エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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《キョダイセンリツ》②

頭がぽよぽよと揺らされる。

振動で、ようやく頭の上の存在を思い出した。

 

「あ、ああっ!ごめんっす!俺ったらすっかり忘れて!」

 

少し怒った様子のモンメンを頭から下ろしてやる。

部屋に置いてあるベッドにでも行くのかと思ったら、そのまま座っている自分の膝の上に乗ってきた。

忘れていたことを怒ってるわけじゃないんすか?と頭を傾げるが、モンメンはテレビに夢中で振り返りもしない。

どうやらテレビを見やすいベストスポットへ移動したかっただけらしい。

 

「お前も見たいっすか?」

 

どうやら自分が見ている内に、モンメンもファンになっていたらしい。

テレビで見ているからか、今日の試合は特に見応えがある気がする。

 

まだまだ勝負は始まったばかりだと言うのに。

 

先程、解説のキバナが言っていたように勝負の行方はまだ分からない。

今日のアベリはイワパレスの立ち上がりからして、何か策があるに違いない。

 

「もしかしたら、もしかするかもっすよ!」

 

もし万年マイナーのアベリがメロンに勝利すれば大金星。

 

ファンとして、期待に胸を躍らせてテレビを食い入るように見つめる。

気付けば膝の上のモンメンを、その胸に抱きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《おいかぜ》が吹き、《あられ》の降るフィールド。

イワパレスを倒されたアベリがすぐさま次のポケモンを繰り出した。

 

『おおっ!このポケモンは!』

 

「ギュオオオ!」

どっしりとした、虫ポケモンとしては大きな体。天を突く雄々しい二本の角。

ギロリと敵を睨み付ける好戦的な瞳。

 

 

ヤロー戦で活躍していた暴走ペンドラーだ。

 

 

『噂の《かそく》ペンドラーか!速さだけじゃなく、キョダイマックスとも殴り合えるタフネスも恐ろしいな!』

 

試合後の事件ばかり注目を浴びていたが、実際ペンドラーの強さはキバナも認めるほど。

アベリも強気に攻めようと指示を出す。

 

「ペンドラー!まずは―」

「引きな!ヒヒダルマ!」

 

ペンドラーへの指示より先にメロンの叱咤が飛ぶ。迷いなくヒヒダルマが後方へ飛び、距離を取る。

追うべきか追わざるべきか、迷う間もなくヒヒダルマは自陣へと戻―――

 

「ゴリィ!?」

 

ろうとして、ケツへ《ステルスロック》が刺さった。

深々と刺さった岩に観客からは思わず同情のような声が響く。

 

 

『これは痛い!メロン選手、ペンドラーを警戒して後方への注意が欠けていたようです!』

 

 

メロンの『失策』と見た新人アナウンサーが『><』とソーナンスみたいな顔で実況する。

その横で腕を組んだまま、キバナが訂正した。

 

 

『おいおい、相手はジ・アイスだぜ?』

 

 

「ヒヒダルマ!」

 

ケツに岩が突き刺さったまま、動けずにプルプル震えているヒヒダルマ。

 

「痛いかい、苦しいかい」

 

メロンからかけられるのは慰めではない。

 

「縮こまってるんじゃないよ!」

 

むしろ、ヒヒダルマを叱るように厳しい叱咤の言葉がかけられる。

 

 

「その痛み!怒りに変えな!『ダルマモード』!」

 

 

言葉を合図に、ヒヒダルマが飛び上がった。

ボン!と軽い爆発のような音がして、着地する。着地したのは先ほどのヒヒダルマではない。

フィールドには、顔から火花の散る雪だるまのような姿。

先ほどまでヒヒダルマの顔があった場所には強気な笑みが浮かんでいる。

 

怒りを力に変えることで、退化していた炎袋が再点火したヒヒダルマ、ダルマモード。

 

『あえて《ステルスロック》を踏むことでダルマモード起動のスイッチにしたんだ。間違いなく狙ってやったな』

 

