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繁華街の歩道を歩く黒いロングコート姿の2人組。
歩道側を歩く男の手には相変わらずスキットルが握られており、昼間からアルコール度数の高い蒸留酒を口にしていた。
そしてその隣の女性は携帯電話を片手に、何やら誰かと連絡を取っている様子。
「はい。了解です。……え?お土産?……じゃあ京都名物の八つ橋を―――」
「…………」
相手はマキマだろう。
相変わらずあの女はハルに甘い……
「―――っと。」
通話を終えたのかコートのポケットに携帯電話をしまう。その様子を横目で確認したバディの岸辺に問いかけた。
「マキマがどうした。」
「無事、新幹線に乗り込んだって。あとお土産何がいい?って。」
ハルの嬉しそうな様子が歩幅と歩き方に現れていた。そして時たま会話の節々で身長の高い岸辺を見上げるような姿勢はなんとなく幼さを感じさせる行動でもあった。
「元々は私がマキマさんと京都に行く予定だったんです。……京漬物に湯豆腐、湯葉に八つ橋に―――」
"食べたいもの全部リストアップしてたのに〜"と呑気に台詞を零す。
「それに。京都公安の人とも関わったこともなかったし、折角なら―――」
刹那、ピクっと2人の瞳が何かに勘づいた様子で蠢く。しかし2人は歩調を崩さず、肩を並べながら歩き続けた。
「岸辺さん。」
「お前が言いたいことは分かってる。」
「……」
「俺も"気づいてる"」
妙な視線が四方八方から突き刺さる。
―――何者かが自分たちを尾行しているのだ。
「……15m後ろに男性が2人。10m先を歩いてる2人組も怪しいです。」
「あとは真横の通りの白いワゴン車。俺たちのペースに合わせて動いてる。下手な尾行だ。」
「…………」
「俺たちが気づいたと思わせない方がいい。何も知らん顔してこのまま歩く。」
「はい。」
たった2人に少なくとも5〜6人の人間が追ってきている。理由は分からないが、ハルと岸辺がそこそこ面倒な奴だと分かっているのだろう。
「……何者でしょうか。」
「分からん。このまま動きがない限り泳がせる。」
「はい。」
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都会の景色から美しい山々の景色へと移り変わっていく。
マキマは窓枠に肘をつき、外の景観をじっと眺めていた。
「京都に何時に着くんだっけ?」
「あと30分ですね。」
通路側の席に座る付添の男性デビルハンターが腕時計を確認し、隣に座るマキマへと視線を向けた。
「じゃあ駅弁買っちゃおう。」
「……13時に会食がありますよ?」
「ちゃんとそれまでにお腹空かせますよ。」
久しぶりの地方出張、会食。傍から見れば条件は悪くなさそうな出張。
しかし、マキマはどこか不安げに不服そうな表情だった。
「京都の偉い人達と会いたくないなあ。皆怖いんだもん。ご飯は穏やかな気持ちで食べたいのに……
―――昨日のお酒、美味しかった……」
再びマキマの瞳が外の景観へと向けられる。
昨日の4課の歓迎会の様子が脳裏に浮かばれると、小さくため息混じりの吐息を漏らしていた。
「((帰りにハルちゃんに八つ橋買い忘れないようにしないと……))」
ぼーっと外に向けられたままの視線。
その脳裏に、今度はハルの姿が映し出されていた―――
「―――ッ!!!!」
その瞬間、引き裂くような機銃の音。
車内に鋭いピストルの音が一発、二発、三発と……空気をはね返すように響き渡る。
「ぁ……あ!……銃だ。」
「銃よ……銃……」
「この車両から離れよう……」
車内の客たちは目の前で起こった出来事に恐怖を覚え、それぞれがちりじりに他の号車へと逃げていく。
マキマと男の前後の席の4人が2人に向けて発砲したのだ。2人は頭や体を撃ち抜かれ、既に呼吸は無い。
「こちらC班、こちらC班
―――"開始"」
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公安対魔特異1.2.3.4課
各々デビルハンター達が職務を全うする今日。
彼らの傍らで銃声が響く―――
