本作のようなネタ、さんざん脳内で膨らませ続けた割には文字には書き起こしたことなかったので、けっこう新鮮なんですよね。
それではいってみよう!
数日後。
あれから学人と遊羽は、役所に行って色々な手続きをしたり、トライアングル・シャッフル被害者の照明手帳をもらいに行ったりと忙しかった。特に学人は、愛しの妹の身体とはいえ、なれない女性の身体に色々と苦労していた。
そしてひととおり片付いた今日、学人はオカルト研究部とのビデオ通話を始めようとしていた。
このビデオ通話自体は、以前から部活動の情報交換とかその他色々の為に行っていたのだが、トライアングル・シャッフル以降はまだやっていなかったので、学人はドキドキしていた。
果たして彼らはどうなっているのか。入れ替わっているのか、そうでないのか。もしも入れ替わっているのならば、どんな風になっているのか。学人は不謹慎ながら、友人たちの変貌を想像しながらパソコンの前でワクワクしていた。
たかが友人同士のテレビ通話だというのに、学人は遊羽から借り受けた私服でばっちりと決めていた。化粧も何もしていないのに、髪をとかしてちょっとお洒落するだけで十分可愛くなった自分の姿を見て、改めて学人は遊羽の可憐さを思い知るとともに、今は自分が遊羽になってしまったのだと実感することとなった。
テレビ通話用のアプリを起動して数分が立ったころ、学人のパソコンにテレビ通話の通信がつながったことを知らせる通知が入った。
「あっ……来たか!」
慌ててインカメラをオンにする学人。
ごほんと、可愛らしい咳払いをすると、中二病モードに入って
「それでは、ただいまより定例会議を始める!」
案の定というかなんというか、中二病トリオは揃ってトライアングル・シャッフルの被害を受けてた。
アーバンアサシンこと影裏秀は、ちょっとギャルっぽい雰囲気の美少女に、ダークネスバトラーこと小野宗一は、北欧系の銀髪美少女になっていた。こうも3人とも美少女になっているあたり、明らかに何者かの作為があるんじゃないかな、と思わずにはいられない。
『どこの誰かも知らないが、すごい美人なんだよな。願わくば入れ替わるんじゃ無くて、普通にお付き合いしたかったものだが……』
『拙者らみたいな底辺が外国人美少女と付き合うなぞ夢のまた夢……今は美少女になった自らを磨き上げ、愛でる方が得策ではなかろうか』
「なんというか、ポジティブだよなお主ら」
影浦も小野も、全然へこんでいなかった。むしろ楽しんでやがった。
そりゃまあ、曲がりなりにも顔はよかった学人とは違って、影浦と小野は女の子に微塵もモテない陰キャ男子だったのだ。それが一夜にして、他人の身体といえども美少女になったのだから興奮は免れない。ある意味正当なる反応だった。
そんな2人の反応をディスプレイ越しに眺めていた学人は、友人ながら呆れると共に、どこか安堵していた。
「この馬鹿っぷり、以前と変わらないな」
『我が魔王、何かおっしゃりましたか?』
「いや何も?」
学人の独り言に気づいたら小野が聞き返してきたが、学人はすっとぼける。
こんな感傷に浸るのは自分らしくない。きっと2人は笑うだろうし、さっさと流してしまうに限る。そう判断した学人は、誤魔化すかのように咳払いをして、会話に戻る。
「は、話を戻そうか!兎に角お主らも元気そうで何よりだ!」
『それはそうと魔王様。まさか妹様になられているとは……』
「何か心配でも?どんな姿であろうとも、我は魔王ノンレオバットであることには変わりはない!それに愛しき妹になったのだ、我は今最高にハイテンションなのだ!ふはははははははっ!」
一緒になって高笑いをする3人。学人もなんだかんだ言って、テンションが明日の方向にぶっ飛んでいた。まだ昼前だというのに、すでに彼女らは深夜テンションに突入していた。
と、ここで学人はテレビ通話の本来の目的を思い出す。
「で、入れ替わりで何か変わったことはあったか?」
『この身体の主がどこの誰か存ぜぬが、拙者可愛すぎでは?』
『それになんだろうか。この姿ならばあらゆる言動が許される気がしてならないのです……見た目の変化って大事なのですね』
小野のいうとおり、この見た目ならば、いくら厨二病めいた言動をしようが許されそうな気がする。美少女フィルターの効力は馬鹿にならないレベルで発揮されていた。
