【完結】EVERYDAYLIFE・《それっぽい文章》・STRAlGHTEN   作:王者スライム

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第十話 《明らかににネタバレをしているタイトル》

 有栖川の姿を見てはっ、と意識を取り戻す火常。すぐに有栖川の元へと近寄って、慌てて浮かんだ疑問を投げ掛けた。

 

「橘、あの女は!?」

「普通に倒したよ。私をちゃんと警戒してたみたいだけど、それで実力差が覆る訳じゃないからねー」

「そっか、よかった……」

「それより目の前の相手に集中した方が良いよ、アイツはこれまでの連中よりは手強そうだしね」

 

 有栖川がにそう言われて、火常は再び男へと目線を戻した。有栖川が現れたからか男はあからさまに嫌な顔をしていて、溜め息をついている。

 そして目線はを周囲にある未来の道具へと向け、それらを一つ一つ観察して──《神妙な名称》《神妙なルビ》以外を床へと捨て去った。

 それに対して困惑する火常だったが、有栖川はそうでもないらしい。いったい何が……と困惑する火常に答えるかのように男は口を開いた。

 

「やれやれ、文句を超えて称賛を言いたくなるね。《神妙な名称》《神妙なルビ》以外の未来の道具が壊れてる……さっきの投げナイフの時だろう?いったいどういう技術なんだ?」

「これに関しては私の技術って訳じゃないかなー。未来の道具を未来の知識を使って現代の道具で作った、なんて言ってたけどさ。それって作成したのは貴方ってことでしょ?流石に素人って訳じゃないだろうけど、プロじゃないだろし、耐久性なんかが落ちてるんだろうね」

「痛いところを突かれるなぁ、やはり君は厄介だ」

「貴方の技術が足りないだけだよ」

 

 未来の知識を使って、材料を集めいくらでも未来の道具を作る。男がしていたそれは確かに厄介で、先程の戦闘でも火常は物量で押されてしまっていた。

 けれど、その未来の道具の生産工場を現代に持ってきた訳じゃない。あくまでも未来の知識を使って、材料を集めたり、材料を作ったりして、更にそこから未来の道具を作っていた。

 だから、耐久性やそもそもの性能が落ちてしまっている。もしも、それに自身が気づけていたら未来の道具の破壊という手も取れていた訳で、先程の戦闘も一方的にボコられる展開にはならなかったかもしれないと、火常は思う。

 ただ、火常にとって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。少しだけ考えた後、火常は有栖川に一つだけ質問してみた。

 

「ねぇ、橘。さっき、その未来の道具はあの男が作ったって話をしてた訳だけどさ……それってどこで聞いたの?」

 

 そう、それこそが火常に浮かんだ疑問。あの男と有栖川が出会ったのはついさっきだ。それ以前に会っているということはない筈。

 自分だって先程聞いたばかりのその情報を有栖川が知っているなんておかしくないか、と浮かんだ疑問だったが、たいした理由があるわけではないらしい。なんてことは無いように有栖川は答えた。

 

「ああ、さっきまでの君の戦いはある程度見てたからねぇ。具体的に言えば君が調子に乗って攻撃を仕掛けた時に殴り返された辺りかな?」

「……そんな序盤辺りから見てたなら、もっと早く助けてくれても良かったんじゃない?」

「いやぁ、あんなに奮起してたのに介入なんてなかなか出来ないよ」

「……橘!!」

「ハイハイ、ちゃんと目の前の相手に集中しようねー。もう新しい未来の道具を構えているみたいだよ?」

 

 怒りに対して適当に話を逸らされた火常だが、別に嘘をつかれた訳でもない。男は再び未来の道具をいくつも構えていて、その数は先程よりも多い。

 それでもまだ火常に襲いかかってきていないのは、有栖川を警戒して迂闊な動きは出来ないと考えているからだろうか。なんにせよ、攻撃を仕掛けて来るのは時間の問題だろう。

 

「さてどうしようか。今度は真正面から攻撃する訳だから、さっきみたいに全部上手くいったりはしなさそうだよねぇ」

「橘が撃ち落とした未来の道具を僕が破壊するって言うのは?」

「君がちゃんと破壊できるかって言うのが心配かなー。先程よりあの男の未来の道具は多いし、その分撃ち漏らしは増えると思うんだよね。君が手足も出ずに一方的にやられていた量よりは減らせるだろうけど……反撃に出られるまでになるかは分かんないよ」