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"パンッ、パンッ、パン―――"
微かに聞こえる"音"
何かが弾けるような、叩くような音。
都内のとあるビル内に佇む中華料理店で昼食を摂る4人。
アキ、姫野、デンジ、パワー
「なんだ?こん音……」
ツルっと麺を口に吸い込み、微かに聞こえた音に反応するデンジ。店の窓の外から"それ"は確かに聞こえた。
しかし、その音は一瞬だった。今は静まり返り、青々とした空が静かに広がるのみ―――
「知らんとは愚かじゃの。太鼓の音じゃ。」
「祭りか……」
パワーの発言に対し、アキは特に不信感を抱く事はなかった。
そのまま4人は特に気にする様子はなく、昼食を摂り続けていた。
「な〜〜ウヌら昨日交尾してないのか?」
「意外と紳士なんだよ、デンジくんは!」
「な〜?姫パイ。それに比べて早パイはハル――」
「黙って食え。殺すぞ。」
「や〜だ〜、アキくん物騒……」
昨夜の飲み会。それらデンジにとってトラウマレベルの"ゲロチュー"を姫野から喰らうことに。そしてどうやら飲み会の後、デンジは姫野と共に彼女の自宅へと向かったそうだが……パワーの言う"交尾"とやらは行われなかったらしい。
楽しそうに食事を行う4人の傍ら。
通路を挟んだ隣の卓に座るガタイのいい男が口を開いた。
「ここのラーメンよく食えるな?……味酷くないか?」
その男はラーメンに視線を向けこちらを見ている様子は無い。独り言だろうか?にしてはやけに声がデカい。
「俺はフツーにうめえけどな。」
「ワシに気安く話しかけるな!」
"ただの変わり者か"
なんて、アキと姫野は特に相手することなく静かに食べ進める。予想通り、デンジとパワーはその男に食いつくように言葉を放っていた。
「味の善し悪しがわからないんだな。まあ仕方ないことだ。…幼少期に同じような味のモンしか食べてないと大人になってバカ舌になるらしい。―――舌がバカだと幸福感が下がる。」
男は箸でチャーシューを掴み、それをじっと不味そうに見つめていた。傍から見ればその行動は不快なものだ。
人がせっかく楽しく食事をしている傍らでそれをされるのはやはり気分が悪い。
「ワシ幸福じゃが!」
「……店、出るか。」
「別にほっときなよ、アキくん。」
立ち上がろうとするアキの腕を引けば、アキは半ば嫌そうに再び椅子に腰掛ける。
そして、その独り言男は更に言葉を言い放つ。
「俺のじいちゃんは世界一優しくてな。高い店でいいモン食わせてもらったな。……じいちゃんヤクザだったけど、正義の約束でさあ。必要悪っていうのかな、じいちゃんみたいな人はさ。」
「……何、この人…………」
"誰かの知り合いなのか?"と疑うほどに男は喋りを止めることは無い。通路側に座る姫野はさすがにその男に不信感を抱き始めると、じっと不思議そうな瞳を男に向け始める。
「―――デンジ。お前も好きだったろ?」
男は椅子から立ち上がり、胸ポケットから"ある写真"を取り出す。そしてその写真を4人に向け、恐らくはデンジを強く睨みつけている様子が伺えた。
「何のつもりだテメェ……」
「知り合いか?」
その写真に写っていた人物。
過去に借金を理由にデンジを雇っていたヤクザの老爺。そして隣に移るのは、幼い少年。
よく見ると男と顔がそっくりだ。この男の幼少時代、そして隣の老が"じいちゃん"だろう。
「"銃の悪魔"はてめえの心臓が欲しいんだとよ。」
男のもう片方の手から銃が現れる。
その銃口は4人へと向けられた―――
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「ハル。」
「はい。」
背負っていた鞘から瞬時に日本刀を抜き取る。
白昼堂々、銃口を向けられるのは初めての経験だ。
「一般人は任せろ。お前は標的を狙え」
「はい。」
冷静に指示を出すバディ。
ハルはその通りに動くだけ。
―――頭に響くほどの凄まじい銃声の音。
一般人がごった返す繁華街のど真ん中で"奴ら"は容赦なく発砲し始めたのだ。
ハルは培われた力でそれを交わし、銃を構える男たちに刃を貫いていく。
悪魔の気配は無い。
