エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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かたいいし

 

 

 

「マークワーくーん!あーそーぼー!」

 

 

 

ピンポンを鳴らす。

反応はない。

 

 

「おら!拗らせグラサン野郎!またメロンさんに負けたからって拗ねてるんじゃねえぞ!グラサン被ってるから付けるのやめろ!」

 

 

ドアをノックする。

反応はない。

 

 

俺はペンドラーをボールから出した。

顎をしゃくり、ドアを破るように指示する。

 

ペンドラーは「ふっ…おもしれー男…」と言いたげな目を向けてから《メガホーン》を撃つべく姿勢を…

 

 

 

「朝っぱらから他人の家の前で何してるんですか」

 

 

 

…ポケセンがえりのマクワがあらわれた!!

「なーんだ留守だったのかー。てへへ」

「因みに後ろで全部聞いていましたからね」

「ごめん」

 

 

 

メロンさんがマクワの連勝記録を止めた。

今年のオープン戦、マクワは何とメロンさんに止められるまで無敗だった。

キバナさんにも勝ち、現時点だけの話をするなら首位を走っていたわけだ。

 

俺だって今年のマクワならメロンさんに勝つ!って確信があったわけじゃない。

ただ「いつかは勝つだろう」と思っていて。

そしてその「いつか」が中々やってこない。

今年は調子がよかっただけに、マクワも辛かっただろうと嘲笑いに…慰めに来ていた。

 

 

 

 

お詫びに手伝え、と言われたので試合で汚れたギガイアス達のメンテナンスを手伝うことになった。

うへぇ。でかいし砂は付くし、いわタイプの扱いって大変だな。シャワーが苦手な子もいるので、丁寧にタオルで拭いている。

俺のてもちは普通にざーっとお湯で流して乾かして終わりだよ。イワパレスも元々水辺で暮らす生態だから全然シャワー平気だもんな。

 

「気を遣って来てくれたのは分かりますが、母との対戦も敗北ももう何度も経験していますよ」

「その割にはやっぱり取材は断ってロッカー室に籠ったらしいじゃん」

「敗北後のインタビューが苦手で」

「かーっ!勝率高い奴は言うことが違うなぁ!」

 

ところでギガイアス君、君俺の足踏んでるよ?今一回姿勢変えてからわざわざ踏み直したね?わざとなんだね?

あんまり体重かけてないからガチで嫌われてるわけじゃないのは分かるんだけどさ。

 

俺が足の指を失う恐怖に震えていると、マクワはイシヘンジンの巨体を磨くために脚立を持って来ていた。いや梯子?もっと本質を見ないと…。

 

「いけると思ったんですがね」

 

ぽつりと、何気なくマクワがそうこぼした。

それ以上何かを言うわけでもなく、黙ってイシヘンジンを磨く。

 

何だよ、悔しいんじゃん。

 

二人で黙っていわポケモン達を磨く。

傷を治しても残る表面の細かな傷。

これを積み重ねて、マクワはきっと強くなっていくのだと思った。

 

こいつも強いなぁ。

 

天才『児』で終わらない本物の天才のストイックさ。

俺の幼少期は転生チートだったけど、天才ではなかったんだなぁと痛感する。

 

 

 

マクワのてもちの手入れが終わり、二人で外へ出る。

珍しく向こうから誘ってきたので奢りかな?と思ったら割り勘らしい。

俺より勝ってるくせに!

 

まぁお坊ちゃんのマクワの選んだ店だ。

多少値は張るかもしれないが、美味い店に違いない。

因みに何故か今日は俺には選ばせないと強く言われた。

 

そんな嫌だったかスイーツバイキング。

持ち帰りまでしようとした癖に。

 

「そういえば、ウルガモス探している時にカブさんと会ったぜ」

「へぇ、やはり新戦力の拡充ですかね」

 

……やはり?

 

「カブさん、最近少し戦績が不振の様子でしたから」

言われて現状のランキングを確認する。

自分の順位を確認するのが怖くて、あんまり見る気になれないんだよ。

一試合の勝敗とかなら確認するんだけど、全体見ちゃうと意識しちゃうじゃん。

 

マジか。

確かにカブさんはかなり厳しい順位に居た。

言っても、俺より上ではあるが現時点でのメジャー入りはギリギリと言った状況だ。

サイトウ、オニオンの加入が響いた…わけじゃないな。

サイトウには勝っているみたいだし…。

 

「はっきりとした原因がある戦績の落ち方ではなさそうなので、本人も何かしらのブレイクスルーを欲しているんでしょう。やはり油断出来ない人です」

 

じわじわと、落ちていく順位。

一番焦っているのは本人だろうに、俺と会った時は全然そんな感じしなかったな。

あるいは熱さよりも、更に強みなのがそこか…。

マクワの言う通り、流石ベテランってわけだな。

 

「オープン戦では勝ちましたが…アベリは対戦まだでしたよね?いつなんです?」

「いつだっけ?まぁいいや。楽しみにしておこっと」

「どうなんですか?それ‥‥」

 

どうせいつでも対戦日程なんてチェック出来るし。

常に直近の相手の対策で精一杯なんだよ。

対策が通用するかは、別として。

 

「そうだ、対策」

その言葉で思い出した。

今日はマクワを慰めに来ただけじゃないんだった。

 

今までの俺だったら多分、出来なかった気がする事だ。

「どうしました?」

「あー、えっと、だな」

い、言いづらい。

マクワが勝っていればもう少し言いやすくはあったんだが、こればっかりは仕方ない。

どちらにせよ、俺が頼むにあたって一番なのはこいつなんだから。

一番だけど、こう、今まではプライドが邪魔して聞きづらかったというか。

というか、そもそも聞いていいのかこれ?

でも、サイトウとかは普通に俺のところ来てるし…それとこれとは違うような。

 

えーい!ままよ!

 

「頼む!いわタイプの扱い方教えてくれ!」

 

俺はマクワに頭を下げた。

 

 

「俺の次の相手、メロンさんなんだよ!」

 

 

 

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