死霊騎士と魔術師の花嫁   作:もぬ

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02. 星騎士カムリ

 訓練場にて。

 

 青年の必死の剣を、壮年の男性が打ち破った。

 

「くっ! くそ……」

 

 青年、カムリは無様に尻餅をつき、自分の何度目かの敗北を認める。遠くに弾かれた摸擬剣を一瞥し、悔しさに歯噛みした。

 

「おや。星騎士さまともあろうお方が、一介の銀騎士ごとき相手にこのざまとは」

「そんな等級なんて。あんたより上の剣士がいるものか」

「何言ってる。いるさ、それこそ星の数ほど。……カムリ」

 

 壮年の騎士、ツェグは、カムリに手を差し伸べた。

 カムリは彼の手をしばし眺め、自分のプライドに関して逡巡したが。やがて笑みを浮かべ、その手を取った。

 

「最後まであなたには勝てなかった。悔しいよ、ツェグ」

 

 さわやかな風が、並び立つ二人の間を抜ける。カムリは一枚の木の葉を目で追った。

 カムリはこれまで、幾度もツェグに剣で挑戦し、そのすべてで敗北している。青年にとって、目の前の男はついぞ乗り越えられなかった壁であり、それゆえ尊敬してやまない騎士であった。

 

「最後じゃないさ」

 

 そして、剣の師であり、そう呼んだことはないが、父のように想っていた。

 

「この町はお前の家だ。お前がどんなに偉くなっても、どんなに遠くを旅していても、ここが帰る場所だ。……また勝負をしよう。いつでもだ。星騎士カムリ」

「ツェグ」

 

 カムリはツェグの目を見た。幼い頃は巨人にも見えた彼に、背の高さは追いついて、目線は対等だ。

 そして今、彼は初めて、カムリのことを騎士と呼んだ。親が子を見送るような言葉の中に、それをそっと混ぜてくれた。

 そのことが、何よりの激励だった。

 

「ありがとう、師匠(せんせい)

 

 カムリのペリエ市での最後の一日は、そんな朝から始まった。

 

 

 ツェグとの摸擬戦闘ののち、騎士団の宿舎で雑事に一段落つけたカムリは、昼食を求めて廊下を歩いていた。

 そこで、知己と鉢合わせになる。

 

「エクス! エクスじゃないか!! 帰るのは今日だったか!」

 

 カムリが声をかけた青年は、カムリと同様に、友の姿を認めた途端、少年のように目を輝かせる。

 二人は、教会の騎士として一人前になった互いの姿を見て、心を躍らせた。

 

「久しぶり。あれ、手紙は届いてなかった? カムリが里帰りしてるって聞いて、僕も急いで来たんだ」

「お前も星騎士の修行と儀式を終えたのか?」

「うん。これ(・・)がそうだ」

 

 エクスは腰に提げた一振りの剣に、手を置いてみせる。

 カムリは、同じ境遇からか、ただ一瞥したのみで、その剣に秘められた強大な力を感じ取った。

 

「お互い、この先もう長いこと会えないだろ。少なくとも、それをぶら下げてる間は」

 

 そう言いながら、エクスもまた、カムリの腰にある剣を見た。

 

「そうだな。よかったよ、こうしてちゃんと会えて。……なぁ」

「うん?」

「今から食堂に行くところだったんだ。一緒に行かないか?」

 

 しごく真面目な話になりかけたところで、カムリは自分が腹を空かせていたことを思い出した。

 エクスはカムリの言葉で不意を突かれる。しばし固まったのち、「そういえばこういうやつだった」、と笑った。

 

 エクスとカムリが宿舎の食堂にたどり着き、食事を済ませ、その扉から出たところへ、声がかかる。

 それはよく通る大声で、二人には耳なじみのものだった。

 

「ストップ! スト~ップ!!」

「ぐえっ」

「おっ……」

 

 その少女は、二人の前方から両腕をひろげて飛び掛かり、首に一撃を見舞った。

 たった今食事を済ませたばかりの二人が、食べたものを吐き出さなかったのは、彼らが超人集団と呼ばれる“星騎士”の一員であったがゆえのことだろう。

 とはいえ、悶絶はする。

 仰向けに倒れた二人を覗き込み、少女は慌てた様子で声をかけた。

 

