エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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今回はマクロコスモスのモブ視点です


かいしゃいん

どっかのジムリーダーがスタジアムを大規模にぶっ壊した。

 

おかげで俺達は大忙しだ。

もっとも、元々ポケモン達が全力で戦うための設備だ。

勿論すぐに直せる事を前提に色々と設計も練られている。

まず設備の点検。全体の被害状態を見ない事には始まらない。

今回はここが難航していて、あがってくる情報を一つずつ整理して修理の計画を建てるのが俺達の仕事だ。もうグラウンドを全部掘り返す事になりそうだが…例えそうなっても何日かあれば復旧できるようになっている。

 

そうじゃなきゃダイマックスなんて危険なもの動かそうなんて話にはならない。

 

マクロコスモスで働いておきながらこんな事を言うのはあれだが…。

これだけ暴れても問題ないとアピールすることでダイマックスの安全性を観客に分かりやすく伝えているわけだ。

もうダイマックスを興行にして9年近く。

ほとんどの観客は危険視なんてしてないと思うがね。

ダイマックスポケモンの技をキャーキャー言いながら見ている。

その安全性、うちが頑張っているからなんですよお客さん。

まぁ、喜んでる観客を見ていると、このシステムを開発したのは俺ではないのにちょっと鼻も高くなるさ。

 

「ぐぁー」

 

ただシステムは完璧でも、それを回す俺達まで完璧ではない。

オリーヴ様だったら問題ないんだろうが‥‥流れてくる情報を図案に整えて、各建設業を請け負っているマクロコスモスの関連会社と連携を取って…そんな事をしていたら二徹目。

俺の机の上でホーホーが心配そうに見ている。

こいつも最近外に連れ出せてないな。ちょっと太ったか?

「ホー!ホホー!」

「ああ、わかったわかった。ありがとよ」

ホーホーが鳴きだした。怒ったわけじゃない。

こいつはいつも決まった時間に鳴き出す。

時計より正確だっていうので、俺みたいな休憩時間を逃したくない社員からすればいい相棒だ。

どうせ今はもう各社からの連絡待ち。ちょうどいいからお昼にすることにしよう。

 

 

 

 

ホーホーと一緒に社員食堂に向かうと先客がいた。

 

「あっ先輩!お疲れ様っす!」

モンメンを頭に乗せた後輩がスマホで動画を見ながらラーメンを食っている。

俺はホーホーに食券を託し、席に座った。

 

「お疲れ様。何見てんだ?」

「アベリの試合っすよ!」

アベリ…?見せてくれた画面を見るにジムリーダーみたいだけど、聞いたことない名前だな。ダサいサングラスを付けた若い男がやけに楽しそうに戦っている。

 

「こんなジムリーダー居たか?」

「万年マイナーっすからねぇ。俺も今年から見始めたんすけど、結構面白い試合が多いんすよ」

「へー‥‥」

画面ではでんきのジムリーダーとお互いに《でんじほう》を外しあう変な試合が発生している。ひっどい試合だな。こいつらホントにジムリーダーなのか?

 

「結構若いんだな」

まぁ、後輩はファンみたいだし悪く言わない方がいいだろう。

「マクワ君とジムチャレンジ同期らしいっすからね。ジムリーダーになったのも何の因果か同じ年だったみたいっす」

「ああ、マクワなら分かる。だとすると…3、4年目くらいになんのか?」

未来のチャンピオン!とかで各局も大々的に取り上げていたからな。

とある理由でリーグ戦なんてもう見なくなったが、マクワの名前は聞こえてきた。

 

「最近はジムリーダーの入れ替わりが激しすぎて、ほとんど分からんなぁ。俺が一番熱心に見てたのはダンデより前の世代だし」

「ここ十年でメジャーのジムリーダーはごっそり変わりましたもんねぇ。フェアリー、こおり、ほのお以外はほぼ総入れ替えになったんじゃないっすか?」

「本社がリーグ改革に乗り出した結果ではあるけどな。ダイマックスの扱いが上手い若手の方が…‥‥待て。フェアリーってまだポプラさんなのか!?」

ズルズルとラーメンを啜りながら「ふぁい」と返事。

あの人、俺の親父が子供のころからジムリーダーやってるはずだぞ。

「もう俺が爺さんになってもポプラさんがやってそうだな」

「流石にそれはないんじゃ…」

 