……と、ここで学人が、通話開始時から疑問に思ってたことを口にする。
「そういえば、貴様らその服装はどうした?」
学人は2人の服装にツッコミを入れた。秀も宗一も、通っている学校の女子制服に身を包んでいる。が、学人の記憶では、たしか2人とも女兄弟は居なかったはずだ。一体いつどうやって新調したというのだろうか。
ちなみに学人は今、遊羽の服を着ている。いくらシスコンといえど、妹の服を着るのは恥ずかしかったのだが、ノーパンノーブラで彷徨かれる方がヤバいだろ、と家族から言われたので、渋々着ている。下着は流石に借りる気が起きなかったので通販で新調したが。遊羽もそれは嫌だろうし。
「その制服……どうやって手に入れたんだ?」
『ご存じないのですか?学校の方から届いたのでござる。入れ替わりの被害状況報告したら今朝届いたんだよね』
「ま?」
『マジです。我が魔王のところにもそろそろ届くのでは?』
「初耳なんだけど……いや、母上がなんか電話していた気がするが、それだったのか?」
なんてことはない。ただの配達遅延だった。
学人はてっきり、彼女らに以前からそう言う趣味でもあったのかと思ってしまっていたのだが、そうでないならば安心だ。
そして、話は近況報告に戻る。
続いてはそれぞれの家族の話をすることにした。やはりというか、影浦も小野も周辺環境が大きく変化しているらしく、ぱっと見は入れ替わりを楽しんではいるようだが、中々に苦労しているようだ。
『拙者はねぇー、母上がラグビー選手になったり、父上が女子プロレスラーになったりして大変でござるよー。家中どこ行っても筋肉しかないので落ち着かないのでござるよ~』
『私は兄が赤ん坊になりまして……てんやわんやなのです。今朝だけで2回も兄のオムツ替えをさせられました。このままだと母性本能に目覚めそうだ!ママになるうううっ!』
「お主達も大変だな……その点我は恵まれている、のか?」
どうやら2人は家族もそろって入れ替わりに巻き込まれているようで、慣れない身体に家族そろって四苦八苦している模様。特に小野の方は、成人済みの兄が赤ん坊になってしまい、実質的な要介護者と化しているので、その苦労は計り知れない。
その点未柴家は、学人も遊羽も年の近い人物と入れ替わっていてそこまで支障が出ていないことと、両親が無事なことを考慮すると、他よりはマシなのかもしれない。親からすれば、息子が娘になっていたり、もう一人の娘が赤の他人の身体になっていたりで、たまったもんじゃないんだろうけども。
そんな具合に自らの境遇に安堵していた学人だったが、その時、ノックもなしに部屋の扉が開いた。
今両親は出かけているので、学人の部屋に入ってくるような人物はひとりしかいない。
「何してるの?さっきからすっごい煩いんだけど」
「あ、遊羽ぁ⁉︎ 今テレビ会議中だから入っちゃらめぇ!」
学人はいきなり入ってきた遊羽に取り乱しまくって、慌ててパソコンの画面を自分の身体で覆い隠そうとする。言っちゃ悪いが、普段から中二病とシスコンをフルオープンしている癖に、今更何を恥ずかしがることがあるというのだろうか。遊羽も影浦も小野もそのあたりは全然わかっていない。
予期せぬ妹の襲来にあわわわと身体を震わせている学人に、遊羽はお構いなしに苦情を申し立てる。ちなみにテレビ通話はいまだに繋がりっぱなしなので、影浦達という聴衆も健在である。
「いや流石に文句のひとつやふたつは言いたくなるよ?近所迷惑にもなりかねないんだからさぁ……」
「そ、それは反省する。だがいきなり部屋に入ってくるのはどうかと思うのだが……一応プライバシーとかその辺とか……ねえ?」
「いや何恥ずかしがってんの……今のどこに顔赤くする要素あった?」
「恥ずかしがってなどいない!ただ遊羽が部屋に入ってくるのなんて数年ぶりだからちょっと心の準備とかそういうもんがまだ出来ていないだけであってだな――」
そんな感じに姉妹喧嘩……という名の茶番が幕を開けてしまった。
で、それを画面越しに見ていた影浦達はというと、
『ほう、なんともまあ……』
『…………百合でござる』
『とせがらと百合を一緒にするなってそれ一番言われてるから』
対岸の火事を眺めるがごとく、非常に能天気であった。というか、この光景を見てそう判断するあたり、割といい加減なのだった。
