【完結】ロッシュリミット/TS転生してモブを主人公と勘違いする話。 作:潮井イタチ
ここまで全部、夢だったらしい。
僕は目を覚ました。
見慣れない天井だ。いいや、見慣れた天井だ。
机の上には、包帯も薬も置かれていない。部屋の収納には野暮ったい男物の服が吊られている。
床にゲーム機があって、その隣に、例のシリーズのパッケージが転がっていた。
……夢だ。
そうだ、夢だ。
あんなのは夢に決まってる。
酷い悪夢だった、本当に。
早く起きて一日を始めよう。
無味乾燥な人生だとばかり思っていたけれど、今なら何でも出来る気がする。
思い返せる限りの悩み、後悔、葛藤、将来の不安。
どれも取るに足らない瑣末事に思えて仕方がない。
だからさっさと布団から出よう。
カーテンを開けて、顔を洗って、出かける用意をしよう。
全部夢だ。夢だったんだ。
僕は何も悪いことなんてしていなかったんだ。
もう何もかも忘れてしまっても、大丈夫なんだ。
だから、布団から出ても、いいんだ。
鏡に映る僕の顔は、どこにでもいる、ありふれた、だけど何と戦うこともない、世界の命運なんて背負うはずのない、ヒーローやヒロインなんて見合うはずのない、普通の、普通の、普通の、普通の青年の顔であるはずなのだから。
だから。
起きても。
大丈夫なんだ――
――そして、枕元でアラームが鳴った。
「……ぁ……」
鈴を揺らすような声が、喉から響く。
寝ぼけ眼を擦る腕が痛い。
包帯の下の傷がずきずき痛んで、頭が一気に覚醒しそう。
寝起きだってのに動悸が酷かった。不安感もだ。自律神経の切り替えが上手くいっていないのだ。
それでも習慣ってのは強いもので、フラつきながらも体が勝手に立ち上がる。
顔を洗うために洗面台の前に立って、鏡を覗く。
――ごく当たり前に、ピンク髪の美少女が、光の無い眼で立っていた。
朝っぱらからもう何もかも嫌になった。
衝動的に机の上の、プラスチックとアルミの包装シートを手に取る。
中から薬を出そうとして、もう一個も残ってないことに気がついた。
そこで、昨日、今月の分が全部無くなったことを思い出す。まだ十二日なのに。
……お医者さんに言ったら追加でくれるかな。くれないだろうな。
のろのろと顔を洗って、歯を磨いて……朝の支度をしていく。
気合を入れなければならない。今日は、高校の入学式なのだから。
ゲームの『本編』が始まるのは来年からだが……主人公自体は今日、僕と一緒に入学してくるはずだ。
ただ、主人公の名前はプレイヤーが入力する方式なので、誰が主人公かは特定できない。
メディアミックスでの名前にしてもアニメとコミカライズで違ったし、事前に調べた限りではそのどちらの名前も入学者の中にいなかった。
公式ビジュアルもフルフェイスのマスクを着けた戦闘時のものしかないし、学校舞台の
尺を詰めるために日常パートがほぼカットされたアニメでもそれは同様。素顔は鼻から下しか映っていない。
唯一コミカライズでは普通に素顔が描かれていたが、黒髪黒目(いや、黒とも限らない。白黒だから)のどこにでもいる少年、って感じなので、特定は無理だ。加えて、この世界がコミカライズ版の描写を採用しているとも限らない。
主人公の周りのキャラクターに関しても、基本的には本編開始である二年生になってから関わる人物ばかり。
よって周囲の人間関係から逆算して当たっていくこともできないし、経歴・出身地・家族構成なんかも「高校への潜入にあたり、身元は一般的な男子生徒のそれに偽装されている」みたいな一文で済まされていたはずなので、そこで絞り込むこともできない。
唯一確定しているのは、男子生徒なことぐらいである。
そんな具合で今日という日まで散々考えたが、今年の時点で主人公を発見するのはまず無理だ。
どんよりと瞳を濁らせつつ、僕は着替えを終える。
フィクションにありがちな、デザインに凝った派手な制服。一応、普通の学校の制服であってもギリあり得るかあり得ないかぐらいの絶妙なラインではある。
……似合っては、いると思う。美少女だから。
僕は伸びっぱなしの前髪をヘアピンで留め、スカートを折って短くし、鏡の前で☆マークが舞ってそうな感じの可愛いポーズをとり、言い放つ。
「――わたし、
無理だわこれ。僕は死ぬほど頑張れば喋れる(会話ができるとは言っていない)タイプのコミュ障だが、もう昨日も一昨日も一昨昨日もその前も、あーていうか最後の休みいつだっけ。
