エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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おしえテレビ

 

俺、ネーナタウンのアベリ!

 

ポケモンマスター目指して…

ないな。そんな高い目標は持ってない。今はメジャージム目指すので精一杯だ。

 

旅を続けて…

最近あんまり遠出してないな。移動もタクシーばっかりだ。

 

そもそも俺、ネーナタウンで暮らしてるけど出身はシュートシティだから「ネーナタウンのアベリ」も間違ってるか。

 

 

 

 

 

 

……俺、ネーナタウンのアベリ!

 

ポケモンマスターを目指してないし、旅もしていない!

 

だけどガラル地方でむしタイプのジムリーダーをやらせて貰っている。

実力でなったとは言いづらい経緯でジムリーダーになってしまった俺だけど、精一杯メジャージムを目指してるつもりだ。

 

最近の戦績?

新ルールになってからは全敗してますけど?

ま、まだまだここからだし。

まだあわあわあわてるような時間じゃない。

 

今日の試合は夕方には終わり、ネーナタウンの自分の家(ジム)に帰るところだ。

 

「あー!アベリだー!」

「よわむしアベリが大連敗ー!」

「はっきり言わせてもらうが、センスがない」

 

ネーナタウンは、はっきり言ってド田舎だ。

ドドド田舎だ。

そんな田舎なので、住民のほとんどは顔見知りになる。

決して排他的な雰囲気はなく、困った時には助けてくれるような人達だ。

都会にはない暖かみのある人間関係がある。村社会の相互扶助って奴だな。

俺を罵倒してくる子供達だって、そういう村の住民。

少々舐めた態度も、親しみやすさが故だ。

 

なので俺は微笑ましいものを見る目でおおらかに答えた。

 

 

「舐めた口利いてんじゃねえぞガキ共!お前らの家分かってんだからな!明日からテッカニンで囲んで騒音被害に遭わすぞ!」

 

 

「ふみんになっちゃうよー!」

「うわーん!」

「出るとこ出ます」

 

おっと。いけないいけない。連敗で少し気が立っていたらしい。

少々大人げない言葉が出てしまったようだ。

 

 

そんなクソガキ共が騒がしいこの町に、むしジムはある。

木造で少し和の趣を感じさせる建築…この世界ではジョウト風って言うべきなのか?

表から見ると廃寺そのものだが、裏にはちゃんとした住居スペースが用意されている。

そちらの部分の方はしっかり作られていて、不便に感じたことはない。

空調どころか床暖房まであるからな、住居の方は。

この格差からも先代がいかに真面目なジム経営にやる気がなかったのか分かる。

 

俺の代になってからも、どうせ人が来ないから、とジム側の修繕はしてないんだけどね。

お金はあるけど、この規模だと建て直しとかになって流石にやばいらしい。

軽く見積りしてもらったことあるけど、貯金が《ふきとばし》されそうだった。

 

‥‥あれ?直さないから人が来ない面もあったりする?

い、いや、立地が悪いからそもそも来ていないだろう。

だから大丈夫だ。

俺がもっと有名になってからで間違ってないはず。

 

‥‥今度マクロコスモスに追加予算お願いしてみようかなぁ。

ジム経営の問題だし…。

でも俺じゃジムトレーナーが増える気配ないから望み薄か?

 

 

 

 

 

 

 

脳内でオリーヴさんを説得する無理ゲーに挑みながら帰宅する。

帰宅したらまずやるのは今日の反省会だ。

ネットにアップロードされたばかりのキバナさんとの試合をみんなで確認する。

 

そう、皆だ。

 

リビングには俺のてもちポケモンが勢揃いしている。

アイアントやヘラクロス、ペンドラーまでテレビの前に並んで試合の映像を見ている。

ソファーだけはとびきり大きいのを買ってあるのだが、流石にちょっと狭い。

 

 

これは今まではやってなかった試みだ。

あくまで勉強するのはトレーナーの俺だけで、戦う皆にはトレーニングを中心にしていた。

だが、ダブルバトルをする中で一つの課題にぶち当たった。

 

ダブルバトルは2匹のポケモンを出し合って戦うルールだが、試合の情報量は2倍どころじゃない。個人的には体感8倍って感じだ。

 

 

それら全てを把握し、指示する力がトレーナーに求められる…

 

 

と、思っていたのだが、周囲の話を聞いているとどうやら俺が勘違いしていたらしい。

 

トレーナーの力には限度がある。

どうやっても一人だからだ。

複雑なバトルの状況を完全に把握し、完璧な指示を出すのは不可能に近い。

中にはそんな超人的なトレーナーだって居るだろうが、大多数はそうじゃない。

では、ダブルバトルが上手くなるにはどうすればいいか。

 

 

必要になるのは、ポケモン自身の判断力だ。

 

ある程度、ポケモン自身に判断してもらうことでトレーナーの負担を減らす。

トレーナーの指示を待つべきタイミングと自分で決めていいタイミング。

片方に指示を出すだけで、自分がチームに必要な行動を読み取る洞察力。

そういうチーム全体の事を考えるIQと思考ルーチン。

 

つまりは、『チームワーク』。

 

 

聞いた時は目からハートのうろこが落ちた。

ポケモンと言えば勝手に行動するのはゲームだとトレーナーの力量を越えてしまったポケモンってイメージだったからな。

だから、みんなにもダブルバトルの仕組みを理解してもらおうと思ったんだけど…。

 

