はぐれ艦娘と孤立小隊   作:小椋屋/りょくちゃ

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第6話

「っと……今回はこんなもんか。」

文月の運搬する大発動艇に輸送ワ級を詰め込む。

「護衛の艦隊も増えたね〜。」

手馴れた手つきで積み込んだワ級を崩れないようにした文月が大発から降りる。確かにココ最近は敵護衛艦隊の質も量も明確に増えていた。

「でも、これくらいなら一捻りなのです。」

この3人で行う夜間襲撃も、私が突撃、撹乱し、電が目標の輸送ワ級を無力化し、文月がとどめを刺すというルーティンが完璧に確立していた。

「さてと、日が昇らないうちに帰らないとな。」

「そうだね〜。」

ここは敵地ど真ん中、輸送艦隊の襲撃を阻止するために日が昇れば深海側の索敵機が飛び回るだろう。

今回はいつもより遠くに足を伸ばしており、急ぎ足で帰投する必要があったのだが…

 

「クッソ、こんな時に限って嵐じゃねぇか!」

赤道直下、熱帯の海上は嵐が起きやすい。

帰路大嵐に巻き込まれ進むに進めなくなっていたのだった。

「文月ちゃん大丈夫?」

「あたしは大丈夫だけど、大発が……。」

電が文月のサポートをしながら進む。あくまで大発動艇は文月の装備下であるため、壊れることは早々無いが、駆逐艦娘にとって辛い嵐の上に、大発のコントロールまでしなければならない文月はキャパオーバーになり掛けていた。

「1回休憩するぞ!あの島に上陸しよう!!」

『ヒト型』であることを活かして小島に上陸。波が収まるまで待機する判断をした。

「こちら長波、提督、応答願う。」

『どうしま…した…がなみさん、どう…。』

嵐のせいで通信回線も雑音が酷い。

「この嵐で大発の運搬がかなり怪しくなった、現在小島に退避している。」

『わ…りまし……気をつけ……さい………。』

最低限の連絡を取り、大発を砂浜に引き上げるのを手伝う。

「ありがとう長波ちゃん〜…。」

「困った時はお互い様…だぜ。」

艤装のパワーアシストがあるとはいえ、相当辛いが、根性で波に攫われない位置まで引きづりあげる。

「文月ちゃん、掴まってなのです。」

疲労でフラフラになった文月を支え電が島の木陰へと連れていく。ただでさえ凌波性に乏しい旧式艦艇な上に、大発動艇のコントロールまでする必要があるため相当な重労働だったはずだ。そこまでならもっと早く、その旨を伝えて欲しかった。私たちは一蓮托生、文月が居なければ、この作戦も成り立たないのだから。速成の駆逐隊であるが故の弊害が、出てきてしまっていた。

 

「っっ…寝ちまった……。」

艤装に備え付けの携帯食料を食べ、嵐が過ぎるのを待って居るうちに、眠ってしまって居たようだった。日も高く登り今から行動するのはあまり良くなさそうだ。

「電と文月は……。」

伸びをしながら辺りを見渡すと、隣の木で、肩を寄せ合い眠っていた。

2人を起こさないように、その場を離れて提督に連絡をする。

「こちら長波、応答願う。」

『大丈夫でしたか?連絡が無いので心配しました。』

コールを飛ばすとすぐに不安そうな声色の提督が出る。かなり心配を掛けたようだ。

「あぁ、今のところは問題ない、日が暮れてから動こうと思う。」

『了解しました。場合によってはこちらから航空支援も出しますが十分発見されないよう気をつけてください。』

「了解。」

サッと通信を終え艤装を着けたまま島を探索する。

艤装の影響で、数日程度であれば飲まず食わずでも活動できる身体ではあるが、そんな状況ではもちろん集中力もパフォーマンスも低下する。少なくとも飲水…出来れば食糧も何か手に入れたかった。

 

 

 

「しかしまぁ…思ってたより広いなぁ…ありがたいけどさ…。」

それなりに突き進んだところで湧水を確保し、流れ着いていたボトルに貯める。嵐の影響で想定航路から外れた島に上陸していたようだった。

「さて…そろそろ戻るか…。」

180度向きを変え、元来た道を帰ろうかと思った時、視界の端に何かを捉えた。

「あれは…なんだ……?」

鬱蒼とした茂みには似つかわしくない人工物のように見えた。

確認するために近づくとそれは…

「おいおい、軍の輸送機じゃねぇか……。」

墜落時期的には「南方進出作戦」とほぼ同時期だろうか、パイロットと思われる遺体は既に骨だけになっていた。

「……さすがに、こういうのは気分が良くねぇな。」

機内を探索し終わり降りたところで、見張り員妖精が「生物」の痕跡を発見する。それはだいぶ小柄な、靴の足跡のようだった。時間がそれなりに経過しており、熟練の見張り員が居なければ発見出来なかっただろう。

「おいおい、まさか……。」

その痕跡を追跡し進んでいく。

「大丈夫か!おい!!」

その先には、黒髪に私たちと同じように「艤装」を装備した少女が倒れていた。

だいぶ衰弱しているがまだ息はある。「加護」の力が生きていたおかげでここまで生命が繋がったのだろう。だがしかし、残された時間は多くないように見えた。

体の傷や、骨折していた左腕に応急処置をし、水分をどうにか補給させる。

「頼む、帰るまでは持ってくれよ…!」

どうにかこうにか抱き上げ降り立った浜辺へと戻る。

"強行帰投"する必要が発生してしまったのだった。




黒髪で小柄な艦娘…一体誰でしょうかね。
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