【完結】EVERYDAYLIFE・《それっぽい文章》・STRAlGHTEN   作:王者スライム

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TSキャラ、出ます


第三話 《始まりの終わりを意味するカッコいいタイトル》

 山は未だ燃えていた。

 そんな山を遠目に見ながら、火常とエーは住宅街とは別の方向の街、その路地裏に少し休憩をと座り込んでいた。そしてその隣には、未来から来た女が気絶して寝転んでいる。その女が持っていた《やけに可愛い名称》《可愛いルビ》はエーが回収し、無力化した上で適当にエーのスライムの身体でグルグルと捕縛している。

 日常を取り戻すための初戦は二人の勝利だった。そして得られた休息の時間。けれど、それがどれ程続くか分からない以上、その時間も無駄には使えない。

 

「で、こいつを未来に送り返すんだっけ?」

それは少し違いますね。実はタイムマシンは往復一回の使い捨てでして……この女性を未来に送り返すのは他の仲間も捕らえてからになります

「そうなんだ……ちなみに他の仲間は何人いるの?」

この女性を含めて三人ですので、あと二人と言ったところですね

「あと二人、か……」

恐ろしいですか?

「いいや、全然。むしろゴールが近いと知れて嬉しいぐらいだよ」

 

 火常にとって変わっていく日常というのは()()()()()()()()()()のようなものだった。

 解決策はない。自分以外誰もそれを理解してくれない。それなのに日常の変化は増えていくばかり。精神だって限界に近づいていた。

 ただ、それが目の前のスライムとの出会いで、解決策が見え、エーが理解者となってくれた。火常にとって、これまでになかったそれが精神面で大きな助けになっているのは間違いない。

 だから、どこからか命を狙われている筈のこの状況下でも火常は堂々としていられるのだ。

 ただ、それはそれとして火常に一つの疑問が浮かんだ。

 

「……ねぇ、エー。ちょっと質問いい?」

よろしいですよ、マスター。なんでしょうか?

「……じゃあ、聞くけどさ」

 

 そこで火常は一旦口を止めて、視線を女へとずらす。見た目は変なファッションの一般女性だが、その正体は自分の命を狙う未来人。気絶しているその姿をみた後、もう一度エーに視線を戻して呟いた。

 

「この人、未来へ返すまでどうするの?」

……さぁ?

「『さぁ?』じゃないんだけど!?」

 

 この女を今すぐに未来へ返せない理由は分かった。では、他の二人を捕まえるまでこの女をどこに置いておくべきか。それを疑問に思った火常だが、目の前のスライムは案の定無計画だった。

 

順当に行くならマスターの家、ということになりますが……ロッカーとか空いてませんか?

「えっ、順当に行って僕の家なの?」

そうですね。できれば近くで捕らえておきたいですし、マスターは学生ですから他にアパートなどは借りられていませんでしょうから

「いやぁ、まあうん。そんなんだけどさ?」

私もマスターの家に泊まるつもりですし、一人女性が増えるぐらい変わらないと思いますが……

「いや、変わるよ!スライムの場合と人の場合はだいぶ変わるよ!」

 

 エーの場合、静かにしてもらえれば外でふざけて巨大スライム作りをしたで言い訳は通るだろう。なんなら、うまく身体を調整してくれれば服の下などに隠せるかもしれない。

 ただ、この女の場合はどうしようもない。気絶していたから拾った、と言ったとしても間違いなく親が警察と救急車を呼んで終わりだし、仮に呼ばれず家に置けたとしても親がこの女を拘束するのを許すだろうか。普通に考えれば許しはしないだろう。

 そんな考えを火常がエーに話して見れば、エーも少し考え出した。

 

こっそり連れ込む、というのは無理なのですか?

「全く無理じゃないかもしれないけど……人の大きさはやっぱり誤魔化すのは難しいよ。段ボール箱に入れるにしても、大きい荷物を持ってきたのにそれが入っていたであろう物が部屋にないってなったら、気になるだろうし」

確かに……他に隠す場所に心当たりは?

