エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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にげごし

 

 

「『そうとうゆうしゅうなのうりょく!推薦には問題ないと思います』っと」

 

一応、資質を見極めて欲しい、という話だったので俺なりにビート君についてまとめたレポートを書いておいた。

よし、アベリはレポートにしっかりとかきのこした!

 

ビート君はあの後また怒って帰った。

「ジムリーダーに勝ったのにこれじゃ全然自慢になりません!」とか何とか…。

肩を怒らせる主人に反してミブリムは妙に楽しそうに付いて行ってたが。

 

それにしても、ずっと怒ってたな。ビート君。

だが、あの生意気さも納得の優秀さだ。

タイプ相性は当然としてバトルの組み立て方はちゃんと理論立ててやっていたし、とくせいについての知識なんて俺より詳しい。

俺知らなかったよ、《マジックガード》なんて。あの後スマホロトムで調べちゃった。

 

ただ、あんまり他人とのバトル慣れしてなさそうな感じはあったな。

いや慣れてないのはバトルじゃなくてコミュニケーションか?

地元のガキ達が変なだけで子供なんてあんなもんだっけ?

 

‥‥ま、その辺はちゃんとした先生とか別の人が見ていてくれるだろうし、書かなくていいか!

 

俺にはよく分かんないや。人を指摘出来る程、自分の事を出来た人間だとは思ってないしな。

一回バトルしただけだからバトルの事だけ資質を見ればいいだろう。

「さーて」

久々に堅苦しいことをしてしまった。ぐーっと身体を伸ばすと軽い音がする。

忘れない内に、とその場で書き始めたので気付けばエンジンシティは真っ暗だ。

たまには都会で外食でもするか。ジムのポケモン達にはお土産持って帰ってやらないと。

この辺ってどんな店があったっけなぁ。

 

「ロートロトロト!」

 

スマホロトムが鳴った。画面に表示された発信者を見て、一瞬困惑。

しかし、すぐに出ないのもまずい。すぐに電話を繋いだ。

 

「はいもしもし」

 

『やあ!ローズです。今回はご苦労様。レポート読ませてもらったけれど、君らしくていい文章でしたよ』

 

ガラルのトップが急に直電かけてきた。

ビビるでしょこれ。俺の感覚からすると大統領みたいなもんだぞ、この人。

いや、電話番号知っているのも当然だし、マクロコスモスから連絡は来ると思ってたけどね。

てっきりオリーヴさんからちょっと電話来て終わりかなって。

「お疲れ様です、ローズ委員長」

『いえいえ、ジムリーダーの君達に比べれば私なんて全然ですよ』

そんなわけねえじゃん。

年中暇な俺と違って秒刻みでスケジュール埋まってる人が何か言ってるよ。

『一応、電話でも聞いておきたいと思ったんですよ。今、大丈夫ですか?』

「大丈夫ですけど…」

店を探しながら歩いていると、街頭テレビがあった。

今日はどうやらチャンピオンダンデの主催で、アマチュアの大会があったみたいだ。

大会はライブ中継されていて、この後はダンデさんと優勝者のエキシビジョンマッチらしい。

観覧席にはローズ委員長も来ているとアナウンサーが言っている。え?この電話もしかしてそこからかかってきてんの?

通話がテレビに流れるわけでもないのに、何故か緊張してきた。

『彼‥‥ビート君でしたね。ビート君、どうでしたか?』

「書いた以上の事は分かりませんけど、才能は凄いですよ。セミファイナルには間違いなく来ると思います。特に自分のポケモンへの理解が凄かったですね」

俺以上に詳しかったからな。

間違いなくセミファイナル優勝!とは自信を持って言えないけれど、対抗馬が居ないなら順当に優勝すると思う。

『なるほど。そういえば、君もエースはエスパータイプでしたよね。やはり親近感のようなものが?』

 

