【完結】EVERYDAYLIFE・《それっぽい文章》・STRAlGHTEN   作:王者スライム

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第七話 《何も思いつかない時の当たり障りのないタイトル》

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 それは、肉塊だった火常をこの家まで連れてきて実験をしていたらしい異常な人物。未来では世界を変えたとすら言われるスライム型のパワースーツを作り上げたらしい凄い人物。

 だからこそ、火常は有栖川の兄に対してマッドサイエンティストのようなイメージを抱いていた。未知に対して貪欲で、それを解き明かす為なら犠牲も厭わない──と言ったような。

 

「ああ、お客様達には自己紹介をしていなかったかな?どうも、僕の名前は有栖川裁葉(たちは)、そこにいる橘の兄だよ」

「どっ、どうも……」

 

 しかし、火常の目の前にいる有栖川の兄にそんな要素は一切見受けられなかった。

 さっぱりとした前も後ろも短い黒色の髪。黒い目のどちらかと言えば整っていると言えなくもない顔立ち。そして、火常より少し高い百七十センチメートル程度の身長。服装も白衣という訳でもなく服屋のマネキンが着ているそのままを買ったような姿。

 どこからどう見ても至って普通。火常は聞いていた情報をを全て忘れて、どこにでも居そうな高校生という印象を抱いてしまっていた。

 

「えっ、えっと、その、御兄様。今のこの状況には訳が──」

「違うよ橘。決して僕は怒ったりはしてない。ただ、聞きたいことがある、それだけだよ。確かにお客様相手に武器を握っているのは良くないことだけど……橘なりの理由があったんでしょ?なら仕方ないよ」

「おっ、御兄様!」

「あはは、よしよし。橘は良い子だね」

 

 果たして、先程までの緊迫した場面はどこに消えてしまったのか。有栖川が兄に抱きつき頭を撫でられている姿を前に、火常は思わず何を見せられているのだろうと思ってしまう。

 元々の目的通りに逃げるべきなのか、それともこの兄妹と情報を交換し合うべきなのか、火常がそんなことを悩み出したあたりで、有栖川の兄が口を開いた。

 

「そうだ、君たちにも聞きたいことがあるんだ。折角だから着いてきてくれないかな?」

「……だってさ、ゲタ助。どうする?」

「あー、どうせもう手遅れだ。こうなっちまったなら、全部さらけ出して協力して貰った方が良い」

「ありがとう、助かるよ。じゃあ、少し場所を変えようか。ここじゃあ座れないし……橘そろそろ離れて。お客様達をリビングまで案内してくれるかな」

「はい、分かりました御兄様……じゃあ、ついて来てね二人共。リビングまで案内するよ──って、あれ?どうしたの?」

「……いや、なんでもないよ」

「ふーん、ならいいけど。別に君の疑いが晴れた訳じゃないってことだけは覚えておいてねー」

 

 そう言って、部屋から出ていく有栖川。火常は、有栖川って兄と話す時は丁寧語になるんだな、と思いつつその後を着いていくのだった。

 

 


 

 

 

 有栖川に案内されたその部屋はこれまでの部屋とは印象が大きく違っていた。

 これまでの部屋は全てが白く統一されていたが、ここは違う。壁と天井は白くとも床は木の色だし、家具も黒色や茶色などと多く分かれている。

 何より、大きい窓があり外の景色が見える所や、本棚に並べられた本が所々倒れていたりしている所、かと机の上に乗せられているみかんなどから、ここで生活しているのだろうということが感じとれる。

 

「この家は大きくて無駄に部屋が多いんだけどね、大抵は入った人を閉じ込めるダミー部屋なんだ。なんでも昔は治安が悪かった頃によく泥棒が入ってきたから、その泥棒らを捕まえるために作られたとかなんとか……まあ、今はそういう人たちも減ってるから殆ど使わないんだけどね」

「……ちなみにその部屋の一つに僕を入れた理由は?」

「それは君に逃げられたくなかったからだよ。君の体質について話を聞いてみたかったし……本来なら君が起きた時点で橘が連れてきてくれる筈だったしさ」

 

 その話を聞いて、火常は有栖川の方へと目を向ける。それに対して有栖川はテヘペロとでも言いたげに、片手を頭の上に起いて舌を出してウィンクした。

 火常とゲタ助は、とりあえずそれは流して適当な椅子に座り込む。そして、その対面に有栖川とその兄が座った。

 