「ね、ねぇっ。ふたりとも、まだお昼ご飯食べてないよね? ね?」

「たべた」

「もどしそう」

「な、なんでー!? カムリ、エクスに声かけとくって言ったじゃん!」

「わすれてた」

 

 少女、プラチナは、倒れているカムリの胴に乗り上げ、その顔を殴りつけようと拳を繰り出した。カムリは首の動きだけでそれを躱した。

 

「クソクソクソ!!」

「遅い遅い遅い」

 

 怒涛の連続パンチであったが、それらもすべて躱した。これが星騎士の力である。

 しばしそういったやり取りをしたのち、何事もなかったかのように3人は立ち上がった。

 

「もう。今日は二人を、養護院のみんなで送り出すはずだったのに。今日のお昼にエクスを連れてくるって話だったでしょ」

「そうだったか……すまない」

「多少顔がいいからってごまかされないよ。バカだから忘れてたんだ」

「んんん、言い返せん」

「もう、せっかく準備したのに。夜に延期しないといけなくなったじゃない」

 

 説教のあと気が済んだのか、プラチナは怒り顔を鎮め、いつもの、彼女が親しいものたちに向ける笑顔を見せた。

 窓から差し込む日差しが、少女の白銀の髪を、星のようにきらめかせる。

 

「エクス、おかえり。っていってもこのあと送別会しちゃうんだけど、それでも、おかえり」

「うん。ただいま、プラチナ」

 

 カムリは、ふたりの幼馴染を、目を細めて見つめた。彼にとっては心から微笑むことのできる光景であり、眩しいものでもあった。

 

 

 ペリエ市。

 ここは多くの国内都市の例にもれず、複数の組織によって治安の維持・経済の循環がなされているが、中でも、『星天教会』の力が特に大きい都市であるとされる。

 『鉄の剣聖』ツェグ・ラングレンがいるからだ。この男の存在は犯罪への抑止力として働いており、指導を受けた騎士たちの練度・士気は高く、魔物被害への対応も早い。

 また、ツェグはペリエ市の出身であるためか、市長以下地方自治組織や、警察部隊の在籍者とのつながりもあり、彼の所属する星天教会がこれらと連携するための体制づくりに貢献している。

 以上のことから、ペリエは国内有数の平穏な町として、そこに暮らす人々の数を年々増やしている。

 

 養護院へ向かう3人が、街道を歩き、商店街のあちこちに立ち寄ると、多くの市民が気さくに声をかけてくる。

 

「カムリにエクス! 二人とも星騎士さまになったんだって!? 大きくなったもんだ」

「プラチナちゃん、いつも町を守ってくれてありがとうねぇ。これおまけ」

「ツェグさんは元気か? 今度一緒に酒場にきてくれよ。お前らももう飲める歳だろ?」

 

 ペリエの中でも、とくに『ラングレン養護院』のあるこの南地区は、3人にとっては目をつむっていても走り回れる土地であり、住民達とも顔見知り以上の仲だ。

 時刻は昼過ぎ。出店の商品を眺めるプラチナの斜め後ろ、荷物持ちとなったカムリが袋から落としかけた果物を、エクスがうまくキャッチした。

 そのまま彼は口を開く。

 

「プラチナ。『町を守ってくれてありがとう』って、さっきおばさんが言ってたのは?」

「あー、それね。エクスとカムリが本国に行ってる間に、教会の星法士になったんだ」

「へえ」

「『魔物と戦うほう』の星法士だぞ」

「へえっ!?」

 

 カムリの注釈を聞き、エクスは素っ頓狂な声をあげた。

 

「そんな。危険だよ」

「大丈夫なんだなこれが。みんなわたしの星法見てひっくり返ってたから。もう衝撃デビュー」

 

 プラチナが真面目くさった顔でそう言うが、わけがわからず、エクスは事情を知っているらしいカムリを見た。

 

「100年にひとりの星導力の持ち主で、50年にひとりの星法の腕前らしい。このあたりの魔物はこいつに敵わない。ツェグが言ってたから本当だ」

「プラチナがねえ」

「何さ。そういうわけだから、星法でなら、あんたたちにだって負けないからね」

 