とにかく、任務任務任務でろくな精神力が残ってないってのに、ここからさらに活発系女子高生ロールは流石に無理だ。本気の本気でメンタルがやられてしまう。
大体今の今まで女子らしいことなんてろくにしてきてないのだ。
例の事件があって『軍』に入ったのは性差も無いような小学生の頃だし、それ以降は巻き込まないために家族とも離れてほとんど一人で暮らしてたから、女の子の常識なんて欠片も無い。
再現できるのは所詮、元男の偏った知識とキモい偏見で構成されたハリボテの女子像だ。無理に溶け込もうとしても、秒でハブにされて陰湿にイジメられる確信がある。
そうでなくても僕美少女だから絶対
どうせ主人公が出てくるの来年からなんだし、今年はもういいや中学と一緒で。
僕はヘアピンを外して前髪を下ろす。スカートも元に戻す。学校じゃずっと寝てよう。
いつも通りだ。何も変わらない。
薄っぺらい交友関係なんて、広げても無意味で煩わしくて邪魔なだけだ。
「…………」
……それでも少しは、何かが変わるかなと期待する僕も居た。
結局、特別なことは、何も無かった。
――教室。
入学から半月ほど経ったけれど、まだクラスには初々しい雰囲気が残っていた。
それでもある程度はグループが出来てきて、休み時間にはリラックスした雰囲気で雑談の声が聞こえてくる。
そんな中、僕はただ一人、机に向かっていた。
クラスメイトとは未だに一度に十秒以上会話していない。別にいい。精神年齢二回り違うんだからどうせ会話なんて合うわけないし、無理に話合わせてもどっちも辛いだけだし、だいたい僕は元男なんだから女子の話題についていけないし、男女間で友情なんて成立しないし、そもそも友人ってのは数じゃなくて質だし、任務あって忙しいし――あああああなんで急に今世で昔書いた「二周目の学校生活で今度こそやりたいことリスト!」のこと思い出すんだやめろやめろやめろ。友達なんて要らない可愛い彼女なんて欲しくない陽キャになんて憧れてない文化祭でバンドやりたくないキラキラした青春に夢なんか見てないもうやり直したいなんて思ってない!
「ぜぇ、はぁ、ふぅ……っ!」
「(ヤバ……)」「(大丈夫かなアレ……)」「(先生呼ぶ……?)」
息も絶え絶えでルーズリーフに書き取っているのは、授業の予習復習……ではなく。
「(思い出せ……確かプロローグの描写が……一章時点のやり取りから察するに……なんで用語集ちゃんと読まなかった……ネットでの考察……やっぱり公式ビジュアルの背格好から……いや明らかに各媒体で頭身が違う……)」
確かに、主人公の特定は無理だと言った。
が……やっぱり、諦めきれない。
だって、この学校の、この学年の、この男子生徒数百名の中に――少し探せばすぐそこに、彼は居るかもしれないのだ。
無駄だと分かっていても、
何かしていなければ落ち着かない。
何もしていない事実が、堪えきれない。
こんな日々があと一年も続くことに……耐えられない。
僕が今日一日を生き延びる自信すら、無いのに。
がりがりと主人公のキャラデザをシャーペンで描き記す。
これであってたか? あってるはずだ。記憶があやふやなのでここまででもう何パターン描いたか覚えてないが、思い出せる限りではこれが一番近い。
僕の記憶力なんてそう大したものじゃない。
もろもろの身体能力は強化されているが、知能面に関する作用は僅かなものだ。
いや、やろうと思えばたぶん強化は出来たのだろう。けど、あいにく僕は
一応、現時点では誰も知らないあるステージでドロップする想起神経刺激剤なんかも飲んだりしてるのだが、それでも忘れるものは忘れるし、元から曖昧にしか認識してなかったものは、曖昧にしか思い出せない。
それに、ゲームだと想起神経刺激剤はただの忘却状態回復アイテムだったが、現実では副作用もあって、常用すると他の記憶が抜け落ちる。
一応、ストーリーでは若年性認知症の少年――
「あー、しろあ……じゃない、
「うぇっ、あっ、は、はい」
クラスメイトに言われて、慌ててルーズリーフをバインダーに挟んで閉じる。
変に挟んだせいで紙にちょっとシワが出来たが、どうせこんな描き殴りに意味なんて無い。
主人公がこの
もう教室には誰も残っていない。
