【完結】EVERYDAYLIFE・《それっぽい文章》・STRAlGHTEN   作:王者スライム

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最終話 《終わりを表す感動的なタイトル》

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 別に学校の前にある横断歩道の信号だけが消えたりはしないし、昔からある歩道橋は古いままだし、突然いつも使っているコンビニのチェーン系列が変わったりはしない。

 そんな、なんてことはない当然の話。小さな変化すら起こらない日常。けれど、それを取り戻すまでは随分と長かった。

 自分しか気づけない日常の変化に精神を病まされたのが一週間。日常の変化の原因である未来の敵をエーや有栖川兄妹と倒すのに二日。そして、日常を取り戻す為にタイムマシンを現代で造るのに五日と計二週間──あれ、結構短くない?

 三ヶ月ぐらい経っていた気がしていたが、いろいろあり過ぎて勘違いしていたようだ。もしかすればタイムマシンによる時差ボケがあったりするのかもしれない。

 なんにせよ、火常は見事日常を取り戻した。今度こそ一件落着──

 

「……でさ、僕の家に居座るつもりなの?」

「えっ?」

えっ?

「いや、えっじゃなくてさ……」

 

──と、いかないのが現実らしいと思いながら、火常は困った表情をしている目の前の少年を見る。どこかで見たことがあるような、というよりは確実に見たことがある少年。簡潔に答えを言ってしまえば()()()()()()()()()()()。じゃあ、その火常を見ているのは誰なのかという、これもまた火常平だ。少女の姿をしたという注釈はつくが。

 これが、作戦名【EVERYDAYLIFE・《それっぽい文章》・STRAlGHTEN(《それっぽい文章》の中身は結局思いつかなかった)】の唯一の問題点。

 半月どころか五日でタイムマシンを完成させ、未来から来た敵を全員倒してゲタ助に渡して、万事解決となった筈だったのだが……火常の姿が元に戻ることはなかった。

 エーや有栖川の兄の推測曰く、現在の火常達は()()()()()()()()()()()という判定になっているらしい。だから、過去を変えた所で自分達が変わる訳ではない。そして、過去の自分達がいない訳でもないのでこの世に同じ人間が二人存在することになる。

 

 有栖川の方はまだ良いだろう。見た目が一緒だし、有栖川の兄ならばDNA検査機ぐらいは簡単に造れる筈だ。事情説明なんて簡単な筈だ。

 ただ、火常は違った。見た目は違うし、性別だって違う。そんな相手がとある未来の自分なんて言われても信じてくれない筈だ。そもそも自分の時とは違い、現代の火常は精神を病んでいない。そんな中で、端から見れば滑稽無糖な話を信じてもらうというのは無理があるだろう。

 ただ、火常だって信じて貰えないのは不味い。何しろ、衣食住の食住がないのだ。衣だって今着ているワンピースが最後である。こんな状況で当てもないなら野垂れ死ぬのは間違いない。だから、現代の火常に信じて貰う為に最後の手段に出た。

 

──()()()()()()()()

 

 なんだそれは、と思うかもしれない。ただ、一度死のうと死線をくぐり抜けようと、火常の性癖は現代の火常と変わりやしない。そして、火常は下ネタで笑いはすれど自ら口にしないタイプ。ならばSNSですら言ったことのない性癖を全てを言い当てられたのなら、それは自分自身だと認める他ないのではないかと。

 催眠、洗脳、即堕ち──そんなジャンル名から、細かいシチュエーションも言い晒し、絵柄の好みまでも羅列。見た目は美少女である相手に性癖を寸分違わず当てられた現代の火常がめちゃくちゃ恥ずかしそうにしていたのは言うまでもない。

 そして、その姿を見て性癖を羅列している火常自身も恥ずかしくなったのか、顔を赤らめ後半はゴニョゴニョと最早何を言っているのか分からない程になっていた。そこで何を思ったのかエーが後を引き継ぎ、性癖の羅列所か性格分析まで始まり地獄のような状況が生まれたのだが──まあ、流石にそれを語るのは酷だろう。

 兎も角、そんな地獄を経て火常は現代の火常に自分やエーの状況を信じて貰うことに成功したのだ。全てが終わった後の「スマホの指紋認証で良かったのでは?」というエーの言葉があったりはしたが二人の火常は無視をした。なんのための地獄だったか分からなくなるので。

 

「いや、うん。未来から来た僕が困るのは分かるよ?他に行く当てはそりゃあないだろうし。でもさ、家族にバレずにとかは無理な訳じゃん」

「普通にバラせば良いんじゃない?」

きっと事情を話せば信じてくれるでしょう

「いや、両親にすんなり信じて貰うのは無理じゃないかな。スマホの指紋認証だって、合ってるから同一人物──と考えるよりもトリックとかを疑うのが普通だし」

マスターの説明では無理でも現代のマスターが本気で訴えかけてくれればなんとかなる気がしますが……

「うーん、変な女に騙されてるとかにならないかなぁ」

「分かる、なりそう」

二人はもっと家族のことを信頼するべきなのでは……?