「いや、全くないよ。秘密基地とかも作る歳じゃないし」

なるほど……どうします?」 「……どうしようね」

 

 そこから少し、無言の時間が流れた。なんとかしようと互いに思考をし続ける時間。けれど、どちらかが良いアイデアを思いつく前に──その時間は突然破られた。

 

「やあ、君たち。少しいいかな?」

 

 先ほどまでこの場になかった声に、火常は顔をそちらに向ける。そこに居たのは一人の男だった。

 ボサボサとした黒い髪に赤いメガネ。胸ポケットが一つの無地の緑色のシャツに青くて薄い上着を羽織っている。下半はグレーを基調としたどこかでみたような模様のズボンで、黒い革靴を履いていた。

 そんな、街中を歩いて探せばどこにでもいそうな普通の人。そんな人が突然話しかけてきたことに火常は少し戸惑うが──エーは違っていた。

 

ああ!不味いです、マスター!!この人は──

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そこまで聞いて、火常は対応しようと立ち上がり拳を構えた。エーはその男と火常の間に立ち塞がった。それに対して、男は筒のような物を取り出して──

 

「バンッ」

 

──と擬音言を呟いた。それと同時にエーの身体が細切れに切り裂かれていく。そして、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 火常は構えた拳を振るうことも痛みを叫ぶこともできず、バラバラになった身体が重力によって地面に落ちる。その一部はエーの身体と混ざっていた。

 そんな光景を見届けたあと、返り血で汚れた気絶した女を連れて、男は後片付けもせずに去っていく。

 

()()()()()()()

 

 男のそんな呟きは肉片になった火常とエーには届かない。

 そう、つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 


 

 

 

「──知らない天井だ」

 

 パチリと目を覚ました()()はそう呟いた。そして、上半身を起こして周りを見る。白を基調とした壁紙や家具があるが、病院ではない。単なるどこかの部屋の様だった。

 そして、一人の少女と目が合う。

 スラッと腰まで伸びた美しい黒い髪が目に入った。そして迷いなく美人と言える整った顔。服装は火常が女性の服について詳しくなかったから、詳しくは分からないがキレイな服だった。

 

「あっ、目覚めたね」

「えーっと、うん。おはよう」

「おはようおはよう。うん、思ったより元気そうじゃん」

「……えっと、君は誰?」

有栖川(ありすがわ)(たちばな)、気軽に橘って呼んでいいよ」

「そっか……両方名字みたいだね」

「あはは、実際に片方は私の名字だからさ」

「そういうことじゃなくない?」

 

 そんな会話を有栖川と繰り広げて、火常は目覚める前のことを思い浮かべる。

 未来人火炎放射女に勝利して、これからのことを考えていたら突然その女の仲間が現れて、自分はエーと共に敗北した。そう言い表せばその後のことは簡単だ。倒れた自分を有栖川かその家族が拾ってきたとでも言えばいい。

 ただ、火常は確かに身体が細切れになっていた筈である。普通、人間は身体が細切れになれば死ぬ。拾ってきて治療したところでそれはどうしようもないだろう。

 だが、確かに自分は生きていて、なんなら手の肌は前より綺麗に見える。そんなことは普通に考えればあり得ない筈だ。

 ただ、火常には()()()()()()()()()()()()()()()()()。詳細も分からず、確証もないような、真っ先に捨てるべき考え。

 だが、未来から来たスライムと会話したり未来人に殺されかけたりした、火常にそう簡単にその考えは捨てられない。

 だから、確かめるべく火常は口を開いた。

 

「……ねぇ、不思議なことを聞いてもいい?」

「いいよ、力になれるかは分かんないけれど」

「えっとじゃあ、聞くけど……僕が拾われて来たときの身体ってバラバラだった?」

「うんうん。ちゃんとバラバラだったよ」

 

 火常としては、何を言っているんだこいつと思われても仕方ないようなことを聞いたつもりだった。事実とはいえ、それほどおかしい質問だとは火常も理解している。

 けれど、有栖川はまるで普通の質問に普通に答えるように、そのおかしな質問に「バラバラだったよ」と答えた。

 それで火常は確信する。この家は未来の──

 

「まっ、でも君凄いよね。バラバラだったのにそのバラバラの身体が自らくっつこうって動いてたし」

「えっ?」

「それで実際にくっついちゃうんだもんね」

「えっ!?」

「御兄様も見たことないぐらい興奮して実験してたもんなぁ……私もされてみたいよ」

「ちょっ、ちょっと待って!!」

「ん、どうしたの?」

 

 有栖川は何をそんなに慌ててるのだろうとでも言いたげな目でこちらを見てくる。ただ、火常からすれば確信までした筈の考えが一瞬で崩れてしまったのだから仕方ない。

 一度、呼吸を落ち着かせて火常は新たに質問をする。

 

「えっ、橘が僕の身体をくっつけたんじゃないの?」

「違うよ?殆どは勝手にくっついていったし……あっ、でも御兄様がくっつけてた部位はあったかも」

「……それはなんか凄いテクノロジーとかで?」

「いや、パズルみたいに正しい場所に置いてみたらくっついたんだって。君の身体って凄いよねー」

「!?」

 