僕は廊下に出て、自分のロッカーからジャージを取り出し……
「あ」
……ジャージ、忘れた。
体操着はあるが、半袖だ。
これじゃ腕が見える。
正確には、腕に巻いてる包帯が見える。
そうなると、リストカットしてると誤解されて、生徒指導室に呼ばれる。
いや、してるんだけど。
「あー……」
どうしよう。
見学だと単位つかない。
『軍』の任務の都合上、高校はギリギリまで休むつもりだから、無駄なところで単位落としたくないのに。
だいたいこの高校だって、本当は僕を中卒で働かせたい『軍』を言いくるめて入学したのだ。
単位落としたからって、中学みたいに秘密組織パワーでどうにかしてはもらえない。
あぁ。あとでスケジュール調整し直さなきゃだろうか。睡眠時間削って。
面倒臭い。だるい。眠い。鬱。
悪あがきに、僕ら『軍』や『企業』のエージェント達の
しんどい。なんだってジャージ一つ忘れただけでこんな気持ちにならなきゃいけないんだろう。
溜まっていた疲れが急に肩へとのしかかってきて、膝から崩れ落ちそうだった。
こんなしょうもないことで
いや、日常のしょうもない失敗なのが逆に良くないんだ。
これが命懸けの任務中だったら、逆に
だけれど、残念なことに今は余裕がある。
「ぅ、ふぐ、うぅっ……」
廊下の壁にもたれかかって、へたり込む。
床のリノリウムが膝に触れて冷たい。
もうこのまま動かずにいたい。
何分ぐらいそうしていたか。
自分では長く感じていただけで、案外、数十秒ぐらいのことだったかも。
「――、――――。――」
「――――」
いつの間にか、そばに誰かが立っていて、僕に話しかけていることに気がついた。
いや……何か、無意識のままに返事した気もする。変なことは、言っていないと思うけど。
顔を見る気力が無い。
だが、うつむいた視界にスラックスの裾が入ってくる。スカートじゃない。男子生徒だ。
そいつは手を差し伸べてきて、というか半ば強引に僕の腕を取り、立ち上がらせようとした。
うぅ……セクハラだ……いくら僕が美少女とはいえ……。
「ほら。き……
「――あ」
その拍子に僕の袖がめくれて、白い包帯が晒された。
そいつの体が一瞬引いて、気まずそうに顔を逸らすのが分かった。
「……あー、その。……ええい」
言って、そいつは肩に下げていた袋からジャージを取り出して、僕に無理やり、押し付けた。
入学したばかりで、汗も染み込んでない新品の匂い。それと一緒に、柔軟剤の香りがする。
「え?」
「だから……えーと、そう、アレ。俺、今日元々体育サボるつもりだったから」
じゃ。と。
そう言ってそいつはどこぞへと去っていく。
……あ、そうか。貸してくれたのか。
咄嗟に呼び止めようと思いながら礼を言おうと思って、僕は彼の背中に声を投げた。
「ありゃがっ、」
「何?」
噛んだ。
「あ……洗って、返します」
「あ、はい。どうも」
なんか敬語になった。振り返った彼が困惑した顔で会釈する。
そこで初めて顔を見た。黒髪黒目。中肉中背。反対の手にマジックでなんかメモってる。顔色が悪い。顔は悪くない。顔色の悪さに印象持ってかれる程度のモブ顔だけど。
没個性ってほどじゃないが、平凡な男子だ。
……ていうか、誰だっけ?
クラスメイトじゃない気がする。隣の組の子かな。体育の授業、クラス合同で体力テストだったし。
ともあれ、せっかく貸してもらったのに、遅れちゃまずい。
僕はバインダーを適当にロッカーへ突っ込んで、扉を無理矢理閉める。
その拍子に何か落ちたような気もするけど、構ってられない。あと一、二分でチャイムが鳴る。どうせ大事なものは入ってないから別にいい。
走り去ろうとした僕に、何か小さく、呟くような問いかけが聞こえた。
「――こういうの、今でも好きなのか?」
「え?」
うまく聞き取れなかった。
確認しようと思って、振り返ろうとし――そこでチャイムが鳴った。
僕は慌てて、体育館の方に駆け出す。
どうせジャージ返しにいくんだし、あとでもいい。名前も聞いていないけれど、名字ならジャージの胸のところに書いてある。
「もぶ……
やっぱり、知らない名前だった。
僕こと
敵対戦力の故意な見逃し。
複数の他組織との密談・内通。
独断での情報・物資・超常性の引き渡し。
他の人員だったら粛清されてないのがあり得ないレベルの利敵行為。僕だって、相手の立場ならコイツさっさと消した方がいいんじゃねえのと思う。
