戦姫絶唱シンフォギア 孤独な者たち   作:よなみん/こなみん

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お久しぶりです夜南 黒姫です~~
失踪+就職、転職ありまして無事戻ってこれました~

新年再開を機に、少しずつ止まってる作品を動かしていこうと思います。
皆様何卒よろしくお願いします~


5月にイナズマイレブンのゲーム出るけどあれほんとに出るのか…?
心配だ。


暗殺者の鼓動 編
「」


昆虫において最強とは。

 

力だけみれば「兜蟲(カブトムシ)」、素早さでいえば「蜚蠊(ゴキブリ)」や「蚰蜒(ゲジ)」、特性で見れば「(サソリ)」、「(ハチ)」、「蜘蛛(クモ)」などが候補に挙がるかもしれない。

 

なら、昆虫界の狩りにおいて最も狩りに適応した蟲とは何か。

 

鋭い尾と毒をもつ「(サソリ)」か。

 

それとも鋭い針を持つ「(ハチ)」か。

 

罠を張り、思考を巡らせる「蜘蛛(クモ)」か。

 

しかし、その三者に尋ねても「自分」が最強とは言わないのである。それどころか、三者が懸念する存在が立った一匹。空でも、地上でもないところにいるのである。

 

 

その名は「蟷螂(カマキリ)

 

 

地上と空の狭間で生きる昆虫界の「捕食者(プレデター)」である。

 

 

 

 

 

プロローグ「捕食者(プレデター)

 

 

 

 

「…」

 

意識を手放して、目の前の光景に「集中」する。交差するように引かれた横断歩道を多くの人が歩いていく。時間はまだ午前中というのもあり、仕事に行く人、学校に行く生徒たち、明らかにそれ以外の目的で来ている不良や変人…。

 

少女は一人、裏路地から目の前の交差点を眺めていた。一糸乱れず、背筋を伸ばしたきれいな直立で時間の流れを忘れるように目の前の光景にくぎ付けになっていた。

 

一度呼吸、二回、三回、息を整え「集中」を切らさないようにする。

 

「この娘スゲーな。この距離でも全然気づかないんだぜ」

「寝てますかーw?ダメだ。返事がないぜ」

 

全体黒のオフショルダードレスを着た、少女の周りを2,3人ほどの20代前後の若者たちが囲む。うち一人は既に彼女の肩まで手が伸びていた。

 

軽く肩に触れる。反応なし。次に腕、腕を軽く握っても反応なし。ダメ押しに脚、太ももに触れても反応がない。まったくと言っていいほど放心状態、あるいは「心ここにあらず」の状態だ。

 

「すげぇ…ホントに生きてんのかこれ」

「時間停止モノじゃねえの?どうせどっかからカメラが見てるって」

「大人の女には飽きてたんだ。恨まないでくれよな~」

 

一人の手が少女の秘部へと伸びたその時、彼の腕は無残にも宙を舞う。そのとき、だれも状況など理解できていなかった。

 

その時間わずか一瞬。誰も腕の存在に気付いてなどいなかった。ただ、一人を除いて

 

「うっ!?があァァァァァァッ!!」

 

人間は怪我をした瞬間ですら気づかない時がある。興奮状態によっては、また、それ以上の痛みを負った場合その箇所以外の痛みはその時にはなかったりする。

 

では一瞬、人の思考、神経が痛みを感じる前に腕を切った場合、その痛みが来るのかどうか。

 

明確な記述はないものの、人によるのではなど、この痛みに関しては曖昧である。

 

「君の言うとおりだったね「針金虫(ハリガネムシ)」…わかってる。殺すよ」

「ヒぃッ!?」

「騒ぐな。すぐに終わる」

 

そこから僅か0.2秒。一人の男の頭が消える。

 

男たちの視線は首のない男へとすぐさま注がれる。しかしその僅かな時間は少女にとって至福の時間でしかなかった。

 

もう一人へ追撃、少女が腕を振り下ろすと次の男はきれいに頭から真っ二つになる。

 

すぐさま視線は最後の男へ、最後の一人は倒れていた体を起こし、裏路地から逃げるように走っていく。車、ドラックや、バイクの排気音で裏路地の悲鳴が表道に鮮明に伝わるわけではないが。

 

「騒ぐな」

 

少女が男の上に乗りかかるようにして追いつくとそのまま男を押し倒し、おびえる顔の前には少女の大きな鎌が「今すぐにでも狩れるぞ」と言わんばかりに準備されていた。

 

「な、なんだよこれ…」

「「蟷螂の鎌(マントデア・サイス)」普通の人間じゃ。まず、勝てない」

 