雑魚ならばこの刀で少し傷を与えればいい。
あとは、鬼の悪魔を使ってコイツらの目的を聞き出す。
「……桜。彼らは殺さない。刀だけ使わせて。」
「「―――つまらない。」」
「悪気はないの。」
桜の悪魔は意地が悪い。
代償が欲しいのか意味は不明だが、やけに艶っぽいその声は不機嫌だった。
次々と男たちをなぎ倒していく。
そして自分たちが把握していた人数よりもはるかに多い人数の男たちが自分たちを狙っていたらしい。
微かにまだ気配を感じる。
「((追尾していたワゴン車は逃走。……前後にいた男は暫く動けないはず。……あとは―――))」
ハルは路地裏へ続く薄暗い道を見つけると、口角に笑みがこぼれていた。
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「ッ……はっ……はっ……はっ!!」
銃を片手に逃げ惑う若い男。
その男は震える手で無線機を取り出せば、路地裏の死角に身を潜める。
「チクショー……なんだよあの2人。聞いてた情報と違うじゃねーか!」
黒いロングコートの2人組。片方は年老いた不気味な男、その隣の女はそいつのバディだと聞いていた。
公安のデビルハンターの中でも厄介な奴らだと予め聞いていたものの、予想以上の腕に驚きを隠せない。
「俺以外やられちまったし、……やっぱり無理だ!すぐに"サワタリ"さんに連絡―――」
「"サワタリ"って誰?」
男の隣に突如現れた女の姿。冷たく、感情を失ったような抑揚のないその声が余計に恐怖心を煽っていた。
「うぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
男は驚きのあまり素っ頓狂な声を出す。
恐怖で体が大きく震え、腰が抜けているのか冷たい地面に転がり込むように倒れ込む。
「コレって本物だよね?どこで手に入れたの?日本では警察とデビルハンター以外、所持も入手もできないはず。」
「ぁあ……ああ……たすけ―――」
ハルは足元にころがっていた銃に手を伸ばし、拾い上げる。そして銃口をなんの躊躇いもなく男に向ければ、路地裏に情けない男の声が煩いほどに響いていた。
「入手経路、それと狙いは?……私と岸辺さん以外も狙ったでしょ?銃声か他のところからも聞こえた。」
「あ……あぅ……あ……」
「……もー……喋れないの?」
恐怖のあまり声が出ないのだろう。
男はとめどなく汗を垂れ流し、ハルから逃げるように必死に体を這わせていた、
「…………おーい。」
ハルはその場にしゃがみこみ、男の脳天に銃口を擦り当てる。そしてその人差し指はそっとトリガーに添えられていた。
「ま……まって……まってくれ……っ……はっ、はなす!ぁあああ!やめろおおお!……」
錯乱する男。もはや会話にならない。
まるで物怖じする小鹿のようだ。
「―――仕方ないなあ。……使いたくないんだけど。」
ハルは冷たい声でそう呟けば手に持っていた銃を投げ捨て、右手で男の頭を思いっきり地面に叩きつける。
「……ぅ……なに……を……」
「大丈夫。殺さないし、すぐ終わるから。」
左手で自身の目元を覆う。
そして"彼"を呼び寄せる。
「……デーくん。」
黒い煙が背後から湧き上がる。
「「―――色は?」」
恐ろしい程に暗く、闇を含んだその声。
「……"赤"かな。」
「「片目だけと言いたいところだが、今回は両目だ。最近、お前からの対価は控えていたからな?」」
「構わないんだけど、全盲になるのは30分後にして欲しいかも。ここで私が動けなくなるのはかなりマズイ。」
「「…………」」
「お願い。デーくん。」
「「……分かった。その代わり期間は"5日間"貰うぞ。」」
"赤鬼"
主に自白を目的に使える能力。
その代償は"視力"。
全盲ひなるまで30分の猶予。そして今回の期間は5日間らしい。安いものだろう。
「優しいね。大好きよ。」
「「生意気で我儘な小娘め。」」
ハルの両手から赤黒い煙のようなものが湧き出る。それと同時に真っ赤な体の恐ろしい怪物が現れると男は大きな断末魔を上げ始めたのであった―――
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