一応言っておくと、別に『軍』は部下を平気で処刑する悪の組織じゃない。
むしろ逆だ。根本的には平和に生きる人々を守るための、秩序側の組織。
そしてだからこそ――平和を乱す裏切り者には冷酷だ。
本来ならば。
これだけやっててまだ消されてないのは、司令官による執り成しや酌量等もあるが……。
一番大きいのは、僕がそれなりに強力で、替えの利かない戦力であるからだ。自分でも言うのも何だが。
基本的に『軍』に僕のような能力者は少ない。
まずほとんどの能力者は自然発生だ。人工的に生み出すことは出来ず、一般人が死の間際などで突如覚醒することが多い。
一般人であるから能力の制御法を学ぶことも出来ず、大抵が
そんな具合で使い物になる能力者ってのはほとんどいないのだが……僕の場合は、原作から制御法を学んでいたから、上手い具合に調整することができた。効果範囲を自己対象に限定してしまったのは無限に後悔してるけど。
だけど、替えが利かないってことは、捨て札にならないってことじゃない。
トランプで勝つのに、エースやジョーカーは必ずしも必要ではない。
忠誠と有用性を示せなければ、いつかは粛清される。
仮に粛清されなかったとしても、階級は上がらない。万能薬の使用許可も降りない。
だから――
「撃て、とにかく撃て! あのバケモノを近づけさせるな!」
「見た目に惑わされるな――ヤツは超常性だ! 人間じゃない!」
「『軍』め……壊し屋どもめ! この研究の価値が何故分からない!? アレは『企業』に必要なんだ、貴様らの短絡的な考えで終了していいものじゃない!」
――僕は銃雨の中、『企業』の人間達と戦っていた。
夜。路地裏。
周囲には『企業』の社員らによって、空間迷彩と、周辺を遮音するドローンが展開されている。
民間人に暗闘を知られる恐れは無い。軍事に寄りがちな『軍』には無い、科学に優れた『企業』特有の技術だ。
目的は、この路地の奥に隠された研究所。
そこで使用されている、危険なアイテム……限定的だが物理法則すら改変できる超常物品の破壊だった。
「ッ……」
大口径の銃弾が、むき出しになった僕の肌に突き刺さる。
しかし、大したダメージじゃない。ろくな防御貫通も乗っていない物理属性のみの銃弾じゃ、戦闘態勢に入った僕の防御力を貫くことは不可能だ。『企業』はオカルトを毛嫌いしているから、エンチャント系の技術が発展していないのである。
こんな程度のかすり傷じゃ、
「再現率30%――カッターナイフ具現」
僕は刃引きしたカッターナイフを虚空に具現化し、社員たちに向けて射出する。
手加減はしている。……
「…………」
失敗したくせに……。
無意義な自己満足で人死にを避けた結果、それ以上の死人を出すわけだ……。
心が削れていく。
だけど、止まることはできない。
先日の『企業』との取引で失った信頼を取り戻すためにも、この任務を拒否するわけにはいかなかった。
カッターナイフが社員たちに衝突し――
「――っな」
ほとんど効いてない。
勢い良く飛翔した刃は、彼らの身体に命中した瞬間、勢いを失って地面に落ちる。
衝撃が吸収されている。いや、それだけじゃない。刃引きしたとはいえカッターナイフが当たったのに、装備にほとんど切り傷がついていない。
物理属性耐性――あるいは、武装属性耐性か。遠隔攻撃のダメージ軽減という可能性もある。
いずれにせよ、これじゃカッターナイフによる攻撃は通用しない。
だが、僕が再現率15%以上で具現化できるのは刃物だけだ。
秘匿された高度科学技術で作られた
だが、それには対象の深い理解と、物質や形状に対する適性が必要だ。
火炎放射器、電撃砲、光学銃。
これらを使ったエネルギー属性なら物理耐性は機能しないが、刃物への適性しか持たない僕に具現化することは不可能だった。
「くっ」
長剣サイズのカッターナイフを具現化し、懐に踏み込んで斬りつける。
「がッ――!」
それでようやくダメージが通った。
やはり、完全に無効というわけじゃない。少しずつならダメージは通る。無力化もできる。
時間はかかるけれど、持久戦ならこの数でも僕の能力と防御力で競り勝てる。
だが……。
「マズい……早く、早く……!」
「時間は!? あとどれだけ残ってる!?」
社員たちが焦っている。
これは、どっちだ?