蟷螂(カマキリ)」の名前の由来はどこから来たのか。そこには二種類の言われ方がある。

 

一つは「鎌で獲物を切る」姿から。

 

もう一つは「鎌を持つキリギリス」の意味であって、「藪螽蟖(ヤブキリ)」「草螽蟖(クサキリ)」などのキリギリスの仲間に含まれる「キリ」と同じである。という説の二つからきている。

 

ある昆虫学者が、「獲物を狩る際の姿が見たい」と、「蟷螂(カマキリ)」と食用の小昆虫を同じケージに入れておいた。

 

学者は今か今かと待っていたが、「蟷螂(カマキリ)」は枯れ木に止まり、その視線を下に向けるだけで数時間、動くことがなかったという。

 

やがて眠気が差し、目を閉じたその一瞬。

 

蟷螂(カマキリ)」の腕にはピクリとも動かなくなった小昆虫がいたそうだ。

 

「狩る」瞬間を見ていなかったその学者は「蟷螂(カマキリ)」の鎌のように発達した腕の中でピクリとも動かない小昆虫を見て、「カマキリが、その腕の鎌で仕留めたのでは」と考えたのだ。

 

蟷螂の鎌(マントデア・サイス)」は対人、主に狩猟用の武器であり、「つかんだ時には死んでいる」という「蟷螂(カマキリ)」の特性を生かした武器で、片刃だが折り畳み収納可能で普段は常に少女のスカートの中で眠っている。

 

「ゆ、ゆるして…」

 

そのあとも何か言おうとするが無残にも言葉は続くことなく、馬乗りのまま少女はその刃を男の胸に突き刺した。

 

「うん。ばっちりだよ。姉さん」

 

仮面を張り付けたような作り物の笑顔を浮かべながら空を見る。少女は「見えない何か」と会話をしながら裏路地に流れる風を身で味わっていた。

 

蟷螂の鎌(マントデア・サイス)」に付着した血を払い、鎌をスカートの中に収納する。

 

「よう、元気そうだな若いの」

 

何かと話していた少女の後ろ、大きな遺体袋を持ったニット帽をかけた顔にしわが目立つ「熟練者(おじさん)」が立っていた。後ろにはその仲間か複数人立っている。

 

到着してすぐ、仲間の人たちは死体袋を地面に広げ転がっている死体を片付ける仕事を開始する。

 

「「屍出蟲(シデムシ)」さん!お疲れ様です!」

「相変わらず派手にやったな。お前は「監視(サベイランス)」が任務だっただろう?」

「だってこの人たちが「生殖行為(セックス)」しようとしてくるんだもん」

 

蟷螂(カマキリ)」において「生殖行為(セックス)」とは。

 

蜚蠊(ゴキブリ)」や「白蟻(シロアリ)」と同じ分類である「網翅目」に分類される「蟷螂(カマキリ)」の生殖方法とは、「蜚蠊(ゴキブリ)」のように純潔を守り通すものでもなく、「白蟻(シロアリ)」のように一夫多妻制というわけでもない。

 

蟷螂(カマキリ)」の「生殖行為(セックス)」は静かに行われる。と、言うのも、「蟷螂(カマキリ)」という種族自体、闘争心の強い種族であり、生殖に来た雄を目の前にしても、雌の前では「ただの餌」でしかないのだ。性欲を持て余した雄が近寄っても、ただ雌に狩られて終わるという姿が目撃されているらしい。

 

では、「蟷螂(カマキリ)」の雄はどのように雌と「生殖行為(セックス)」を可能としているのだろうか。

 

結論でいえば「バレない」ことである。

 

蟷螂(カマキリ)」の雄は雌に狩られることを恐れ、背後や視界からゆっくり、ゆっくりと近づき、自分の生殖器を押し付けるのである。雄が上に乗り、雌が下の基本的な姿勢で行われる。

 

その時間長く4時間。雄がすべての「精包」を雌に流しこみ終えると雄は飛んで逃げるそうである。しかし、交尾の後で狩られたり、交尾前に狩り、その死体と交尾をする変わり者の雌も、稀にいるらしい。

 

「若者の乱れって奴だ。大目に見てやんな」

「むぅ。「屍出蟲(おじさん)」がそういうなら…」

「そういえば次の賞金の話は聞いたか?組織への依頼らしい」

 

「組織」。存在として「在る」ものの、その存在を誰も証明することができない。それ故に名前がないため「組織」と呼ばれる。

 

「組織」は今で言う政権のようなもの。しかし、「組織」の「ボス」はどの「蟲」でも正体を知らず。「ボス」の正体は「ボス」が認めた「蟲」のみに明かされる。

 