 

 やはり、一度死んでしまって性別すら変わってしまったのが大きかった。あなたの子は本来ならば今頃未来から来た敵に一度殺されて、女性の姿になって復活するんですよーなんて言ってどんな親が信じるのか。

 そんな戯れ言にしか聞こえない話を信じるよりは、息子が騙されていることを疑うのが普通だろう。もしかしたら精神の方を疑われて二人とも病院に連れていかれるなんてこともあるかもしれないが。

 

「そもそも、有栖川って人の所に頼るのは駄目なの?部屋いっぱいあるらしいし、自分同士で分かりあっているなら君の事情も分かってるってことだよね。なら、そこを頼れば良いのにって思うんだけど……」

「橘と裁葉の所はね、最悪殺されちゃうからさ」

「……仲間、じゃないの?」

「いや、うん仲間だよ?今回のことで仲良くなれた気はしてるし。けど、泊まるのは許可してくれないみたいでさ、泥棒猫になる可能性が高いからって」

「えぇ……」

 

 タイムマシンを造る五日間で、火常は有栖川兄妹と確かに仲良くはなった。生活を共にしたのだし、そもそも共に未来から来た敵を退いて見せた仲だ。

 だから、仲良くなれるのは当然と言えた訳だが──そこで新たに危惧を抱いた者が居る。そう、有栖川だ。有栖川は自身の兄を慕うなんてものを通り越して愛している。兄がトンでもない技術を持っているといち早く気づき、こんな兄が狙われないわけないと、存在しない架空の敵から兄を守る為にナイフの技術を身につけた少女。

 そんな少女が、兄の好みのど真ん中の姿をした女性と自身の兄が仲良くなるのを危惧しないなんて事があり得るだろうか、()()()()()()()

 幸い、火常の精神は普通に男だ。有栖川の兄のことは普通に友達だと見てるし、それは変わらないと思っている。あと普通に有栖川とも仲良くなっている。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ただ、一緒に暮らすとなると何が起こるか分からないという理由で泊まり込みをしようものなら今度こそ殺すと断言されたのだ。流石にそんなことを言われたあと、有栖川の家に泊まろうと思える火常ではない。

 だからこそ、自身の家でもあるここが最後の砦だった。自身がこれからちゃんと普通の生活を送れるか、守り抜いた日常を享受できるか、という最後の砦。

 そんな事情があるからこそどれだけ厳しくとも、そう簡単に諦める訳にはいかない。親を説得するための案を次々と提案していく。

 なんとかDNA検査にこじつける作戦、過去のエピソードを羅列して火常平だと信じて貰う作戦、会話をしてみて自分の子だと認識して貰う作戦、勢いで乗り切る作戦、といろんな作戦が立てられた。けれど、どれも様々な問題点から無理だと結論が出てしまう。

 だんだん主目的が、なんとかして自分が未来から来た火常平だと信じて貰うから、とりあえずこの家に泊めて貰うに変わってきた中──エーが口を開いた。

 

家族が死んでしまった遠い親戚ということにして、たらい回しにされてここに来たという設定にするのはどうですか?

「それ、調べられたらすぐにバレちゃうんじゃない?」

六等親辺りとか適当にホラを吹いてですね

「エー、こういう所で無計画というか適当だよね……」

まあ、可哀想な姿を訴えかければすぐに調べるなんて流れにはならないでしょう。バレたらバレたで本当のことを言えば良いんです。一緒に暮らせば『確かに』と思えるような点も生まれるかも知れませんし……

「まあ、確かにずっとは無理でも数日は確実に、上手く行けば数週間程度までは無事暮らせるかもね」

「他の案もまともなのはなかったし……それで行こうか」

 