このまま時間を稼いで得られるのは、相手の不利か、それとも、僕含めた全員の危機か。
「ダメージバレット――
悩んだ末、短期決戦に切り替えた。
紅色の斬撃波が放たれ、包帯が弾け飛び、傷一つ無い肌が覗く。
社員の一人が持っていた銃器が斬り飛ばされ、装備が裂かれて血が散った。
このダメージは防御力や耐性じゃ軽減できない仕様だ。純粋なHPで耐えるしかない。
とはいえ威力は調整してある。そしてクリティカルや乱数によるダメージのブレも発生しないので、実のところ、こっちの方がカッターナイフよりもむしろ手加減がしやすい。
ただその代わり、弾数に限りがある。
相手の数と包帯の数はほぼ同数。
使い切ってしまえば、彼らが警戒している何らかの脅威に対応できない可能性があるが……仕方がない。
間に合わなかった場合はカッターナイフのみか、
ピストルの形にした指先から斬撃波を連射する。だが、無駄弾は撃たない。一発ごとに一人、確実に数を減らしていく。
最後の包帯を使い切った。
まだ一人、残っている。カッターナイフ……いや、一人相手なら絞め技で対応した方がいい。
戦いの中で瓦礫になったアスファルトを踏みしめ、苦し紛れに放たれる弾丸を掻い潜って、右手で最後の一人を掴んだ。
瓦礫まみれの地面に叩きつけるわけにはいかない。壁に押し付け、ギリギリと締め上げる。
「ぐっ、ぎっ……!」
僕の腕を引き剥がせない彼の腕。無意味にもがく足。
はたから見れば、大の男が小柄な少女に片手一本で抑え込まれて抜け出せないという、異様な光景だ。それもそうだろう。僕は
「ま、待て……待って、くれ……」
「…………」
「アレは……アレが、無ければ、開発、環、境が……むす、この、治療や、く……」
「…………っ」
――『軍』は、決して悪の組織ではない。
だが同様に――『企業』も、決して悪の組織ではない。
超常的脅威の危険性を重く見る『軍』。
超常的脅威の有用性を重く見る『企業』。
前世で見た設定集によれば、元々は一つの組織だったらしい。
それは方針の違いであって、どちらが一元的な善であり悪であるのか、決めることはできない。
この世界では、最後には『軍』も『企業』も、様々な組織が主人公の働きで一纏まりとなって、
……だから、そんな……そんな人々が……悪だけであるはずが……ない。ないのだ。
知っている。
それは知っている。
そんなことは知っている。
知っている、けれど。
僕にだって、償わなければいけない人が――
「――があああっ!」
「っあッ!?」
振り解かれた。
言葉に気を取られた? いや、違う。相手が上手だった。無為にもがいているだけだと思っていたが、見れば、その足で僕が足場にしていた瓦礫を蹴って、バランスを崩させたのがわかった。
懐から取り出されようとしている拳銃。
マズい。あの程度でダメージを受けはしないが、この状況。クリティカルの可能性がある。
そうなれば、低確率でスタンを取られる。その後の乱数が下振れすれば、あるいはハメ殺しにされかねない。
僕は全力で彼の射撃を妨害しようとして、しかし。
「――――」
拳銃を引き抜いた瞬間、何か、お守りのようなものが、懐から一緒に零れ落ちた。
男の目が一瞬、そちらに向かう。
気が逸れた。僕は拳銃を弾き飛ばし、今度こそカッターナイフを突きつける。
尻もちをついた男は歯を食い縛ってこちらを見て、しかし、諦めたように地面へ……いや、そこに落ちたお守りへ目をやった。
僕は構わずに、彼の意識を刈り取ろうとして、
「……
その言葉に、腕を止めた。
「まさか――
「ッ!?」
俯いていた男が顔を上げる。
「十三歳……いや、現時点だと十二歳? 行動障害型の若年性認知症で……余命はあと二年無いはず」
「バカな、何故知って――」
「そうか、死んだ父親……『企業』の社員に……」
僕はカッターナイフを投げ捨て、膝をついて倒れた彼――
「治療薬があります」
「何だって……?」
「町外れの廃病院――その地下に、『結社』がかつて作っていた想起神経刺激薬が。施設は放棄されたんですが研究自体は完成していて……危険ではあるんですが、機材もまだ動いていて、治療薬が手に入ります。だから、その……」
……言葉が浮かばない。
もっとよく考えれば、ずっと円満な解決法がある気がする。こんなやり方が模範解答なわけがない。どう考えたって中途半端だ。
だけど……物語の登場人物でも何でもない僕には……これ以上のことはできなかった。
「……お……お願いします、どうか、投降してください……。
せめて――せめて真摯に訴えるために、両手を地面につけて、
「……こ、これ以上、『軍』の評価を落とすわけにはいかないんです……ぼ、僕にも、助けなきゃ、いけない人が……」
「…………」
しばらく、無言の時間が流れて……。
地面を見ていた僕の視界の端に、バサリ、と、『企業』製の防具が落ちた。