と、ここで遊羽がテレビ通話が繋がりっぱなしであることに気づく。遊羽は最初「この画面に映っている私好みの美少女誰だ⁉ 」と思っていたのだが、そもそも学人に女友達なんてできるわけがないので、即座に彼女らが中二病友達だということに気づいた。
「あ、この人達ってもしかして……ガク兄の同類?どーもお久しぶりです、愚兄がお世話になっております」
『同類とは失敬な。我々は
『遊羽ちゃん、タイプが変わったといえども美人でござるなあ。今の拙者には及ばないけどね!にゅふふふふふふっふふふふふっ!』
「何お前、他人の身体で調子乗ってない?私の方がお前よりもスーパー美少女だからな?」
「影浦も遊羽もよせ!なんでそこで喧嘩勃発するのだ⁉ 」
調子にのった影浦の挑発になぜか遊羽が乗っかりだし、学人そっちのけでバチバチとおっぱじめやがった。流石にこれは収拾がつかなくなるので、学人は慌てて遊羽を部屋から引きずり出すことにした。
「ちょ、なにするのよ!」
「騒がないようにするから、ね?ちょっと出ていってもらおうか、な?」
遊羽を力づくで締め出し、バタンと扉を閉めると、学人はその場に座り込む。
テレビ通話が繋がりっぱなしのパソコンから影浦たちが何か言っているのが聞こえるが、疲れからか、しばらくの間それは学人の耳には届くことはなかった。
少し後、遊羽の部屋にて。
遊羽はベッドに腰掛け、
「……やっぱり流花、ガク兄になってるんだね」
『ええそうよ。噂通り、この入れ替わりは"3人1組"の単位で発生しているとみて間違いないわ』
電話の相手は、遊羽の数少ない友人の平良流花だ。
遊羽が流花になっている以上、流花も必然的に誰かと入れ替わっている。彼女の入れ替わり先は――っ上記の会話内容通り、学人だった。
世界中で巻き起こったトライアングル・シャッフルには、ひとつの法則がある。
それは、入れ替わりは"3人1組"の単位でで発生しているということ。トライアングル・シャッフルという名前もそこから名づけられたものだ。なぜそうなっているのか、これが人為的なものなのか天災的なものなのかすらわからない中、それだけがはっきりとしている。
――という話はさておき、遊羽は電話口から聞こえてきた
笑うべきではないのだが、笑ってしまったものは仕方ない。
遊羽と流花は改めて近況報告に入る。
「で、どうなの?ガク兄の身体になって何か変わったことは――あるに決まってるよね」
『当たり前じゃない!胸ないし声低いし身体がっちりしてるし……そもそも股間に【自主規制】ぶらさがっているなんて……最高じゃない!』
「さっすが私の親友、反応が予想通り過ぎる」
そう。
類は友を呼ぶとはよく言ったもので、
そして、
端的に言うと、全力疾走していた。
『昨日……自家発電(意味深)してみたの』
「男坂全力疾走しすぎでは?」
『入れ替わり前まで履いていたパンツをオカズにシたら……2回も男汁を出した』
「堪能してるなあ……」
これには流石の遊羽も呆れるほかなかった。
まだ1週間もたっていないはずなのだが、流花はずいぶんと異性の身体を堪能しているようだ。女体を得た男が胸や股間に触れるように、男体を得た女もまた、股間の異物に興味津々なのだ。それは人類が持つ性欲からくるものであり、理性なんかでは説明しようのないものだ。
そんな感じにかなりオープンに楽しんでいる親友の様子を笑っていた遊羽だったが、そこに流花はある提案をしてきた。
『遊羽も折角だし楽しんでみたら?お兄さん……今遊羽の身体なんでしょ?』
「楽しむったって……」
『お兄さんに思いを伝える一世一代のチャンスなんじゃない?好きなんでしょ?』
「⁉ 」
その言葉を聞いて、遊羽は仰天した。
自分は今、何故流花に背中を押されているのだ?遊羽のブラコンは流花にさえ話したことがなかったというのに、だ。
当然ながら取り乱す遊羽。
「な、なんでそれを知ってるの⁉ 」
『バレバレなんだよね。親友だからそれくらいわかるっての』
「…………流石流花、なんでもお見通しなんだね」
どこからバレたのかは知らないが、遊羽は観念してそれ以上の追求をやめた。もしもそれを聞いてしまえば、恥ずかしさでおかしくなってしまうかもしれないからだ。
黙り込んだ遊羽に、流花は更なる提案をする。
友人として、その胸に秘めたる思いを押し上げるために。