 そう言いながらプラチナは、店主から受け取った紙袋を、なんの特別なそぶりもなく、宙に浮かせた。

 紙袋はふよふよと浮遊し、空いていたエクスの腕へと収まる。

 エクスはその現象に驚いた。成した結果自体は特別なものではないが、杖のたぐいもなく、詠唱もなく、星導力の動きも感じさせずに、それを引き起こしたからだ。

 成長しているのが自分だけではないことに、エクスは、そしてカムリは喜んだ。

 そして、店を通るたび増えていく荷物の山に、顔色を青くしていった。

 

 

 ラングレン養護院。

 ツェグ・ラングレンが設立し、今も支援している福祉施設だ。各々の事情によって保護者のいない子どもたちを、守り、育てるための家である。

 カムリ、エクス、プラチナは、同時期にここで育った少年少女だ。自立した彼らがいま、三人とも星天教会に所属しているのには、敬愛するツェグの影響が少なからずある。

 

 カムリは、送別会の手伝いに加わろうとしたものの、プラチナにそれを断られた。

 エクスは、久しぶりに顔を合わせた院の子どもたちに手を引かれ、市外での話をせがまれていた。カムリも加わろうとしたが、エクスより先に帰ってきていた彼の話はもう飽きられていたため、子どもたちから邪険にされたのだった。

 カムリは養護院の外で、背中を丸めて膝を抱えていた。

 

「兄ちゃん。カムリ兄ちゃん。なにちっちゃくなってんだよ。それでも星騎士かー?」

「アル。星騎士だってな、世の無常を嘆き悲哀に浸るときはあるんだ。人間だもの」

「はー? わけわからんこと言ってないでさ、おれにも剣を教えてくれよ」

 

 カムリは顔を上げ、自分に声をかけてきた少年、アルの様子を見た。

 まだまだ背も低く、身体ができるのはこれからという歳で、強気な顔で木製の摸擬剣をふたつ担いでいる。しかし勇ましいよりも、微笑ましいのほうがどうしても勝ってしまう。そういう時期だ。

 この少年は、養護院の子どもたちの中でも、とくにカムリに懐いていた。その姿は、ツェグに剣の教えをせびる幼い自分と重なる。

 

「でもなぁ。俺はツェグよりずっと弱いぞ。いいの? 弱いやつに教えられて」

「おれはカムリ兄ちゃんがいいんだ」

「ほーう。しかし俺の訓練は厳しいぞ」

 

 カムリはおもむろに立ち上がり、嬉しさからくるニヤつきを、相手を威嚇するタイプの笑顔に切り替えることでごまかした。

 アル少年はそんなカムリに、緊張した様子で姿勢を正す。

 カムリは少年の言葉通り、剣の稽古をつけてやることにした。送別会の時間までたいそう暇である、ということもある。

 また、次にいつ養護院(このいえ)に戻ってこられるのかは、わからない。少年が自分の歳に追いつくまでに、ちゃんとした剣の稽古をつける機会はなさそうだった。

 このなんでもない時間が、アルにとっての何かのきっかけになればと思い、カムリは摸擬剣を手にした。

 

 

「カムリ兄ちゃん。基本が大事なのはわかったけどさー。あれ教えてくれないの、あれ。ツェグが、離れたところの岩を斬っちゃったってやつ」

「あん?」

 

 アルは3時間も摸擬剣を振り続けた。そのうえで、さらに“必殺技”をせがんでくるものだから、カムリは感心していた。

 こんな木剣で、離れたところの岩を斬る。常人には不可能な芸当である。

 

「……あれはな、特別なコツがいるんだ。剣だけじゃなくて、星導力の勉強もしないとムリムリ」

「えー!? 勉強かよー」

「ああ。そらッ!」

 

 不意にカムリは木剣を振った。思わずアルが注目すると、カムリから十数歩は離れた位置の地面が、突如えぐれた。深い斬撃のラインが、そこに刻まれていた。

 

「あ! やるならやるっていってよ!! すっげえ!!」

 

 アルは興奮してカムリに詰め寄る。わざと不意を狙ってやったが、しっかり、動作の一部始終を見たようだ。剣技は記憶に刻まれたはず。カムリには、それがわかった。

 

「それを教えてほしいんだよー。だめか?」

「だめだね。というか、無理だ。からだこわれる。おまえの。」

「こわれるのかー」

 