……。

ビート君の相手に俺が選ばれたのそれが理由かぁ。

「まぁ多少は。ジムチャレンジの頃の俺と似てるかなと少し思いましたね」

『そうでしたか。彼のジムチャレンジが楽しみになってきましたよ!』

結果までは似ないで欲しいけどね。

俺の場合はマクワにプライドへし折られて酷い有様だったから。

ビート君のプライドは優しく折られて欲しいもんだよ。

『ところで最近君の試合ではキョダイマックスを使っていないようですが‥‥おっと、もう時間だ』

街頭テレビでは、エキシビジョンマッチが一瞬で終わり、CMの後は大会終了の締めの挨拶をローズ委員長が。と言うところだった。

ひぇぇ。やっぱり忙しいじゃん。

俺なんかに電話してちゃ駄目な時間だったんじゃないのこれ。

『ああ、そうだ。この後ダンデ君も誘って食事の予定なんです。アベリ君もどうですか?』

まだ話も聞きたいし、と。

気軽に誘ってくれるけど、その組み合わせに俺混ざるの?

ガラルのトップ会談みたいなもんじゃん。

多分俺が食べたことないようなたっかいレストランとかでしょ?

俺のお腹がぐーっと鳴る。電話口で拾ってない事を祈ろう。

高級料理は食べたいけどなぁ…!そんな状況で食べても味しないよ…!

「いえ、遠慮しておきます」

『えー?残念だなぁ。ダンデ君も君に会いたいんじゃないかな』

「ははは」

『今度また誘いますね。では、お互いガラルのために頑張りましょう!』

電話が切れる。テレビではスマホロトムをしまいながらスタジアムに現れるローズ委員長の姿。こっわい。マジでギリギリまで電話してたよあの人。

 

それにしても‥‥ダンデさんが俺に会いたがってる?

冗談だと思うけれど、本人が言っているんだとしたら恐ろしい話だ。

「でも言いそうだなー…」

正直な話。

 

俺がチャンピオンに会いたくない。

 

ダンデ。

無敵のダンデ。

俺のセミファイナル直後。

俺がマクワに負け、マクワがメロンさんに負け、そのメロンさんがチャンピオンに負けた後。

プライドがへし折れた直後の俺は言ってしまったのだ。

 

『君も素晴らしい戦いだった!これからも俺のライバルとして、一緒に強くなっていこうぜ!』

 

激戦を終えて、楽しそうに俺に笑いかけてくれたチャンピオンに。

言ってはいけない事を言ってしまったのだ。

 

 

『何、言ってんだ‥‥?』

 

 

 

 

 

『誰も、あんたのライバルになれるわけないだろ…?』

 

 

 

 

 

その年のチャンピオンカップは一方的なものだった。

メロンさんはダンデの手持ちを一匹も落とす事が出来なかった。

みんな、ド派手なキョダイマックス同士の激突で誤魔化されていただけだ。

勝負になってなかった。

そもそも誰も、勝負になんてなってないんだ。

あのキバナさんだってダンデに勝ったことはない。

ライバルってのは勝ったり負けたりを繰り返すような相手じゃないのか?

 

プライドがへし折れた直後の俺に、あの戦いは劇薬過ぎた。

 

だから、つい本当のことを言ってしまった。

 

だけど。

 

無敵のはずのチャンピオンが傷ついたのを見たのはその時だけだ。

 

それ以来、チャンピオンには会ってない。

集会やイベントでは、お互い見ているんだけどね。

「ちゃんと謝らないといけないんだけどなぁ‥‥!」

頭を抱える。

あれは俺が子供過ぎた。

それは分かっている。でも、改めて謝るのも何か傷口を掘り返しそうというか…。

チャンピオンは、案外気にしてなさそうだけど。

だからって謝らないのも気持ち悪いというか、俺が気になる。

 

「メジャーに上がったら、胸を張って謝ろう」

 

メジャーに上がれば、チャンピオンと会う機会だって増える。

絞り出すように、目標を確認する。

そう。とりあえずはメジャーリーグに上がろう。

俺はそう思って、アーマーガアタクシーを呼ぶことにした。

 

外食の気分はすっかりなくなっていた。

 

 

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