英霊城兵六番勝負   作:ブロx

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Archer,The first Queen of Beach!





第三話 弓王のアルトリア

 

 

 

「正直怖い」

 

 ――素直に。数多の特異点を潜り抜けてきた立香は恐怖に震えていた。

刑部姫の助言によって井戸底から地上(チェイテ城)に上がり、誰にも見つからないよう物陰に隠れながら進んでいるが、この悪寒だけは如何ともしがたいらしい。

 

『先輩、大丈夫ですか?………かぼちゃの被り物を被った兵士達が闊歩しているようですが』

 

「ジャックオーランタンがあんなに…。これも全部兄さんのせいだっ」

 

『? 昔何かあったのかい?立香。

ちなみに私達の会話は万能(私)特製の魔術的なアレにより周囲には聞こえないから安心してくれたまえ』

 

 カルデア技術局特別名誉顧問の名は伊達じゃない。立香はぽつぽつと話し始めた。

 

「――天国にも地獄にも行けないジャックの話。ハロウィンの日に、何で皆パンプキンだのカブだのを飾るのか不思議だった私は、昔兄さんに訊いた事があったの。ずる賢くて、けれどそのせいでこの世をずっと彷徨い続ける破目になったジャックの話を。それ以来怖くて怖くて。

 だからハロウィンの日はしっかり戸締りして、家の中でジャックの魂に安らぎがあるよう祈ってる」

 

『成る程。殊勝と言えば殊勝だが』

 

『ですが先輩…っ、あれはジャックオー氏ではありません』

 

「しかしねぇ、マシュ…」

 

「マーちゃん。アレは次世代特殊パンプキンヘッドソルジャー達だよ」

 

 刑部姫が正解という名の待ったをかけた。

ちなみにエリザベートはパンプキン共にバレた!とか何とかで通信途絶中。

 

「パンプキンヘッドソルジャー??」

 

「元々はこの城を守る為に雇った人達なんだけど、英霊城兵達に騙されたんだか絆されたんだか、もしくは最初からそのつもりだったのか皆一斉に蜂起しちゃったの。そして全員メカエリチャンの手が加えられてる。…手強いから見つからないよう気を付けて」

 

「分かった。けどアレって、さ。パンプキンさんとは違うって事でいいんだよね?」

 

「うん、違うよ。アイツは姿形こそパンプキンヘッドソルジャーだけど、霊基が違うし、何より断ったの。英霊城兵達との取引を。そのせいであの井戸底から動けないみたいだけど」

 

「ふ~ん?」

 

『あの甲冑……、第六特異点を思い出します…』

 

「私もだよマシュ。ところで話は変わるけど、正直このままじゃ見つかるのも時間の問題じゃない?何かバックアップは無いんですか?所長」

 

『勿論あるわ。地下からの貴女達とは別で、ギルガメッシュ王が今チェイテ城の上空から威力偵察をしかけようとしています』

 

「王様が!? 何だか姿が見えないと思ったら!」

 

『我(オレ)に拝謁しない城主など根城諸共滅ぼしてくれる。と意気込んで出撃されました。それと殊更愉快な気配がするとか』

 

「そりゃあ、あんなの見たら確かに愉快確実だろうけど……」

 

まあしかしこれで何もかも上手くいく! この時だけ、立香はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 堪えきれない嘲笑の最中、高度を上げて、一人の王が下界を見下ろしていた。

夜天の頂は光を放ち、その光源たるギルガメッシュは傲岸不遜。黄金色のアイデンティティーを全身から発して、王は空の間隙に手をやった。

 

「中々に愉快な城だと感心はしたが。

――見るに堪えんな。王たる我の威容、とくとその眼と五臓に焼き付け失せるがいい」

 

 天翔る王の御座(ヴィマーナ)、その原典である空中戦艦からの景色は最悪な物で、例えるにしても何一つ比肩比喩出来る物は無し。それはある意味で唯一無二の本物であるという王好みの代物ではあったが、何事にも限度はある。

 だから適当な破壊力を持った宝物を、蔵より取り出す。

 

 それは何でもよかった。ただ何となく、今自身が必要かつこの場に相応しい宝物が出てくればそれで。後は投げて、或いは射出して、この城を灰燼に帰すのみと。

 

つまりいつも通りに、英雄王は腕を虚空から引き抜いていた。

 

「―――ぬ?」

 

 違和感。と言うまでもない僅かな予感が、王の指先に触れる。

それは灰燼などではなく、遍くこのゲテモノ城を、石塁の一片も残さず絶滅せよという彼だけの視点(無意識)だったのか。或いは、裂けるものなら裂いてみよ。全力であっても無理だけど。

 という、世人の目には見えぬチェイテピラミッド姫路城の挑発に、彼だけの剣が応じたのか。

 

「この城が其れ程の出来か?エア」

 

遊ぶように回り出す乖離剣が、王の手に顕現していた。

 

「―――待ちなさい」

 

「何奴」

 

 命令する。問いではなく。

何故なら彼我の距離は悪くもなければ良くもない。それは即ち敵からの迎撃・攻撃が来ればこちらに届き、同じくこちらの攻撃は絶対に届くという意味。無論のこと全て、あえてという名の『王の慢心』である。当然とも云うが。

 

 だから驚く事なくギルガメッシュは。空を飛び、不敬にも己と同じ視線上に現れたポニーテールの髪型をした英霊を睥睨した。

 ――疾く自害するが礼である。相手は、それが分からぬ凡夫ではない事を見抜いて。

 

「愚かな野心の火に焼かれ。貴方もまた、エリザ粒子を求めるのですか?」

 

「貴様は・・・、?」

 

「ならば、その火ごと消してあげましょう。ウォーターブリッツ世界チャンピオン・弓王のアルトリアが」

 

 英雄王の裁定が下る。瞬時に、堪忍袋の緒が切れた。

黒色のジャージを羽織った水着姿の女はこちらを消すと抜かし、王を名乗った。どれ一つとっても弁解の余地も酌量の要も無い。

 最古の王の判決。いと貴きそれはむしろ、地に伏し蹲い感謝すべき事柄であろう。

 

「天地乖離す開闢の星」

 

 手ずから示す。終りを始める。御剣を振り切る。エヌマ・エリシュと発音して。赤黒い円筒状のそれは、見るモノに起源の意識を思い起こさせるという。

 英雄王の全力その一端。対して笑う弓王(自称)は、手に持つ筒から水を発射した。それはまるで遊ぶ様であり、事実水鉄砲だった。

 

「愚かな野心は忘れることですね。アーチャー」

 

 宝具発動(エヌマ・エリシュ)により疑似的な時空断層が発生する。正に生命を許さぬ原初の星、原始地球その具現。

 そう謳われる『地獄』が水鉄砲の水と接触した瞬間にまるで水圧に押し戻されるようにまるでウォータースライダーを勢いよく滑っていくように。

 

分かったと言う様に消えてゆき。

 

 英霊城兵アーチャー・ハドマが放った水は、何の障害も無いかの如く真っ直ぐ乖離剣と英雄王に届いたのだった。

 

「お、」

 

・・・だからこの悪い冗談に。ギルガメッシュは口を開く。

 

「の、」

 

 信じられないを通り越した、何だソレはという懐疑と愉悦の心で。終始笑顔の何かに対して。

 

「遊びは程々に。分かりますね? おさらばです」

 

「―――れぇえええええええええええええええ!!!」

 

痛くもない感覚を最期に。英雄王は強制的に霊体化されていったのだった。

 

 

 

 

 

 

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