「それもそっか……じゃあ、どうする?」

「うーん……なるようになれ、って感じかな?」

「作戦ですらない……」

 

 けれど、他に案があるかと言われれば微妙な所だった。あの男は《やけに機械的な名称》《機械的なルビ》というオーダーメイド品のパワードスーツを着ている。その身体能力はエーと合体した今の火常に並ぶ程。

 ならば、火常が有栖川の投げナイフを避けられたのと同じ様に、あの女が有栖川の投げナイフを避けることはできるだろう。

 大量の未来の道具全てを投げナイフから守るのは無理だとしても、こちらにたどり着くまでにいくつかは守りきるのはきっと出来てしまう。

 それに対して、その残った未来の道具に対して対策できるのは手が空いている火常のみ。まさか、ターゲットである有栖川の兄を連れてくる訳にもいかないし、ゲタ助はどこに居るのかすら分からない。

 そうなると、やはり案は火常がなんとかする以外は出てこない。不安は残れどそれしかないのだ。

 

「さて、話し合いは終わったみたいだね。今度こそは殺すよ。一人増えた所で結局は変わらない」

「来るよ橘!!」

「任せなよ、ある程度は減らしてみせるから」

 

 数々の未来の道具を構え迫りくる男に対し、有栖川はいくつもナイフを投げていく。

 一つは《魚の名前のような名称》《魚の名前のようなルビ》に当たり、一つは《神々しい名称》《神々しいルビ》に命中し、一つは《揚々な名称》《揚々なルビ》のど真ん中へ、一つは《虫の名前のような名称》《虫の名前のようなルビ》を破壊してみせ──

 

──()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何も有栖川の投げナイフが全て未来の道具へと命中している訳ではない。いくつかは避けきれず先程のように当たってはいても、大半は男が当たらぬように動かしてはいる。けれど、()()()()()()()()()()()()()()。 

 避けた先に別のナイフがあり《鳥の名前のような名称》《鳥の名前のようなルビ》に当たり、避けた筈のナイフが反射して《カンガルーの名前のような名称》《カンガルーの名前のようなルビ》に命中して、ナイフの軌道から先読みして避けた筈がナイフ同士がぶつかり軌道が変わって《回文じみた名称》《回文じみたルビ》を破壊して、と次々と男が構える未来の道具を破壊していく。

 まるで、先程の戦いのようだった。圧倒的な物量に手足も出せずにただ怪我が増えていくだけだった火常のように、男も大量の投げナイフに対して避けきる事が出来ずにどんどんと未来の道具が壊されていく。

 そして、最後の最後に《やけに機械的な名称》《やけに機械的なルビ》が破壊されてしまった所で、男は足を止めた。

 

「……は?」

 

 男の位置は火常の目前。本来ならば残った、いや残していおいた筈の未来の道具で攻撃を仕掛けていただろうが、手元には何もない。男は敵を目の前にして、ただ困惑を浮かべることしか出来なくなっている。

 そして、それは火常も同じだった。想定と全く違う状況に、敵が目の前にいるにも関わらず困惑して動けなくなっている。

 

「……えっ、有栖川さん。これってどういうこと?」

「どういうことって……まあ、物量で押せばどんな身体能力をしてようがなんとかなるってことかなー」

「いやいや、自分で言ったこと忘れたの!?さっきみたいに全部は上手くいかないなんて話してたじゃん!!」

「ああ、あれは嘘だよ。そういうことにしておいた方が勝ちやすそうーって思ったからねー」

「そういうことにしておいた方が勝ちやすそうって……」

「だってさ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう言われてみれば、と火常は攻めてくる前の男の状況を思い出す。

 大量の未来の道具を構え、火常と有栖川を見据える男。二人が作戦を立てていた時もずっとそのポーズで、作戦がたて終わった後はわざわざ『さて、話し合いは終わったみたいだね』とすら言っていた。

 

「話は聞かれてる……だったら、相手の都合の良いように話してあげれば良いんだよ。さっきみたいには上手くいかない、全部は破壊できない、残りを君が始末するのは不安、だけど他に案はない……そうすれば、こうやってチャンスを見いだしてわざわざ突っ込んできてくれる」

「敵を騙すならまずは味方からってこと……?」

「そういうことだねー。それより、早く捕らえようか。まだ未来の道具を隠し持っているかもしれないしねー」

 