 

「アィィ‥‥?」

アイアントは目を細めながら、プルプルと身体を強張らせている。CPU使用率100%って感じだ。

まぁ、アイアントは元々厳しいかなと思ってた。

まだバトル始めて間もないから、自分自身で精一杯だろう。

 

「‥‥ッス」

正座のような姿勢のヘラクロスはそわそわしている。これも予想通り。

こいつはジムトレーナー時代からの長い付き合いだが、せっかちなところがある。

物事を深く考えるのは苦手だろうと思っていた。

 

「‥‥‥」

こいつ黙ってる事も出来るんだ。

じっと画面を見ているのはクワガノン。

勉強は熱心だが、試合が始まると視野が狭くなりがちだから協調性の方に難ありなんだよなぁ。

いつもなら頼りになる真面目さだが、臨機応変には出来ないタイプだ。

 

「ギュオン」

あ、ペンドラーが勝手に画面の前から離れた。

あいつは…多分試合の流れや戦術の知識自体は俺よりある。先代に仕込まれたのだろう。

独自で判断する、という点は既に出来ているタイプだが、周りに合わせる気はあんまりない様子だ。チームワークって点ではやっぱり厳しい。

 

 

なんとなーく察していたけれど、ダブルバトルが苦手なのは俺だけじゃないようだ。

てもちのみんなも少し苦手意識がありそうだ。

オニシズクモやアブリボン達もあんまりピンとは来てなさげ。

今までシングル戦ですらこんな勉強会したことないから仕方ないね。

 

だけど、それを克服するための勉強会だ。

不安があるとすれば俺がダブルバトルの要点をよく分かってねえことかな!

「ここが大事!」とか「これは参考になるぞ!」みたいな事、ほとんど言えないんだよね。

各々の理解力に期待して、各々が学習していくしかない。

大丈夫かな、これ。

 

とにかくまずはいっぱいダブルバトルを見てみよう。

前も言ったが、ガラルでは資料を集める事は苦ではない。

最近カブさんが取り寄せてきたホウエンの資料だってあるんだ。

 

長丁場になる。今日は一日中これになるだろう。

俺はこれからの長期戦のためにも、手始めに夕食作りを始める事にした。

 

メニューは当然カレーだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「zzzzzzzzzzz‥‥はっ!」

 

何だ?

何が起きた?

 

気付くと俺の身体は重く、あちこちが硬い。

ついでに膝の上にレドームシが乗っていて、足がしびれている。

窓から差し込んでいるのはあさのひざし。

目の前のテーブルにはカレーを食べたであろうたくさんの食器。

おかしい。

ついさっき夕食をみんなで食べたはず‥‥うっ頭が…!

 

一体何が起きたって言うんだ!

 

‥‥冗談はさておき、みんなで夜通し勉強会を続けて、そのまま寝てしまったらしい。

大きなソファーの各地でも、てもちのみんなが寝落ちしている。

少し離れた場所でペンドラーが丸くなって眠っているのが見えた。

あいつ、寝相はかわいいな。

 

「あーあ、テレビつけっぱじゃん‥‥」

 

テレビには寝る前と同じく試合の映像が流れ続けている。

ダブルバトルだけを連続再生する設定にしていたからな。

画面では何年か前のダブルバトルが流れているようだ。うわっ、カブさんがちょっと若い。

膝の上で寝ているレドームシを起こさないように注意を払いながら、リモコンを探す。

すると画面の前で一匹だけ起きたままのポケモンが居る事に気付いた。

 

 

「ビーバグ…」

 

イオルブだ。

一匹だけ眠らずに、目を見開いて画面を見ている。

他のメンバーが寝入っても、こいつだけは熱心にバトルを勉強し続けていたらしい。

…協調性と知識量で言うならば、こいつが一番ダブルバトルに向いていると思う。

《テレパシー》のとくせいもあるが、気質的にも。

だけど、まだまだリハビリ中で公式戦に出すには不安が残る。

 

もしもイオルブがチームの潤滑剤のような存在になれたなら。

そんな未来図を寝ぼけた頭が描きかける。

 

 

 

スコン!!

 

 

玄関先から大きな音がして、リビングで寝入っていたみんなが目覚めてしまう。

俺も考えを打ち切って、意識をはっきり覚醒させる。

あの音は、多分郵便局のぺリッパーが手紙を投函した音だ。確認しないと。

 

「おらー!朝だぞー」

ぶつからないように気を付けながら、ソファーから立ち上がり玄関へ向かう。

ジムの古びた扉はガタついているが、支障は特にない。

外に出ると予想通りぺリッパーが空を飛んでいくのが見えた。

「こんな遠くまでご苦労さん」

朝日を浴びながら軽く伸びをするとバキバキと音がする。

勉強会、次からは別の形式を考えた方がいいかな。

テレビをもう一台買うか?ジムの修理といい急に出費の予定が増えてきたな…。

 

郵便受けを覗き込むと、やけに高級そうな赤い封筒が二つ。

片方は先代宛て。もう片方は俺宛てになっている。

マクロコスモス、じゃないよな。いつもスマホで連絡してくるし。

 

送り主は…

 

 

 

 

「『かつてのリーグを想う会』‥‥?」

 

 

 

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