「そうなんですか。「熊蜂(クマバチ)」さんから連絡なかったからわからなかったです」

「そうか。目を通しておけよ」

 

その言葉を最後、死体を片付け終わった「屍出蟲(シデムシ)」はしたいのは言った死体袋を肩に乗せ両手で抑えながらその場を後にする。残された「蟷螂(カマキリ)」は腰からぶら下がっていた携帯を手に取りメールを開く。宛名は間違いなく「組織」のもの。内容を確認するためにメールを開く。

 

「…「ツヴァイウィング」の排除と「聖遺物(アーティファクト)」の回収…?」

 

そのメールが何を示すのかは。その時の少女にはわからなかった。

 

 

 

 

第1話 「死神(レグナント)

 

 

 

 

「お兄様…お兄様!」

「ぅん…あと三分」

 

カーテンの隙間から日差しが「少女」の柔らかい肌を照らす。そんな少年の体の上に馬乗りに乗る白のロングドレスを身にまとう少女は「お兄様」と呼び、少女の身体を揺らしている。

 

「ダメです!健康は早寝早起き朝ごはんです!「兜蟲(カブトムシ)」さんからもそう教わりました!」

「わかったよ…」

 

兜蟲(カブトムシ)」の名前を出されるのが嫌だったのか「お兄様」と呼ばれる少女は布団から身体を起こし、寝巻からいつもの服へと着替える。

フリフリの黒をメインとした中世の海賊をイメージしたロングスカートを着こなす。その後スカートを広げる。

 

「武器はこんなものか。今日は見回りだしね」

「では交代ですね、お兄様」

「うん。あとはやっておくよ「雛蟷螂(ヒナカマキリ)」」

 

雛蟷螂(ヒナカマキリ)」世界最小と言っても過言ではない「蟷螂(カマキリ)」の一族であり。「蟷螂(カマキリ)」の中では最も俊敏な狩人と呼ばれる。日本等で見られる。大人にはなるが、体長18-21mmの幼虫のように見える極めて小さい「蟷螂(カマキリ)」である。

 

雛蟷螂(ヒナカマキリ)」の狩りは主に夜に行われる。昼間に動く「蟷螂(カマキリ)」が多い中で「雛蟷螂(ヒナカマキリ)」は夜行性であり、その活動の多くを夜にするといわれてる。

 

「そういえばメール見ました?」

「見た。アイドル二人を殺せだってさ。生温い」

「簡単すぎてビビっちゃいますよねぇ」

 

昨日の「熊蜂(クマバチ)」からの組織全体へのメール。そこには「ツヴァイウィング」の抹殺、また、「聖遺物(アーティファクト)」の回収。どちらかをこなせば片方につき、「1000万」の報酬というメールが届いていた。

 

聖遺物(アーティファクト)」の回収が難しいにしろ、「ツヴァイウィング」の抹殺だけは二人には理解できないものであった。多少有名人とはいえ二人は一般人。その一般人になぜ「1000万」もの金がかかっているのか二人には理解できなかった。

 

「それじゃ。後のことはよろしくね」

「はい!お家は守っておきます!」

「行ってきます」

 

雛蟷螂(ヒナカマキリ)」が手を振る玄関を閉め。この集合住宅唯一の階段まで伸びる通路を歩く。少女の頭の中は「ツヴァイウィング」のことで頭がいっぱいだった。それは決して疑念ではなく、明確な殺意。

「罠」であろうとなんであろうと障害なら排除するという明確な意思であった。

 

蟷螂(カマキリ)」は獰猛故に引くことを知らない。待ち、近付き、狩る。この王道にも近い狩り方で今まで生きてきた。昔ながらの「捕食者(プレデター)」である。しかし、引かない行為が「蟷螂(カマキリ)」思考のによるものなのか、闘争本能故なのかは今でも明らかになっていない。

 

ゆっくりとした足取りで「蟷螂(カマキリ)」は自身の住む集合住宅を後にする。少しボロボロの集合賃貸だがこれも「組織」から提供されている物件である。彼女自身は住むだけならどこでもいいと判断し、目立ちにくいこの家を気に入っている。

 

「姉さん。今日はどこに行きたい?…カフェ?」

 

空を見ながら「また」見えない誰かと少女は話をする。近くを通る人は不審に少女を見るが少女は気にせず、見えない何かと話を続ける。その時、彼女の目の前に全体黒色の車が現れる。

 

「あら、弟子じゃないの。こんなところで何をしてるの?」

「「鍬形(クワガタ)」師匠」

 