『折角の機会だからいっちゃいなよ。お兄さんに伝えてしまいな!そしていくとこまでいっちゃうのよ!責任は取らないけどもね!』
「え、でもこれ流花の身体だし……」
『別にいいよ。私もこの身体で試したいことがたくさんあるからさ、お互いさまってことで、ね?』
「ちょ、流花――」
それだけ言うと、流花は通話を切ってしまった。
――やりたいようにやる。
確かに、今の状況は遊羽にとっても願ったりかなったりなのだ。学人は今遊羽の身体であるということは、レズとブラコンとナルシストを一気に叶えることが可能ということ。遊羽の身体になった学人を愛せば全部解決してしまうということを、遊羽は知っている。
あとは勇気の問題。
そして、それは。
乗り越えるにはあまりにも低い壁だった。
しばらくの間盛り上がりに盛り上がった
学人はパソコンの電源を切り、椅子に座ったまま伸びをする。すると、やけに大きな胸が視界の下半分を覆い隠してしまい、ちょっと赤面してしまった。
「……いかんな、まだ慣れない」
意図せず遊羽の女らしい身体を意識してしまった恥ずかしさを誤魔化すように、なんとか中二病の殻を被るが、無理して出した低めの声が余計に萌えキャラ感を出してしまったがために、それは逆効果に終わる。学人の望む望まざるに関わず、彼女が男の時のように振舞うのは難しくなっていた。
にしても、だ。
(影浦も小野もそこまで変わってなくてよかったな……)
見た目はともかく、友人たちの平常運転なふるまいには、学人もどこか安堵していた。
トライアングル・シャッフルによって、世界は大きく変わってしまっている。自分のアイデンティティを外から力尽くで変えるような災害に、誰しもが恐怖と不安を抱いている。学人だってそのひとりだ。
それでも、画面越しとはいえど、一緒になって影浦達と馬鹿をやれた。その事実は、学人の支えになったのだ。
そう思っていたその時。
「…………ん?」
コンコンと、ノックの音がした。
学人はそれを聞いて、即座に起き上がる。
「遊羽…………⁉ 」
そう、来客は遊羽だった。
だが、遊羽が学人の部屋を訪れるのは数年ぶりだ。学人の記憶が確かならば、遊羽が中学に上がってからは一度もなかったような気がする。それなのに、今日は2回も学人の部屋に入ってきている。一度目は苦情を言うためだったが、今回は何か違う。遊羽はうつむいたまま、顔を見せない。
遊羽のそんな様子を見て、学人は怪訝そうな顔をする。
ひょっとして具合でも悪かったりするのだろうか、と姉心から心配して遊羽に近づいて――
「なっ――」
次の瞬間、学人は遊羽に押し倒されていた。
その事実を理解するのに、学人は数分ほどを要した。
「ちょ、ちょっと遊羽⁉︎ な、な、な、何なのだこれは……」
いくらシスコンの学人といえども、妹にいきなりこんなことをされては平常心を保てるはずがない。必死になって中二病キャラを取り繕って平常心を保とうとするが、その口調は崩れに崩れていた。
顔を赤くした学人に覆いかぶさった遊羽は、耳元で囁くように、その胸の内を明かす。
ずっと隠してきた思いを、今打ち明ける。
「私ね、昔っからガク兄のことが好きだったの」
「⁉︎ 」
それは、学人からすれば驚くべきものだった。
今まで、彼女は自らの抱く思いは
しかし、だ。
「だけど、私は女の子も好き。だから、どっちかを犠牲にするしかないってあきらめてたの」
「……」
「だけど今はガク兄も私も女の子同士――おまけにガク兄は私の身体」
ごくりと、遊羽が唾を呑み込む。
学人は静かに、妹の告白に耳を傾けていた。
「わかる?今なら、私の思いが全部いっぺんに片付いてしまうの。この入れ替わりは祝福だったんだ。私の思いを実らせるために振ってきた奇跡なんだ。それが今になって分かった」
「……………………」
「返事、してくれない?一方的な愛って苦しいからさ、答えてよ」
最後に、遊羽はそう訊いてきた。
学人は、悩むまでもなかった。
「俺もだ、遊羽」
「…………!」
「嬉しいんだ。俺の思いがお前に伝わっていたことを知ってさ」
彼女の中にあるのは、思いが結実したことによる底知れない嬉しさだった。
トライアングル・シャッフルだとか、姉妹同士だとか、そういったしがらみは、この時点で2人の頭の中からきれいさっぱり吹っ飛んでいた。
