エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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一話挟んだら次はバトル回じゃないんですか!?


アイスボディ

俺は今、楽園にいた。

ふわふわして、ひんやりして、すべすべして。

 

もう死ぬまでここに居たい。

魂がここがいいって叫んでる。

 

「ふんわ」「ふんわ」「あいすすー」

ユキハミに全身をまさぐられながら、俺は雪の上に溶けていた。

小さなユキハミ達がえっちらおっちら横切る姿には他では得られない栄養素がある。吸いてえ。

 

そうだ。このまま雪になろう。

雪になって、ユキハミに食べて貰うんだ。

ハミハミしてくるユキハミ達はきっとお腹が空いているんだろうし、俺はユキハミが幸せで満足。

Win-Winでは?

 

 

 

 

「雪の中に急に倒れたと思ったら…何をしてるんですあなた」

 

マクワの声が楽園から現実へ引き戻す。

周囲は辺り一面真っ白な雪原。ここはキルクスタウンの近く。

ガラルでもかなりの降雪地帯だ。

気付けば雪の中に埋もれていた俺は手足の先まで冷えている。

 

くっ…雑念が混じった。俺は今命の答えに辿り着こうとしていたのに。

もう一度ユキハミの群れに五体投地して、真理へと至る道を探る。

 

「あぁぁあ……改めて……ありがとうなマクワ。場所の提供だけじゃなく……ふぁぁあ……ガキ達に防寒着まで貸してもらって…あーかわいい…」

「お礼を言うなら立ち上がって欲しいですが…スケジュールには余裕が出来ていましたから、気にしないで下さい」

あれ?ちょっと前まで忙しい忙しい言ってたような?

マクワにはファンクラブがある。(俺にはないのに)

写真集とかも出していて、ちょっとしたアイドルみたいな人気だ。チャンピオンダンデやインフルエンサーのキバナ、現役モデルのルリナが居るので、あくまでご当地アイドルくらいだが。それでも握手会のようなファンミーティングは積極的に行っている。

そもそもこいつのジムにはジムトレーナーが多いから、ジムリーダー業だって(俺と違って)忙しいはず…

 

「ははーん。さては、またジムトレーナーに逃げられたな」

 

「………」

正解だなこれ。

マクワは俺と違ってちゃんとジムにトレーナーは集まるのだが、教え方が厳しすぎで去ってしまう人も多い。

スパルタを越えたスパルタ。一度練習風景を見せてもらったけど、俺なら初日で逃げるね。

マクワ自身が厳しい母親に育てられたから、ついついハードルが高くなるんだろう。

これ言ったら怒るだろうから、言わないけど。

 

 

 

今日はマクワに頼んで近郊の一角を使わせてもらって、むしとりたいかいinキルクスを開催している。

 

アーマーガア二体による見事な連携で飛ぶアーマーガア大型タクシーに乗って地元の悪ガキ達を連れてきた次第だ。森しか知らない地元のガキに、寒くて雪の降るところにしか住んでいないユキハミというむしポケモンを見せておきたかったのだ。

俺が来たかっただけってのもある。

 

「流石にキルクスに全員たんぱんで来たのはびっくりしましたよ」

「俺は止めたんだぜ?」

でも、あいつら全く譲らなかった。

たんぱん脱ぐくらいなら死ぬとまで言い出したので、仕方なくそのままキルクスに向かった。

着く頃には唇紫にしてガタガタ震えてたよ。アーマーガアタクシー、暖房とかねえからな。

俺はもう一度急いでマクワに頼み込み、ジムチャレンジャー用に用意されていた防寒具を借り受けた。

脱いだら死ぬんだろ?と少し茶化そうと思ったが、ヒートテックみたいなタイツの上からたんぱんを履き直すこいつらを見て俺は引いた。

 

その齢にして何だその拘り。

 