黒い車とともに少女の目の前に現れたのは「果樹園(ポマリオ)」の管理者代理であり、彼女を育てたといっても過言ではないスーツに身を包む女性。通称「鍬形(クワガタ)」。

 

果樹園(ポマリオ)」とは、「組織」が経営する暗殺者養成機関であり、身寄りのない子供たちが主にそこに集められる。「果樹園(ポマリオ)」は社会から隔離された施設であり、それにより人権が少年少女たちにはなく、「鍬形(クワガタ)」、「兜蟲(カブトムシ)」の二人が今は管理者ではあるが、施設では彼女たちによる「虐待(ネグレット)」、「暴力(バイオレンス)」が日常的にあり、それが原因で命を落とす子供も少なくはない。

 

彼女…「蟷螂(カマキリ)」もまた、「果樹園(ポマリオ)」の出身であり、卒業生である。故に彼女とは先生と生徒の関係である。

 

「どこかへ行きたいの?先生が送ってあげようか?」

「自分で生きます」

「イイのイイの!かわいい生徒二人送ってやるわよ!」

 

蟷螂(カマキリ)」が「鍬形(クワガタ)」を無視して先に行こうとするが、先へ行く「蟷螂(カマキリ)」の背中を「鍬形(クワガタ)」が捕らえ、自分の車に引きずり込む。

片手で引きずり込まれた少女は

 

「遠慮を…」

「今日はおいしいご飯を食べるよ!レッツゴー!」

「未来はないのか」

 

近くのカフェ目掛けて二人を乗せた車が走り出す。

ここから交わることのない運命が交わることもこの時は知らなかった。

 

 

__________________________________________

 

 

 

 

「ちわーっす!コロちゃん!!」

「相変わらずか。「鍬形(クワガタ)

「お久しぶりです「蟋蟀(コオロギ)」さん」

 

都内某所のカフェ。お洒落な外観にレトロな内装。まるでこの場所が現実から離れているとも感じれる雰囲気のこのお店の名は最近有名になった店舗「Cricket (クリケット)」である。

普段は普通の人間も使う、至って普通のコーヒーや、その他スイーツなども提供するお店なのだが、その中には当然「組織」の人間も含まれる。

 

営業時間は朝6:00から夕方の18:00まで。しかし、夜になれば「組織」の集合場所ともなるまさに隠れ家、ともいえる場所なのである。

 

「お久しぶりだね。「蟷螂(カマキリ)」」

「今日は確か定休日では…」

「新メニューのお試しもしたくてね。今日は特別さ」

 

店内には多くの人がいる。机には普段ならアイスが載っていそうな容器にプリンが載っていた。

 

「あれが新メニュー…」

「そうだよ。だけど試作段階でね、まだ人前に並べれるものではないよ」

「ひとつ」

「はいよ。おまけで紅茶もつけておくよ」

 

蟷螂(カマキリ)」の前に淹れたての紅茶が置かれる。紅茶から立つ湯気がわずかに目に見える。隣に置かれたプリンを溶かそうとするぐらい熱いのが少女にはわかる。

 

「あの…自分、」

「いいんだよ。飲んでくれるだけで」

「いただきます」

「親父~ってあれ?いつものお義父さんじゃないのか」

 

Cricket (クリケット)」の扉が開く、扉の前には赤髪の背の高い女性、隣には、青髪の女性が立っており、そのすぐ後ろにはスーツを身にまとったSPのような男性が一人いた。

 

静寂が数秒。そこにいた誰もが状況を理解するのに時間を要したが、ただ一人は、柱を蹴り、すでに彼女たちの足元まで入り込んでいた。

 

「殺れる」

「二人ともお下がりを」

 

ただ一人、「蟷螂(カマキリ)」が二人の女性に接近するその直後、「蟷螂(カマキリ)」のスカートをその場に縫い留めるようにナイフが突き刺さる。

 

「…動けない」

「緒川さん!!」

「何が起きたんだよッ!!」

 

緒川と呼ばれたSPと蟷螂(カマキリ)の衝突、意識を一気に引き戻された女性二人は急いで緒川の後ろにまで下がる。

 

蟷螂(カマキリ)」は縫い留められたようにその場から動けず、「蟋蟀(コオロギ)」はテーブルから動く様子を見せない、「鍬形(クワガタ)」もその場からは動く様子を見せない。

 

「…何者(ナニモン)だよ。コイツらは」

「店内の人もまるで気にしていない…これは」

「黙れ」

 

数秒。たった一言放たれた言葉に三人は戦闘態勢にならざるを得なかった。

 

