英霊城兵六番勝負   作:ブロx

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前作の反省を活かし、ここで一つ本作のネタバレをします。嘘吐きは真実と嘘を混ぜて喋るのが得意です。ご注意を。





第十話 生存率100% 上

 

 

 

 ―――見ろ、この銃を。これからは銃だけがこの世を制する。

 

いつもそう言われて育ってきた。

 

 ―――弾丸はついに嘘をつかず、銃剣は正直なまま。

 これからは何個も何種も、この銃の猿マネが世に出てくる事だろう。だが誰もこのライフルを超える事はない。

 

アホだと思った。だがそれ以上に美しかった。

 

 ―――時代が変わる。変えてみせる。俺のニードルガンが、この世界の基準になるんだ。

 

持ち合わせた錠前のノウハウと火薬と弾丸。それらの融合から生み出た革命的発射機構。

 

 ―――だってのに上のバカ共は誰も理解しない。戦列でもって敵の眼の前で死にてえ救えないクズ共ばかりだ。

 

この兵器は、どのような姿勢からでも装填と発射を可能にし、歩兵をより強固にする潤滑油になる。

 

 ―――戦争じゃ駄目なんだ。戦争は死人と金持ちしか生まないし、金持ちは自分に都合のいい現実しか見ない。だから生きてる人間が多ければ多いほど、このライフルの恐ろしさを味わい続ける人間が多ければ多いほど良い。

 

この男の名は歴史に残るだろう。銃の名と共に。

だから願った。

 

 ―――戦争ごっこだ。誰も死なない傷つかない、皆大好きな遊びの中で、俺の銃が永遠に使われ続けていればいい。

 

生存率100%の世界を。

 

 ―――遊び続けろ撃ち続けろ。そして刻み続けろ俺の名を。

 

だからこの銃の名は、

 

『 その願い。叶えましょう 』

 

今も。男が死んだ後もずっと残り続けてる。

 

 

 

 

 

 

 あれからどれくらい経っただろう。

・・・なんて言葉が擦り切れる位には、もう記憶が定かじゃない。

 

「一応自己紹介―――」

 

「貴方はパースエイ。私は藤丸立香」

 

 今回は。いや、今回も彼女は突っ込んで行くらしい。

何度も何度もやり直し繰り返し、今や手際よくライフルを手にしては弾を装填していく。

 

エリザ粒子で包まれた水は弾丸となり、敵に当たろうとも残害はない。

 

「おっきー?どうしたのそれ」

 

 ・・・人殺しの銃が水鉄砲(オモチャ)に早変わり。それがこの世界のルールだ。

 

「霊基を変えてみたんだよ」

 

「え。そんなん出来るの?」

 

「この世界は魔力とエリザ粒子が満ち満ちてるから、こっちからアプローチ出来ないかずっと試してたんだ。何度も何度も。

 そしたらやっと出来るようになって。だからマーちゃん、今回からはアーチャー姫の援護、期待してて?」

 

「ありがとう。少し楽しくなってきた」

 

「トライ&エラーは経験の蓄積。それをあのチャンピオンに見せつけてやろうよ」

 

「うん!」

 

「・・・行くぞ、お二人さん」

 

 射手が二人。それも近接仕様。だがそんなんで勝てれば苦労はない。

それはもう既に経験しているので、少し後に、今回も俺の視界は真っ暗になった。

 

 

 

 

「一応自己紹介―――」

 

「貴方はパースエイ。私は藤丸立香」

 

「私は刑部姫」

 

 さて、開始(いつもの)。しかし挨拶が増えた。近接射手(凸シューター)同士は気が合うのだろう。今回は二人でテキパキ装備を整えている。

 

『敵の誘導が上手くいかないのか?』

 

「うん。こっちの射線が読まれてる。しかも誘導出来たと思ったら、逆にこっちが撃たれちゃってた」

 

「誘導されてのはこっちだった。……みたいな感じ」

 

『釣りってやつか。なら逆転が必要だな』

 

「逆転?」

 

 今回のアドバイスの登場だ。何を訊いても、打てば響く。どうやら画面の向こうに見えるパンプキンヘッドは中々の経歴をお持ちらしい。

 

『何故敵を誘導出来ないのか?ではなく、そもそも何故敵はこちらを誘導出来るのか?』

 