「じゃあ、本題に入ろうかな。君たちのこと、未来のこと、この街に起きている小さな変化──色々と聞きたいことはあるんだ」

「そうだな、ある程度かいつまみはするが──全部、話してやるよ。少なくともさっき聞かれた部分はな」

 

 その言葉を皮切りにゲタ助が色々と話し出す。ゲタ助自身のことや、エーと合体したことで今の形になった火常のこと。未来からやってきている敵のことの説明。

 全て火常がエーやゲタ助から既に聞いたり、実際に体験したことで火常からすればたいしたものではない。ただし、()()()()()()()()()については違っていた。

 

「じゃあ、次はこの街の小さな変化の原因について語る訳だが、おい火常。お前はこれについてエーからどれぐらい聞いている?」

「いや、何も。なんか専門の領域に入るとかで数時間の解説がいるんじゃないの?」

「……まあ、本格的に解説するならな。かいつまんで分かりやすく説明するだけならその必要はない」

「いやいや待ってよ。僕としてはその未来の専門の領域の解説とやらが聞きたいんだけど」

「別に俺も教授って訳じゃねえんだ。しっかり理解してるわけでもないし、そもそも難しい話はしたくねぇ」

「御兄様のお願いなのに聞けないってことかなー?」

「わざわざそんなことでナイフを取り出すな!!」

 

 ナイフをゲタ助の首元に突きつける有栖川と、羽根を羽ばたかせ威嚇するゲタ助。そんな攻防がありつつも、有栖川の兄の方が折れ、かいつまばれた分かりやすい説明がされることになった。 

 

「さて、これはまず前提条件なんだが──本来、過去に行った所で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……えっ?」

 

  それじゃあ、これまでの戦いはなんだったのか、という疑問が火常に浮かぶが、その疑問を言葉にする暇もなく、ゲタ助が話を続ける。

 

「俺のいた時代に存在するタイムマシンは基本的に過去専用だ。過去のどこかの時代に飛んでそして元の時代に帰る、往復専用。しかも、往復一回で壊れるって代物なのさ」

「……それが、未来が普通は変えられないってことになんの関係があるの?」

「それは今話したのとは関係なくて、もっと純粋な所に理由がある。例えば未来は無限の可能性があるなんてよく言われるが──それは未来がどうなってるか分からないから言えるセリフだろ?」

「成程、タイムマシンで過去に来たのなら()()()()()()()()()()()と言い換えられもする訳か」

「そういうこった。なんでも変えられないって訳ではないが、本来の歴史が歪むほど変えられはしない。とあるスーパーで本来の歴史より林檎が一個売れた、ぐらいの変化なら与えられるだろうな」

 

 そこでゲタ助は羽根の中からあや取りを取り出し、器用に左右の羽根で色々な形を作り出す。

 

「右羽根を未来、左羽根を過去とすりゃあ話は簡単だ。俺はこのあや取りで色々な形を作れる訳だが、作った後どの糸を通っても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もしも、未来を変えるとすれば──」

「糸を右羽根から外させるか、糸そのものを切るしかないってことかなー?」

「ああ、理解が早くて助かるよ」

 

 タイムマシンで過去に行った時点で決まりきった未来にしかたどり着かない。そう言われれば、確かにその通りかもしれないと火常は納得した。

 けれど、まだ途中に生まれた疑問は解決していない。だからこそ、火常は生まれた疑問をそのまま口にした。

 

「ねぇ、それだと未来から来ている敵達の行動は無駄ってことになる気がするんだけど……」

「いやいや、そんなことはないと思うよー?」

「えっ?」

「そうだね。そこのハゲタカ君の言葉が正しいなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「あっ、確かに」

 

 タイムマシンで過去に来た人達が与えられる変化は、スーパーで林檎を一個買う程度。仮に、これよりもう少し変化を大きく出きるとしても、人が一人死ぬ変化までにはならないだろう。

 では、ゲタ助の言っていることが間違っているのか──となれば、そういう訳でもないようで。

 

「言っただろ?どれだけ小さくても変化自体は起こせるってな。じゃあ、その小さな変化を積み重ねていけば良い」

「小さい変化を積み重ねる……?」

「別にバタフライエフェクトを狙うって訳じゃねぇんだ。一つの出来事に関係する小さな変化を積み重ねて、着実に大きな変化にしていく。そうすれば、揺るぎなかった筈の歴史の流れにも少しずつ陰が差すって訳だ」