「――わかった。投降する」
「!」
顔を上げる。彼は既に、無防備な状態で両手を上げていた。
「だが……私以外にも、隊員の中に同じような事情の者がいる。どうか、そいつらの家族も助けてやってくれないか……」
「っ、はい……! 約束します……!」
おかしな話ではあるけれど――やっと、救われたような気持ちになった。
これで良かったとは思わない。思えない。
でも、僕はやったのだ。
本来なら『本編』では既に死んでいたはずの人。主人公にも助けることが出来なかった人物。
そんな命を拾うことができた手応え。だけどそれ以上に、主人公の真似とか、
「なるほど、『企業』を裏切るか。死ね」
――瞬間、横合いから飛来した何かが、
「――え?」
一八〇センチ近い成人男性の体が、軽々と、人形のように宙を舞う。
全然、間に合わない。
どしゃり。
砂袋を地面に落とすような音がして、アスファルトに彼の体が叩きつけられた。
「……あ、あっ……」
「クズめ。わざわざ能率を上げてやったというのに、それに報いることも出来んとは。何のために私が家族愛などと下らんモノしか誇れない貴様らを取り立ててやったと思っている?」
白衣。白衣の男だった。
コツ、コツと、足音を立ててこちらに歩んでくる。
おそらくは
「ふん、しかしなるほどな。研究成果で家族を治療できるように
「ぅ、う、うぅあああああアアアアアッ!!!」
無数のカッターナイフを具現化しながら、僕は男に飛びかかる。
まだだ。まだ
「お・ま・えが死ぃ、ねえええええッ!!!」
こんな相手に手加減なんかしてやらない。
その全身をナイフで串刺しにして、蜂の巣に、
「
男の手の中で浮遊する、幾何学的なラインとリングを纏った、黒い箱――
直後、虚空から、一メートル近い巨大な棒が現れて、僕のカッターナイフが静止した。
「な……?!」
制御を奪われた? いや、違う。男が自身の
これは――
「
飛来するそれ。
SとNの文字が刻まれた棒磁石が、僕の胴体を鐘のように突き上げた。
「お、げ……!」
苦鳴と共に血反吐を吐く。
凄まじいスピード。
空中に弾き飛ばされる僕。だが、どうにか体勢を立て直して、具現化した巨大カッターナイフを足場に空中で踏ん張りをかける。
「……硬い。今のでブチ抜くつもりだったが……なるほど、能力者か」
そして僕は思い出す。あのクエストにおける黒幕、磁石の
「デ……
「知られているか。前線にはそう出ていないつもりだったがな」
マズい――あいつは防御力こそ低いが、武装属性の攻撃を全て無効化する。
思わず自分の腕を見るが、包帯は全て使い切っている。斬撃波は撃てない。
今受けた一撃のおかげで補充は出来たけれど、流石にこれだけじゃ決め手にならない。
だが、スタンだ。
このゲームはバランスがまあまあ酷いので、スタンさえ取れれば大体どうにかなる。
かなり難しいが、スタンを取った状態でこれを当てて、昏倒状態を発生させるしか……。
……いや、待て。ゲームの時には武装属性は完全無効化だったけれど、現実になったこの世界なら、あるいは。
「……再現率100%! カッターナイフ具現――オーステナイト系ステンレス!」
大剣サイズのカッターナイフを両手に携え、僕は足場のカッターを蹴り、白衣の男――
ヤツから飛んできたいくつもの棒磁石が身体を掠めるが、僕の持つカッターナイフには反応しない。弾き飛ばしてもくっつくことさえ無い。僕は一直線に突き進む。
いける。オーステナイト系のステンレス鋼は、
ゲーム内じゃ剣も銃も、金属素材を使った武装属性攻撃は全て無効化されていたけれど、これなら――!
「ローレンツ力も知らんのか? ゴミめ」
景色が吹き飛ぶ。
突如として手に持っていた巨大カッターナイフがもぎ取られ、無防備になった僕に、頭上から数メートル近いサイズの棒磁石が叩きつけられた。
地面に叩きつけられる身体。メキメキと音を立てて、いくつかの骨が折れる。
「いぎっ、がっ、ぁ……!」
「私が具現化した磁石は磁力を自在に調整できる。フレミングの左手なぞ赤子でも知ってる常識だろうが。例え磁性を持たずとも、導体である限りは――ああ、いい。蛮人に説明するだけ時間の無駄だ」
しくじった――ゲームの描写の方が正しかった。
身体を押し付けられる中、どうにか、僕は右手を相手の方に向ける。
「ダメージ、バレット……!」
そして、受けたダメージを紅色の衝撃波に変えて射出するが、しかし。
黒はそのままこちらに襲いかかり、僕の身体に纏わりつき、拘束する。
なんとかしてもがくが、そもそもが砂だ。蟻地獄に呑まれたみたいに意味が無い。
「ご、ぎゅ……っ!」
また、腹部に衝突する棒磁石。
抵抗できない。がん、がん、がん、と、それこそまるで鐘みたいに、何度も何度も底面が僕の身体を殴打する。
視界が揺れる。霞む。
僕本体より耐久力の低い
能力を使ってダメージを排出しようにも、断続する衝撃が僕の意識を途切れさせる。能力を使う隙が無い。