それで勝てれば世話ないが。

 

「………。まさかハドマも?」

 

『おっきー、カバーよろしく』

 

「おっきー言うなっつの」

 

「ちょっとパースエイ、一つ訊きたいんだけども」

 

「あん?何だ」

 

彼女が尋ねる。どうやらやる気はまだあるらしい。

 

「第一回大会の時と今回の時。ヤツの、ハドマの戦法は変わってないの?」

 

「変わってないな。第一回目の方がまだ粗削りだったが」

 

「粗削り?」

 

・・・・・。

 

「砂浜を走ることに慣れてないのか、いまいち走り方がお粗末だった。今じゃあいい意味で見る影もないがな」

 

「………走り方…」

 

 どうやら今回は脚力に力を入れてみるようだ。

まさか足の速い奴が一番偉くて強いなんて子供じみた理屈を信じたりはしてないだろうが、この遊びに足の速さは肝の一つである。

 

「…砂浜を走るのってさ、」

 

「?ああ」

 

「どうやって走るの?」

 

「どうやって? こうやって」

 

「砂を足の裏で掴んで?」

 

「それ以外にどうやる」

 

「……でも、ハドマは」

 

そう言うと、彼女は自身の足の裏を手で擦り始めた。・・・小綺麗なものだ。

 

「こう…、……こう?」

 

「気になるなら外に出てやってみればいいだろうが」

 

「そうだよマーちゃん。こっちは準備完了だよ?」

 

「……うん」

 

 今回も彼女達は足早に小屋を出る。

しかしながら一つだけ違うのは、出撃の為ではなく確認の為ということだった。それは目新しい景色でもある。

 

「――こんな感じ?」

 

『はい先輩。いいスタートです』

 

「うーん、なんか違う感じ…」

 

「相手はサーヴァントだからね。そりゃあ、マスターであるマーちゃんとは違うんじゃない?」

 

「いや、多分同じだと思う」

 

『同じ………ですか?先輩』

 

「第一回大会の時は粗削りだったって事は、多分練習したんだよハドマも。何度も何度も繰り返して」

 

 視線に闘志を纏わせ、彼女はそう言った。・・・最後の言葉はこちらに遠慮したのか、凄く小さな声だったが。

 なので期待に応えて俺は聞かなかったフリをする。

 

「練習する時間なんざ無かったけどな。あの頃は」

 

「………うーん」

 

 反復横跳びのような、ダッシュ動作のような事を繰り返す彼女。一体それに何の意味があるのだろう。しかしその瞳には天啓のような物が浮かんでいた。

 

「あれ?―――まさかハドマって、」

 

『やっと繋がった!ちょっとまだ生きてるー!?子ジカ!!』

 

「うわあ、ビックリした!」

 

『通信です先輩!これは………エリザベートさんです!』

 

「え、ホント?今大丈夫なのエリちゃん!!」

 

『やっとパンプキンどもを撒けたわ…!今は城の中、姫路城エリアとピラミッドエリアの境界辺りに隠れているの。

 ようやっと人心地よ、もうやってらんないったら!』

 

「…ごめんね、時間かかっちゃって。でもすぐに助けにいくから!」

 

『え?別に大して時間経ってなんかないけど…。まあ、子ジカならやれるわよ!頑張って助けにきなさいよね!』

 

「うん!」

 

『ていうか今更だけど子ジカってば水着じゃないっ!?一体全体なにやってんの??』

 

「ウォーターブリッツだよ。今英霊城兵アーチャー・ハドマの世界に居る」

 

『英霊城兵!??!子ジカまさか、アンタあんな変態共と戦ってるの?!』

 

「うん、まあ」

 

『…マジ、なのね』

 

「・・・」

 

 ここからでは見えないが、画面に映っている誰かさんは大きく息を吸っては吐き、そして彼女を見つめていた。

 

『――じゃあアドバイスよ子ジカ。アイツらと真っ向から戦おうなんてしないで』

 

「それじゃあ勝てないよ」

 

『違うわ。奴らにとって勝敗っていうのは生きるか死ぬかじゃなくて、遊びに勝つか負けるかなの』

 

「?どういうこと?」

 

「・・・」

 

・・・・・。

 