「えっと、その……どういうこと?」

「さっきの例えで言えば、あや取りの形を変えまくって糸の耐久力を削りまくってるって事だ。そして、あんたら二人が死んでしまえば──あや取りの糸は完全に千切れて、()()()()()()()()()()()()()()()()

「あー、うん、なるほどね」

「……火常、お前何も分かってないだろ」

「いや、うん。そこまで大事じゃなさそうだからもういいよ」

「お前な……」

 

 火常にとって大事なのは、今この街に潜む敵を倒せさえすれば小さな変化がこれ以上起きないこと。だから、小さな変化の原因やその理由についてはそこまで知りたい訳でもない。

 ただ、有栖川とその兄はそうでもないようで追加でゲタ助に質問をしていて、ゲタ助も律儀にその質問に答えていた。

 そうなると、わざわざ難しい話を聞きたいと思ってはいない火常は自然に置いてけぼりになってしまう。つまりはだいぶ暇、という訳だ。

 

「……ゲタ助、あと橘と裁葉。僕だけなんか暇だしちょっと離れるね」

「ああ、それなら橘も火常君についていってくれないかな。ダミー部屋に入ってしまって閉じ込められちゃったら大変だし」

「承知しました御兄様……では、一緒に散歩と行こうか、平君。この家広いだけでそんなにたいしたものはないけど、案内はするよ」

 

 一人で適当にぶらぶらと歩くつもりが自然と有栖川に案内される流れになり、かといって火常からしてもまた閉じ込められるのはごめんな訳で──特に断ることもできず、再び外に出ていく有栖川に素直に着いていくのだった。

 

 


 

 

 たいして見所がないという話だったが、有栖川に連れられたその場所は見所と言っても良さそうな中庭だった。

 巨大なイチョウが生えており、それを中心とするようにいくつも花が並んでいる。自然が多く、どこか心が安らぐ場所だ。

 

「……そう言えば、僕のことはもう信頼してくれたってことで良いのかな」

「そうだねー、君たちの証言は一応筋が通っていたし、嘘も着いてなさそうだったからなね……まあ、少し警戒はしちゃうかもしれないけど一先ずは信頼できるかな」

「良かった……あの電流が辛いのもそうだけど、ナイフが刺さるのも結構な激痛でさぁ……」

「それにしては結構動けてた気がするよー?」

「動けないと終わりだったからね、そりゃあなんとでもして動こうとするよ」

「あはは、確かにー」

 

 そんな会話でとりあえず誤解が解けて、仲間になってくれたらしいと確認をして、火常はほっと胸を撫で下ろす。

 戦闘の経験がないとはいえ、異常な身体能力をしていた筈の火常に一手も打たせず完封してきた相手。しかも、簡単にこちらに激痛を与えられるときた。

 そんな相手が味方になってくれたのなら、安心するのは当然だろう。

 

「あっ、気になってたんだねどさ、君って本当に元男なの?」

「えっ、うんそうだけど」

「……本当に?」

「なんでそこで疑うの……?普通に男だったよ」

「でも、実は女性より男性の方が好きだったり……?」

「しないよ!いや、何その質問!?」

 

 突然のそういう話に思わず声を荒らげてしまった火常だったが、それとは対象的に有栖川はどこか安心している様子だった。

 

「いやぁ、君の姿が御兄様の好みにドンピシャでさ、私としては不安だったんだよねー」

「……なるほどね」

 

 そう言えば、この姿はゲタ助が未来の有栖川の兄が趣味に走ったものだと言っていたのを思い出す。そして、その好みはどうやら現代でも変わっていないらしい。

 お陰で変なことを聞かれてしまったと思いつつ、火常は一つ質問を返した。

 

「……そう言えば、橘は見た目を裁葉の好みに合わせてはいないんだね」

「あー、そうだねぇ。まあ、御兄様は私のありのままの姿の方が好きらしい──」

 

 そこで、有栖川の言葉は区切られた。突然()()()()()()()()()()()()

 

「なっ──!?」

「やあ、初めましてと二人とも。残念だけど死んで貰おうかしら」

 

 有栖川と火常の目の前に現れた一人の女。それは火常とエーが一度捕らえた筈の()()()()()()()()()()()()

 

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