駆逐棲姫『ハル』との協力関係が生まれてからはや数日、仮設第一ポートモレスビー攻略支援小隊こと私たちは、深海棲艦の勢力圏に落ちたポートモレスビーを脱出するために、最後の輸送作戦を実施しようとしていた。件の戦艦についてもハルに聞いてみたが、本人も詳細は分からないようだった。あくまで可能性として「私ヲ追ッテイルノカモシレナイ」とだけは言っていたが。
「長波さん、お疲れ様です。」
岸壁に座り、深紅に染った海を眺めていたところ、三日月が声を掛けてきた。
「おう、お疲れ様。そっち準備は終わったのか?」
と三日月の方に目をやる。
「はい、先程終わって、今は提督と電ちゃんが最終確認中です。」
と言いながら隣に三日月が腰掛ける。
「そうか。文月は?」
深海棲艦に並々ならぬ感情を抱いている文月にとって、『ハル』との共闘は、思うところがあるようだった。
「もう寝ると言ってお部屋に戻っていきました。やっぱり、簡単に割り切るにはいかないみたいです。」
私たち艦娘が、それを志願したのにはそれぞれ理由がある。その中でも1番多いのはもちろん、深海棲艦への恨みだ。実際私も復讐のために入隊した艦娘を知っているし、文月も「復讐のため」とは言わずとも、恨み辛みは溜まっているだろう。
「まぁ、そりゃそうだよな。」
同意するようなしないような、そんな返事しかできない。
「長波さんは、なんで志願したんですか?」
三日月が、そう聞いてくる。
「なんで…か。そうするのが、正義だと、思ったから、とか?」
そうだったような、気がする。正確には覚えていない。連日連夜深海棲艦による被害がニュースになり、人手が求められている…と知ったから、自分に出来るなら、と適性検査を受けた記憶はある。
「長波さんは、やっぱりかっこいいですね。」
くすくすと笑いながら三日月にそう言われる。
「そんなにかっこよくなんかないだろ…」
面と向かって言われると小恥ずかしい。今思い返せば、「かっこよさそうだから」志願したという方が、正しかったかもしれない。
「かっこいいですよ?実際その正義感で、2人も助けてるんですから。」
夜風に三日月の長い黒髪がたなびく。
「それは…そうかもなんだが……」
なんだか言い寄られているようでむず痒く感じる。
「そうなんですよ。私は長波さんに助けて貰って、誰にも見つからずに死なずに済んだんです。それだけでも、相当な恩なんですよ。」
こちらの手を取り、まっすぐ見つめながらそう言ってくる。
「私の姉も艦娘になったんですよ。でも、今は行方不明です。護衛する船団が襲撃されて、姉は1人殿をしたとか。見つかったのは、壊れた主砲の破片だけだったそうです。きっとどこかに流れ着いて、今も生きてて欲しい…なんて、夢物語にも程がありますけどね。」
悲しそうに、私の手を握りながらそう語る。
「私は姉の背中を追いかけて、艦娘になりました。死ぬのは覚悟していたつもりでしたけど、みんな死んでしまって、一人ぼっちで死んでいくのは、思っていた以上に堪えました。だから、長波さんに救っていただけて、本当に感謝しているんですよ。」
そう言い切ると、ニコリと微笑みかけてくる。
「そうか。どういたしまして…でいいのか?」
やるべきことをした迄…と考えていたから、ここまで感謝されるとは思ってもみなかった。
「はい、大丈夫ですよ。」
こちらの手を握りながらニコニコとした笑顔で見つめてくる三日月に、少し調子が狂う。
「じゃあ、私に何かあったら、三日月が助けてくれるのか?」
そんなことを言ってみる。実際、助け合わねばどうにもならない場面が、この先来ることもあるだろう。
「はい、もちろんです。長波さんは、私の命の恩人ですから、命に代えてもお助けしますね。」
目を瞑り、こちらの手に頬ずりするようにしながら、そう宣言される。
「…そうならないように、もっと努力しないとな。」
その宣言を、私は、あえて受け取らないことにした。
「長波さん…」
不満そうな目線がこちらを射抜く。
「だって、助けて貰うために助けたわけじゃないんだぜ?それじゃ、かっこよくないだろ。」
私はどうやら、自分で思っている以上にかっこよくありたいみたいだ。助け合いは必要かもしれないが、『助けられたい』訳ではない。
「ふふっ、長波さんらしいですね。」
そんな私を見て、三日月は再びくすくすと笑う。
「あーこら笑うなぁ!私も自分で言って恥ずかしかったんだぞ!」
面白そうに笑う三日月に抗議する。だけど三日月は、それも面白そうに笑っていた。
お久しぶりです。
お恥ずかしながら、帰ってきました。
約1年半ぶりでしょうか。
えぇ、はい。完全にエタ死でしたね。実生活が充実し始めると、執筆欲が薄れてしまうのはいかんしがたいところがありまして…という言い訳しか出ませんが。
何はともあれ、書き切ることを諦めた訳では無いので、もう少し頑張りたいと思います。良ければまた、お付き合い下さい。