はぐれ艦娘と孤立小隊   作:小椋屋/りょくちゃ

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第2話

「ふぁぁ〜…眠いね〜電ちゃん〜…。」

「もう少しで基地なのですから、もうちょっと我慢なのです。」

「ん〜…死ぬほど眠いよ〜…。」

私より一回り小さい駆逐艦娘に手を引かれながら徐々に北上していく。2人は睦月型7番艦文月と、暁型4番艦電と名乗った。

「な、なぁ…今更だがどこに向かってるんだ……?というか、手は繋いでなくてもいいんだが……」

2人に救出されてからはや数時間、夜も深けきり自分たち以外には物音聞こえない海上を進んでいく。

「まぁまぁ、焦らずのんびり行こ〜よ〜。」

「なのです。細かいことは司令官に会ってから考えるのです。」

「いやだから、その司令官とかについても教えて欲しいんだが……はぁ……。」

向かっている先に着いて聞こうとしても、こんな調子で流されてしまう。実際疲労が溜まり過ぎているから難しいことを考えなくて済むのはありがたいのだが……。いやでも、着く前に少しくらい情報を……………

 

 

「長波ちゃん、寝ちゃったね〜。」

「まぁ、仕方ないのです。ずっと眠れなかったみたいなのですから…。」

長波の腕につけられた、煤汚れ焦げ破れて判読しにくくなった腕章を眺めながらそう返す。

「あたしも寝ていーい?」

「文月ちゃんはもうちょっと頑張るのです。」

「はぁ〜い。」

 

 

「─み…─みちゃん。」

意識の遠くから呼ぶ声が聞こえる。

「長波ちゃん、起きてなのです。もうすぐ入港できますよ。」

「ふぇぁ…?…って!?私!寝落ちてたか!?」

空にはもう日が登り始め、キラキラと水面が揺らめいていた。風も凪いでいる。確実に寝ていたようだ。

「スヤスヤ寝てて、可愛かったよ〜。」

「やっぱり、手は繋いだままにしといて良かったですね。」

「……何も言い返せねぇ…………。」

2人ににこにこした顔で言われ、昨夜の発言が恥ずかしくなってしまった。

「そんな事より─こちら第3特設駆逐隊旗艦電、まもなくポートモレスビーに入港するのです。どうぞ?」

『─了解。もう少しとはいえくれぐれも注意するように。』

「了解なのです。─ということで、やっと港ですよ。」「やっとこれで寝れるねぇ〜。」

「一応…帰ってこれた訳か……。」

水平線の向こうにニューギニア島が見えてくる。やっと帰りついた。それだけのことだが、どっと安心感と精神的な疲労が込み上げる。

「えっと、とりあえず入港したら長波ちゃんは即ドックに入渠できる様手配してあるので、気にせず入渠ドックに直行してください。」

「あぁ、ありがとうな…。」

「どういたしましてなのです。」

「電ちゃん、あたしは〜?」

「お風呂に行ってお部屋で休んでいいのですよ。」

「わぁ〜い、じゃあお疲れ様〜。」

文月はタタタと駆けて基地内へと入っていく。

「入渠ドックはそっちなのです。多分、妖精さんが居るので、じっくり怪我を治して欲しいのです。」

「おう、ありがとうな、また後で。」

入港し、電と別れドックへと向かう。

艤装を解除し修復をお願いする。

「お疲れ様、ゆっくり休んでくれよな。」

各種武装担当の妖精に声をかけ自分は身体の怪我の手当を開始してもらう。

「ってて……身体の怪我も、艤装みたいに速く治りゃいいんだけどなぁ……。」

擦り傷だらけの右腕を眺めながらそう呟く。

「まぁ…この程度の怪我で済んでるのも艤装のおかげなんだから、感謝しないと…か。」

自分の周りを医療器具を持って走り回る妖精さんを眺めているうちに、ウトウトとまた眠りに着いたのであった。

 

「──っあ…あぁーよく寝た……。」

色んなところに包帯やガーゼが当てられた状態だが動かすことに支障はない。拘束具も無いことから絶対安静にする必要も無さそうだ。大きく伸びをして1つ息を着く。

「おはようございます、長波ちゃん。」

「ん?電か、どうした?」

こちらが起きるタイミングを計ったかのように電がやってくる。

「艤装と制服の修理が終わったので確認をお願いしたいのです。」

「おぅ、任せとけ。………うん、問題無さそうだな。」

大した労力でもないのでちゃちゃっと済ませ、基地内の紹介と自室へと案内されることになった。

いわゆる「鎮守府」としての体裁はちゃんと整えられており、既に大型滑走路まで設営されていた。他には作りかけだが大きな隊舎まであり、ニューギニア島全体の制圧戦の前線基地になる予定なのかもしれない。

「ここを自室に使ってほしいのです。」

基地内に据え付けられたシンプルなつくりの部屋に案内された。私個人としてはあまりここに長居する予定はないのだが...。

「それでは、電は秘書艦のお仕事があるのでいったん失礼するのです。」

「あ、待ってくれ。ここの提督に挨拶させてくれないか?」

「わかったのです。こっちなのです。」

周辺の状況を確認するためにも、三十一駆逐隊(原隊)の情報もわかるかもしれない。

 

「失礼します、電なのです。」

「入ってくれ。」

「長波、失礼します。」

電に続き部屋に入る。

「長波さんですね、私はここを預かる羽田 碧(はねだ あお)と言います。これからよろしくお願いしますね?」

「あぁ、そのことなんだけどな...」

「どうかしましたか?」

「私はいつ原隊に戻れる?できればなるべく早く巻波たちと合流したいんだが...。」

「あぁえっと...。」

司令官の目が曇る。

「ん?どうした?」

「あなたの部隊がどうなったかは...わかりません。」

「えっじゃあ私は...」

「あなたの安否に関しても"行方不明"です。」

「えっでもここはちゃんとした基地なんじゃ...?」

命令系統が接続されているなら、私の生存も連絡されているはずだ。

「なぜなら今のここは......孤立無援の、最前線に取り残された、連絡不能の前進基地ですから。」

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