『アタシの城を取り巻くエリザ粒子を英霊城兵がコントロールしているのは知ってる?』

 

「うん、そう聞いた」

 

『それはありとあらゆる場所に遍在しているの。つまりは子ジカ、アンタ達はこの特異点に来た時から奴らの影響を受けてしまうってわけ』

 

「そんな!?それじゃあ私達は最初からヤツらの思う壺ってこと?何それインチキ!!勝てるわけないじゃん!!!」

 

『少し違うわ、子ジカ。何も私達の体にエリザ粒子があるわけじゃあない。

 英霊城兵は膨大なエリザ粒子を使って各々世界という名の遊びとルールを造っている。そしてそれらは一度出来てしまえば覆せない。もしも覆してしまったら世界の否定になるからね。

 あとは発想の逆転よ。そこらにあるエリザ粒子を使って遊んでいるのなら、参加者であるこちらも使って遊んでやれない事はない』

 

『!そうか、確かこの世界にある水は簡単な呪文で弾丸に――』

 

「エリエリエリエリ」

 

 瞬時に意図を酌んだ彼女が自分の脚に掌を向ける。【水に向けて唱えると弾丸に加工される】というこの世界のルール(遊び)は、しかし【自身に向けて唱えるとその部位を強化する】。

 

―――成功だ。

 

 見えない何か、いや、ルールによって収束されたエリザ粒子は彼女のフットどころか脚部を綺麗にすっぽりと覆っている。

 

良いセンスだ。俺は素直にそう思った。

 

「これでようやく対等。あとは創意工夫して遊びに勝てばいい。――ってことだね?エリちゃん」

 

『その通りよ。チェイテの主として、私も少しはエリザ粒子を扱えるようになれた。だから奴らを撒いて逃げる事が出来たってわけ。 何かあったら連絡を頂戴?アドバイスが出来る筈よ』

 

「ありがとう!」

 

『…先輩、こちらのモニターには何も映っていませんが、脚の調子は如何ですか?』

 

「なんだかよく分かんないけど暖かい感じがする!」

 

『エリザ粒子…。やはりもっと調べてみる必要があるようね、ダ・ヴィンチ?』 

 

『もう始めているよ、オルガ。立香の脚には、それ以外何も映っていないがヒントはもらった。あとは万能らしく解析・研究と洒落こむさ』

 

『お手伝いします。ダ・ヴィンチちゃん』

 

「よし!今度こそ勝つ!!」

 

「おいちょっと待て」

 

 割って入った俺は空気を引き締めた。武器が増えて意気軒昂な彼女だが、その程度でヤツに勝てるとは思えないからだ。

 

「そんな付け焼き刃、しかもよく分からないモノをすぐさま実戦に投入? 練度も何もあったもんじゃねえ。俺には理解に苦しむな」

 

「そう?じゃあパースエイもやってみればいいじゃん」

 

「・・・ふん。忠告はしたぞ」

 

 今回は勝てるだろうか。同じ土俵に上がった程度で。そんな俺の不安をかき消すように、彼女は進み始めた。

 

 

 

 

 ハドマを発見。毎回の手筈通りに俺が後衛、彼女らが前衛。するとエリザ粒子を脚に纏い、人知を超えた速度で彼女はヤツに接近し始めた。

 

 それを見据えて。

笑顔の質を変えたハドマは感情そのままに吶喊。両者の激突はまたも彼女が水浸しになる事で幕が下りた。

 

「やっぱりな。そんなんで勝てりゃあ苦労しねえんだよ」

 

 なのでライフルを下ろす。またか、という感情すら既に無くして、今回も俺はヤツを見詰め続ける事となる。

 

「それだけじゃあ・・・・足りないんだ。アイツに勝つには」

 

 視界が変わる前に宣言する。――お前を撃ち抜くのはこの俺だと。するとついに、俺の視界は真っ暗になった。

 

そうしてまた世界は、ここから始まる。

 

「一応自己紹介――」

 

「貴方はパースエイ。私は藤丸立香!」

 

「私は刑部姫」

 

 変わらない挨拶、質が変わり始めた彼女の笑顔。諦めないという気概とエリザ粒子をその身に纏い始めた彼女達は、この世界の本質へと入っていった。

 

 

 

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