「戸締りをしてきます」
「いってら~。ちなみに何処の?」
「このお城ですよ勿論」
「あったまから爪先まで?」
「はい」
「キツくないそれ?」
「城兵ですから。すぐ戻りますのでご安心を」
「よろしく~」
許しが出たので、俺はツカツカ歩き始めた。かぼちゃの被り物は最早俺の身体の一部になりつつあり、鏡を見る度に笑いがこみ上げてくるのでモチベーションの維持に貢献している。流石はメカエリチャン先輩だ(棒)。
ちなみにマスターは黒渓谷?というエリアに到達した。
「やあご苦労さん」
「・・・」
途中で出会う同僚(パンプキンヘッドソルジャー)達に挨拶をし、ぺこりとお辞儀を返されるのを見ながら、姫路城エリアのチェックを終える。敵はいない。異常も無い。
階段を下りると、次はピラミッドエリア。
今更だけどホントわっけ分かんねえよなこの城。ピクト人共の城もわけ分かんなかったけどあれは攻防という意味でだった。分かんないという単語だけで表裏はっきり表せるのはこの城だけだろう。
「よし」
異常なし。また下りるとついに一番下、上層がぐっちゃぐちゃにされたチェイテ城エリア。
・・・ここも異常なしだな。同僚はきちんと挨拶するし、敵も何もいない。祭りの準備はいついつでも万端整っている。
俺は正門を出て、扉を閉めて、空を仰いでみる。チェイテピラミッド姫路城が意気揚々と視界に映り、ついで夜天の星が輝く。あの日のように。
夜空はいつでも青ざめている。
「あらフスカル。また逢ったわね」
「先輩。どうも」
「なに?見回り?」
「はい。異常なしでした」
「殊勝ね」
メカな先輩はニコリともせずに言った。
「―――星は、お嫌い?」
「・・・!」
「貴方、いつだって空を親の仇のように見つめるじゃない?気付いてないかもしれないけれどバレバレよ?」
「それは。 失礼しました」
「ああ、勘違いしないで。叱ってるわけじゃないわ。ただ何となく気になっただけだから」
同じく見上げて、機械の掌が星を翳す。
「星は綺麗だけど、同じくらいに怖い。だって手が届かないし、理解も及ばないモノだもの。理解できないものにヒトは恐怖する。違う?」
「まあ、そうですね」
俺は適当に頷いた。
「あら違ったみたい。じゃあ何かしら?まさかその昔、月か星にでも喧嘩を売られた?」
「売られたというか買われたというか。まあ、古い記憶です。苦手なんですよ、夜空と星が」
「――へえ?」
「すいません。恥ずかしいのでご勘弁を」
未熟な自分を見つめ続けてくれたから。いつだって気付きをくれたから。・・・・なんて、心底やんなっちゃうよ。
「そんな事より先輩はどうして? 祭りの決行の準備の程は如何ですか?」
「準備は勿論万全よ。…ただちょっと、あの古井戸がどうもね」
「? 井戸?」
そうやって視線の先を辿ると、そこには霊脈と言っても差し支えない場所があった。しかし井戸とはまた古風だ。俺はゆっくりと歩み寄った。
「へー雰囲気ありますねえ。古井戸の下が霊脈だなんて。誰かが居る可能性大じゃないですか」
覗き込む。深淵を覗く時、と言いたいがそこには何も無かった。
「異常なし、と。先輩、これで全てチェックOKです」
「了解。ではぐうたら姫の前でいつもの仕事に戻りなさい」
「イエスマム」
――何かがいるかも。どうやらそれは取り越し苦労だったようだ。何故かご機嫌な先輩と共に、俺達は城を上がっていった。
「ああ、そうそう」
「?はい」
「私は星空が好きよ?だって、同じだもの」
「流石ですな」
これこそがメカエリチャン先輩だ。俺はそう思ったのだった。