 家族が死んでは居なくとも行く当てがないのは嘘ではない。それに情に訴えかければ多少の無理は通りそうというのも分かる。

 なんにせよ、頭の中に家出少女作戦や橋の下で拾ってきたんだ作戦ぐらいしか思い浮かんでいなかった火常達も流石にこちらの方が成功率が高そうだというのも分かる。

 

では、作戦名【めちゃくちゃ可哀想な姿と状況でマスターの親の情に訴えかけてしばらく家に泊めて貰う】を実行しましょうか

「……いつもこんな感じなの?」

「うん、いつもこんな感じだよ」

シンプルが一番だと思いますが……

 

 そんな問答がありつつ、三人(端から見れば二人)は火常の家へと向かうのだった。

 

 

 


 

 

 

「成功したね」

「すんなり信じてくれたな」

確認しようとする気配すら見えませんでしたね……

 

 割愛はしたが、エーの提案した作戦は怖いぐらいに成功した。普通に新たな家族として迎え入れられ、両親は現在火常(ひら)(未来から来た火常の仮の偽名)の為のベッドなどを買いに出かけてしまった。

 多少は疑われたりするだろうとか、遠い親戚であると受け入れられても泊めてくれるかは分からない──なんて考えていた火常達や作戦を立てたエーも、あまりにも自分達に都合が良すぎて一度夢を疑った。

 ただ間違いなく現実だったので、今度は自分の両親は詐欺被害にあったりしていないかを疑うことになった。「そんな話は聞いていないし流石にないだろう」という気持ちと「でもあの騙されやすさならあり得るのでは?」という考えが火常達の頭を堂々巡りする。

 

「……よし、とりあえず上手くいったことを喜ぼうか!」

そうですね、マスター。あの様子なら本当のことを話しても信じて貰えそうでしたが、とりあえず今は衣食住を手に入れたことを喜ぶべきです

「良い方法って毎度後から分かるもんなんだな……」

 

 様々な後悔があろうと、進んでしまった今は変わらない。なんにせよ、火常の最後の問題もこれで解決。今度こそ、完全に一件落着というわけだ。

 

「うぉぉぁ、色々の終わったぁ……!!」

お疲れ様ですマスター、そしておめでとうございます

「ありがとう、エー」

……本来ならばこんな今はあり得なかったでしょうね。最初に出会った時、私はマスターに言いましたよね?『少なくともこれ以上の街の変化も起きなくなり、マスターに日常が帰ってくる』……あれは確かな本心でした。問題が解決した所で過去が変わる訳ではない。だから、本当の日常が帰ってくる筈がない──でも、マスターは取り戻してみせた

「……まあ、姿は違うままだから本当に取り戻したかどうかは分かんないけど」

取り戻して見せましたよ、マスターは。現代のマスターの日常も、そして自分自身の日常も

「君たちが来た時点で僕の日常は多少は変わったんじゃない?」

多少の変化は受け入れてください、現代のマスター

「それぐらい受け入れなよ、僕」

「仲の良いことで……!!」

……話を戻しましょう、マスター。私は貴方を凄いと思います。なんてことのない一般人だった筈なのに、途中から私という手助けも失った筈なのに、貴方は元の問題を解決してみせて、今度は私が考えもしていなかった日常を取り戻すということも実現してみせた。私は、そんな貴方を凄いと思うのです

「……褒めてくれてありがたいけど、流石にそれは買いかぶり過ぎかな?」

……?

「日常を取り戻すのは殆どエーや橘と裁葉の尽力のお陰だったし、その前の問題は殆どゲタ助とか橘がやったような物だし。確かに僕は諦めなかったけど──エーが来てくれなきゃ、僕は間違いなく全てを諦めてた。だからね、エー。本当に感謝したいのはこっちの方なんだ」

マスター……

「ありがとう、エー。君のお陰で僕は日常を元に正せたんだ」

 

 それ以上、言葉はなかった。いや、いらなかったというべきなのかもしれない。どちらか片方だけでは日常は取り戻せなかっただろう。未来から来た敵を倒すのも無理だったかもしれない。

 ただ、二人はちゃんと出会えた。だからこそ日常も取り戻せた。ただ、それだけの話。なんにせよこれでめでた──

 

「なんか凄い感動的な話なのに、僕から見るとたんなる独り言なのがなぁ……」

「空気読みなよ、現代の僕」

空気を読んでください、現代のマスター

「本当に仲が良いなぁ君たちは!!」

 

──……めでたしめでたし!!

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