文月ちゃん、緊張感が無いのですよ。」

電が横目に注意するが、電の言葉にも緊張感は薄い。

「だって〜、逆探にも傍受機にも反応が無いんだもん〜。」

それはそうだ。ここはまだ私たちのテリトリーと言っても過言では無い。深海の水上艦が居ようものなら基地航空隊の大失態だ。

「っと…ソナーに感あり。敵潜水艦の恐れあり、全艦増速、文月と三日月は離脱せよ。」

足下に何かを探知する。まだ我々の領海内だと言うのに潜水艦とは。

「「了解!」」

さすがは熟練の駆逐艦。弛緩した状態から命令1つで簡単にスイッチが入る。

「長波ちゃん?」

電が駆け寄ってくる。怪訝そうな表情だが、パッシブソナーしか持たない電には見つけられなかったようだ。

「多分、2隻、真下だ。休息中のようだ。今叩く。」

アクティブソナーに、確かに2つの反応が有った。推定潜水カ級。最もスタンダードな深海棲艦の潜水艦。こちらが発見する前に休息中のところを見つけられたのは僥倖だった。

「…仕方ないのですね。」

ふっと目を伏せる。奪わなくてもいい命までは奪いたくないのだろうが、これは戦争だ。しかも、こんなところの潜水艦を見逃せば、後々に響くことは確実だ。

「…………。」

何も言えなかった。

「……ゆっくり休んでください。」

そう呟いた電は、爆雷を投下した。

 

「まさかあんなところまで来るとは、想定外でしたね…。」

その夜、休憩中にそう呟いたのは三日月だった。

「あぁ、まさか…な。まだ私たちの鎮守府は割れてないと思うが…本当に時間の問題かもな……。」

星空を仰ぎ見ながらそう呟く。野良の深海棲艦や、先遣隊の部隊に潜水艦が居ることはよくある事だが、嫌な予感がする。

「深海棲艦は、とっとと片付けちゃわないとだねぇ〜。」

可愛い笑顔で相変わらずなんてことを言うのだろうか。

「文月ちゃん、笑顔が怖いのです。」

電が思わずツッコムが、至極最もだと思う。

「ともかく、だ。この輸送作戦を成功させて、拠点を作らないと…だな。」

今この状況で、ポートモレスビーが包囲されてしまったら、今の私たちはもうおしまいだ。

「戦うためには、まだまだやるべき事が山積みですね。」

「まずは、輸送作戦から…なのです。」

生真面目な三日月と電が、至極真っ当なコメントをする。

「さてと、そろそろ時間だ。動くぞ。」

敵艦隊との接触を避けるため、索敵情報から構築された作戦計画通りに行動する。

この時間帯が、1番敵の哨戒の目が薄いことは確定情報だった。不確定要素である例の艦隊を除けば。

 

「…!無線傍受したよ〜!」

空が白み始めた頃、文月の装置が敵の通信を捉える。

「距離は分かるか?」

文月に近寄り詳細を聞く。

「うーんちょっと待ってねぇ〜…。うーんだいぶ遠いみたい…。ざんね〜ん…。」

本当に狂犬のようなコメントばかりである。とはいえ、任務優先ということは理解した上で言っているようだが。

「そうか…それならいいんだが……。」

予定通り進もうと離れる。

「ん、ちょっと待ってぇ…?」

文月が怪訝そうな表情で私を呼び止める

「どうした?」

その表情を見て、電と三日月も寄ってくる。

「えっとねぇ…復号中だから……。」

敵艦隊の暗号を、文月の妖精さんが平文に戻し、それを共有する。

「何かを探してるのか……?」

1部の情報を解読しきれていないが、何かを探しているような内容の無線が飛び交っているようだった。

「…でもこの文面じゃ、私たちを探してるわけでは無さそうなのです。」

それを読んだ電がコメントをする。

「私たちの基地を探してるわけでも無さそうですし…何を探しているんでしょう…」

三日月も首を傾げるしかない。何せ、私たちには情報が足りない。

「とはいえ、戦艦クラスがいるのは確定みたいだな。」

文面から、艦隊司令を務めるクラスの深海棲艦が出張っているのは確定情報だった。とはいえ、こんなに統率の取れた艦隊行動をする深海棲艦がいるなんて聞いたことは無い。何かが起こり始めているのは、間違いのないようだった。




誠に申し訳ない限りですが、投稿日を毎週月曜日から毎週木曜日に変更させて頂こうと思います。

今後ともこのシリーズをよろしくお願いします。
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