最前線に取り残された私たちの部隊は、一路ビントゥニへと向かっているところ、謎の戦艦率いる深海棲艦の部隊に対して無線傍受という形ではあるが接触を試みることとなった。その結果は、「何かを探している」ということしか分からなかった。しかし、深海棲艦が目的を持ち行動していることだけは理解出来る。刻々と動き出した戦況に、不安を不安を覚えたのは、私だけでは無いようだった。
「一体何が起きているのです…。」
声色に不安が滲み出る。心根が優しい分、私よりショックや不安に対して少し弱いのかもしれない。
「今まで、こんなことはなかったですからね…。」
うーんと唸りながら、三日月もそう返す。一路進みながらも、出てくる話題は件の戦艦部隊のことばかり。
「どうして急に、こんなことになってるのかも気になるよねぇ……。」
暗号解読のために、傍受と復号要員の妖精さんを連れている文月にもお手上げのようだ。
「情報が不足してて、何も分からないのが正直なところだしなぁ………。せめて、何を探してるのかが分かればいいんだが……。」
最前線で戦い続けてきた私たちにとっても、あまりに未知数なことが多すぎた。そしてその、「知らない」ということは「不安」に繋がる。ただでさえ、半ば極限状態のような状況に取り残されている私たちである。「不安」が「恐怖」となり恐慌状態にならない保証はどこにもない。どれだけ理性的で居られるか、それにかかっている。そう胸に刻みつける他になかった。
「ふぅ…ひとまず往路は何も無く…ってところか……。」
戦艦部隊とのすれ違い以外特筆することはなく、目的地にたどり着く。前回揚陸したポイントの付近に行くと、妖精さんが作業したのか、簡易的な波止場や作業場ができており、内陸部へ進むための道までできていた。
「物資に破損も無いし、いい感じ〜!」
大発のコントロールから開放されたからか、文月がやけに楽しそうな声色で波止場に飛び乗る。
「実際、海も全然荒れませんでしたからね。」
テンションが高めな文月とは裏腹に、三日月は生真面目に荷降ろしまでやっている。
「三日月〜、手伝うのはいいがしっかり休めよ〜?荷降ろしやらは妖精さんだってやれるんだからな〜?」
そんな調子の三日月に一言釘を刺し、艤装を外して上陸する。
「あ、長波ちゃん。どこへ行くのです?」
艤装を降ろし、妖精さんに預けたタイミングで電に声をかけられる。
「あぁ、ここから少し…と言っても歩いたらそれなりに時間かかるけど、街があったらしいんだ。だから、見に行こうかなって…。……もし何かあったら電が指揮してくれ。無線は持っていくから。」
と、制服のポケットに入れた通信機と、セットしたままのインカムを指さす。
「了解なのです。帰投時刻までにはちゃんと戻ってきてくださいね。」
電の見送りに、おう。と返事をして、林の中を分け入っていく。道と言っても、人一人通れるか怪しいサイズの獣道のようなもの。それでも妖精さんにとっては十分過ぎるほどだが。
十数分もしないうちに、街の外縁に差し掛かったようで、緑に呑まれた廃墟がポツポツと目につくようになる。まだ数年しか経っていないはずなのに、相当な時間の流れを感じさせる。
「…どれだけの人が、無事逃げられたんだろうな。」
風化した壁に手を当て、思いを馳せる。中部太平洋、南太平洋を起点に現れたという深海棲艦は、瞬く間にニューギニアやオーストラリアまでもを席巻した。
人口の大半が沿海部に集中しているオーストラリアなどは人口の半数以上が侵攻に巻き込まれたというデータもでている。
「一体なんのために、奴らは海の上に出てきたんだろうな。」
1人ぼやきながら、街中へ進む。
割れたアスファルト舗装から頭を出した雑草を踏みわけ踏みわけ進んでいく。
建物に使われているコンクリートや鉄材を再利用したのか、明らかに人の手、この場合妖精さんの手だが、が入って解体されている建物もある。
「所業無常…か。」
いつぞやに習った一節を思い出す。人の世とは無常のものなり…そんな
「私もいつか、こうなるんだろうな。」
ただ、漠然と怖くはなかった。艦としての"私"もそうなっている。ただ、「そうなる」のは自然の摂理なだけであって、恐ろしいものでは無い。
そういう実感が、湧いてきた。
「……でも、まだ『そう』はなりたくないな。」
何となく、としか形容できないが、そういう実感が私を包み込む。
「………さて、戻ろうか。」
なんだかとても"相棒"が恋しく感じる。まだ1時間と経っていないのに。
私にはまだまだすべきことがある。『そう』なるのはその後。何より私自身したいことがある。そう改めて認識したのだった。
お久しぶりです、作者です。
体調不良やったり五月病になったりリアイベ楽しみすぎて体調崩したりしてました。
来週は定期投稿できるように頑張ります(遠い目)