「埒が明かんな――なら、これで死ね」
ずらり。
そんな擬音めく動きと共に並ぶ、レールのような磁石の群れ。
渦巻き逆巻く磁力線の形を描いていく、真っ黒な砂鉄のライン。
レール……ローレンツ力……そうか、レールガン……あいつの必殺技だ……効果は確か……ああ、いや、駄目だ、どう考えたって耐えられない……。
ぐらぐらと揺れる景色。
鈍麻する思考に反して、意識は張り詰める。
まだ視覚は機能しているはずなのに、前が見えない。
だが、音は聞こえる。
曰く、死の間際でも、聴覚だけは正常に機能にすることが多いのだと言う。
これ、どこで聞いた豆知識だったかな……。ああ、そうだ、前世で死ぬ直前だ……。
だから、皆さん、言葉をかけてあげてくださいとかなんとか、医者が言ってて……。
皆さん――そう、そうだ。
前世では、僕は、案外、知り合いの多い方だった。
今世ほどじゃないが、人付き合いは苦手で……だけどそれでも、友達付き合いは頑張っていた。
結構、無理をしていた。
身の丈に合わないぐらい友達を作って、それを維持しようと、必死になってた覚えがある。
そんなだから、割と相手にとって都合の良い人間になってた気がする。
当時はそんなこと考えなかったけれど。
だからまあ、辛いことの方が正直多かったけれど……それでも、楽しい記憶は、あった。
……あった気が、した。
病室にみんなが集まってきて、言葉をかけてくださいとか言って……それで、なんて言われたんだっけ。
ああ、うん。覚えてないような振りをしたけれど、やっぱり無理だ。しっかりはっきり思い出せる。
誰も、僕のために言葉なんて投げなかった。
正直ダルそうだったもんな、全員。
別に僕、誰とも特別に仲良いわけじゃなかったし。
もっともらしい言葉は全部、隣にいる誰かの顔色を伺いながら言われていた。
何が「すぐに良くなる」だ。今日中には死ぬって言われたの聞こえたよ。「また遊びに行こう」ってなんだよ。お前、僕が来るといつも嫌そうにしてただろ。「何度でもお見舞いに来るから」って言ったヤツ、僕が死ぬって言われてホッとしてたじゃん。
ああ、でも、まあ、そこまで悪し様に言うもんでもないか。
みんな多少は、雰囲気に酔ってるところもあったんだろうしね。クソだ。
……本当に、嫌だった。
嘘をつかれたのが、じゃない。
僕が本当のものを何も築けなかったのが、だ。
楽しい記憶もあったのに。
あった気がしたのに。
全部が全部、最後にゴミだと気付かされた気がした。
誰か一人ぐらい、僕のために何かを言ってほしかった。
僕を想ってくれるだれかがほしかった。
本物のなにかが、ほしかった。
矛盾しているけれど。
物語に出てくるような、あり得ないような、偽物みたいな、本物が。
「……ね……い……」
だから、こそ。
「……死ね、ない……」
だからこそ。
「死ねない……! 死ねない、死ねない、死ねない死ねない死ねない死ねない死ねないッ――死にたくない!!」
もがく腕が、地面を圧し割る。
嫌だ。
死にたくない。
ちゃんとやりたい。
その気持ちを嘘にしたくない。
こんなところで終わりたくない。
誰かにとってのなにかでありたい。
本物になりたい。
能力によって、僕の、
背中から翼のように伸びて、血のように滴る、毒々しいショッキングピンクの輝き。それが纏わりつく砂鉄をにわかに崩壊させて、少しずつ拘束を解いていく。
ヤツの必殺技はもう放たれる直前だ。間に合うか。間に合わなくても間に合わせるしかない。
全力を賭けて拘束から逃れようとした――
「――――」
その時だった。
誰かが、いた。
路地の先から、静かに――足音も立てずに歩んでくる、男。
黒い。夜の闇に溶けるような姿だ。真っ黒なコートに、真っ黒なフルフェイスのヘルメット。
加えて、何かの合金できていると思しきプロテクターが、それらを意味があるのかないのか分からない配置で鎧っている。
手に持っているのは、空色に淡く光る何か。柄の部分が輝きを反射させて、金属光沢を放つ。
剣だ。ぼんやりと輝く、光の剣。
「な……」
――あり、得ない。
彼。彼が――彼が『登場する』のは、来年のはずだ。
この段階で、この時系列時点で、彼が登場人物でも、知り合いでも、ヒロインでも何でもない僕を助けに現れるなんてそんなこと、あるはずが、無い。
「何だ、貴様……『軍』の援軍か? 違うのならそこで止まれ。邪魔をするな――殺すぞ」
まるでありきたりなチンピラのような恫喝。だけど、そこに込められた殺意は本物だ。そんなのは誰にだって伝わる。
これを浴びてまだ来れるのなら、それは、本物の殺意を向けられて……それでもなお、生き延びてきたような、生き延びてこれたような、本物の戦士のみのはずで――
「――――」
――そして、一歩。
彼は踏み出し……駆け出した。
「……警告はしたぞ、蛮人」
