はぐれ艦娘と孤立小隊   作:小椋屋/りょくちゃ

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第4話

〜03:00、バンダ海洋上〜

「こちら長波、戦闘終了、こちらの損害なし。敵輸送艦の鹵獲に成功、これより帰投するぜ。」

『了解です、敵戦力に留意しつつ帰投してください。』

インカムの向こうから生真面目な返答が帰ってくる。

「あいよぉ。」

 

 

徹底抗戦を続けることを決めてから早1週間。鎮守府、泊地としての「通常業務」を行うのにすら事欠くほどに物資が払底し始めていた。そんな時、

「物資が足りないなら、深海棲艦から貰っちゃえばいいんじゃないかなぁ…?」

と文月が提案した。

「貰う…どういうことなのです……?」

キョトンとした顔で電が聞き返す。

「ほら、輸送艦とか沈めるんじゃなくて無力化して鹵獲して…中身を貰っちゃえばいいんだよ〜?」

ニコニコとした顔で説明をする。

「いい笑顔でとんでもないこと言い出すなぁ……。」

さすがの私でも思わずボヤいてしまった。

「とはいえ、悪くは無い…ですかね。活動を停止した深海棲艦であれば工廠で解体することもできますし…。悪くは無いと思います…が、やれますか……?」

おそらく私たちの心情を気遣っているようだが…

「最初期から戦い続けてきた歴戦駆逐艦2人と、最前線で駆けずり回って来た精鋭駆逐艦を舐めないで貰いたいねぇ!」

「なのです!」

「その通りだよ〜!」

即座に2人とも同調する。

「なら…それが今の所、最善手かもしれませんね…。」

あまり浮かない顔をしている…やはり場馴れしていなさそうだ。

「っしゃぁ、じゃあ、早速そのために動く準備を始めようぜぇ、な?司令官?」

この状況なら一時期艦隊司令艦を務めた私が気合いを入れさせるべきだろう。

「え、えぇ、そうですね。文月さん、深海棲艦側の最近の動静はどうですか?」

スイッチが入ると、指揮官として配置されているだけ物事の順序がよく分かっている。

「えぇっとねぇ確かねぇ…主力艦隊はもっぱら前進したみたいだよぉ〜?」

地図に敵主力の進出推定ポイントを記していく。

「となると我々は落ち着いて輸送艦狩りができますね。」

冷静に地図を眺めながら輸送路と思われる航路をピックアップしていく。

「状況的には最高だなぁ…。」

地図を俯瞰し奇襲にピッタリなポイントを決めていく。深海棲艦の「投錨地」は既によく知られており、私の頭の中にも何ヶ所か覚えがあった。

「どこから攻撃してみるのです…?」

「行動範囲的に動きやすく、なおかつここが察知されにくいところ…となるとニューギニア島東岸、バンダ海の辺りが島陰にも逃げ込み易くいいんじゃないですかね…?」

地図上の1つのポイントを指す。スラウェシ島とニューギニア島の間にある、島嶼の並ぶポイントだ。

「あたし的には問題無さそう〜。」

「私としても大丈夫だな。小回りが利くのが私ら駆逐艦の最大のメリットだし。」

「電は、どこでも大丈夫なのです。」

「ではここを起点とした襲撃計画を立てます。文月さんは明日以降も情報収集をよろしくお願いしますね。」

 

〜23:00、バンダ海洋上〜

「こちら長波、投錨中の敵輸送船団を視認。護衛は少ない模様、どうぞ。」

秘匿回線で司令室の提督に連絡を取る。

『事前情報通りですね。こちらも作戦通りに攻撃を開始してください。』

「了解…!」

攻撃開始許可を得ると同時に、2人にサインを出す。それを確認した2人は展開を開始する。全戦闘妖精さんを戦闘配置に着かせ呼吸を整える。

「全艦、長波に続けっ!突撃するっ!!」

照明弾を空中に打ち上げ全速力で敵艦隊の中央に突撃を敢行する。

「ってぇーっ!」

主砲弾を的確に土手っ腹に叩き込んでいく。本来ならここで魚雷もお見舞いするが私の役割は攪乱。寝起きの深海棲艦共に爆薬をプレゼントしていく。

「そんな甘い砲撃じゃ当たらないよっとぉ!」

敵軽巡の砲撃をヒラリとかわし正面にズドン。

「そんな回避機動じゃ沈んじゃうよぉ!!」

ジタバタと逃げようと動く敵駆逐の横っ腹にズドン。

片っ端から戦闘艦艇を無力化していく。

「っと…この長波サマに近接で勝てると思われるたァ舐められたもんだねぇ?主力オブ主力もぉ!」

肉薄してきていた敵雷巡を返す刀で一撃で屠る。

「こちら電、目標数の輸送艦の鹵獲に成功したのです。」

「こちら文月、こっちも目標数達成したよぉ〜。」

2人から報告が届く。

「待ってたぜぇ…!ウェポンフルオープン、魚雷1から4番、右舷2時方向に集中投射っ!」

魚雷担当妖精さんに、魚雷投射の指示を出す。一撃必殺の酸素魚雷が、重たい腰を上げ始めた敵輸送艦を貫く。主砲弾が敵を無力化する。縦横無尽に駆け回る夜の歴戦駆逐は、誰にも止められない。遺るのはただ、重油と船体だった物ばかりだった。

 

〜02:00、バンダ海洋上〜

「こちら長波、戦闘終了、こちらの損害なし。目標数の敵輸送艦鹵獲に成功、これより帰投するぜ。」

『了解です、敵戦力に留意しつつ帰投してください。』

「あいよぉ。」

やはり戦術的な話で言えばこの司令は優秀だ。文月の情報収集能力にも助けられたが、現に完璧なタイミングでの夜襲に成功した。チラッと確認したが、3隻と1人であれば、しばらく事欠くことは無い量の物資を手に入れた。問題は、時間が経てば経つほど襲撃が難しくなる事だが…。




先週は投稿できず誠に申し訳ございませんでした。
皆様のTwitterアカウントはご無事でしたでしょうか、投稿主はメイン垢が凍結の憂き目に会い酷い目に遭いました。

個人的にイーロンに恨みはないですが、不具合も頻発しているようで対応をして欲しい限りです。
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