今は渡したモンスターボールを手にユキハミ達を追い回している。

「彼ら、楽しそうですね。僕もあまり固くなりすぎない方が…」

「うぁー…」

「いや、これはやりすぎですね。‥……僕も昔、ああしてユキハミを追いかけましたよ」

ユキハミを追い回すたんぱんこぞう達を遠目に見ながら、マクワがサングラスの奥の目を細める。

そういえば、昔のマクワはこおりタイプも使ってたっけ。今は全然使ってないみたいだけど。

「…まずはいわタイプを、自分が納得いくまでストイックに極めてみたいんです」

「ほぇー…」

 

「そのためにはまず母に勝たないと、と思っています」

 

ファンクラブ1号さんこと、メロンさんか。

キバナさんみたいに全敗ってわけじゃないが、マクワもあの人を相手にした時の勝率はよくない。

ただ今年のマクワは調子がいい。何と前年の成績トップのキバナさんにも勝利し、相性不利なサイトウにもしっかり勝っている。今年こそはメロンさん相手にも勝ち越せるかもしれない。

 

俺の方は今2勝3敗。この前エスパージム相手に何とか一勝した。

あそこのジムリーダー、リアクションが面白いんだよな。

「こ、こいつ!まさか!!何も考えてないんじゃあないか!?」「ヴァ、ヴァカーナ!こんなのウソッキー!」と何もしてないのに混乱して、最終的には「もしかして、《みだれづき》ですかぁ~~!?」とか言って勝手に《だいばくはつ》した。

芸術的だ。

何か凄い超能力者の一族らしいけど、芸人とかの方が向いてるんじゃないか。

 

ルリナ戦?負けたよ。

あえてダイマックスを使わずにヘラクロスの《こらえる》で耐えて《きしかいせい》でキョダイカジリガメをノックアウトする必勝の策だったんだが…《ダイロック》で巻き起こされたすなあらしで、耐えていたヘラクロスがたおれた。

いやぁ惜しかった。非常に惜しかった。ほぼ勝ってたっていっていいんじゃないかな。ルリナには顔でバレバレだって言われたけど、あれはきっと強がりだね、うん。

 

そんなことより今の幸せだよ。

俺は敗戦の痛みを忘れるため、息をめいっぱい吸い込んだ。

 

「すぅぅぅぅぅぅ」

「ちょっとシリアスに話をしたいのでユキハミを吸うの一旦やめていただけませんか」

「すぅぅぅぅぅぅ」

 

 

 

 

 

 

 

話をしている内にガキ達が渡したボールを使い切って帰ってきた。

優勝者はユキハミを二匹捕まえたポラ何とか君。

残念ながら捕まえたユキハミ達はこの後リリースすることになるが、その前にガキ達に協力してもらいカレーを大量に作って、ユキハミ達も一緒に食べる。ユキハミはこう見えて大食いなので、面白いようにカレーがなくなる。

マクワが「何だか弟達を思い出しますよ」とか言い出したので、勝手に写真を撮ってメロンさんに送っておく。

こうやって小まめに密告すると、モスノウのふつくしい写真くれるんだもんあの人。

おっと、忘れるところだった。

 

「ほれ、ガキ共。マクワにお礼言っとけよ」

 

「はんこうきのおにーちゃんありがとー!」

「すげーよマクワ!さすがうごける巨体!バク転見せてよ!」

「ねぇねぇ、どうして負けた後インタビュー受けないのー?悔しいのー?」

 

 

「ど、どういたしまして。もう遅いので、バク転とインタビューの話は今度にしましょう」

声が震えてるぞマクワ。俺に目線を向けられたって困るんだ。

そっちはキャーキャー言われてるみたいだけど、こっちは年中これなんだよ。

弟や妹はここまでのガキではなかっただろう?たまには帰って家族に感謝を告げるんだな。

 

 

 

 

カレーも底をつき、お開きのムードが漂い始めた時である。

俺のスマホロトムにメッセージが届く。

最初はついさっき送ったメロンさんからの返信かと思った。

 

「げっ」

 

確認して思わず顔をしかめる。

 

 

 

 

お偉いさんから、呼び出しだ。

 

 

 

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