ヴン、と音を立てて巨大な棒磁石が具現化し、磁力線に沿って周囲の砂鉄が浮かび上がる。
彼が走り寄ってくる。様子見のつもりなのか、そう速くない。
いや――剣を振りかぶった。勢いよく踏み込もうとしている。斬りかかるのか。この距離から。
「駄、目……磁力ッ……!」
だけど、マズい。あの光の剣だって、武装属性――金属部品が使われていることは間違いない。
「馬鹿め。私には玩具に等しい」
両者の間に働く引力。
彼の手から光の剣がすっぽ抜けて、男へと飛んでいく。
飛んでくる剣を、
「フン。近接武器などで、この私をどうにかできるとでも――
――
僕のカッターナイフのように、
よく見えなかったが、こちらに取っては運悪く柄の部分に当たったのか、
しかし、奇襲成功。スタン状態だ。
「バカな、何故効か――」
そのまま彼が近寄って、男のみぞおちに拳を突き入れる。
漏れる苦鳴。素手攻撃の威力なんてゲームでもたかが知れていたが、ボスの中でも防御力の低い
そのまま彼が白衣の男を殴る、殴る、殴る。
実戦慣れした動きではあるが、思ったより荒っぽい。喧嘩殺法だ。
何度か彼に向けて苦し紛れの磁力が働くが、それも何故か効かない。金属製と思しきプロテクターを着けているはずなのに。
僕の頭の中に、心当たりのあるいくつかの無効化スキルが思い浮かんだ。
そのまま彼が男を殴り飛ばし、距離を取った。
そして叫ぶ。
こちらに向かって。
「――今だッ!」
「えっ。あっ、はい!」
言われて、立ち上がる。
連続のスタン状態により、僕を拘束していた砂鉄の効果時間は既に切れていた。
僕は右手をピストルのように構え――
「ダメージバレット――
――紅色の衝撃波を、無防備な男に向けてぶちかました。
白衣が吹っ飛び、路地の塀に叩きつけられる。
その衝撃によって、手から
僕に蓄積されていた打撃のダメージは排出され、腹部の傷がいくらか消え去る。
昏倒状態に入った
この拘束具は再現率が低いので武器としては使えないけれど、人一人拘束するだけの強度は十分にある。
「そうだ、
――いや、大丈夫だ。見れば、倒れていた彼に、いつの間にか応急処置が施されていた。
このまま放っておけばまずいだろうが、今すぐにどうこうってことは無いだろう。……通常の治療であることから考えるに、回復スキルは持ってないらしい。まあ、彼はアタッカーの方が効率的だったからゲームじゃ僕も持たせなかったけど。
まだ腹部はズキズキと痛んでいるけれど、そんなのはもう気にならない。
ああ。やっと、だ。やっと。やっと来てくれた。
僕は彼に――主人公に向けて、振り返る。
今まで、この世界に生まれてから、一度もしたことがないような、本当に晴れやかな笑顔を浮かべて。
「あのっ、本当にありがとうございます! どうか、お礼を――あれ」
居ない。
え。
え?
なんで?
「なんでぇ……?」
僕は困惑しながら、ただ呆然と路地裏に立ち尽くしていた。
バタバタとした足音が、路地裏を出て、街の中を駆けていく。
ヘルメットの中からくぐもって響く、ぜえぜえという息の音。
取り付けが甘く、ガシャガシャ揺れるプロテクター。
杖代わりにされて、地面に擦られる光の剣。
どれもが、
「ハァ、ハァ、ハァ……! ヤバい、ヤバい……ヤバ過ぎた……ッ! いやッ、というか――」
――やっちまった。
そう思いながら、
夜中だが、周囲には通行人がちらほら見える。
そうだ。それもよくなかった。
徹夜で作っていたコスがついに完成したことでテンションがアガってしまったのが第一の原因であるが、それに加えてこの街がこのような街であるから――
「(でも、もうやめよう……ッ! いや、絶対にやめるッ! 駄目だ、コスプレ徘徊とか! 大体木刀持って出歩いてるだけでも普通に警察に補導される!)」
言って、飛び込むように自宅に帰宅し、中学の修学旅行で買ってきてしまった木刀を投げ捨てた。
そう、木刀。プラ材で装飾して、衣装にも使っている金属風の樹脂スプレーで塗装し、最後に蓄光塗料で光らせてみた木刀。
自分でもかなり良く出来たと思える造形だったが、これももう仕舞っておこう。そう決意する。
衣装を脱ぎ捨て、押入れに片付ける。
それにしても、あの白衣の男をぶん殴った手がズキズキと痛い。
喧嘩の経験はそれなりにあるが、あそこまで全力で人を殴ったことはなかった。
「つーかおかしいだろ……どういうことだよ、あのヒョロさであんなに硬いって……」
もしこういうことやるなら、何か、鉄板入りのグローブとか、そういうものを……。
「(いや、だからもうやらないんだって……!)」
口の中でつぶやき、乱暴に椅子に座り込んだ。
はぁ、とため息をつきながら、
「……でも、あっちは……」
中に入った写真には、子供の頃の
「これからも、続けるんだろうな……
――男の子っぽくやんちゃに笑う、ピンク髪の少女が映っていた。
ラブコメになりました(断言)