 カムリはしゃがみこみ、アルに目線を合わせた。

 

「今はゆっくり成長すればいい。俺がお前ぐらいのときは、3時間も剣振り回して平気でなんていられなかったぞ。……絶対、すごい剣士になる」

 

 子ども騙しで言ったつもりはない。カムリの本心だった。彼自身、ツェグに初めて稽古をつけられたとき、記憶に刻まれる剣を見たのだ。それを再現しようと試みたのは、この少年への期待を持っているからだった。

 それが伝わったのか、アルは、少しだけぼうっとしたあと、白い歯を見せた。

 

「へへ……ありがと」

 

 

 それからしばらく経って、日が落ちかけてくる時間になって、カムリたちは養護院の中へと戻った。

 夕飯時。みんなで囲む長机の上を見れば、送別会というものにどういうテンションで臨めばいいかがわかる。

 そこには、プラチナたちが用意した豪勢な食事が並んでいた。養護院では、いや、きっと金持ちの家でも、これは10年に一度くらいのゴージャスだった。

 これは、昼に振る舞われる予定だったものの余りに、さらにメニューを追加したためである。

 

「星に祈りを」

『星に祈りを』

 

 天を仰いで祈りを捧げ、ぜいたくな食事会が始まる。

 カムリは、幼馴染たちと、養護院の仲間たち、世話になった大人たちと、楽しいひとときを過ごした。

 

「カムリ兄ちゃんとエクス兄ちゃんは、“星騎士”は、ずっとこの世界を旅しないといけないんでしょ? ……もう帰ってこないの?」

 

 子どもたちの誰かが言う。プラチナが、その頭を優しくなでた。

 エクスが答える。

 

「『同じ場所に長く居着かない』、っていうのがルールなんだ。それだけ。だから帰ってくるよ。めっちゃ帰ってくる。しょっちゅう帰ってくる」

 

 子どもたちの顔が明るくなる。カムリは、コップで酒を飲むふりをして、口元を隠した。

 さすがに、しょっちゅうは帰ってこない。旅立てば、今後ペリエに立ち寄るのは、数年に一度のことになるはずだ。嘘をついてしまったことになる。

 

「………」

 

 コップを机に置く。カムリの表情は、穏やかだった。

 ――しかし、ここが自分の家であることには変わりない。きっとまた、こうして仲間たちと集まって、笑っている顔を見る。そのために自分は力をつけた。結果として星騎士に任命されてしまったが、この動機は不変だ。ここが、自分の原風景だ。

 カムリは白銀の髪の少女を見た。

 カムリは思う。星騎士として戦っていくことが、回りまわって、プラチナを、みんなを守ることに繋がっている。そう信じてやってみよう。

 

 送別会で、カムリは自分の心のうちを再確認した。

 

 

 寝つきの悪い子どもたちからようやく解放され、カムリは夜の街をひとり、騎士団の宿舎に戻った。

 エクスやプラチナは養護院に泊まるが、カムリは宿舎で旅の準備を進めると言って出てきた。その言い分が本当のことか、それともひとりの時間を作りたかったのかは、当人にもわからない。

 宿舎の廊下をゆっくり歩いていると、カムリは、行く先に知人の姿をみとめた。

 ツェグだ。

 

「ツェグ! ……あッ」

 

 彼は呼びかけに反応したが、カムリは失敬をすぐに察した。

 ツェグは廊下の角で、誰かと話していた。カムリの呼びかけでそこから姿をのぞかせた人物は、気軽に話せる地位の相手ではなかった。

 

「大星官。お話し中とは知らず、失礼しました」

「いいえ。気にすることはない、銀騎士カムリ……いや、今や星騎士か。いやはや、私の方こそ失礼を」

「大星官の元での研鑽があってこそです」

 

 二人に近づいたカムリは、背をまっすぐ伸ばし、礼の姿勢をとった。

 ツェグが話していた相手は、“大星官”バルドー。このペリエ市の星天教会を束ねる立場にある男だ。

 

「……バルドー殿。少し、彼と話しても?」

「ああ、もちろん。私は部屋で待っています。……では」

 

 バルドーは去り際、カムリへ向かって小さく頭を下げた。カムリは当然、それより大仰に頭を下げる。

 ただ、カムリは、バルドーの視線が、自分の腰にある()をかすめたのを感じていた。これは星騎士として働くため、身に着けた習性だった。

 

