エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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《キョダイセンリツ》④

 

 

《キョダイセンリツ》。

 

 

キョダイマックスしたラプラスの放つ専用技だ。

攻撃と同時に冷気がラプラスの周囲に《オーロラベール》を作り出すというトンデモ技。

《オーロラベール》というのは《ひかりのかべ》と《リフレクター》、両方の性質を併せ持つ護り。

つまり、こちらの攻撃は何でも半分の威力しか通らないってことだ。ダイマックスすると体力が大体倍になるので、キョダイマックスしたラプラスを《オーロラベール》越しに倒すには通常のラプラスを大体4回倒す威力が必要になる。

 

 

インチキ効果もいい加減にしろ。

 

 

うちの主砲のクワガノンも流石にそんな火力は持っていない。ラプラスを倒すためには3回か4回は撃ち込む必要があるだろう。

そして、恐らくだがダイマックスしたクワガノンもラプラスの攻撃を3回か4回くらいは耐えると思う。

 

 

なーんだ、五分五分じゃん!後は気合いで押し込めばいけるな!

 

 

…まあ、そうはいかないんだよな。

原因はたった一つ。

クワガノンの遅さだ。

クワガノンは足が遅い。いやキャンプなどではブンブンと素早く飛び回ってくれるのだが。

 

クワガノンは攻撃が遅い。

 

こればっかりはどうにもならなかった。

工夫次第で何とかならんかと四苦八苦してみたのだが、どんな技でも一定の時間がかかる。あるいは、速くなる代わりに肝心の威力がなくなったりした。

 

さて、遅いとどう困るのか。

単純だ。相手の攻撃が先に命中する。

つまり、お互いに三回攻撃を当てれば勝ちだとしても、先に三回当てるのは向こうになってしまうのだ。

 

 

クワガノンはラプラスには勝てない。

 

 

 

 

それが解っていながら、俺はクワガノンをボールへ戻してダイマックスバンドからガラル粒子を集める。当然、メロンさんもラプラスへガラル粒子を集めている。

 

 

これから始まるのはガラルリーグの華。

 

お互いに一度だけ使える切り札を切り合うダイマックス戦だ。

スタジアムはこのためにパワースポットに建っているし、このために巨大になっているし、このために観客席は広くなっている。遠くからでもよく見えるからな。

 

最早、語ることはない。

俺とメロンさんはそれぞれ大きく、重くなったボールを自分の後方へと投げて—--

 

 

それぞれの切り札が、盤面に現れる。

 

 

空を飛ぶ巨大要塞、クワガノン。巨大化した主砲からはいつもよりも更に強力な電撃が放たれることだろう。

 

海に浮かぶ不沈要塞、ラプラス。通常と違う『殻』を背負い、その周囲には音階のような氷のリングを纏っている。

 

 

 

全ての手札が露になった。

ここから先に小細工もはったりもない。

ただ殴り合い、先に殴った方が勝つ予定調和。

 

 

冷気と電気がフィールドを駆け巡る。

 

周囲の気温が一層と冷え込む。

吐く息は最早白くなった。

 

まず、ラプラスが動いた。

 

 

 

 

 

 

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!

 

 

 

 

 

そして、光と音が炸裂する。

 

 

迸る《ダイサンダー》がまだ動いただけのキョダイマックスラプラスを貫く。

フィールドに積もった雪が地面を舐めるように走った電撃で一瞬で蒸発した。

 

蒸発した雪が白い水蒸気になり、フィールドが白煙に覆われる。

 

 

「ギリッギリだったぜ。マジで」

 

 

姿は見えないが、その向こうで驚いているであろうメロンさんへ声をかける。

《ダイサンダー》の爆音のせいで何か耳が変だ。キーンと耳鳴りがしている。

 

「イワパレスがあんなに早く落ちちゃったから余裕はなかった」

 

本当に綱渡りだった。

結果的に逆に上手く行った気がするけれど…。

 

「《ゆきなだれ》はやばかったけど、ちょっとだけ好都合だったな」

 