 そう有栖川が言った瞬間、火常に嫌な予感という物が過った。

 有栖川の作戦は上手く行って、男は何も持たずに手ぶらで目の前まで来ている。男が着ていたパワードスーツである《やけに機械的な名称》《やけに機械的なルビ》すら破壊してしまったのだから、目の前に居るのを少し放置してしまっていたとしても圧倒的にこちらが有利な筈だ。

 だったら、この嫌な予感はなんなのか。いったい何が火常に訴えかけているというのか。火常にはそれが分からなかった。そもそも日常に生きてきた火常の嫌な予感などどれ程あてになるのか。

 所詮は物事が上手く生き過ぎているが故の不安から生まれた嫌な予感というやつに過ぎないだろう──けれど、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何もなかったら、ごめん橘」

「えっ?」

 

 拘束でもするつもりなのか男へと近づく有栖川を反対方向へと突き飛ばす。そして、火常は有栖川の元へと行けぬように男の目の前に立って──そして、()()()()()()()()

 

「……えっ?」

 

 首のない火常の身体はエーと融合した影響で血は一切出ておらず、それのせいでどこか現実味の薄れた光景に見える。有栖川も突然のことに追いつけていないのか珍しく困惑していた。

 それに対して下手人である男は調子を取り戻した様で、笑顔を浮かべて語り出す。

 

「laser-sword-systemⅢ……だったかな?これは未来から持ってきた、歴とした未来の道具だ。レーザーカッターをコンパクトに、そして出力も自由自在にって言えば伝わるか?」

「……これまで使わなかった理由は何かな?」

「純粋に切り札だったからさ。捕らえられてもこれなら何でも切れる、取り出すのも結構簡単でさっきみたいに油断しているところを……なーんてのもできるからなぁ、っとあぶねぇ」

 

 楽しそうに語る男へと有栖川はナイフを投げる。しかし、laser-sword-systemⅢのレーザーが傘の様に広がり、ナイフを切り尽くしたことでそれは防がれた。どうやら形は自由自在で、出力はかなりの物らしい。

 

「やれやれ、君にはまんまと騙されたよ。仲間二人もやられるし、俺自身もやられそうになるし……眼中にすら入れていなかった存在なのに、君程厄介な存在は他になかった」

「褒めてくれてありがとう、けどそんな余裕があるのかな?」

「あるよ、むしろ君に余裕があるのか聞いてみたい所だ。口調が少し変わってるぜ?……まあ、まだ勝ち目を探そうと思考を回している所は流石としか言いようがないが」

 

 いつの間にか立場は逆転してしまっていた。laser-sword-systemⅢによって、有栖川の武器である投げナイフは男にたどり着くこともなく焼き切れる。そうなると、これまでの未来の道具のように投げナイフで破壊するという手すら取れない。

 幸い、《やけに機械的な名称》《やけに機械的なルビ》は破壊しているのだから、機能の無いパワードスーツを着ている点で、身体能力は有栖川の方が高くなっていると考えれば、逃げることは可能だろう。

 

(ここは一旦逃げてから御兄様と合流する。そして、作戦を立て直して再び立ち向かう。一人減ってしまった現状、そう動く事が一番の筈──本当に?)

 

 形は自由自在のレーザーカッター。もしも、長さもある程度自由自在ならば背中を見せればその瞬間に終わりだ。今はこちらの方が身体能力が高いだって、あくまでも推測で事実ではない。というより、そもそも──

 

(ここで御兄様を巻き込むなんて選択肢、取れないよねー)

 

 そう、どこまでも有栖川という人間は兄が一番だった。そうした方が良いなんて理由で()()()()()()()()()()()()()()()。何しろ、兄が危険に陥った時点でそれは最悪なのだから。

 

「そろそろ君にも死んで貰うか」

「死なないよ、私は。御兄様は悲しむからね」

「はっ、安心しろ。あの世でも二人仲良くできるよう同じ墓にいれてやっ──ガッッッ!?」

 

 男は台詞を言い切る前の事だった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。警戒外からの攻撃だったらしく、顔面にクリーンヒット。勢い良く吹き飛び、そのまま意識を失った。

 戦ってなんとでもして勝つ気持ちだった有栖川がその光景に困惑していると、その首のない火常の身体から声がした。

 

目が覚めたらムカつく顔があったので殴りましたが……今どういう状況なんでしょうか?

「……君、どこで喋ってるの?」

 

 エーを知らない有栖川の当然の疑問だった。

 

 

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