「カムリ。どうした、こんな時分に」

 

 ツェグの声を聴き、バルドーが見えなくなるまで下げていた頭を戻す。カムリは、自分の心が落ち着くのを感じた。

 

「院のみんなが、送別会をしてくれたんだ」

「ああ! プラチナから聞いていた。すまん、顔も出せなくて」

「いいさ。もう激励はもらったよ」

 

 ふたりは笑い合った。

 

「もう少し話したいが、用があってな。また明日にでも、みんなとの話を聞かせてくれ」

「ああ」

 

 ツェグは、廊下を歩いていった。背中を見送っていると、廊下を曲がるとき、再度カムリと目を合わせた。

 

「おやすみ、カムリ」

 

 幼い頃、養護院でも聞いた声だった。子どもを寝かしつける父とは、このような声なのだろう。

 カムリは、「おやすみ」と返した。

 それが、最後に交わした言葉だった。

 

 

 翌日、ようやく旅の準備を終えるころ、カムリは、大星官バルドーの御前に召集された。

 騎士や部下に任を与えるためのその場には、エクス、プラチナ、ツェグの姿もあった。

 カムリは顔ぶれへの驚きを内心に押し込み、大星官の前に膝をついた。

 

「銀騎士ツェグ・ラングレン。

 星騎士エクス・“レーヴァテイン”。

 星騎士カムリ・“ミスティルテイン”。

 星法士プラチナ。

 あなたたちに、任務を与えます」

 

 視線を下げ、声に耳を傾ける。

 

「南方の地、ある地下迷宮に、邪悪な『魔術師』が潜んでいます。ペリエ市への攻撃を企む彼のものを、浄滅せしめなさい。――この、四名で」

「……!!」

 

 「バカな。」カムリは内心でそう声を上げた。口をついて出そうになったほどだ。

 星騎士が二名。『鉄の剣聖』ツェグ。天性の才を持つプラチナ。

 過剰な戦力だ。本来、ひとつの都市に集ってはいけないほどの。

 

 星天教会の騎士には、三つの等級がある。

 鉄騎士。多くの騎士がこれに該当する。

 銀騎士。上位の騎士である。戦闘力、指揮能力、様々な能力に秀でた者。そして多大な功績を挙げたものが任命される。

 星騎士。最上位であり、特殊な任務を命じられた者たちである。彼らは原則として、ひとつの都市に長く留まることはなく、地方支部ではなく“本国”の指揮下にある。選出の基準は不明だが、総じて人間離れした戦闘能力を持つという。

 

「だ、大星官。よろしいですか」

「ええ」

 

 カムリが口を開く前に、エクスが声をあげた。おそらく、質問事項は一致している。

 

「これほどの戦力をあてるほど、その魔術師は脅威なのですか? 攻撃のたくらみとは? どこからの情報ですか」

「そこにいるツェグ・ラングレンからの情報です。そうですね?」

「はい」

 

 ツェグのもたらした情報。

 この場にいる人間にとって、それは何よりも信頼でき、価値のあるものだった。これで、任務自体の正当性は保証されたと言っていい。

 

「しかし星騎士を二名も、同じ討伐任務に就けるのには、本国はいい顔をしない。ご存知のはず」

「あなた方は、このペリエを離れる。これが私からの最後の任務……いや、願いです」

 

 大星官は神妙な面持ちで口を開いた。声の色は真摯であり、心からのものだと感じさせた。

 

「星騎士とてひとりでは万能ではない。しかし、あなたたちならば。この今しか集うことのなかった、あなたたちならば」

 

 それほどに、かの『魔術師』は、悪逆の存在である。都市を覆うほどに巨大な闇である。バルドーの態度からは、それがうかがえた。

 

「――この町を、悪しき者の手から守ってください。どうか、お願いします」

「しかし……」

「承知しました」

 

 守る。その言葉で、カムリは任務を了承した。自分の信念と一致していたからだ。

 エクスと目が合う。彼は、しばし困惑した様子であったが、カムリの目を見て矛をおさめた。

 

「では。星神(ホシガミ)様の名のもとに、全霊で任を果たしなさい」

 

 四人は、最大級の任務に挑む。

 

 

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