「ゴリーン!」

ピョンピョンと跳ね回るヒヒダルマの速度が先程よりも速い。

ダルマモードになり、速度が上がっているのだ。

「ギュオオオン!」

《かそく》のお株を奪われる形になったペンドラーが果敢にも踏み込もうとするが、ヒヒダルマが更に跳躍した。

《はねる》よりも《とびはねる》と言うべき高さ。

しかし、無防備な跳躍だ。

自由落下してくるなら着地は絶好の隙。

ペンドラーは角を構えて迎え撃とうとする。

 

 

だが、落ちてくるヒヒダルマが『宙を跳ねた』。

 

 

「なっ!?」

驚くアベリの前で更にヒヒダルマが跳ねる。

 

跳ねる。跳ねる。跳ねる。

空中をピンボールの球のようにヒヒダルマが跳ねる。

 

フィールドで縦横無尽な軌道を描くヒヒダルマに、あのペンドラーも思わず後退りをしてしまう。

 

『キ、キキキキバナ選手!?これは一体!?』

 

『何度見てもやばいな!マクワがジムリーダーになったばかりの頃はよく見たが…』

 

実況席も大混乱だ。

恐怖映像を見てしまったかのようなアナウンサーに対して、キバナは映像にかぶり付きで喜んでいる。

 

『ヒ、ヒヒダルマは一体何がどうなっているんですか!?何もない空中で跳ねています!』

 

『何もない、じゃあないぜ。『見えない』だけでそこにはあるんだからな!』

 

 

見えないだけでそこにある。

そのヒントに新人アナウンサーも気づく。

ヒヒダルマの異常な軌道の正体。

それは―――

 

『《ステルスロック》を足場に!?』

 

 

アベリが撒いた《ステルスロック》。

モスノウの《おいかぜ》で撒いた本人にすら把握出来なくなった位置を、的確に判断しているのだ。

 

『可能なんですか!?そんなこと!?』

 

『オレ様にも無理だなー。降っている《あられ》が《ステルスロック》にぶつかるのを即座に判断しているらしいぜ。最近のマクワは足場に使えないような設置をするようになったんだが‥‥アベリは少し甘かったな!』

 

トップジムリーダーとして仕組みを解説するが、それは可能とは呼ばない戯言。

実際に宙を自由に跳ねるヒヒダルマを見て、納得出来るかと言われれば別だろう。

 

「そら!《つららおとし》だよ!」

 

不規則な軌道、四方八方から迫る氷柱。

ペンドラーが《まもる》で防御に専念して凌ぐが、追い詰められている事には変わりはない。

《かそく》で速度だけは追いつけるが…。

 

アベリとペンドラーが一瞬、視線を交わした。

お互いに攻めるべきだと思惑が合致したようだ。

 

 

「ペンドラー!《いわなだれ》!」

 

 

岩石の波。

フィールドを大きく巻き込むように、土砂が一気に襲い掛かる。

面で制圧する事で機動力に対抗しようと言う作戦だ。

配置されている《ステルスロック》を巻き込んで、フィールドのリセットも図っている。

 

流石にこれにはヒヒダルマも逃げ場がない。

使っていた足場までもが武器へと変わっていく。

メロンが指示を飛ばした。

 

 

「ヒヒダルマ、《いわなだれ》に飛び込みな!」

 

 

絶体絶命の状況。常軌を逸した命令。

だが、ヒヒダルマに躊躇はない。

軌道を変えて一直線に《いわなだれ》へと飛び込む。

 

ダルマモードとなったヒヒダルマのタイプはほのお・こおりの複合。

《いわなだれ》に飛び込めば、戦闘不能間違いなしだ。

 

 

 

 

普通なら。

 

 

 

 

 

 

 

「《ゆきなだれ》!」

 

 

 

 

地響きのような音が、スタジアムに響く。

 

 

 

 

 

《いわなだれ》が、逆流する。

 

 

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