互いに手の指を絡ませ合う。学人を押し倒したまま遊羽が身体を近づけてくると、2人の胸が重なり合う。男女では決して味わうことのできない、女の子同士であるが故の柔さが、学人の身体に伝わってくる。
「じゃあ、さ」
「………ああ」
ここまでくれば、言葉は不要だった。
学人と遊羽は目を閉じて、互いに唇を近づける。
それは愛の契り。どうしようもなくねじ曲がった世界に生まれた、歪みに歪んだひとつの愛。それをとやかくいうものは、この場にはいなかった。
心音が大きくなる。ふたりの唇の距離が近づいてゆく。
そして――
互いの唇が、触れた。
現実の時間にしては、それはごく短い間の出来事だった。
だが、この時の2人の主観時間においては、この瞬間はきわめて長いものに感じられた。
音も感触も何もかもを置き去りにして、快楽だけが唇を介して2人の脳へと伝わってきた。野暮ったい表現にはなるが、これがお互いにとってのファーストキスとなった。
そして、唇が離れた時――
「…………やっちゃったな」
「キスだけだよ?もしかして怖気づいてんの?」
「お前だってそうなんじゃないのか」
そこには、胸いっぱいの幸せがあった。
学人と遊羽は、頬を赤く染めながら互いに笑い合う。それは愛が実ったが故の嬉しさからなのか、はたまた緊張の糸がほどけたからなのかは、本人達にも分らない。
しばらく笑いあった後、遊羽は学人の上から降り、彼女の隣に寝転がる。
「今はこれだけ。続きはガク姉がもっと可愛くなってから、ね?」
「もっと可愛く……?」
「うん。だって、ガク姉って女の子のファッションとか何にも知らないでしょ?それじゃあいくら可愛い遊羽ちゃんボディでも宝の持ち腐れでしかないじゃん?だから、これからは毎日私と女の子の特訓、しよ?」
「待って、字面的にすんごいえっちなやつとしか思えないんだけど」
「わざとだよ。いやらしい妄想しちゃってさぁ……そーゆーところ、好きなんだよね」
蠱惑的な笑みを浮かべる遊羽に、学人は思わずどきりとする。
その顔には、普段のシスコン中二病の面影は微塵もなく、ひとりの乙女としての姿だけがあった。
そして。
遊羽の言葉に、彼女はどこか期待してしまっていた。
翌朝。
母親はリビングに現れた学人に対して、ある疑問をぶつけた。
「遊羽……じゃなかった、学人か。なんか……変わった?」
「間違えないでほしいものだな母上よ、それに俺は何も変わってはいない」
「いや変わってるわよ、親を見くびるんじゃない」
母親はそう言いながら、学人の隣を指さす。
そこには。
「ガク姉、今日もきまってるねぇ!最高にキュートだよコレ!」
「きまってるも何も……服選びからメイクまで全部お前がやったんだから当然だろう?」
「まあまあ……ガク姉も女の子なんだし、そのうち自分で出来ないとね?」
「とうっぜんだ!我が妹の可憐さを維持するためには労力は惜しまんよ!それがこの未柴学人のシスコン道だからなぁ!」
なんだかすんごいべったりになった姉妹の姿があった。
彼女らの会話は、とにかく猛烈に頭痛が痛くなるようなやり取りでしかないのだが、母親は長年学人の奇行を目の当たりにし続けたせいでそのあたりの感覚が麻痺しきっているので、とくに内容に突っ込むことなく家事を続けている。
――せめて、道だけは踏み外さないでほしいものだ。
傍から見れば狂いに狂っているけれども。
愛の形に外野がどうこう言う資格は――多分ない。
以下は、完全なる余談だ。
ある場所にて、服をはだけさせた男2人が抱き合っていた。
「気持ちよかったわよ……流花ちゃん」
「ええ最高だったわ……茜先輩……」
これ以上は深く語るまい。というか語っちゃ駄目だろう。
ともかく、端的に言うならば――
――混沌の中で咲くのは百合だけにあらず。薔薇もまた、混沌の中で花開くのだ。
これR-18にすべきだろうか。
いや事前と事後だけだからノーカン!ノーカン!
みんなハッピーですね(白目)
こう言うのを書いたのははじめてなので、色々と至らないと思います。
ですが、自分の心に正直になって書いたので後悔は多分ないです。ないったらないです。
元々トラシャ自体、健全モノでもえっちなやつでも両方の路線に舵を切れるようなデザインですので、今回の未柴姉妹編は、ある意味初期構想通りなのかな……?いや、さすがにここまでぶっ飛んだ奴らになるとは思わなかったけども。
次回はエッチくならないと思うので安心してください。