《いわなだれ》が返されるとか意味不明すぎだろ、あれ。

そうはならんやろ。

そもそも《ゆきなだれ》なんて技初めて見たよ。

 

でも、おかげでペンドラーが雪の中に隠れる事が出来た。

 

隠れる事で、時間を稼ぐことが出来た。

 

ペンドラーはふらっふらになっていたけれど、しっかりと生き残った。

 

 

「未だにポケモンの事は全然分からねえよ。何で《つるぎのまい》で攻撃力が上がる?どうして《ブロッキング》で防御が下がる?」

 

自嘲気味に笑ってしまう。

この勝負、分からない事だらけだった。

《ステルスロック》や《おいかぜ》、《ゆきなだれ》。

いや、ステロ撒いたのは俺なんだけど。

ほとんど利用されてたなあれ…。

メロンさんがやったことは全部分からない事だらけだった。

 

 

でも、分からないなりに、確かめながら歩いてきた。

自分の歩き方だけは、分かる。

 

 

 

「なんで《バトンタッチ》で交代するだけでステータスの変化を引き継ぐ事が出来るんだろうな?」

 

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ふん、と腰のボールの中でペンドラーが勝ち誇った気がした。

 

 

そもそもペンドラーは戦闘不能になっていなかった。

ただ、《バトンタッチ》を使って手元に戻ってきただけ。

そして、クワガノンがペンドラーの《かそく》で上がったすばやさを引き継いで――

 

ヤッテヤリマッシャー!

 

今、《オーロラベール》を張られる前にラプラスへ《ダイサンダー》を撃ち込んだ。

 

最強のバリア?

張られる前に倒せばいいんだよ!

 

 

それにしても、雪が溶けて出来た煙が晴れない。

ちょっと今耳がおかしいから、早く目視で確認したいんだけど。

 

まだ寒気がするフィールドで煙の向こうに目を凝らす。

 

 

 

 

 

唐突に猛吹雪がクワガノンを襲った。

 

 

 

「っ!」

 

《キョダイセンリツ》。

 

心地よい歌声と底冷えするような極寒がフィールドへと広がる。

煙の向こう側から現れた姿は、冷気を纏い厳かに輝く膜に覆われている。

 

キョダイマックスラプラス。

吹雪により、少し切れ目が出来た向こう側に雪の女王(ジ・アイス)と共に君臨している。

 

 

「随分、驚かせてもらったよ。手品のタネはこれで終わりかい?」

 

 

到来する氷点下の世界。

その先で微笑む。まるで、そこは玉座だ。

 

既にラプラスを覆う厳かに輝く膜は間違いなく《オーロラベール》。

全ての攻撃を半減する、完全なバリア。

《オーロラベール》を纏ったラプラスの脅威は散々想定した。

《キョダイセンリツ》の威力も技の余波だけでフィールドは凍結し、氷の柱が何本も立っている。

 

 

だから、俺は笑って返事をした。

 

 

 

 

「ああ。これで幕切れだぜ」

 

 

 

俺の後ろではクワガノンが最後のチャージを完了させている。

ラプラスとクワガノンが五分五分だったのは《オーロラベール》が常にあれば、だ。

既に《オーロラベール》なしで《ダイサンダー》を食らったラプラスは、もう次のダイサンダーを耐えられない。

 

「最後に凄んでみたんだけどねぇ。少しも怯まないか」

 

「滅茶苦茶怖かったよ」

 

ただ、俺には手本があったからな。

お陰で何をすべきか分かりやすかった。

 

 

「敵の弱みは見逃すなって、偉大な先達が教えてくれたからな」

 

 

雪の女王(ジ・アイス)へ、敬意を込めて。

クワガノンから最大級の雷撃が放たれる。

 

アベリの言葉に驚いた女王は、最後に母として笑った。

 

 

「参ったねこりゃ。随分クールになっちまって」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ラプラス戦闘不能!!アベリ選手の勝利です!!!』

 

 

 

 

 

 

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