「「蟋蟀(コオロギ)」さん」

「ここは今、俺が仕切ってる。これ以上うるさくされるのは迷惑なんだよ」

「先に仕掛けて来たのは貴方たちでは?」

「君たちは自分の立場を理解しているのか」

 

緒川の放つ明らかな敵意に対して「蟋蟀(コオロギ)」は冷静に答える。そこに敵意はない。テーブルに居座りお茶を飲む姿は「自分は関係がない」と示しているようなモノであった。

 

「立場、とは?」

「…世間では立派な有名人だ。それに気づいていないとでも?」

「有名人と知っている割にはずいぶん無粋な言い方ですね。まるで我々のことをよく知っている言い方だ」

「知ってるわよ。あなたたちが思っているよりはね」

「「蛍蛾(ホタルガ)」また来たのか」

 

Cricket (クリケット)」の入り口。黒の縦セーターを着こなす女性が、入り口の三人を挟むような形で立っていた。名は「蛍蛾(ホタルガ)」。組織に所属する一人であり、情報収集を得意とする「蟲」である。

 

「まさか。1,000万の餌がここにいるなんてね。今をときめくアイドル。「ツヴァイウィング」の天羽奏、風鳴翼さん?」

「この二人が?」

「そうよ?それにこの三人には知られたくない秘密もあるの。ねぇ?四つ目の聖遺物の調子はどう?」

「…どこでそのことを」

 

その直後、全員の動きが一瞬にして止まる。その要因となったのは、全員の耳に聞こえた耳障りな不協和音。入り口で警戒していた三人も、店内にいた者も外にいた「蛍蛾(ホタルガ)」も耳をふさいで止まっていた。

 

「五月蠅い。ここは俺の縄張りだ」

「「蟋蟀(コオロギ)」。そんなに怒らなくてもいいじゃない」

「ふん。「蟋蟀(コオロギ)」は縄張りにうるさいんでな」

 

蟋蟀(コオロギ)」の泣き方は大きく分けて三種類あると言われている。

 

縄張りを主張するための「ひとり鳴き」

求愛を示すと言われる「誘い鳴き」

喧嘩を示す「争い鳴き」

 

この三種を生活の中で使い分けている生粋の演奏家である。また、この音を出す器官を使っているのは「蟋蟀(コオロギ)」の中でも雄だけである。雌は姿こそ雄に似ているが特別な演奏器官を鳴らすことはしないためか「鳴かないのが雌」という見分け方がある。

 

また、「蟋蟀(コオロギ)」は天然の気温計であり、温度が高ければ音が早く活発に鳴くものの、気温が低くなれば鳴く感覚も遅くなり、音も小さくなる傾向の生物である。

 

「帰れ。今日はここに来ない方がいい」

「…見逃すんですか?」

「雑食とはいえ、タイミングは今ではない」

「見逃すの?大金がいるのに?」

「「蛍蛾(ホタルガ)」ここは俺の縄張りだ。お前でも荒せば許さんぞ」

 

蛍蛾(ホタルガ)」はあきらめたようにセーターの長い袖から小さい手をひらひらと振りながらUターンして帰っていく。腰に置いてあった手にはしっかりUSBメモリ…「蛍蛾閃光(フェイクフラッシュ)」が握られていた。

 

「…俺たちのことは忘れて日常を過ごすんだな。アイドルさん。蟲は日常にいるものだ。お前たちが見ているもの、信じているものが正しいとは、限らない」

「…ご忠告ありがとうございます。見逃すというなら、これで」

「二度と会うことはないだろう。生きていればそれも変わるがな」

 

その後言葉を交わすことなく「ツヴァイウィング」たちは去っていく。店内には再び静けさが戻るが残された中で「蟷螂(カマキリ)」だけは納得のいかない顔をしていた。

 

__________________________________________

 

 

彼らが昆虫の名前で呼ばれるのは「」の存在があるからである。

 

「」は日本政府、世界の政府ですら知る人間が限られる「組織」である。その存在を知る人間は官僚はおろか、組織のトップですら知る人間は少ない。

 

「どうだ?」

「司令…駄目ですね、彼らの情報が一切ありません。あれほどの武力を持った人間、いったい何者でしょうか」

「俺たち以外にシンフォギアの存在を知る人間か」

 

彼らは闇に潜み、時に狩人としてその時を待っているのである。

 

 

 

 

 




少し怪しい描写等ありますが原作はそもそもエロ漫画ではないのでセーフで。

アラクニド、キャタピラーは原作完結済みなので是非見ていただければと思います。最高に面白いです。

この二点の後継作品であるプラトデアは現在5巻発売中なので是非こちらも読んでみてください。

たぶんしばらくシンフォギア要素は薄めです
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