ホーホーが頼んでいた料理を持って来てくれたので、トッピングのきのみを分けてやる。

こいつこれが好きなんだよな。そのせいでついつい毎回同じメニューを頼んでしまう。

 

「おっ勝った」

どうやら《でんじほう》合戦はアベリの方に軍配が上がったらしい。

クワガノンの強烈な一撃を食らって対戦相手が景気よく吹っ飛んだ。

 

「というか思い出したんだが、アベリって今俺達が忙しくしてるスタジアム破壊の犯人だな」

「ははは、あのアイアントは凄かったっすねー‥‥配信見ながら俺も悲鳴あげちゃったっすけど…」

スタッフとして裏方を知ってしまうと誰だってそうなる。未だに被害額、算出出来てないからな。試合上でのことだから仕方ないが‥‥。

「やっぱりダイマックスってやばいっすよねー。今のスタジアムの根幹作ったオリーヴ様はマジリスペクトっす」

「本人は納得いってないらしいけどな。出来れば管理職じゃなくて研究職に戻って作り直したいって聞いたことあるよ」

「マジすか。副社長なのにもったいねー」

まぁ、オリーヴ様から直接聞けるわけないから噂で聞いただけなんだが。

俺達みたいな下っ端からは信じられない話だが、能力を持つ人間には能力を持つ人間の苦労があるらしい。

少なくともオリーヴ様が社長から離れるような事はないだろう。

ダイマックスの技術研究をしたいってのも嘘じゃない気がするけどな。

 

‥‥ダイマックスと言えばこの前パワースポット以外でもダイマックスポケモンが発生して話題になったっけか。

幸いにも偶然現場に居合わせたチャンピオンが解決したが‥‥やっぱりダイマックスって奴は人間に制御できるもんじゃないんじゃねえかなぁ…。

興行で使えるようにしている俺達がホント言えた事じゃないんだが。

でもなぁ、個人的にはハガネの大将が活躍してた頃の方が…。

 

少し複雑な気持ちになっていると、ラーメンを食べ終わった後輩が手をあわせる。

「ごちそーさま!まぁまだオープン戦っす!俺達が忙しくなるのはむしろこれからっすね!」

その通り。むしろオープン戦は大人しい方のはずだ。

各種設備のメンテナンスも忙しくなるだろう。

 

「先が思いやられるな…」

「とにかく俺の推しのアベリをよろしくっす!何だか今年はいいところまで行きそうな気がするんすよねー」

「そういえばアベリってのは何タイプのジムなんだ?」

「え?むしタイプっすよ。クワガノン使ってたでしょ」

自分の使ってないポケモンまで詳しく知るかい。

ドラピオンとかも使ってるんすけどねーと笑っているが、分からん。

「むし、むしねぇ」

何だか頭にひっかかる。

俺が覚えているってことは昔のリーグの事だと思う。

むしタイプが好きだったわけでもないんだが…。

10年以上前のリーグで見て覚えている‥‥?

 

「あっ」

 

思い出した。

思い出したけどこれは‥‥

「何すか?」

「いや、ちょっとむしジムで思い出したことがあってな」

「お、アベリの昔の話とか?」

「いや、むしジムの‥‥」

 

うーん、これ言っていいのか?

せっかく推しが出来たらしい後輩に少し気を使いつつも、自分の記憶を確かめる。

 

 

 

 

 

「むしのジムリーダーって確か八百長や賭け試合を仕掛けて、一時廃止になっていたような‥‥」

 

 

 

 

 




先輩
強火ピオニーファン。
昔は熱中していたが、ピオニーの突然の引退からリーグ戦はあんまり見ていない。
カップラーメンを作る時はホーホーに3分測ってもらう。



後輩
アベリが最近推し。
最近バトルに興味を持ち始めたが、どうしてもスタッフ目線が混ざってしまうのが悩み。
よくモンメンをまくらにして仮眠する。
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