謎の深海棲艦からの救援要請を受け飛び出した私は、追撃していた敵部隊をあっという間に殲滅することが出来た。
事態が事態だから飛び出したものの、後で叱られそうだなと思いつつ鎮守府に戻る。電探の反応的に、電か文月が例の深海棲艦と合流出来たようで一安心する。
「はぁ…それにしても何が起きてるんだがな。」
とボヤいてみるが誰かが反応するはずもなく、ただ響くのは私の艤装から出る音だけだった。
「もう!長波ちゃん!せめて一言言ってから出撃して欲しいのです!!」
ドックに戻ると、怒り心頭と言った感じの電が待ち構えていた。
「すまんすまん、時間も無さそうだったしつい、な?」
悠長に構えてる暇は無さそうだと思ったのは事実なのでそう弁明する。
「つい、じゃないのです!もしもっと強い部隊だったらどうするつもりだったのですか……!もう!」
と本気で叱られてしまった。
「…次からもうしないからさ、今はこう生きてるんだ。だからこれで、許してくれ、な?」
軽く抱きしめ頭を撫でてやる。涙目になっていた電も落ち着いたようだ。
「モウソロソロイイカ。」
私が電を慰めているのを見てバツが悪そうな顔を浮かべながらこちらを見ていた。
「あ、あぁ、すまん、大丈夫だ。」
改めて向き直るが、先程まで煙を上げていた艤装が治り始めて居た。
「…ワタシハドウスレバイイ?マッテイロトイワレタガ。」
足が無いため動けないようだ。
「ごめんねぇ〜もってきたよぉ〜。」
文月が車椅子を押して持ってくるが声色がだいぶ平坦になっている。深海棲艦自体への恨みがあるからか、ニコニコしているが目が笑っていない。
「………?」
一体何をしに来たのか分からないと言った表情だ。
「あーいいか、ちょっと持ち上げるぞ。」
と許可を取り車椅子に載せる。艤装があるとはいえ、身体が細いからか難なく載せることが出来た。
「…ナルホド、ソウイウコトナラ早ク言エ。」
と言うが早いか艤装をどこかへしまい込んだ。
これには私たち3人ともギョッとしてしまう。
「ナンダ、艦娘ハコンナ事モデキナイノカ。」
ぶっきらぼうな物の言い方に対して、文月が段々とイライラしてるのが見て取れた。
「あーその、なんだ。文月、電と一緒に休憩してきたらいいんじゃないか。この件は私に任せてくれ、な?」
「…じゃ、お言葉に甘えて〜。行こ〜?」
と、だいぶご機嫌ななめだが一旦距離を取らせれた。
「じゃあ私らの指揮官とあってもらうけど、いいな?」
車椅子を押してやりながら確認をする。
「…人間モ艦娘モ気ニ食ワナイガソレ以外ニナインダロウ?」
周りに人が減ったからか露骨に感情が出てくる。
「お前…」
さすがにこの物言いにはイラついてしまい抗議しようとするが機先を制される。
「モチロンオマエニハ感謝シテイル。命ノ恩人ナノダカラナ。アリガトウ。」
と、真っ当な感性は持ち合わせているようだ。だったら尚更教えてやらなくてはならない。
「私がお前を助けに行けたのは、文月…あー、黒い上着を羽織ってる方のお陰なんだ。アイツがお前の無線を拾ってくれなかったら誰も気づきやしなかったからな。」
相手も言葉遣いを気にしていないようなので、こちらも歯に衣着せず言ってやる。
「ソウカ。」
とだけ、数拍置いて返事が帰ってきた。
深海棲艦なりに、思うところがあるのだろうか。
そんなことを考えながら提督のいる病室へ向かうと、病室の前で三日月と出会う。
「その子が助けた…深海棲艦ですか?」
純粋に興味だけがあると言った表情で車椅子の正面から覗き込む。
「まぁそうなる。確か…『駆逐棲姫』って分類のはずだ。」
車椅子の客人から露骨に嫌そうな雰囲気を感じるが、今はそれしか呼び方が無いのだから仕方ないだろう。
「そうですか。しばらくよろしくお願いしますね。」
と屈託なく挨拶する三日月。三日月は深海棲艦に対して思うところは無いのだろうか。駆逐棲姫も毒気を抜かれたのか
「アァ、ヨロシク。」
と素直に返していた。
「こんな姿で申し訳ありません。私がここの司令官の羽田という者です。そちらが保護した深海棲艦……駆逐棲姫ですか……?」
簡単な自己紹介と挨拶をする提督。それに対して
「ナァ、ソノ『駆逐棲姫』ナンテ呼ビ方ハヤメテクレナイカ。」
とかなり不機嫌に返す。だがしかし、提督は大人な対応で済ませる。
「失礼しました。なんとお呼びすればよろしいですかね?」
「……ソウダナ…。『ハル』トデモ呼ンデクレ。」
と駆逐棲姫は名乗った。
「それで、いきなり本題ですみませんが、ハルさんはなぜ追われて居たんですか?」
と提督はド直球に聞く。下手な世間話をするよりこっちの方がいいと判断したのだろう。
「……私ハ別ニ、人間ハ嫌イダガワサワザ虐殺に加担スル程嫌イジャナイ。第一、海ハ皆ノ物ダロウ。ソレヲ占有スルノハ、同ジ海ノ者デモ人間デモ許セナイ。ダカラ反発シタ。ダカラ追ワレタ。ソレダケ事ダ。」
と淡々と語る。ここまで人間味に溢れる深海棲艦を私は見たことが無かった。いつかの報告書で、深海棲艦が人間の街にスパイとして紛れている可能性があるというのは見た気がするが。
「……なるほど。」
と冷静に返す提督。私は黙って見ているしか出来なかった。
「トニカク、私ハアイツガ気ニ食ワナイ。頭ガイイノカナンダカハ知ラナイガ、海ノ者同士ハ対等トイウ不文律ヲ忘レテイル。ソレニ…アソコハ私ノ生マレタ海ダ。追イ出スタメニ力ヲ貸シテクレナイカ。」
と言うことだった。
深海棲艦には深海棲艦なりのルールがあったということだ。…私たち人間は、海のことを全然知らなかったのかもしれない。
駆逐棲姫…通称わるさめちゃん、可愛いですよね。