エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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初投稿です。


第一部 
《でんじほう》


 

 

「セキタンザン!《キョダイフンセキ》!」

 

 

 

 

 

大きなスタジアムに巨大な岩石が倒れこんでくる。

ガラガラと山崩れのような轟音。

流れ込んでくる濁流のような土砂がこちらの生存域を奪おうと迫ってくる。

俺のポケモンは、あっという間に土砂に呑まれて姿が見えなくなった。

 

フィールドは岩で埋め尽くされ、巻き起こる砂ぼこりでライトが遮られてフィールドが暗くなる。

 

まるで大災害。天変地異。

 

 

 

だが、技を放った山のようなキョダイセキタンザンとそのトレーナーはこちらへの警戒を解いていない。

 

 

 

 

「可愛げのない奴」

 

隙くらい残してくれよ、と思いながら俺は土砂の中へと指示を出した。

 

「クワガノン!」

 

「ヤッテキマッシャー!」

 

土砂の中から小さな光輝くものが飛び上がる。

 

くわがたポケモン、クワガノン。タイプは電気、虫。

正直きついかと思ったがしっかり耐えてくれた。

小さな体に多くの傷を付けながらも、その眼光に陰りはない。

 

そして、指示なしでも準備万端だ。

 

クワガノンの眼前のハサミには既に高出力の電流が集まっている。

 

「…っ!セキタンザン!《ダイウォー」

 

クワガノンが既に「チャージ済み」な事に気付いたトレーナーが指示を出すが、もう遅い。

 

セキタンザンは既にダイマックス同士で殴りあった後。

ここしかない。次世代のチャンピオンと評される男に一撃をくれてやるべく指示を叫ぶ。

 

相手は山のような巨大さと暴威。

 

 

だが、クワガノンの火力ならぶち抜ける!

 

 

 

 

「いけええええええ!《でんじほう》!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの《でんじほう》が当たってれば俺の勝ちだったんだよ」

 

「僕のセキタンザンなら耐えたと思いますよ。すなあらしもありましたし」

 

控え室で未練がましく言っていると対戦相手のマクワから容赦ない《おいうち》が入った。

確かにセキタンザンには思ったより余裕があったかもしれない。ダイマックス対決の後だったが、あまり削れてなかったのだろう。セキタンザンは耐久面も優れているので、クワガノンの超火力でも通用するかは怪しかった。

でも!急所に入るかもしれないじゃん。キョダイマックスしてるんだから急所だって大きくなってるはずだろう。

《でんじほう》の命中率は50%。急所も当たるか当たらないかで50%。

 

 

つまり当たってれば急所に当たってたはずだ。

 

 

勿論俺は大人なのでそんな言い訳はしない。歯軋りをしながら悔しがるだけだ。

 

「ぐぎぎ…」

「やめてくださいよ、お互いもう子供じゃないんですから」

「まだ18だい!」

 

呆れてため息をつかれてしまったが、まだ18だ。多少落ち着きがなくても許されるだろう。

あとまあ親しい間柄だしね。流石に誰の前でもこうじゃない。

 

「後輩も増えてきたんですから、もう少しスマートにお願いしますよ」

「悪かった悪かった。以後改めるからとりあえず飯でも行こうぜ」

「…負けたあなたの奢りで?」

「勝ってファイトマネー貰っただろお前!割り勘だよ!」

 

言い合いながら二人して控え室を出ると部屋の前で人が待っていた。

女の子だ。マクワのファンかな?道着を着てる辺り格闘家…どっかで見たことあるなこの子。

かくとうジムの子かな?

 

「お疲れ様です!アベリさん!マクワさん!」

 

ビシッと音がするような礼をいきなりかまされる。

まるでねこだましのような先制技を喰らって、俺はひるんでしまう。

 

「お疲れ様ですサイトウさん」

「えっ知り合い?」

「あなた、新しいジムリーダーくらい知っておいて下さいよ。今期からかくとうジムのジムリーダーのサイトウさんですよ」

「マジか」

 

ふかーいため息をつかれてしまった。

今、俺の目の前で強い存在感を放つこの子はどうやら新しいジムリーダー。

健康的な褐色肌と勝気そうな眼がすっごい人気出そう。何ならもう俺より人気ありそう。

 

「因みにゴーストジムも変わりましたよ」

 

マクワ君、《おいうち》上手いね。岩タイプじゃなくて悪タイプの方が向いてるんじゃないの。

 

「悪いサイトウさん。俺、ギリギリまでちょっと忙しくて…ごめん!」

「いえ、こちらこそご挨拶が遅れて申し訳ありません!かくとうジムリーダーに就任しましたサイトウです。未熟な身ですが精一杯やらせていただきます」

「うわぁ礼儀正しい」

 

見た感じ、俺やマクワより年下っぽいのに。

 

前まではジムリーダーの中でなら俺達が最年少だったけど、俺達が先輩かぁ。

あ、かくとうのおっさんもゴーストのおばさんも引退か。

フェアリーの妖怪ばあさんは全然引退しそうにないけども。

 

「それで、アベリさんに聞きたいことがあるのですが」

「俺に?」

 

思わず確認してしまう。未来のチャンピオンとも名高いマクワじゃなく俺?万年マイナーリーグなのに?

 

「ふふん、何でも聞いてくれていいぜ」

 

少し得意気に思いながら先輩風をびゅーびゅーとおいかぜにする。

 

「先ほどの勝負、何故クワガノンに《でんじほう》を指示したのですか?確かアベリさんのクワガノンは他の電気技もありましたし、それが当たれば麻痺の可能性もあったと思うのですが」

 

………。うん。痛いところをつくね。

かくとうジムなのに脳筋じゃねーやこの子。

 

そうか。麻痺の可能性があったか。

確かに《ほうでん》とかなら《でんじほう》より命中しやすく、当たれば麻痺も狙えた。

麻痺ならセキタンザンの動きが鈍ってもう一度攻撃出来る可能性もあった。

うんうん。正しい。この子はきっと強いな。

 

でもきっと、俺はあの状況がくればもう一度《でんじほう》を選ぶだろう。

理由はある。

何故なら‥‥

 

 

 

 

「そっちの方が楽しいだろっ!」

 

俺はこのポケモン人生を死ぬほどエンジョイすると決めているのだ。

 

 






アベリ
マクワと 同期の 若き むしのジムリーダー。
スタイリッシュだが 堅実な マクワとは
対照的に 試合中でも 落ち着きがない。
実力も 対照的で メジャーに上がった
経験は なし。 
目立つために サングラスを かけ始めたが
同じタイミングで マクワが かけ始めたので
外すタイミングを 見計らっている。


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