 最早、火常は言葉を失っていた。

 有栖川はエーの仲間で未来の技術でバラバラになった自分を助けたのだと思っていのに、全然そんなことはなく全て自分の身体だけで解決しているのだと言うのだから仕方ない。

 いつから自分は人間をやめたのかという考えが火常の頭に浮かぶが、当然その答えは出ない。あまりの事実に火常が放心していると、不思議そうに有栖川が口を開く。

 

「というより、自覚なかったの?バラバラになっても生き返られるって分かってるからそんな質問をしてきたんだと思ってたんだけど」

「いや、ないというかそんな能力僕にはなかった筈なんだけど……普通の人間だし」

「うーん、そうは思えないけれど……?」

「だよねぇ……」

 

 全く心当たりのない火常は首を傾げることしかできず、有栖川もちょっとした疑いの目を火常に向ける。

 ただ、会話をやめて思考を続けること数分。冷静になった火常はようやく一つの事実に気づいた。

 

「ねぇ、僕がバラバラだった場所で巨大なスライムがあった、なんて話は聞いてない?」

「巨大なスライム?御兄様、そんなこと話してたっけ……」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 思い返せば、エーは自分の盾になろうとあの男との間に入り込んでいた。つまりはエーの身体もバラバラになったと考えて相違ない、と火常は考える。

 エーはスライムでありロボットだ。バラバラになれば当然、動作はしなくなるだろうが元に直せばまた再び動作する筈。

 その御兄様とやらがエーも回収しているのなら僥倖。していないのなら、元に戻せるかはともかくパーツを回収すれば──と、火常が思っていた時だった。

 有栖川が再び、火常のそんな思考を吹き飛ばすようなトンでもない発言をする。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……えっ?」

 

 まるで時間が止まった様だった。言葉を理解できないのではなく、頭がその言葉を理解しようとしていない状態。

 けれど、有栖川はそんな火常の様子なんて知らないのかさらに続ける。

 

「身体がくっつくのもそうだけどさ、なんか身体を切って分離させてもすぐ塞がるんだって。で、またくっつけたら戻る」

「……」

「確か筋肉とかもおかしいって話もしてたかな?これが本物なら普通の人間じゃあり得ない様な身体能力があるって」

「……!!」

「だから私としては、常識的に考えるかはともかく君が人間じゃないと思って──って、あれ?どうしたの?」

 

 そんなことがあり得るのか、と火常は思った。いくら未来の技術でもあり得ないだろうと、火常は考えた。

 ただ状況証拠というやつは恐らく()()()()()()()()()()()()

 

──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 まるで、別々の部品をくっつける為の糊のように。蕎麦粉を固めるために入れるつなぎのように。バラバラだったよなった火常の身体をスライムの身体でくっつけたのではないか?

 もしもそうなら、火常の身体がスライムのような特徴を持っているのは当然のこと。そしてエーはパワードスーツでもあるのだから、異様な身体能力を得ていたとしてもおかしくはない。

 ただ、一つだけ。一つだけ、どうしても火常は気になることがあった。その場合、()()()()()()()()()()()()()()()

 それを確かめるなら、問いかけてみればいい。自らの身体に「エー、そこにいるの?」とでも。

 返事があるならそれで良い。ただただ犠牲になった訳ではないと安心できる。だが、もし返事がなければ?本当に自分のために犠牲になってしまったと分かってしまう。

 だから、火常は問いかけられない。もし、返事がなければきっと自分は自分を許せなく──

 

「──おーい、返事して」

「えっ、あっうん」

「急に意気消沈してどうしたのさ。可愛らしい顔が台無しだよ?」

 

 そんな火常のどんどん悪い方へ行く思考を遮るように有栖川がそう告げる。

 パッと、我に返り思考がリセットされる。後者のふざけたような言葉も、今の火常にとってはむしろありがたいとすら思えた。ただそれはそれとして突っ込むか突っ込まないかは別である。

 

「可愛らしい顔って、男に対して言う言葉じゃないと思うけど」

「えっ、君女でしょ?」

「えっ」

「えっ?」

 

 有栖川があまりにも真顔で言うものだからと、自分が男だと分かりきってる筈なのに火常は自分の股へと手を伸ばした。

 しかし、どういうわけか()()()()()()()()()()()()。それを認識した火常は一呼吸置いて、思いっきり叫んだ。

 

「はっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 耳を塞ぐ有栖川の文句すら書き消す声量。

 どう言うべきなのか、火常にとって今日一番の衝撃はそれだった。

 

 

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